2021年5月28日(金)に開催されるONE Championshipの女子のみの大会「ONE: EMPOWER」で女子アトム級ワールドグランプリに出場する平田樹(フリー)が3月末、各国のメディアが参加するグローバル・メディアデーでZOOMインタビューに応じた。
本誌も参加した世界のメディア用の囲み取材では、普段、日本のメディアからは聞かれないような質問も飛び出し、平田の新たな魅力がかいま見えるインタビューになった。日本メディアの囲み取材と併せて、下記にお届けしたい。
優勝者が、現王者アンジェラ・リーへの挑戦権を得るグランプリの組み合わせは以下の通り。
▼女子アトム級ワールドGP1回戦(A1)5分3R平田 樹(日本)MMA4勝0敗(21歳)アリース・アンダーソン(米国)MMA5勝1敗(26歳)
▼女子アトム級ワールドGP1回戦(A2)5分3Rメン・ボー(中国)MMA17勝5敗(24歳)リトゥ・フォガット(インド)MMA4勝0敗(26歳)
▼女子アトム級ワールドGP1回戦(B1)5分3Rデニス・ザンボアンガ(フィリピン)MMA8勝0敗(24歳)ハム・ソヒ(韓国)MMA23勝8敗(34歳)
▼女子アトム級ワールドGP1回戦(B2)5分3Rアリヨナ・ラソヒナ(ウクライナ)MMA13勝4敗(30歳)スタンプ・フェアテックス(タイ)MMA5勝1敗(23歳)
1回戦で北米からの刺客アリース・アンダーソンと対戦する平田はGP出場選手中、最年少の21歳。果たして世界の舞台でも“強心臓”を発揮できるか。
日本でただ1人選ばれた選手なので、必ずベルトを獲りに行きたい
──女子アトム級ワールドグランプリの出場が決定した気持ちをお聞かせください。
「“やっとか!”という思いですごく楽しみです」──グランプリでの平田選手への期待が高まっています。プレッシャーに感じたりもしますか。
「いいえ、それだけ期待されているっていうことで、自分はすごくモチベーションが上がります。プレッシャーは毎回特にそんなに感じないんで。あと、初のシンガポールなんでけっこう楽しみです」
──今回の女子アトム級ワールドグランプリの前に「Road to ONE」で試合をしました。あの試合を振り返ってみていかがでしょうか。
「1年ぶりの試合ですごく楽しかったんですけど、やっぱりまだ沢山の課題が残る試合だったし、グランプリはもっと強い選手が多いので、”あれじゃダメだな”と反省の残る試合でした」
──「Road to ONE」の試合後、青木真也選手(4月29日に元UFCのセージ・ノースカットと対戦)からどんな声をかけられたのですか。そして、どんな存在ですか。
「『俺は勝っても褒めないぞ』と言われました。周りとは違う意見を言ってくれるので、特別な存在かと思います。青木さんは厳しい時はすごく厳しいのですが、普段はすごく優しいです。自分の中では今まで画面とか遠くで見ていた人で、そうい人から解説してもらったりアドバイスをもらって、普通の格闘家だとこんな“いい場所”はないんじゃないかなって。すごくありがたいことなので、光栄に思っています」
──最後にONEの本大会で戦ったのは、2020年2月のナイリン・クローリー戦でした。そこからどのような部分を磨いて成長したと思いますか。
「打撃は一番練習しました。打撃と足のステップは一番練習して、ボクシングの練習もしました。ほかにも打ち込みとかはしてきたんですけど、完璧に出来ていたところが出来なかったり、もっと出来るんじゃないかなって自分的にも期待していたんで、それが出来なかったことが悔しくて、次の試合では出したいなと思っています」――自分の得意技で勝てるというのも強みだと思いますが、そこには頼りたくなかったのでしょうか。
「グランプリを目指し、今までと同じ試合はしたくなかったんですけど、“試せる”試合だったと思うんで、グランプリに向け弱みを見せてしまったと思います」
――首投げから袈裟固めというフィニッシュがプロで通用していますが、自信にはならないですか。
「この流れで勝てると思って他の技をやらなくなると、対策されて勝てなくなってしまうので、違う技も見つけたいです」
――前回の試合後の練習は?
