武蔵(右)が左ハイキックでダウンを奪い、勝利を収めたがマーサーのパンチにヒヤッとする場面も
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去6月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。第35回目は2004年6月6日、名古屋市総合体育館レインボーホールで開催された『K-1 WORLD GP 2004 in NAGOYA』より、K-1とボクシングの3vs3対抗戦。
2004年6月6日、名古屋市総合体育館レインボーホールで開催された『K-1 WORLD GP 2004 in NAGOYA』で「K-1対ボクシング3vs3対抗戦」が組まれた。K-1ファイターたちが元ボクシング世界王者たちをK-1ルールで迎え撃つというコンセプトだ。
先鋒戦ではアレクセイ・イグナショフ(ベラルーシ)が、元IBF世界クルーザー級王者キング・アーサー・ウィリアムス(アメリカ)に1R1分48秒、右ローキックでKO勝ち。中堅戦ではK-1 WORLD GP 2003世界王者レミー・ボンヤスキー(オランダ)が元IBF世界ヘビー級王者フランソワ・“ザ・ホワイトバッファロー”・ボタ(南アフリカ)に判定3-0で勝利を収め、大将戦を待たずして対抗戦はK-1チームが勝利を収めた。
大将戦で激突したのは前年のK-1 WORLD GP世界トーナメントで準優勝となった武蔵(正道会館)と元WBO世界ヘビー級王者レイ・“マーシーレス”・マーサー(アメリカ)。マーサーは1991年1月に無敗の王者フランチェスコ・ダミアニをKOし、第2代WBO世界ヘビー級王者となった。初防衛戦では当時人気を博していたトミー・モリソンを壮絶なKOに破り、世界にその名を轟かせている。WBO王座ははく奪され、その後はイベンダー・ホリフィールドと対戦したり、41歳にしてWBO世界ヘビー級王座に再挑戦したりしていた。
1R、ジャブを出して一気に前へ出てくるマーサーに武蔵はバックステップして距離を保ちながらの左ミドル、左ロー。それでも鋭く距離を詰めてくるマーサーに武蔵はクリンチからのヒザ蹴り。離れると武蔵がサウスポーになって左前蹴りからの左ハイキックでダウンを奪う。大の字となったマーサーだが立ち上がる。武蔵は左ミドル、左ハイ、左ヒザ蹴りと左の蹴りをクリーンヒットさせるが、マーサーは鋭く距離を詰めての右フックで対抗。速く重いジャブが武蔵を捕らえるが、武蔵の右ローが強烈に決まっていく。
2Rもジャブを突くマーサーに武蔵は左の蹴りで対抗。マーサーが飛び込んでのアッパーを繰り出し、武蔵をヒヤッとさせる。離れると武蔵は左ハイ、左ローを蹴っていくが、マーサーは下がらず前へ。武蔵の左インローでダメージを負ったマーサーは苦し紛れに武蔵の蹴り足をキャッチして投げを見舞う。これで腰を痛打した武蔵はしばらく立ち上がれなかった。再開後、高速のジャブで前へ出るマーサーに武蔵は距離を取りながらの左ハイ、左ロー、前へ出てくると左ヒザ。
3R、武蔵に左ローを蹴られると自分の脚を叩き「もっとやってみろ」と挑発するマーサー。ワンツーが武蔵を捉え、武蔵はクリンチするも右フックをもらう。武蔵は腰痛を抱えながらも左ローでマーサーをグラつかせて左ハイ、左ミドル。追い足が鈍くなるマーサーに、武蔵はバックステップで距離を取りながら左ローを蹴っていく。前に出るマーサーだが手が出なくなり、武蔵は左ストレートからの左ロー。最後は左ロー、左ミドル、左ハイの蹴り連打でマーサーを棒立ちにさせて試合終了。
判定3-0(30-26、30-27×2)で武蔵が勝利、マーサーは屈んで判定結果を聞くほどのダメージを負っていた。
なお、マーサーは翌年3月にボンヤスキーと対戦するもKO負け。2005年6月にボクシングへ復帰し、2007年からはMMAにも挑戦。2009年6月には48歳にして元UFCヘビー級王者ティム・シルビアを開始9秒でKOし、話題となった。