1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去6月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。第35回目は2004年6月20日、さいたまスーパーアリーナで開催された『PRIDE GRANDPRIX 2004 2nd ROUNDt』より、柔道vsK-1の異種格闘技戦感が溢れた一戦。
K-1 WORLD GP 2001で優勝するなどK-1のトップファイターとして活躍していたマーク・ハント(ニュージーランド)は、2004年4月の『PRIDE GRANDPRIX 2004 開幕戦』でPRIDEへの電撃参戦を発表。6月の総合格闘技デビュー戦で吉田秀彦(吉田道場)と対戦することが決まった。
この試合は「柔道とK-1の頂上対決」として煽られた。吉田は戦前「強いでしょ。けっこうヤバい試合になりそうな気がします」と、相手がMMAデビュー戦で自分が6戦目とキャリアの差があっても警戒。
一方、PRIDE史上初めてのK-1世界王者参戦となるハントは「あんな薄いグローブで殴っちゃったら相手を壊してしまうかもね」とニヤリ。
1R、プレッシャーをかけてくるハントに吉田はロープを背にしながらリングを回り込み、片足タックルでテイクダウン。しかし、すぐにハントが上になり、パウンドを打つ。すかさず吉田が腕十字。ハントは苦痛に顔を歪めながらも吉田の頭部へヒザ蹴り。腕十字はポイントがズレたが吉田は腕を離さない。
オモプラッタ風にハントを崩すと吉田はアンクルホールドに。ハントも蹴りで対抗する。起き上がる吉田に合わせてハントも立ち上がり、なんとテイクダウンを仕掛ける。吉田はコーナーを背にしてフロントチョークの体勢に。
ブレイク後、再びタックルに行く吉田にハントは顔面ヒザ蹴り。吉田は離れて右へ回り込む。再びプレッシャーをかけるハントに吉田が片足タックルも、ハントは足を引いてかわし、横転した吉田へすかさずパウンドで襲い掛かる。吉田はハントのパウンドをもらいながらもハントの左腕を離さず、両足で挟み込んで徐々に腕十字の体勢へ。
場内が騒然とする中、回転して上になった吉田は体勢を整えての腕十字。極まった瞬間にハントがタップし、左肩を痛めた苦しい展開の中でも勝利を収めた吉田だが、ハントに手を差し出して健闘を称え合った。
この試合で吉田はハントの打撃によって左肩を亜脱臼。後に自身のドキュメンタリー番組にて、その後の低迷は「マーク・ハントに肩を壊されたことがきっかけだった」と語っている。
なお、ハントはその後、ヴァンダレイ・シウバやミルコ・クロコップから勝利を収めるなど5連勝。ジョシュ・バーネットやエメリヤーエンコ・ヒョードルには歯が立たなかったが、2010年9月からはUFCを主戦場にして好試合を連発し、2018年12月までMMAで活躍した。