「試合の次の日から(和術慧舟會HEARTSの代表の)大沢(ケンジ)さんとミーティングをして、もっとレスリングの練習をしなくてはいけないし、今までと違う戦い方をしないと勝てなくなるという話をして、次の試合が一番大事なので、プランを立て直そうと思っています」
――女子アトム級ワールドグランプリに向けて特に取り組んでいくことを教えてください。
「レスリングの練習と打撃の練習は続けていきたいと思っています。四つで組めないときの対策はしたいと思います」
──グランプリ出場選手の中でも、21歳の平田選手は若く、無敗の戦績を持って出場しますね。どこまで勝ち続けられると思いますか。
「日本でただ1人選ばれた選手なので、必ずベルトを獲りに行きたいです。若いからこそ出来ることが沢山あると思うので、すごく楽しみです。強い選手と試合して、勝って上に行きたいっていう思いが一番強いです」
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長身のアリースには手こずるだろうけど──
──グランプリ1回戦の対戦相手であるアリース・アンダーソン選手の印象をお聞かせください。
「長身でリーチも長い選手ですよね。自分は初めてそういう選手とやるので、手こずるだろうなとは思うのですが、やっぱり自分の良いところは出していきたいです。相手も寝技も打撃もできると思うのですが、自分の得意な寝技で仕留めたいなって思います」
──アンダーソン選手の強みはどんな部分だと思いますか。
「負けも少ない(アマチュア6戦無敗、プロ5勝1敗)し、気持ちも強い選手だと思います。打撃の距離感は向こうの方が先に取るんだろうなと思っているので、そこは気を付けようと思って練習しています」
──アンダーソン選手が平田選手の柔道投げの対応策を十分に練習しているということですが、それについてはどう思いますか?
「柔道の投げは出来るだけ使いたくないなと思うのですが、前回もそう言って一番強い柔道投げを使っていたので。できる限りは、使わないようにして、最悪使った時には極め切る」
──アンダーソン選手は経験もあり、ある種ベテランかと思います。一方でONEではデビュー戦になります。そういう意味で”経験”というのをどのように考えていますか。
「確かに向こうの方がキャリアも凄いって周りからも言われるのですが、逆に自分はキャリアがない状態からどこまで出来るのかを皆んなも見たいと思うので、特に気にしていませんね」
――グランプリ全体を見て、出場メンバーをどう思いましたか?
「このメンバーは結構注目を浴びるんじゃないかなと思いました。なかでもメン・ボー選手にやっぱ興味があって、ずっと最近やりたいと言っていました。打撃も気持ちも強くて、自分がそういう選手と戦うとどうなるんだろうと。自分が一番下で、這い上がるだけなんで、どれだけ自分がガムシャラに頑張れるか、自分を試す機会かなと思います」
――日本でも注目を浴びているハム・ソヒ選手の印象は?
「RIZINでの浜崎(朱加)さんとのタイトルマッチが日本の人に一番印象強いんじゃないかなと思います。ROAD FCでの試合の話は(日本では)全然出てこなかったので。ハム・ソヒさんは強いと思いますし、どう強いのかすごい気になって。韓国の選手はメンタルも強いと思うので、どういう人なのか気になります」
――元RIZIN王者のハム・ソヒ選手の参戦で、日本のファンは比較がしやすくなると思います。女子軽量級はONEが強いというところを見せたいですか。
「そうですね。日本の団体のチャンピオンがONEにきたのも大きな話題になったので、もしハム・ソヒ選手が一回戦で負けたら、ONEが強いと証明できると思うし、もし、自分が対戦するチャンスがあって、いい勝負ができたら、海外で戦っている選手のほうが(強い)って見せつけられると、ちょっと思いますね」
──グランプリで、この選手と当たったら厳しい試合になるだろうなと思う選手は、ズバリ誰ですか?
「みんなやっぱり強いので。でもやっぱ日本の団体でもベルトを取っているハム・ソヒ選手が凄く気になるんですけど。それより前にメン・ボー選手とかスタンプ選手とか、みんなそれぞれ強い部分があるので。でも一番っていうなら、ハム・ソヒ選手かなと思います」
――メン・ボー選手やハム・ソヒ選手の打撃をどうとらえていますか。
「トップ選手なので、その辺の女子格闘家と違うパンチ力を持っていると自分的には思うので、普段の練習から殴られ慣れる必要があると思います」
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若い者がどんどん上に行く時代、自分の役目は果たす
――ところで、グランプリのメンバーに選ばれるかもしれないという話はいつ頃からありましたか。
「今年入ってからぐらいです。何人なのか、コロナの関係でいつやるかも分からなくて、選ばれなかったらどうしようと思いました。同じ階級にメイさん(V.V Mei)がいるので、キャリア的にメイさんが選ばれるのかなと思っていたら、自分が選ばれたので、嬉しいです」
――メイ選手はランカーですが、ご自分が選ばれて驚きもありましたか。
「そうですね。1つの国からは(出場が)1人になるのも知らなくて、自分だけが選ばれてました。この間の『Road to ONE:Young Guns』のように、若い者がどんどん上に行く時代だと思うので、突っ走っていきたいです」
――「メイ選手が選ばれた方が良かった」と言われないように?
