MMA
インタビュー

【UFC】難攻不落の王者ウスマンに元柔術世界王者のバーンズが挑む。「ウスマンの強みは5Rやり切れること」「バーンスの寝技が突破口になるかも」(高阪剛)=2.13『UFC 258』

2021/02/12 10:02
 2021年2月13日(日本時間14日)、米国ネバダ州ラスベガスのUFC APEXにて、『UFC258』が開催される。  メインイベントは、王者カマル・ウスマン(ナイジェリア・33)がランキング2位ギルバート・バーンズ(ブラジル・34)の挑戦を受ける、ウェルター級タイトル3度目の防衛戦。  UFC史上初のアフリカ出身王者のウスマンは、NCAAディビジョン2で1度優勝し、オールアメリカンに3度選出されたレスラー。2012年にMMAプロデビューし17勝1敗。2戦目で一本負けを喫したものの、以降は16連勝。2015年にUFCに参戦し、オクタゴンで12勝をマークしている。  2019年3月にタイロン・ウッドリーを判定で下し、ウェルター級王座を獲得すると、同年12月にコルビー・コヴィントンを5R 右ストレートでパウンドアウト。2020年7月にはホルヘ・マスヴィダルも判定で下し、2度の防衛に成功している。  対するバーンズは、12歳から始めた柔術で、2011年のムンジアル黒帯レーヴィ級決勝でクロン・グレイシーを破り優勝。2012年プロMMAデビューし、7連勝でUFCと契約。2014年からUFCに参戦し、12勝3敗。2018年7月のダン・フッカー戦の1R KO負けを機に、2019年8月のアレクセイ・クンチェンコ戦でライト級からウェルター級に転向。グンナー・ネルソン、デミアン・マイア、タイロン・ウッドリーも下すなど、6連勝中(ウェルター級4連勝)だ。  ウスマンとバーンズは、サンフォードMMAでの練習仲間(ブラックジリアンズ、コンバット・クラブ、ハードノックス365、サンフォードMMAでともに練習)。現在はウスマンが練習場所を変えて、タイトルマッチに向けて別々に練習しているという。  この試合の見どころを、WOWOW『UFC -究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”高阪剛氏に語ってもらった。 ――『UFC258』のメインは、約8年間無敗の王者カマル・ウスマンが、元柔術世界王者ギルバート・バーンズの挑戦を受けるウェルター級タイトル戦ですが、この一戦を高阪さんはどう見ていますか? 「自分はこの試合、楽しみにしているんですよ。個人的にバーンズの戦いっぷりが好きで。大雑把に言うと、ガチャガチャといろんな攻撃を仕掛けながら、相手を自分のペースに巻き込んでいって勝っていますよね」 ――パワフルな打撃でアグレッシブに攻めていきます。 「最近のMMAは、スタンドの打撃も丁寧だし、組んでも無駄な体力を使わないようにしながら最短距離で勝利を目指すような風潮がある中で、その流れに反するやり方でタイトルマッチまで漕ぎ着けたのは、たいしたもんだなと。もちろん寝技は一級品だし、倒す打撃の技術も高いんですけど、小さくまとまらないところが、好感が持てます」 ――これまでの「柔術世界王者」のイメージとは違い、柔術でありながら「柔」ではなく、どちらかといえば「剛」という。 「最終的な拠り所は、寝技や組みついたシチュエーションにあると思いますけど、自分のフィジカルの強さを活かして、打撃の爆発力でもしっかりKOできるぞ、という試合をしています」 ――王者ウスマンは、それとは対照的です。ミスをせず、相手の良さを封じ込める、負けないチャンピオン。 「自分はミスをせず、相手のミスを誘うというかね。非常に高いレベルで、計算された戦い方をしますよね。ウスマンはスタンドで絶対に中途半端な距離には立たないんですよ。しっかり、自分の距離を保ち、相手が打撃で前に出てきたら、下手に打ち合わずに、すぐ組み付きにいくので。相手からしたら、いいリズムで打撃が打てそうな距離にさせてもらえないんです」 ――胴タックル、クリンチがうまいから、連打を許さないと。 「そしてリーチが長いので、スタンドではまずジャブで結界を張って、相手をなかなか中に入れさせないし、前に出てきたらすぐに組む。その繰り返しで、相手は何もやれることがなくなっていくんです」 ――そして組んだら得意のケージレスリングに持ち込んで、相手の力を無力化するわけですね。 「あと、重要なのはスタミナですよね。組みついて削っていくということを、何度もできるだけのスタミナが相当あるんだと思います。やはり、組みついてのテイクダウンの攻防というのは、かなり自分の体力も使うので、後半のラウンドになるとキツくなってくるんですよ。でも、ウスマンはスタミナがあるのと、力の使い方がうまいから、5ラウンドの最後までやることができる。もしかしたら、そこが一番の強みなんじゃないかと思いますね。あれをやられると、最後、疲れてしまった相手は“もうどうにでも料理してくれ!”っていう状態になってしまうんです」 ――2019年12月に最強のチャレンジャーと目されていたコルビー・コヴィントンをKOしたのも、最終5ラウンド後半でした。 