初戦では、朝倉兄弟に完全に想定の上を行かれてしまった──。堀口恭司が全幅の信頼を置く世界屈指のMMA頭脳は、あの敗戦の衝撃をどう受け止め、再戦に向けいかなる作戦を組み立てたのか? 決め手となったカーフキックの研究は、いつATTで始まったのか?
2020年大晦日の堀口の大復活を喜ぶ間もなく、次なる大一番「1.23 ダスティン・ポイエーvs.コナー・マクレガー」に向けてアブダビUFCファイト・アイランド入りしたATTヘッドコーチ、マイク・ブラウンに存分に語ってもらったロングインタビューが、1月22日(金)『ゴング格闘技』本誌に掲載される。
マイク・ブラウンの証言から、ここでは今週末の『UFC 257』でポイエーのセコンドとしてアブダビ入りした現地の様子と、朝倉海との第1戦をいかに評価したかを紹介したい。
今でもアサクラがどうやってあれを当てたか確信はない
──ブラウンコーチ、多忙ななかで電話取材を受けて下さりありがとうございます。
「ノーブロブレム。こちらこそ光栄だ」
──年末は堀口選手のセコンドに付くために日本。年が明けた現在はコナー・マクレガーとの再戦を控えたダスティン・ポイエーのためにアブダビのファイトアイランド(ヤス島)と、それぞれ隔離期間もありますし、年末年始なのに米国でゆっくりされる暇もなく大活躍ですね。
「自分が今この立場にいることを、ただ感謝しているよ。この上ないグレイト・アスリートたちとともに、ここ数年素晴らしい成功を収めることができているからね」
──ファイトアイランドに来られるのは何度目ですか。
「実はまだ二度目なんだよ。前回はダスティンがハビブ(ヌルマゴメドフ)と戦った時だから、コヴィッド(コロナウィルス感染症)が流行る前だ」
──ヤス島はUAEが誇る超豪華リゾート地ですが、そこに早入りして試合の仕上げを行う気分はいかがですか。
「いやそれがねえ……ただでっかいホテルに閉じ込められているって感じだよ。基本的にホテルから出られないし」
──そうか、一定期間隔離状態に置かれるわけですものね。
「ホテルの周りをジョギングすることは許されているんだけど、それ以上動き回ることはできないし、行ける場所もない……まあ、ナイスなホテルではあるけどね」
──(笑)。
「ハハハ。アブダビのホテルは、ニューヨークや東京のホテルみたいに豪華だからね」
──なるほど。ただ内部にはトレーニングジム等、充実した設備が用意されているのではないですか?
「ん、このアブダビでかい?」
──はい。
「ならノーだ。各ファイターにはそれぞれ一部屋ずつ、客室を改造した練習用の部屋が与えられてはいる。でも小さなマットが二枚敷かれているだけなんだよ」
──それだけなんですか! ATT(アメリカントップチーム)でのような充実した練習はまったく望めないと。
「いやもう、全然だよ」
──自分はファイトアイランドという言葉に「戦う者たちの楽園」的なイメージを抱いていたのですが、大外れなんですね。
「以前は違ったと思うけどね。実際ここで最初にUFCが行われた時はビーチにも行けたし、そこにオクタゴンが設置されてたりしたはずだ。でも今はもうないよ」
──なるほど。当地でのポイエー選手の試合については後でお伺いするとして、まず年末の堀口選手の試合についてお聞きかせください。前回あなたに本誌でインタビューさせていただいたのが、ちょうど朝倉海選手との最初の試合の前でした。
「イエス」
──その時あなたは『カイは危険な相手だが、キョージと打撃で戦うのは恐がるはず。テイクダウン狙いを余儀なくされるだろう』と仰いました。もっともな見解だと思ったのですが、実際には朝倉選手が右のカウンターを当てて世界を驚かせました。あなたにとっても予想外でしたか。
「イエス。僕はそれが誰であれ、キョージからカウンターパンチを取れる選手には驚嘆するよ。至難の技だ。キョージはものすごく速いからね」
──なるほど。
「……いや、今でも彼がどうやってあれを当てたか確信はない。(中略)……ともあれ強烈な一撃が入り、カイがそのままキョージを仕留めたんだ。きわめて高い攻撃力でね。ベリー・インプレッシヴだった。簡単なことじゃない」
──ブラウンコーチの想定さえ上回るような離れ業だったのですね。
「今から考えると……僕はキョージと長いことやってきたからね……」
「キョージがあの敗戦後、どれだけハードに練習に打ち込んでいたか」と語り始めた堀口恭司の復活劇。さらなるインタビューは、1月22日(金)『ゴング格闘技』本誌に掲載される。