MMA
インタビュー

【ONE】65kg日本人世界最高位・佐藤将光「腹の底では“ふざけんなよ、なめんなよ”と。日本の格闘技が世界的に下に見られている」=2月5日(金)

2021/02/02 13:02
 2021年1月22日(金)に、シンガポール・インドアスタジアムで開催されたONE Championship「ONE: UNBREAKABLE Ⅲ」にて、事前収録された日本人2選手の試合が、2月5日(金)21時30分から、ONE公式アプリ「ONE Super App」や「ABEMA」にて配信される。  ONEバンタム級で佐藤将光(日本)がファブリシオ・アンドラージ(ブラジル)と対戦、ONEストロー級で澤田龍人(日本)がロビン・カタラン(フィリピン)と対戦する。  33歳にしてMMA35勝16敗3分1NCというベテランの佐藤は、PANCRASEから修斗を主戦場に2017年に第10代世界バンタム級王座を獲得。2019年5月よりONE Championshipに参戦し、マーク・アベラルド(ニュージーランド)、ファン・チャンファン(韓国)、ハファエル・シウバ(ブラジル)、クォン・ウォンイル(韓国)相手に負け無しの4連勝。全試合を2Rまでにフィニッシュしている。  現在、ONEバンタム級2位につけており、2020年12月には修斗世界バンタム級王座を返上、ONEバンタム戦線で王座獲得を目指しているが、そんな佐藤に組まれた相手は、ランキング外のファブリシオ・アンドラージ(ブラジル)。 “ワンダーボーイ”と呼ばれる23歳のアンドラージは、タイガームエタイ所属で立ち技の「Kunlun Fight」や「WLF(武林風)」で活躍。2020年7月のONEデビュー戦では、佐藤と2Rまで戦った強打者アベラルドを同じく2R、リアネイキドチョークで極めている強豪だ。  現在、ONEバンタム級ランキングは、  王者 ビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル)  1位 ジョン・リネカー(ブラジル)  2位 佐藤将光(日本)  3位 ケビン・ベリンゴン(フィリピン)  4位 ユサップ・サーデュラエフ(ロシア)  5位 上久保周哉(日本)  と日本人2選手がトップ5に入っており、4連続フィニッシュの佐藤は王座戦線にからんでもおかしくない状況だったが、UFCで16戦12勝4敗のリネカーが、ムイン・ガフロフ、ケビン・ベリンゴン相手に2連勝したことで、佐藤を飛び越えて一気に1位に。今回、佐藤はランク外でノーリスクのアンドラージにチャンスを与える形となった。見方によっては、日本人ランカー潰しのカードと言ってもいい。  そんなイキのいい新鋭アンドラージを約1年ぶりの試合でぶつけられた佐藤は、「とりあえず試合が決まってくれて良かったなというのはあります。勝っていけばいいだけなので」と、淡々と語る。  しかし、リネカーがランク上になるなど、ONEでの日本人選手の存在感について聞くと、「世界的に見て、ジョン・リネカーのほうが僕より全然名前あるし、ビビアーノとぶつけてどっちが面白いかといったらリネカーなので、そういう風には取れますけど、腹の底では“ふざけんなよ、なめんなよ”というのはあります。僕がこれから勝っていけば──世界的にちょっと下に見られちゃっていますけど──日本の格闘技で実績を積んだ選手たちが、これから活躍していけばまた評価は取り戻せると思うので、そういう気持ちで臨みます」と、日本代表の矜持を見せた。 [nextpage] 10月からずっと毎月試合があるつもりで準備していました ――2020年1月にクォン・ウォンイルに1R、リアネイキドチョークで一本勝ちしてから1年ぶりの試合となります。この1年間はどういった気持ちで過ごしてきましたか。 「もうすごいずいぶん昔に感じて、その頃の気持ちとか、今はもうあんまり覚えてないですけど……昨年9月頃に、10月くらいからONEが世界大会を復活する、また世界各地から集めて大会を行うというのを聞いて、もう10月に出るつもりでずっと準備していました。でもそこからダラダラと、なかなか試合が組まれず、なんとか今回、1月になって試合組んでもらえたので、10月からもうずっと、毎月、試合があるつもりで準備していたという感じです」 ――この1年間のトレーニング内容は? 「トレーニングに関してはほとんど変わっていないです。