「コヴィントンもかなりスタミナがあるはずなんですけど、最終的に削られたことで、ウスマンのストレートをもらってしまった感じでした」 ――そんな難攻不落のウスマンと、バーンズはどう戦うと思いますか? 「ウスマンを攻略するというのは、バーンズに限らず、本当に大変なことだと思うんですよ。それぐらい隙がないし、コンディショニングも素晴らしい。それを前提として自分の希望的なことを言わせてもらうと、バーンズは組まれたあと、逆にカウンターで寝技を仕掛けてほしいんです。というのもウスマンが、ハファエル・ドス・アンジョスと試合をしたとき(18年11月)、不完全ではありましたけど、下から腕を極めかけられているんです。結局、ウスマンは自分の身体能力でしのいで、スイープの形にもならなかったんですけど。もしかしたら、そこが一つの突破口になるんじゃないか、と思うんです」 ――バーンズには、下のポジションからのサブミッションを狙ってほしい、と。 「ウスマンは、テイクダウンを奪ってからのトップコントロールにはかなり自信を持っていて、“ここからは絶対に負けることはない”と確信しているフシがあるんですよ。逆に一番安心している状態で、“こうきたか!”というものが仕掛けられると、意外とモロいんじゃないか……という希望的観測になってしまうんですが(笑)」 ――穴がないウスマンも、それぐらいの穴はあってほしい(笑)。でも、それができるとしたら、柔術世界王者のバーンズなんじゃないかと。 「そこには可能性があるんじゃないかと思うんですよね。もし、自分がバーンズのチームの中にいて、そういう作戦でいくとしたら、2ラウンド目など早い段階でやりますね。後半になると削られて疲れるし、汗で滑ることも考えられるので。1ラウンド目で極めるのは難しくても、2ラウンド目なら……。今回のマッチアップを考えると、“どうやったらウスマンを攻略できるか?”みたいな感じで、どうしてもバーンズ寄りの考えになってしまうんですけど(笑)」 ――それぐらい難攻不落な存在ということですね。 「あと、ウスマンもバーンズも、前王者タイロン・ウッドリーと対戦しているというのも、ひとつのポイントだと思いますね。ウッドリー戦で比べると、組みついて相手の光を消す戦いをしたウスマンに対し、バーンズはスタンドの打撃でアドバンテージを奪っているんですよね」 ――1ラウンドにダウンを奪って、KO寸前に追い込んでいます。ウッドリーもウスマンと同様に、元レスリングのトップ選手で守りが強い、いわば同タイプです。そういう選手に完勝しているのは、バーンズにとって精神的なアドバンテージにもなるんじゃないですか? 「ウッドリーに勝ったという実績は、ウスマン戦を前にすごく大きなことだと思いますね。バーンズは、あの試合で“自分の戦い方は間違ってないんだ”と確信したと思うんです。あのウッドリー戦をベースにして、ポイント、ポイントで攻勢点を取っていけば、可能性はあると思います」 ――ウスマンvs.バーンズは、昨年7月に一度流れたことで、バーンズにとっては、より王者を研究することができたとも思います。 「だから長期政権を築こうとしている盤石なウスマンを、攻略できる選手がいるとしたら、バーンズかなと思いますね。ウェルター級の上位ランカーを見ても、他になかなか見当たらないですから。あるとすれば、注目株であるカムザット・チマエフ(現在ランキング15位)が、今後、ガンガン上がってきたら、分からないかなというくらいで」 ――では、ウスマンが本格的に長期政権を歩み出すのか、それともバーンズが新王者となって、ウェルター級が戦国時代となるのか。この階級の今後を大きく左右する試合になりそうですね。 「そう思います。また、バーンズはここでタイトルを逃すと、また次のタイトル戦まで順番が後ろに回されますから、本当に勝負ですよね。だから、バーンズがタイトル奪取のために、どんな戦いを仕掛けるのか、それによって王者ウスマンの新しい面が見られたりもするのか。自分も楽しみにしています!」(取材/文・堀江ガンツ、写真・Getty Images) 【放送スケジュール】 『生中継! UFC‐究極格闘技‐UFC258 in ラスベガスウェルター級王者ウスマン、3度目の防衛戦!』 2月14日(日)午後0:00[WOWOWプライム]※生中継(WOWOWオンデマンドで同時配信) 2月22日(月)午前10::00[WOWOWライブ]※リピート(WOWOWオンデマンドで同時配信) 【メインカード】 ▼UFC世界ウェルター級選手権試合 5分5Rカマル・ウスマン(ナイジェリア)ギルバート・バーンズ(ブラジル) ▼女子フライ級 5分3Rメイシー・バーバー(米国)アレクサ・グラッソ(メキシコ) ▼ミドル級 5分3Rケルヴィン・ガステラム(米国)イアン・ハイニッシュ(米国) ▼ライト級 5分3Rボビー・グリーン(米国)ジム・ミラー(米国) ▼ミドル級 5分3Rジュリアン・マルケス(米国)マキ・ピトロ(米国) 【出演】解説:高坂剛、堀江ガンツ実況:高柳謙一
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