【写真】計量に付き添った杉山しずかと。藤野のPRカードの写真は……。
2019年12月8日(日)東京・新木場のスタジオコーストで「PANCRASE 311」が開催される。同大会のメインで行われる「女子ストロー級 暫定王者決定戦」で悲願の王座獲りに向かう藤野恵実に、試合前日計量後にコメントを聞いた。短いながらも、感慨深いベテランファイターの取り組みと決意に、耳を傾けてほしい。
──無事、計量を終えました。調印式でもお話をうかがい、「すごいプレッシャーをいろんなところから与えられている」と苦笑していましたが、どうせなら前日もプレッシャーを与えよう、と皆でコメントを伺いに来ました(笑)。
「試合を迎えるまでがプレッシャーだったので(笑)、とりあえず明日、無事に2人とも計量をクリアして試合できる状況になれたことがよかったなと思います。いつも計量を終えると一回、淡々としてしまいます」
──計量も試行錯誤を重ねてきているそうですね。
「毎回、ここ何年かは、これが最後かな、これが最後かなと思いながら減量をしてきました。ただ、準備も何回もやっているから、体重が落ちないとか、たいていのことは想定できるようになりました。過去のデータはすべて残しています。何をやって何キロ落としたか、季節ごとのデータもあって、その時期に食べる物はだいたい同じで、夏場と冬場のお風呂での汗の出方の記録、何をやったら一番負担なく体重が落ちるかも分かるようになってきて。エタノールがよければ他の人にも勧めたり、有酸素運動の仕方も何種類か聞いたものを試して、ちょっと走って心拍上げたら歩くとか、それで負担なく落ち方が良かったらそれを周囲にも勧めたり、食事データも見たい人には見せて……試合間隔が短いことも、今回はうまく調整ができました」
──ここまでの短い試合間隔が続いたのは、身体的にも精神的にも厳しかったのではないかと想像します。それはタイトルマッチまでは、という一心で繋いできたのではないですか。
「そうですね。来年まで試合が空くよりも、いま集中して年内にやりきりたいという思いがすごくありました」
【写真】坂本靖広報が持つレコーダーにコメントを吹き込む藤野。周囲はこんな表情に
──しかし、ライバルでもあるほかの選手に大切なデータを見せたり勧めたりすることもあるのですか……でも競技人口が多くなかったジャンルで強い人を増やす、そういった姿勢が周囲に人を増やしているのだと思います。
「長く続けるほど、自分のためだけじゃなくなってきました。観てくれる人が増えて、周囲で支えてくれる人、試合をした仲間、練習した仲間も増えて、気づいたら周りに人が増えて、格闘技ってすごいなって……だから、自分だけの結果じゃなくて、みんなとやってきたことが大切なんだなと感じています。今回の試合でみんなに納得してもらいたいなと思っています」
【写真】今回のタイトルマッチのために私的に作成されたプロモーションカード。誰が言ったか「ガチムチ鳥」のインコさんが色も形も藤野にそっくりだと……。
──……それは格闘技がすごいんじゃなくて、藤野さんがすごいんじゃないですか。今回の試合に向けての準備というのは?
「もう新しい準備はしていなくて、今までやってきた自分にそれなりに自信を持っているので、それを出したいというだけで。間違ってきたことはやってきていないと思いますし」
──浜崎選手によると「まだ伸びしろがあるのがすごい」と(笑)。
「『極めが無い』と言われますけど、極めてる試合あるわ! って(笑)。まあまあ、浜ちゃん(浜崎朱加)よりは極めはないですけど」
──格闘技の試合に絶対はありません。あらためて、ですが、明日に向けて意気込みを。
「“集大成”で終わらせるつもりはないですけど、今までやってきたことを全部出して勝ちにいきます。『藤野を見ろ』と。それだけです」
◆計量に付き添った杉山しずか「全く緊張しないのがすごい」
「私が藤野さんと練習を一緒にやるようになったのは、ここ2、3年くらい。トライフォース赤坂やHEARTSで練習しています。藤野さんを近くで見ていてすごいな、と思うのは、強さは当たり前なんですが、試合前に全く緊張しないんですよ。私は試合前にガタガタ震えたり硬くなってしまうんですけど、そういうところがないんです。(いつも計量に付き添うのは)結構、極限まで減量をやるので心配なのと、見ていて勉強になるというのもあります。それに人柄ですね……今回の試合でベルトを獲るところ、見たいです」