「Krush.120」2020年12月19日(土)東京・後楽園ホール
▼メインイベント(第9試合)第6代Krushバンタム級王座決定トーナメント・決勝戦 3分3R延長1R×橋本実生(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)延長R 判定1-2 ※9-10、10-9、10-9〇吉岡ビギン(team ALL-WIN)※吉岡がトーナメント優勝、第6代王座に就く。本戦の判定は29-30、30-30、30-30。
10月に開幕した「第6代Krushバンタム級王座決定トーナメント」の決勝戦は、橋本と吉岡で争われた。
橋本は『格闘代理戦争』卒業生で、デビューから松本日向に連敗を喫したが、3戦目はKO勝ち、4戦目は判定勝ちと調子を上げ、1回戦では藤田和希、準決勝では萩原秀斗に判定勝ちして決勝進出。
吉岡は9勝(1KO)1敗2分の戦績を持ち、3月大会では第4代王者・晃貴から合計3度のダウンを奪って判定勝ちした実績を持つ。1回戦では池田幸司、準決勝では黒田斗真に判定勝ちして決勝へ駒を進めた。
1R、サウスポー同士。吉岡は両腕ブロックをがっちりと固めて、橋本の攻撃に右フックを合わせに行く。橋本は前蹴りを使いつつ、吉岡の返しのフックをガードしてさらに打ち返すが吉岡はブロック。
2Rになると吉岡はオーソドックスに構えを変え、ジャブの突き合いを始める両者。打ち終わりをフックで狙う吉岡に橋本も攻めにくそう。見合いが増えるが、橋本がパンチを打って行くと吉岡がフック3連打を回転させてヒットを奪う。さらにハイキック。橋本も蹴りを返す。
3Rは吉岡が手を出して攻める。左ボディをはじめパワフルなパンチを打って行くが、今度は橋本がそれにフックを被せていく形に。それでも両者やはり手数が少なく、判定はドロー。延長戦へ突入する。
いきなり打ち合いに行く橋本に吉岡もパンチを返す。両者ほとんど足を動かさずその場でパンチを出し合い、カウンターやリターンを狙う。その中で橋本は前蹴り、左ミドルを効果的に当てていく。吉岡はパンチをガードして返しのフック。
甲乙つけがたい内容となったが、判定2-1で勝利したのは吉岡。大接戦を制した。
ベルトを巻いた吉岡は「ファンの皆さんから優勝候補と言っていただけて優勝候補らしい試合が最後までできなかったですが、バンタム級最強の歴代王者たちよりもはるか上の王者になっていきたいと思います」と、これからに期待してほしいと語った。
試合後のインタビューでは「本戦は“延長来い”と思っていました。本戦は手数が少なくて負けていた部分もあったし、決勝で延長行ったらお客さんが喜ぶと思ったからです。延長に行ったら自分が勝つと思っていましたね。ジュニアの時からスタミナで負けていてそこが弱いところだったので、スタミナは強化していたので。橋本選手はガードが堅かったのでその隙間を抜いていってポイントで勝とうと思って、自分はガードして当てさせないようにして自分は当てていたので、自分が勝ったと思いました」と振り返った。
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▼セミファイナル(第8試合)Krushフェザー級 3分3R延長1R〇斗麗(WIZARDキックボクシングジム)KO 1R 2分46秒 ※3ノックダウン×稲津航大(K-1ジム琉球チーム琉神/RKAフェザー級王者)
斗麗はオランダの名門Mike's Gymでも練習を重ね、2018年12月に16歳の若さでプロデビュー。3連勝で「K-1 WORLD GP第3代フェザー級王座決定トーナメント」のリザーブファイトに抜擢され、江川優生とKrushフェザー級王座を争ったTETSUに勝利。3月には伊澤波人をも初回KOに破った。5勝(2KO)無敗。
9月に開幕した「第5代Krushフェザー級王座決定トーナメント」にエントリーされ、優勝候補と目されていたが、右手首キーンベック病(手首の月状骨がつぶれて扁平化する病気)で全治2カ月のため無念の欠場。今回が復帰戦となる。
対する稲津は元々沖縄で活動していたキックボクサーで、沖縄のRKAフェザー級王座にも就いた。今年になってからK-1ジム沖縄所属となり、K-1ジム琉球所属のプロ選手としては代表の小鉄を除いて初めての参戦となる。戦績は11勝(3KO)5敗4分。
1R開始と同時に飛びヒザ蹴りの奇襲をかける斗麗。サウスポースタイルからスピードとバネのある右ハイ、右ミドルを蹴っていく。スピードに圧倒される稲津だがパンチを返していくと、頭が下がったところへ斗麗がドンピシャのタイミングで左ヒザを突き上げてダウンを奪う。