1回目の緊急事態宣言(2020年4月7日)のときに出稽古をやめて、自分たちだけで、いつもウチに来てくれるメンバーだけにして、出稽古に行かないようにしてやるというのは2カ月ほどあったんですけど、それ以外はメニューとかはさほど変わらず──新しい技術を見たら採り入れてやるというのは前からやっていることなので──そんなに練習の内容を変えたというのはあまりなかったですね」 ――10月から毎月、試合が組まれるかもしれないと準備してきた、その間の集中力の維持は大丈夫でしたか。 「練習に関しては問題ないですけど、なかなか決まらないもどかしさみたいなものはありましたね。もやもやした中で、(先が)見えない中でやっているというのは。スイッチを入れているんですけど、いまいち……やっぱり決まるともう一段階入るというか、自分ではそのつもりでも、いざ決まるともう1個スイッチが入るというのはありました」 ――今日のスパーリングを拝見すると、FIGHT BASEでの練習では、大きな人・小さな人、女子選手も含め、様々な相手といろいろな形で試しているように感じました。 「練習相手が限られているので、来た人で回していて。練習ではスタイルを変えるのがスタイルというか。やっぱりやりにくいところでやるという。コイツにはこれがハマるな、みたいな、かち合ったときに、これいけそうだなと、どんどんハメていく、そういう感じでやっています」 ─―前回の緊急事態宣言下は出稽古を控えていたというのはありましたけど、その後の再開で、KRAZY BEEのメンバーの変化があり、出稽古での影響はありませんでしたか。 「KRAZY BEEはしばらく行けてなくて、ちょうど年末年始休みで、練習相手が少なくなったので、高橋遼伍さんに連絡を取ったら、『やるなら動きますよ』と言ってくれて。1月2日から練習させてもらったんです。『今後も行けるタイミングで行かせてください』という感じで、若手とかもいっぱいいて羨ましいなと。あそこは練習相手に困らないなというのは感じました」 ――「練習後ですでにウエイトリミット」とつぶやかれていましたが、体重に関しても問題なさそうですね。 「もともとあんまり体重が増えなくなって、67~68kgくらいでずっと平均していて、試合前で追い込んで練習後だとリミット切ってアンダー500gという感じなので、このままでいいかなと思っています」 ――隔離生活もあるシンガポール入りは? 「土曜日の便で入って、その次の金曜日に戦うスケジュールですね」 [nextpage] 僕が勝っていけば、日本の格闘技の評価を取り戻せる ――今回の対戦相手のァブリシオ・アンドラージは、ONEで1試合を行っています。印象は? 「ONEで僕が初戦でやったマーク・アベラルドと対戦していますが、オファーが来る前に見たときも“強い選手が来たな”とは思ってはいました。ストライキングはやっぱり強いですね。元々ムエタイをやっていて、総合(格闘技)は2試合見たんですけど、打撃でプレッシャーをかけて、相手が逃げのタックルに来たところを潰してバックを取って、チョークみたいな展開が多い。基本は打撃の選手で、距離感が上手いのと、下がりながら打てるので、なかなか距離を潰しにくいなというのはあります。テイクダウンを取って殴ったり、打撃でも勝負ができるとは思ってやっています」 ――ストライカーとはいえど、仰る通り、バックテイクはスムーズでした。 「タイガームエタイで練習をしているので、ある程度はやっているんだろうなと思うんですけど、総合ってそんなすぐ出来るものじゃないと僕は思っているので、絶対穴は出てくると思います。そこは自信を持って、僕は十何年、総合をやっているので、大丈夫だと思って、一発に気を付けてやろうかなと思っています」 ――佐藤選手にとってはどんな位置付けの試合になりますか。 「まず、絶対落としちゃいけない試合というか、今、ONEに出ている日本人で、タイトルに一番近いと言ってもらえて、日本でのONE Championshipを盛り上げるという部分でも、期待を持ってもらっているので、そこに乗っかって一緒に盛り上げていければいいなとは思っています。ここで落としちゃうと一気に僕の価値が落ちるというか、そこまでの選手で終わっちゃうので、絶対に落としちゃいけない。そういうプレッシャーは持っています。今年、絶対にタイトルに繋げないとという気持ちは、周りの期待や、応援してくれる人もいてもらえてるので、そこは勝手に背負って、今回の試合は戦おうと思っています。  