2020年11月8日(日)東京・後楽園ホール『REBELS.67』に出場する、小笠原兄弟(兄・裕典、弟・瑛作=共にクロスポイント吉祥寺)のインタビューが主催者を通じて届いた。「REBELS-RED(ヒジあり)55・5kg級王座決定トーナメント」で裕典はKING強介(team fightbull)と、瑛作は宮元啓介(橋本道場)と対戦。もし両者が勝ち上がれば、決勝で“兄弟対決”の可能性もある。
宮田プロデューサー就任は衝撃
格闘技界をざわざわさせた宮田充氏のREBELS・KNOCK OUTプロデューサー就任。小笠原兄弟にとっても想定外の出来事だったという。
裕典「びっくりしました。まず『え、どういうこと?』って。『Krush、K-1をここまで大きくした方』で違う島の方というか(笑)。絶対に交わらないだろうと思っていたので」
瑛作「1度会場でお会いしたことがあるだけで全然接点もなかったですし。そういう意味でワクワクしますよね。これからのマッチメイクとかストーリーがどうなるか。山口代表も『ストーリー』を大事にされてて、僕は小さい頃から代表にいろんなストーリーを作って貰って、かなえられてない部分も多いですけど(苦笑)。それで知名度を上げてきて貰った部分は大きいと思うので、そういう意味でこれから宮田さんが新しく引き出してくださるんだろうな、と」
裕典「二人でよく話してたのは、山口代表は『ここに来るか!』と俺たちが思いつかないようなマッチメイクをドンと出してくるのでずっとびっくりさせられてきて(笑)。ここに、さらにストーリーを作るのが上手い宮田さんが」
瑛作「加わるっていう感じなんでしょうね」
裕典「だから、さらに力が増すんじゃないかなって思いますね」
瑛作「選手の僕らもこんなに衝撃を受けてるので(笑)、一般のファンの人たちはすごい衝撃でしょうね」
(写真)KNOCK OUT、REBELSのプロデューサーに就任した宮田氏――しかし、山口代表は思い切った手を打ちますね。付いていく選手も大変ではないですか。
裕典「代表の次の一手がどうなるのか、僕らもまったく分からないですけど『それが代表だ』と思って一緒に育ってきたという思いがあるんです。『次にこう来るか!』でびっくりはしますけど『こういうビックリのさせ方もあるんだ』と思いながら当たり前になってます(笑)」
瑛作「でも結構『えー!』って思うことはあるよね(笑)。それこそ『代表がKNOCK OUTのプロデューサーになる』と聞いた時は『ええー!』ってなったし。
裕典「うん(笑)。でもホントに嫌なら辞めているし、今の流れを受け入れて乗っていくしかないでしょう」
――性格の違いもあるでしょうけど、妻帯者で「まずすべて受け入れる」裕典選手と、独身でどこかに「こうあるべき」がある瑛作選手の違いを感じますね(笑)。
裕典「ああ、なるほど(笑)。それはあるかもしれないです」
瑛作「僕もはやく結婚しないと(笑)」
「きみの瞳が問いかけている」撮影秘話
――お二人は、KNOCK OUT全面協力の映画『きみの瞳が問いかけている』(吉高由里子、横浜流星W主演。10月23日公開)に出演されました。撮影のエピソードを聞かせてください。
裕典「他のみんなは、撮影の前に横浜流星さんと何回か会って、試合シーンの動きを手合わせしているんですよ。ただ、僕だけは試合前だったり、怪我をしてたりがあって一度も合わせられなくて。撮影の時がぶっつけ本番だったんです」
――リング上で初めて! それは大変でしたね。
裕典「それが、逆に試合の時の緊張感にとても近くて、自然な感じで撮影できてすぐ『OK』だったんですよね。他のみんなは1時間以上掛かってましたけど、僕のシーンは40分で終わったんです」
――それは横浜流星さんとのアクションも問題なく?
裕典「そうですね。リングで初めて向かい合ったのに、流星さんが動きをピシっと決めてしまうので。空手の世界チャンピオンになった方なのでさすがでしたね」
――何か会話はしました?