立ち上がった稲津は打ち合いに行くが、左フックを空振りしたところへ左フックをもらって2度目のダウン。最後は斗麗が助走をつけて走っての右飛びヒザ蹴り。これが見事に決まり、斗麗が圧倒的な強さを見せてのKO勝ちを飾った。
斗麗はマイクを持つと「応援ありがとうございます。僕は絶対王者になるのでそれまで見逃さないでください」と宣言した。
▼第7試合 Krushスーパー・ライト級 3分3R延長1R〇斉藤雄太(K-1ジム五反田チームキングス)TKO 1R 2分30秒 ※セコンドからのタオル投入×寺島 輝(TANG TANG FIGHT CLUB/team JOKER)
斉藤は2014年9月からKrushに参戦し、海斗、堀井翼、泰斗らと対戦。6月大会では元プロボクサーの大泉翔から延長Rで勝利をもぎ取り、K-1 JAPAN GROUPでの戦績を3勝6敗とした(通算戦績は4勝3KO7敗)。
寺島は極真空手と伝統派空手を学び、2019年4月にKrushでプロデビュー。そのデビュー戦から3勝3KOを達成し、2019年11月には初の国際戦で韓国人選手から判定勝ち。4戦無敗で今年3月のK-1に出場し、山崎秀晃に挑んだがKO負けで初黒星を付けられた。今回が再起戦。
1R、寺島は軽快なステップを踏みながら左右の強打でボディを叩いて左フックにつなげる。パワフルな寺島のパンチと軽快なステップでコーナーへ追い込まれ、ロープを背負う斉藤だったが、勢いに乗って攻める寺島へ右ショートのカウンターを決めてダウンを奪う。
立ち上がった寺島は余裕の表情を浮かべて再び攻めていくが、斉藤のパンチをもらって後退し、打ち合いで斉藤が再び右ストレートでダウンを追加。最後は足元がフラつく寺島にヒザ蹴り、右ストレートを決めると寺島のコーナーからタオルが舞い、斉藤がTKO勝ちを奪った。
この階級のホープと目されていた寺島をKO撃破した斉藤は「今年2試合できたので関係者の方々ありがとうございます。社長ファイターって紹介多いと思いますが、従業員に感謝です。リングの上から感謝の気持ちが伝えられてよかったと思います。みんなが働いている時間に僕は練習できるので。サポートありがとうございます。寺島選手に勝ったら言おうと決めていました。凄い強くて若くていい選手だと知っていたので、勝ったらようやくトップ戦線に食い込めるなと思って臨んだので、2021年はベルトを狙わせてくださいとプロになって初めて言います」と、タイトル挑戦をアピールした。
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▼第6試合 Krushライト級 3分3R延長1R〇東本央貴(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)KO 1R 2分34秒 ※左ミドルキック×鈴木孝司(K-1ジム五反田チームキングス)
東本は2012年9月のKrush初参戦でHIROYAをKOしたことで注目され、Krush・K-1のトップ選手たちと拳を交えてきたベテラン選手。4連敗を喫したが2020年1月に川崎真一朗をKOして復活の雄叫び。3月のK-1では蓮實光の剛腕でマットに沈んだが、8月のKrushではラウェイの金子大輝を1R3分2秒、左フックでKOに仕留めている。町田にハンバーガーショップも経営している“戦うハンバーガー屋さん”。
鈴木は第17回K-1アマチュア チャレンジAクラス -65kg優勝を果たし、2017年9月にKrushでプロデビュー。9月のKHAOSで山下和希に勝利し、戦績を3勝(1KO)5敗1分としている。
1R、サウスポーの東本に鈴木は右ミドル、右ストレート。じりじりと前へ出て左のパンチを繰り出す東本だが、左三日月蹴りで鈴木の動きが明らかに止まる。一気にボディへのパンチ連打でコーナーへ追い詰めた東本は、左ミドルを蹴ってダウンを奪う。
立ち上がった鈴木だがボディのダメージは深く、東本が左ミドルを2連打するとマットに沈んだ。
東本はマイクを持つと「得意のパンチではないですけれどKOすることができました。ゴンナパー選手がK-1獲っちゃって、Krushも持っているけれど2つも持っているのは無理だと思います。Krushのベルトは返上すると思うので、次チャンス下さい」とタイトルマッチをアピールし、「SHOGUN BURGERが明後日2周年になります。お得なイベントをしようと思うのでよかったら来てくださ」と恒例となった経営するバーガーショップのPRで締めくくった。