でも、期待を受けて必ず勝つという気持ちのなかで、1戦は1戦なので、そこに自分のウエイトを置くというよりかは、自分は変わらず、いつも1戦1戦を大事にやっていかないと足元をすくわれちゃうので、しっかりこの1試合に勝つということだけを考えて、残りの試合までの期間はやっていこうと思っています」 ――チャンピオンシップが決まってくれないか、という気持ちはありませんでしたか。 「(タイトルマッチが)“決まってくれよ”は無かったですけど、“試合はまだかな”というのが……“なんか渋ってんのかな、ちょっとトラブってなかなか組まれないのかな”というのはありました。ONEのグローバルがどういう動きをしているのかが、まったく見えないので、勝手にそういう風には思っていて、試合がなかなか組まれないなか、直接話せるなら話したいなと思っていました」 ――正直、この対戦相手が決まって映像を見ながら、歯がゆさを感じました。バンタム級2位の佐藤選手がこの選手をぶつけられなくてはいけないのかと。佐藤選手のなかではそういう思いはありませんでしたか。 「……とりあえず試合が決まってくれて良かったなというのはありますね。勝っていけば良いだけなので」 ――自分よりランク上の選手と対戦したい、という気持ちは……。 「欲を言えば、くらいで、何よりやっぱり試合がしたいというのが大きいです。ランキングはあってないようなものなので。ただ……やっぱりビビアーノとかリネカーとかベリンゴンとかとはやりたいなというのはありますね。今回もいざ決まったらマジかって、一瞬落ちますけどね、なんか。でも試合はやりたいなとは思いますから」 ――アンドラージのビデオを見たら、ONEでは終始サウスポー構えでしたが、WLFではオーソドックスでタフに戦っていました。左右どちらでも戦えて、思った以上に危険だと。ONE本国では、いきなり上位ランカーに当てて売り出したいのかなと勘繰りました。あのスイッチする打撃に関してはどういうふうに見ましたか? 「上手いですよね、打撃は。やっぱりスイッチするので、距離を図りづらいなというのはあると思います。あとはプレッシャーが強いですね。独特のリズムと、ステップを踏みながら右左を踏んで、相手をよく見ている。ストレートなのか、ミドルなのか、フックなのか、散らしながら、相手の体勢を崩していって、崩れたところをまとめるみたいなのは上手いなとは思いますね」 ――ノーモーションの左もあり、下がりながら打てて接近戦ではヒジも使う。佐藤選手の得意な前進しての打撃やゼロ距離の打撃の良さに対抗できる選手と感じました。そこはMMAで上回ることになりますか。 「そうですね。もう誰が相手でも、相手より有利なところで戦うのと、相手が嫌なことをどんどん狙っていく。もちろん打撃で勝負しながら、打撃でいけそうだったら打撃でもいきますし、打撃で勝負しながらテイクダウンにも行ったり。下になるのも今回はありかなと思ってたりはしています。相手に武器はある。相手の強いところにハマっちゃうとやられる可能性はありますよね。でも、総合格闘技をやれば僕らは勝てる」 ――先ほど「渋っているのかな」という一言もありましたけど、UFCからジョン・リネカーがONEバンタム級に入ってきて、その存在についてはどのように考えていますか。 「やっぱり世界的に見て、ジョン・リネカーのほうが僕なんかより全然名前あるし、ビビアーノとぶつけてどっちが面白いかといったらリネカーなので、そういう風には取れますけど、腹の底では“ふざけんなよ”という“なめんなよ”と。僕がこれから勝っていけば、日本の格闘技──世界的にちょっと下に見られちゃっていますけど──日本の格闘技で実績を積んだ選手たちがこれから活躍していけば、また評価は取り戻せると思うので、そういう気持ちでいます」 [nextpage] ジャッジも選手くらい気持ちを入れてやってほしい ――12月に和田竜光選手がタイのヨッカイカー・フェアテックスと対戦で敗れました。自分は見直しても和田選手が上回っていたと感じたのですが、フィニッシュに近づかないと、敗れる可能性はある。そういう中で、ONEに置いて、日本人選手の存在感が薄れてきているのでは、という危機感も抱きました。今後、ONEで戦ううえで、あの裁定について、佐藤選手はどのように感じましたか。 「うーん……和田さん勝ったとは思いましたけど、正直しょうがないとしか言いようがないですよね、判定出ちゃったので。ただ、思うのは、ジャッジも選手くらい気持ち入れてやってほしいなというのはあります。