裕典「はじめましてから二言目に『背、デカい……』って言われて(笑)。「そうなんです、この階級では背が高い方でやらせて貰ってます」って(笑)」
瑛作「ハハハ」
裕典「実際に横浜流星さんを見たら、ハンサムだし、いい男だな、って思いましたね」
――瑛作選手はいかがですか?
瑛作「僕が一番流星君に会ってると思います。僕がミットを持って、代表と一緒に流星君にキックボクシングの指導をしたり。試合シーンの手合わせも、ユキ(裕典)が試合前なんで僕がユキ役をやって何度も合わせてて」
裕典「そうだったんだ」
瑛作「そう。流星君には全部覚えて貰って、いつでもユキが入ったら撮影できるまでに仕上げてて」
裕典「めちゃくちゃ怖かったのは、僕が飛び蹴りをして、その下を流星君がくぐるシーンがあって。絶対に当てられないじゃないですか。最初に思い切って飛んだらロープを越えてリングの外に転げ落ちました(苦笑)」
――えええ。怪我は?
裕典「しなかったです。大丈夫でした(笑)」
――瑛作選手が印象に残る撮影エピソードは?
瑛作「僕との試合のシーンが多分『攻防』が一番多いんです。「左フックを打って、蹴って~」って、僕も流れを覚えるのは大変だったんですけど、流星君は他の試合シーンもある中でしっかりと覚えてくるので凄かったですね。あとは『体』ですよね」
――撮影までに10kg増量したのだとか。
瑛作「流星君が一番最初にクロスポイント吉祥寺に来て『キックボクシングを体験してみましょう』という時から僕は見てるんですけど、体が細かったんですよ。正直『これでリングに上がると、映像で見た時に僕やユキと体格差が目立つんじゃないか』と思ったんですね。僕らはトレーニングキャンプ吉祥寺(クロスポイント吉祥寺2階のトレーニングスペース)でずっと鍛えてるので。
――クロスポイント吉祥寺の選手は、脱いだら凄い「細マッチョ」揃いですからね。
瑛作「はい。流星君はキックの蹴りとかパンチのフォームは少し練習すれば問題ないと思いましたけど、筋肉とか体の厚みだけは僕らプロ選手と対峙した時にどうかな、って。そうしたら、撮影日に流星君の体がデカくなってて『さすがプロだ!』って驚きました。
――瑛作選手が体作りのアドバイスをしたとか。
瑛作「そうなんです。忙しくてジムは通えないと思ったので、腕立て伏せとか腹筋とか自重でできる筋トレを教えました。あと『カロリーを食べた方がいいですよ』って食事のアドバイスはしましたけど、それだけであんなにデカくなって現れるとは(笑)。本当に凄いです。尊敬します」
――9月の情報解禁で『きみの瞳が問いかけている』の出演が発表されましたけど、反響は?
裕典「インスタにメッセージをたくさんいただきました。妻のTikTokからインスタをフォローしてくれてる女の子が多いので『凄いですね!』って」
――そういえば、裕典選手ファミリーのYouTubeチャンネルが「外国人妻たちは日本の事をこう思っていた」でバズってますね(笑)。
裕典「今、550万再生を超えてて、バズりましたね(笑)。あれは彼女たちの本音トークが面白かったんです」
――裕典選手の奥様の姿をテレビで見る日も近そうです(笑)。瑛作選手の方では映画出演の反響は?
瑛作「流星君ファンの人からメッセージをいただいたり、あと多摩美の同級生で映像系に行った子たちから『すごいね!』という連絡が来ましたね。
――瑛作選手は、昨年カザフスタンで主演映画(国交30周年記念、日本・カザフスタン合作「阿彦哲郎物語」)の撮影をしましたけど、撮影現場の違いはありました?
