2019年12月31日(火)さいたまスーパーアリーナにて『RIZIN.20』が開催された。
第13試合では、「RIZIN女子スーパーアトム級(49kg)タイトルマッチ」(5分3R・ヒジ有り)として、ハム・ソヒ(韓国)が、王者・浜崎朱加(AACC)に挑戦。判定2-1の接戦で、ハムが新王者に輝いた。
両者は2010年12月(JEWELS初代ライト級女王決定トーナメント決勝戦)と2011年12月(同王座防衛戦)の2度対戦し、1度目は浜崎が判定3-0で勝利、2度目は浜崎が相手セコンドのタオル投入(腰を負傷していたソヒが棄権)によるTKO勝ちと、浜崎が2連勝していた。
浜崎は6月にInvicta FC世界アトム級王者ジン・ユ・フレイを破って初防衛に成功、今回が2度目の参戦となる。ソヒはUFC参戦を経て2017年6月に初代ROAD FC女子アトム級王座に君臨。初防衛戦ではフレイを1Rで仕留めている。2019年7月にRIZIN初参戦を果たし、DEEP JEWELSアトム級王者・前澤智をTKOで破り、10月には山本美憂を下して浜崎への挑戦権を得た。
試合は、1Rから積極的にサウスポー構えから打撃を繰り出す浜崎にハムも応戦。打ち合いではハムの被弾が若干多いラウンドに。
2Rはハムの右ミドルをつかんだ浜崎がテイクダウン&パウンド。そこにカウンターの三角絞めを合わせたハムが下からヒジ打ちも頭部に当て、ダメージを負わせた。
そして最終3Rは、ハムの打撃に組んだ浜崎が引き手を掴んで首投げ&払い腰でテイクダウン。袈裟固めから片手でパウンド連打し、ゴングとなった。
ラウンドマストではない3Rトータルでの判定のRIZIN。顔を腫らせて判定を待つ両者に、コールは2-1のスプリットでハムが勝利。新王者に輝き、ROAD FC女子アトム級王座とともに2冠を達成した。
ハムはリング上で、すべて日本語で、「アリガトウゴザイマス! RIZINとROAD FC代表にありがとうございます。チームメイトと家族、監督ありがとうございます。そして応援してくれたみんなのおかげで勝つことができました。これからももっともっとずっと大きな選手になりたいです。努力してます。応援よろしくお願いします。皆さん、2020年明けましておめでとうございます! ありがとうございます」と、ファンに挨拶。その後、バックステージで個別インタビューに応じた。
ハムは冒頭で、「RIZINのチャンピオンになれたこと、とても嬉しいです。ただ、まだ実感が湧いてきません。これからチャンピオンにふさわしい素晴らしい選手になれるように頑張ります」と所信表明し、一問一答に応じた。
三度目の対戦となった浜崎朱加の印象を「やはり昔も今も大変強い選手でした」と評したハム。「初戦(2010年12月)はかなり昔で当時の戦法はしっかり思い出せず、2戦目は8年前で(怪我で)しっかり組み合った印象はありません。今回、3回目の挑戦で、あらためて素晴らしい選手と認識していましたが、以前に比べてさらに攻撃に鋭さが増したという印象です」と振り返った。
「鋭さを増した」浜崎が序盤から打撃勝負を仕掛けてきたことについては、「相手が来ることを予想して対策を立てていましたが、私には思ったほど打撃中心ではなかった気がします」と話し、打撃を得意とするハムに対し、しっかり打撃で向き合った上で打ち返しにテイクダウンを狙うことが浜崎の狙いだったと推測する。
1Rは浜崎の打撃が若干の優勢、2Rはハムが三角絞め&ヒジ打ちでニアフィニッシュの場面を作り、3Rは浜崎の袈裟固め&パウンドをハムが脱出できず。判定が2-1のスプリットになったことについて、ハムは「とても驚きました。この後、試合の映像を見なければいけないな、と思っています」とジャッジの評価が割れたことに驚きを隠さず。一方の浜崎は、「全体的に2Rは下からヒジをもらっていたので、(全Rトータル判定の)RIZINルールだったら負けで仕方ないかなと思いました」と語っている。
勝利のポイントを、「一生懸命練習してきましたが、練習してきただけの力量を試合で十分に発揮できたと思っていません。勝利のポイントは最後まで諦めなかった、このことに尽きると思います」と、ギリギリの神経戦のなかで、最後は気持ちの戦いだったと語るハム。勝敗を決めたのは、これまでの試合でも時折見せていたストライカーハムによる“隠れた得意技”三角絞めからの打撃だった。
試合後、浜崎が「これから何試合か戦って勝って、また挑戦できるところまで上がっていきたい。勝ち続けて2020年の大晦日に再戦できたら」と、4度目の対戦を希望していることについては、「まず浜崎選手に感謝を申し上げたいと思います。また私と対戦したいと仰ったなら、それを実現させたい。3回も戦ってくれたのだから、4回目も実現させたいです」と同調。大晦日決戦についても「そうなるよう私も一生懸命頑張ろうと思います」と、互いに成長しての対戦を目標に掲げた。
同時にハムは、「これまで対戦したことのない相手とも経験を積んでいきたいです。誰と名前は挙げませんが、これまで対戦したことのない選手とやってみたいです」と、新たな対戦相手との試合も希望している。
RIZINと提携しているBellator出場も考えられるが、「まずそれは、いい機会に恵まれたらということ。団体の代表と話の折り合いがついたら、是非とも挑戦してみたいと考えてみます」と、2度目の米国進出に前向きな考えを示した。
「実はある個所の手術を受けていて、そのせいでしばらく試合が出来ず休んでいました。今後はROAD FCとRIZINで活発に活動していきたいのですが、選手を続けていくためには若いとは言えない年齢になっているので、まずは負傷箇所をしっかり治療して、その後に今後の計画を立てたいと思います」と、しばらくは治療に専念するとしたハムは、今後の展望を、「当面は今日獲得したタイトルをしばらく防衛することが最大の目標です」と語る。
アジアから米国に渡り、再びアジアに戻り、2本のベルトを巻いた女王の姿を追って、総合格闘技の世界を目指すそうとする女性も増えてくることが予想されるが、後進についてコメントを求められたハムは、「まずはスポーツと捉えて軽い気持ちでやってみようという人には決してお勧めしません」と、厳しい言葉で制しながら「女子MMAで“やり遂げよう”という人だけ頑張って付いてきてほしいと思います」と、結果を残すには覚悟が必要であることを語った。
試合の翌日には、インスタグラムも更新。日本でのマネージメント先とのファイトマネーに関わるトラブルを告発しているハム。大晦日のさいたま大会にはROAD FCのジョン・ムンホン代表も会場に駆けつけ、「自分が日本に来たのは、(韓国)選手達の価値をちゃんと(RIZINに)認めてもらうため。韓国と日本の良くない代理行為・明るくない部分について、ハム・ソヒと色んな選手達がオープンする事になる。法律的に整理し、(この件に関し)榊原(信行)さんと佐伯(繁)さんと会って話します。ハムのように頑張る選手がきちんと報われる為に日本に来ました」とSNSで語るなど、複数の団体もからんだ今回の問題を経て、ハムは「私をはじめ、一所懸命トレーニングする他の選手たちが被害を受けないことを望んで、こんな話をすることになりました」とインスタグラムに記している。