キックボクシング
コラム

【1995年6月の格闘技】地獄の風車がフル旋回、4年ぶり来日ラモン・デッカーが港太郎を93秒で沈める

2020/06/07 11:06
【1995年6月の格闘技】地獄の風車がフル旋回、4年ぶり来日ラモン・デッカーが港太郎を93秒で沈める

上下に打ち分けるデッカーの強烈すぎるコンビネーションをもらい、港はたまらずダウン

 1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去6月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。第13回目は1995年6月2日、東京・後楽園ホールにて開催されたマーシャルアーツ日本キックボクシング連盟『港山木ジム10周年記念興行』より、4年ぶりに来日した“地獄の風車”ラモン・デッカー(オランダ)と港太郎(港山木ジム)の一戦。


 強力なパンチを連打で打ち込み、強豪タイ人たちと互角以上に戦うことでインターネットのない時代にも日本にその名を轟かせていたラモン・デッカー。1990年12月に待望の初来日を果たしたが、日本人の対戦相手がいないこともあって1991年3月の2度目の来日から間が空いた。戦績は136戦126勝(68KO)11敗。

 港は重量級のホープとしてデビュー当初から注目され、連戦連勝。まだ10戦目(1992年10月)の時点で山木敏弘会長がデッカー戦を計画したほど期待されていた。それから3年、デッカーの4年ぶりの来日が実現し、港が迎え撃つ一戦が組まれた。

 夢のデッカー戦が現実のものとなり、港の胸は否が応にも高まる。練習も「今までで一番ハードだった」という。作戦は「アウトボクシング」。地獄の風車と呼ばれるデッカーの回転力を凌ぐには、正攻法で打ち合っては勝機はない。港が着実に身に付けつつあるムエタイスタイルが、唯一彼にとって安全かつ勝算の見出せる策となり得るはずだった。


 しかし、結果は裏目に出た。序盤こそローの蹴り合いで探りを入れた両者だが、港が前に出ないことを悟ったデッカーは、港をコーナーへ追い込むと強烈な左ミドル。この一撃で港の動きが止まってしまった。右ローを左足に受けて後退すると、デッカーはさらにプレッシャーをかけて前進してくる。

 ロープを背にした港に左フックを2連打。右アッパー、ボディへ左右フック。港は腰が砕けるようにダウンを喫した。ここまで試合開始から僅か1分の出来事だ。

 デッカーは立て続けに右アッパー、左ボディで2度目のダウンを奪うと、フィニッシュは左アッパーをボディにめり込ませて港の長身をくの字にさせた。3度のダウンを許して港はしばらく立ち上がれないほどダメージは深刻だ。


(写真)試合後には港の惨敗に激高したファンがリングに乱入、デッカーに詰め寄る場面も

「ムエタイはスロースターター。港をビデオで研究したら彼のスタイルはムエタイに近いと思ったね。だから1、2Rで倒そうと思ったのさ。ボクシングでね」とデッカーは勝因を語った。ムエタイと50戦以上を経験しているデッカーにとって、港は自らの術中に見事にハマる格好の相手だったのだ。

 一方の港は唇を噛んで「パンチは見えていたつもりだったんですけど、デッカーはタイ人とはリズムが違いました。蹴りもパンチも重かった。恥ずかしいです」と悔し涙を見せる。声を震わせながら「再戦は絶対にやります」と語った。

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