瑛作「日本はこの短期間であんなにたくさんのシーンを撮ってしまうんだな、という驚きがありましたね」
裕典「スタッフさんが大変そうだったよね」
瑛作「ホントに。俳優さんたちのスケジュールを押さえるのも大変でしょうし。カザフスタンでは1シーンの撮影に丸一日掛けたこともありましたから。本当は春にカザフスタンに行って残りの撮影をする予定だったんですけど、コロナで撮影が出来なくて。今春に阿彦さんが亡くなられて、絶対に映画を完成させなくてはいけないと思っているので、撮影の再開を心待ちにしています」
――そちらの公開も楽しみです。
「俺はもっと出来る、と証明したい」(裕典)「魔裟斗さんのアドバイスを心掛けて、確実に仕留めたい」(瑛作)
――では最後に、11月8日『REBELS.67』での55.5kgトーナメント準決勝に向けての意気込みをお願いします。
裕典「実力を示したいです。ファンの方たちの話題に上がりたいです。それは切実にあります。『裕典と○○の試合が見たい』と。自分の可能性を見て欲しいですし、そういう選手になりたいと強く思っているんです。それをKING強介選手との試合で示したいし、見せたい、と思っていますね」
――前回の森岡悠樹戦は延長の末に勝利して連敗を4で止めました。が、体調が良くなかったと聞きます。
裕典「ここ最近、ずっと水の中でもがいてる感覚でした。思うように体が動かなくて『これが俺の実力なのか』とも思ったんですけど、新しいトレーナーさんと出会って『こうしたらレベルアップ出来る』と手応えを掴み始めているので、練習していても楽しいです。ただ、リングの中がすべてなので、リングの中で示して、ファンの人もそうですけど、自分自身にも『俺はもっと出来るぞ』と証明したいですね。
――瑛作選手は宮元選手との再戦。
瑛作「そうですね。宮元さんはキャリアがあって、老獪な選手ですけど、相性はいいと思うので、確実にフィニッシュしたいです」
――前回の壱センチャイジム戦は1RKOで圧勝。
瑛作「もっと時間は掛かると思ってましたけど『KOで勝った後こそ』と気を引き締めました。僕も、国内のトップ戦線とやらなくちゃいけないし、やっぱり(那須川)天心とは絶対に手を合わせたい。自分なら勝てると思って練習してるんで。そのためにも『弱い瑛ちゃん、強い瑛ちゃん』という波を無くさないと(苦笑)。壱センチャイジム戦の4週間前に、魔裟斗さんとトレーニングジムでお会いする時があって。
――おお、魔裟斗さんと。
瑛作「お話をさせて貰ったんですけど、魔裟斗さんに『最後の最後まで丁寧に試合を進めること。それが出来たら次の課題が見つかるから』とアドバイスされて納得しました。僕は1Rは丁寧に戦うんですけど、2・3Rはテンションだけで『倒したい』と結果を求めて行ってしまうので(苦笑)。最後まで丁寧に丁寧に、しっかりと、確実に仕留めるために、今は丁寧に仕上げています。11月8日は、僕と裕典の活躍にぜひ期待してください!」
聞き手・撮影 茂田浩司
(プロフィール)
「スピード・アクター」小笠原瑛作(おがさわら・えいさく)1995年9月17日、東京都武蔵野市出身。25歳。小学5年からクロスポイント吉祥寺でキックを始め、ジュニアの様々なタイトルを獲得。2011年、15歳でプロデビュー。デビューから9連勝でREBELS-MUAYTHAIフライ級初代王座を獲得。その後も、ISKA世界バンタム級王座など様々なタイトルを獲得。多摩美術大学演劇舞踏デザイン学科卒業。戦績41戦34勝(18KO)6敗1分。
「イクメンプリンス」小笠原裕典(おがさわら・ゆきのり)1992年4月17日、東京都武蔵野市出身。28歳。カナダ留学を経て、2012年3月にプロデビュー。INNOVATION、WBCムエタイ日本統一スーパーバンタム級王座獲得。2018年~2019年ONE Championship参戦。家族はウクライナ出身の妻と1歳の息子。現在、YouTubeチャンネル「The Ogasawara Family」がバズり中。戦績28戦16勝(4KO)8敗4分。