成長していないわけがない(井上)
一方の井上直樹は、RIZINのツイッターで「(石渡に)行くって決めていました。1回フラれているんで。扇久保(博正)さんの所にも行きたかったんですけど、まあ先にこっちかな」と、石渡を指名したいきさつを説明。
また、大沢ケンジのYouTubeチャンネルでは、「いまのトップの朝倉海選手、扇久保博正選手、石渡伸太郎選手のなかなら誰でもいいと思っていました。ただ単に強い選手とやれるなら、と。去年の8月の試合後に指名させてもらったんですけど(石渡の怪我で)叶わなくて、いまなら出来ると思ってそこに行きました。扇久保選手ともやりたいとは思ってたんですけど、先に……順番に倒していけば、と思って」と、RIZIN無敗らしく、穏やかな表情ながら「順番に倒していけば」という、恐るべき自信の言葉で、元王者および四天王との対戦を語っている。
石渡の印象を「いつもすごい面白い試合をして、扇久保選手ともバチバチに殴りあってタフで、寝技も打撃も出来るから、やったら両方で面白い」と言い、「自分のモチベーションにもなる。試合に向けた練習も気合が入る。魅せる試合が出来たら」と抱負を語る井上。
BeWELLジムに出稽古も敢行し、志朗とスパーリング。那須川天心と接戦を繰り広げた志朗から打撃技術の向上を賞賛され、永末"ニック"貴之氏とのフィジカルトレーニング、水垣偉弥とのパーソナルレッスンも重ねることで、急激な成長を遂げている。
石渡戦は「去年から言っていることなので、去年よりも自信があります。別の練習を増やしたので、成長していないわけがないと思います」ときっぱり。
3月6日に米国ラスベガスで開催されたUFCでは、同門のアルジャメイン・スターリングが、UFC世界バンタム王座のベルトを巻いた。
まだ23歳の若武者は、「アルジャメインは滅茶苦茶強い。スパーリングしても、まだ敵わないなというところがある。メラブ・ドバリシビリ(バンタム級12位)もいて、強い選手が集まっている。米国にも戻って練習して、どれだけ通用するのか試したい。日本にやる相手がいなければ、自然と海外になってしまうと思う」と、RIZINで頂点を極め、UFC再挑戦も諦めてはいない。
そんな井上を相手にする石渡も、格闘技を諦めてはいない。36歳でプロ38戦を戦ってきた強豪は、練習仲間の斎藤裕に、「どんな立場にいてもいつも崖っぷち。いつが限界でもおかしくない。次が最後でもおかしくない。それがいつになっても、覚悟はしています」と復帰戦に向けた決意を語っている。
「相手は23歳、自分を試すのに一番いい相手で、自分が試される。“石渡も歳だしもう落ちてるだろう”となるのか、“まだ強い”となるか。井上選手を倒したら誰も文句を言わない」と“決戦”に闘志を燃やした。
盟友・斎藤裕に語ったファイター石渡の想い、静かな口調で、充実の進化を語る井上の動画は、それぞれのYouTubeチャンネルで公開されている。
バンタム級GP最大のカード、石渡伸太郎vs.井上直樹。「漢気塾長」が健在を示すか、「摩天楼の旋風」がこのまま上昇気流に乗るか、注目だ。