▼第5試合 Krushスーパー・フェザー級 3分3R延長1R×伊藤健人(K-1ジム蒲田チームアスラ)延長R 判定1-2 ※10-9、9-10、9-10〇三輪裕樹(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)※本戦の判定は28-28×3
三輪は7勝(3KO)13敗2分の戦績。伊藤は9勝(2KO)8敗4分の戦績。
1R、サウスポーの伊藤は序盤から重い左ミドルを何発も命中させていく。三輪も右ローを返すが、伊藤の左右フック、ヒザ蹴りと重量感のある攻撃が目立つ。
2R、三輪の右ローに前蹴りとヒザ蹴りで対抗する伊藤。左ミドル、ヒザ蹴りを始め伊藤の重い攻撃が何発も入るが、タフな三輪は前へ出てきて右ストレート、右フックを当てに行く。
3R、ボディの打ち合いがあり、蹴りを決めていく伊藤だが、三輪は前に出続ける。そしてその執念で、ついに右ストレートでダウンを奪った。伊藤もパンチで反撃し、判定は三者とも28-28でドロー。延長戦へ突入した。
前に出る三輪は右ストレート、左の顔面からボディへのダブルフック。伊藤はヒザ蹴りで対抗する。前へ出る三輪とそれを受け止める伊藤。両者最後まで全力を振り絞っての攻防は判定となり、判定2-1で前へ出て攻め続けた三輪が勝利をもぎ取った。
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▼第4試合 Krushスーパー・フェザー級 3分3R延長1R×佐野純平(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)KO 1R 2分20秒 ※左フック〇赤田功輝(K-1ジム川口TEAM SIRIUS)
佐野はK-1カレッジ2017 -65kg王者で、2017年12月にKrushでプロデビュー。これまでに3勝(2KO)4敗2分の戦績を残している。赤田は10月の『Krush-EX 2020 vol.2』でデビューし、『格闘代理戦争』出身の大関敬真に逆転の初回KO勝ちを収めた。
1R、サウスポーの赤田はどっしりと構え、右手を伸ばす独特の構えから左ストレート&フックと左ミドルだけの攻撃。押すような左フックで最初のダウンを奪うと、左のパンチを連打して突進し、2度目のダウンを奪う。
佐野はワンツーで対抗してペースを取り戻すかに思えたが、赤田が右ローに左フックを合わせて3度目のダウンを奪い、独特すぎる戦い方でKO勝ちした。
赤田はマイクを持つと「今日の大会で初KOだったんですが、どうですか、面白かったですか。この場を借りて言いたいことがあります。ライト級からスーパーフェザー級に落として初めての試合。武尊選手と戦いたくてこの階級に来ました。今だと口だけなので批判されてもしょうがないです。でも今後の僕を見ていてください。今言ったことを実現させます」と大胆にアピールした。
▼第3試合 第6代Krushバンタム級王座決定トーナメント準決勝(2)3分3R延長1R〇吉岡ビギン(team ALL-WIN)判定3-0 ※30-28×2、29-28×黒田斗真(K-1ジム心斎橋チームレパード)※吉岡が決勝へ進出。
黒田は4勝(2KO)1敗1分の戦績で、K-1 JAPAN GROUPの試合では晃貴に敗れたのみ。1回戦ではK-1甲子園2018 -55kg王者・多久田和馬を降した。
1R、両者サウスポー。手を先に出していくのは黒田でジャブと蹴りを多用。吉岡はその打ち終わりに左右の大きなスイングのフックを合わせにいく。
2Rもお互い慎重。ロー、ミドルの蹴り合いもあるが、見合う時間が長い。黒田はその中でジャブ、左ローを蹴っていく。吉岡は左ハイを放つが空振り。
3Rも両者慎重で手数の少ない展開となったが、残り30秒で吉岡の放った左ハイで黒田がダウン。立ち上がると左ローで攻める黒田だが時間は少なく、ダウンを奪った吉岡が決勝へ駒を進めた。
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▼第2試合 第6代Krushバンタム級王座決定トーナメント準決勝(1) 3分3R・延長1R×萩原秀斗(K-1ジム総本部チームペガサス)判定0-3 ※28-30×2、29-30〇橋本実生(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)※橋本が決勝へ進出。