「そうですね。でも、前回のONEもですけど、今まで自分はいい試合をしてると思うので、必ず盛り上げるじゃないけど、自分の役目は果たすので、そこは絶対言わせないようにします」
――日本代表という気持ちもありますか。
「そうですね。みんなそう言ってくれるんで。プレッシャーというか、日本で1人しか選ばれないのはすごいことなんで、自信になるというか、みんなが応援してくれるので力になります」
――優勝へのキーポイントは何になると考えていますか。
「打撃もそうですけど、柔道だけにこだわらないで、レスリングもグラップリングもやって、全てをバランスよくやる選手はなかなかいないんで、そこがキーかなと思います。ただ、格闘技はなにがあるか分からないので、みんな優勝候補だと思っています」
──ところで、ブラジリアン柔術の練習も最近、始めたようですね。楽しいでしょうか。
「すごく楽しいんですけど、早く白帯から青帯に上がりたいです(笑)」
──これまでの格闘技のキャリアの中で、一番の学びは何ですか?
「最後まで諦めない、疲れた時に“もう一回”っていうのが凄い大事だなっていうことですね。それは、練習も試合もですけど。前回の試合では、そこが少し甘くて、最後に自分の投げに頼ってしまったので、今は最後まで練習をやりきるってことを気をつけています」
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チャンピオンになったら、その日付をタトゥーにしたい
──2月22日の「Road to ONE」ではメインを務めました。次は5月28日の女子のみの大会「ONE: EMPOWER」で戦いますが、女子格闘技を通じて、日本のファンや世界中のファンたちに自信や希望を与えられると思いますか。
「もちろん、与えられると思います。このグランプリは世界中が注目しているので、そこは凄い大きなことだと思います。女は強いぞってところを見せたいと思います」
――次の試合で見てもらいたい点は?
「自分のファンは海外の人が多いんで、おとなしい試合よりかは、激しくぶつかり合う試合をしたくて、自分の気持ちの強さを見てもらいたいです」
──これまでの試合は全てフィニッシュしていると思います。連続フィニッシュの記録は平田選手にとって大切ですか? それを女子アトム級ワールドグランプリでも続けていきたいですか。
「大事だし、判定よりかはフィニッシュの方が自分でも納得できます。グランプリでも勝ち続けるためにも、しっかりフィニッシュを狙いたいです」
──女子アトム級ワールドグランプリの初戦に勝ったら、どんなタトゥーを入れる予定ですか。
「もし、グランプリでチャンピオンになったら、その日の日付をタトゥーにしたいので、グランプリの1回戦、2回戦では入れずにチャンピオンになるまでお預けしようかなって思っています」
──若松佑弥選手が、4月22日の「ONE on TNT 3」に出場します(※上久保周哉も出場決定)。同世代の選手が同じONEで戦っていることはモチベーションになりますか。また、「ONE on TNT」でほかに気になっている試合はありますか。
「若松さんは親交が深いので、良いモチベーションになっています。自分の試合の前に若松選手のTNT大会での試合を観て、自分の試合までのモチベーションもすごい上がるなと思います。ほかに気になる試合は、若松選手もそうだし、デメトリアス・ジョンソン選手もそうだし。やっぱアメリカの地上波って凄いいいなって思うし。自分の相手もアメリカ人なので、アジアだけでなく北米の方にも自分の名前が知られるっていいなあって、羨ましくも思っています」――平田選手から見た女子の格闘技の魅力はなんでしょうか。
「格闘技って男の人のものっていうイメージがあるんですけど、女子の選手でこうやって戦って、かっこいい姿を見せられるってところは一番魅力的で、普段とは全然違う自分になれるところも好きです。格闘技を好きでやっているってところも。それを一般の女性からかっこいいって言われるのが結構好きなので、そこは魅力があるなと思います」