選手からすると、僕なんかも、今回1年空いて、この1試合に──残り何年できるか分からないですけど──今までやってきたことを全部ぶつけるつもりで試合をするので、ジャッジの人は毎週のように大会があって、(収録のために)何試合も裁くので、多くの試合のうちのひとつで、どれほど集中力を持って見てもらえるのかなと。選手はもうその試合に賭けてやっているので、その気持ちをジャッジも持ってやってほしいなというのは、感じますね」 ――そういう中でも、よりフィニッシュに近づく場面を意識的に見せないといけないと。 「そうですね。アピールは大事ですよね。ジャッジを変えようとしても僕らは変えられないので、チョークひとつ取っても極めに行くアピールも必要になってくるのかなと思います」 [nextpage] 日本のバンタム&フェザーは「盛り上がってる。格闘技が普及してきているから、ONEも頑張りたい」 ――ところで、修斗のベルトを返上したのは様々な思いがあったかと思いますが、あらためてお聞かせください。 「修斗のベルトに関しては、ずっとこのままでいいのかなと思いながら持っていたのがあって、何回か坂本(一弘・サステイン代表)さんに相談させてもらって、『将光が持っていたいんだったら持ってていい』という感じで、悩むところがありました。今、振り返ると、ONEで行くと決めた段階で返上しておくべきだったなとは思いますけど、そのときはそのときで、タイミングを見て、修斗でも試合をしたいなとも思ってたんです。でもONEで勝ちが続いていけばいくほど、なかなか修斗で試合がしにくい状況になって。  僕はONEの方に向いていたので、そんな中で、岡田(遼)選手と倉本(一真)選手がタイトルマッチをやったときに、岡田選手が勝って、あのときに(暫定ではなく)正規のベルトをかけてやっていれば一番良かったんだろうなと思ったんですが……僕がそう言うと無責任だし、“お前が言うなよ”というのもあると思うので、自分からはあまり発言しないようにしていて、そこのジレンマはずっと持っていました。今はもう返上したので気持ちは軽くなりましたけど、このままでいいのかなというのはずっとありましたね」 ――MMAで今、バンタム・フェザー級がかつてないほど注目されている状況です。意識はしますか。 「盛り上がってるな、いいなと(笑)。あっちに行きたいとかは特にはないですけど」 ――そんな中で、一番世界と向き合っている日本人は俺じゃないかという思いもありますか。 「堀口(恭司)選手じゃないですかね、一番盛り上がってるのは。僕はもうONEでトップを目指しているので。その後のことはまったく考えてないです。“俺でしょう”という気持ちはないですね」 ――とはいえ、海外サイトのランキングで、フェザー級(※ONEバンタム級は水抜き無しの65.8kg)で日本人トップは佐藤選手です。今回、世界レベルの佐藤将光というところを示す試合になるでしょうか。 「そうですね。もう振り向かずに行けるところまで行くのが自分の使命だと勝手に思っているので、今年ベルトを持ってこようかなと、思っています」 ――ONEの中で日本代表の強さを見せなきゃいけない、という部分もありますか。 「そこはめちゃめちゃ感じていますね。さっき話した通り、日本の格闘技がちょっと下に見られている感じがあるので、また全盛期を、あの頃には戻れないですけど、でも、どこかやっぱり古い人間なので取り戻したいなと思ってしまいます。日本からも、もっとどんどん出てくると思うんです。今、子どもの頃から格闘技をやっていく子たちがいっぱい出てきてるので」 ――そういう選手たちの目標になれるような存在にと。 「そうですね。やっぱり日本人が活躍しないと、日本で格闘技が盛り上がらないと、子どもも格闘技をやろうとは思わないでしょうから。日本でもRIZINとかがあるおかげでけっこう格闘技が普及してきている感じはしますから、ONEもそこは頑張りたいですよね、僕らも」 ――SNSでは「人生を最高のものにするために格闘技をやっています」と書いておられて、今こうして試合が決まって練習をするということの充実感はいかがですか。 「めちゃめちゃ疲れていますけど、それが最高ですね。やっぱ試合が決まると日々が彩りあるものになるというか、豊かになっている感じはすごくします。イキイキと生きていられる感じはしますね」
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