萩原はエントリー選手の中で最もキャリアがあり戦績は10勝(3KO)15敗3分。2019年1月には第4代Krushバンタム級王者・晃貴に挑戦したタイトルマッチ経験者(判定負け)。また、2019年7月には前王者の佐々木洵樹とも対戦している(KO負け)。1回戦では峯大樹から勝利を収めている。
1R、圧力をかけて前に出るサウスポーの橋本に萩原は右ミドルを多用。橋本の左フックがヒットすると萩原もすかさず右ストレートを打ち返し、左フックと右ストレートの打ち合いも見られた。 2R、前蹴りを多用する橋本はボディと顔面のコンビネーションをフル回転。萩原もすかさず右ストレートを打ち返す。左右フックの強い一発を放ってくる橋本に対して、連打を返す萩原。萩原は自分の攻撃で終わるように意識。
3Rは左ミドルを多用する橋本。萩原が蹴ってくると必ずパンチをリターンさせ、ついに右フックが萩原を捉える。パンチの回転力のスピードで優る橋本は一気に左右フックで前へ出てヒットを重ねていき、萩原もワンツーで応戦するが橋本の勢いが優る。萩原は右ハイを放つも起死回生ならず、橋本が判定勝ちで決勝へコマを進めた。
▼第1試合 第6代Krushバンタム級王座決定トーナメント・リザーブファイト 3分3R延長1R〇池田幸司(ReBORN経堂)判定3-0 ※30-27×2、30-28×鵜澤悠也(K-1ジム五反田チームキングス)※池田がリザーバーに決定。
1R、ローの蹴り合いからスタート。蹴り主体の池田は左右のミドルとロー、サウスポーの鵜澤はパワフルなワンツーと左右フックを蹴りに合わせる。
2R、池田は左ローを狙い撃ち、蹴りからパンチにつなげてヒットを奪う。ボディを攻める鵜澤だが池田のミドル&ローを受ける場面が多く、パワフルなパンチを放っても蹴りで相殺されてしまう。終盤にはお互いにパンチを当て合った。
3R、前蹴りとヒザ蹴りでボディを攻め、三日月蹴りとミドルも蹴る池田。その後の右ストレートも鵜澤の顔面を捉えるようになり、鵜澤は鼻から大量に出血。ドクターチェックを受ける。顔面ヒザで眉間も切れた鵜澤は大流血。池田の左フックでバランスを崩した鵜澤の顔を池田が蹴り上げる形で鵜澤が倒れ、これがダウンとなる。
判定3-0で池田が鵜澤を下し、リザーバーの権利を手にした。
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▼プレリミナリーファイト Krush女子アトム級 2分3R×森川侑凜(サポートスクールグレス)判定0-3 ※27-30×3〇NOZOMI(TAD)
森川は2勝1敗1分のプロファイター。第8回K-1アマチュア全日本大会チャレンジBクラス女子-45kg優勝の実績を持ち、年間表彰式の『K-1 AWARDS 2019』ではアマチュア最優秀選手賞を受賞している。9月5日に開催された『KHAOS.11』にて、優勝者は「夢」を叶えることができるご褒美付きのワンデートーナメント「DREAM KHAOS」で優勝し、「一日ラウンドガールをやりたい」という夢を叶えて9月大会では颯爽とラウンドガールを務めた。
対するNOZOMIは高校1年生で9月に16歳になったばかり。8月に開催された『K-1甲子園』に出場し、女子ワンマッチでしっかりとしたパンチの技術を見せて3-0で判定勝ち。この試合で関係者から高い評価を受け、10月の『Krush-EX 2020 vol.2』でプロデビューを果たした。その試合では軽快なフットワークから飛び込んでの高速ワンツー、圧倒的なスピードと出入りの速さ、そしてカウンターの技術を存分に発揮してダウンを奪っての判定勝ちを収めている。
1R開始と同時にパンチで襲い掛かる森川。前へ出てNOZOMIを面食らわせたが、NOZOMIも前蹴りを多用してペースを取り戻す。森川の突進してのパンチをステップでかわし、左フックと右ストレートを当てていく。前蹴りも連打。
2Rも森川は前へ出るが、NOZOMIがステップで距離取っての左フック、右ストレート、ワンツー。森川が接近すると銅タックルのように組み付き、プッシュするとストレートを見舞っていく。
3R、NOZOMIはタックルから突き放しての左右フックを多用するが、ホールディングで警告を受ける。前へ出る森川のフックをもらいながらも左右のストレートとフックを当てていくNOZOMIだが、やはり組み合ってしまう。それでも突き放してパンチを見舞っていくNOZOMIがフルマークの判定勝ちを収めた。