キックボクシング
インタビュー

【ONE】武尊「過去一の緊張感・恐怖を感じていた。だからこその当日の集中力だったのかなって思う」「辛いことがあったからこそ、この喜びとか幸せがある」=引退会見

2026/05/02 04:05
 2026年5月1日(金)都内にて武尊(team VASILEUS)の「引退記者会見」が行われた。これまで獲得した7本のベルトが飾られ、武尊は途中、感極まって何度も涙を流しながら質問に答えた。  武尊は4月29日(水・祝)東京・有明アリーナにて開催された『ONE SAMURAI 1』(U-NEXT配信)のメインイベント(第15試合)にて、ロッタン・ジットムアンノン(タイ)に5R2分22秒、TKO勝ち。ONEフライ級(-61.2kg)キックボクシング暫定世界王者となって引退した。 1日1、2時間くらいしか寝てない ――試合から2日経過しました。これまでどのように今日まで過ごしてきたんでしょうか? 「全く寝てなくて(笑)。試合の日の夜はいつも寝れないんですけれど、今回は長くて、アドレナリンの出る量がもう過去一だったんじゃないかなっていうぐらい。5Rっていうのもあったし、相手がロッタン選手っていうのもあったし、ああいう試合でもあったので、いまだにアドレナリンが収まらず寝れてないですね。昨日はジムに行って皆に挨拶したりして、夜は奥さんと2人で久しぶりにご飯を食べに行きました」 ――ジムのご友人、そしてご家族の方とはどのような会話をされたんでしょうか? 「みんなに良かったね、最高だったよって言ってもらって。全部が理想通りっていうか。こうなればいいなと思ってやってきたんですけど、ほぼ全部その通りになって、こんなにできすぎてるのは夢なんじゃないかって。試合前もずっと、試合がこうだったらいいなとか、悪かったパターンもあるし、毎日試合の夢を見てうなされてたり、たまにいい結果だったなとかって毎日考えてたので、ちょっとウトウトして起きたら、まだ試合前なんじゃないかっていう感じで。まだ夢の中にいるような感覚なので、実感がそこまで湧いてはないんですけど。今はそんな感じですね」 ――武尊ストーリーの見事な完結だったと思いますが、KOした瞬間ってご自身ではどんな気持ち、どんな感情が湧き上がってきましたか? 「本当に必死すぎて。前回1Rですぐ倒されて、過去ないぐらい効かされて。その恐怖心も凄いあったし。さっきも言いましたけど、何回も失神させられる夢とか、怪我する夢とか見てたので、過去一の緊張感・恐怖は感じていました。でも、そのおかげで凄い集中力で、みんなに動きが良かったとか、過去最高のパフォーマンスが見れたって言ってもらったんですけど、それは本当に前回の試合があったからだと思うし、それがあったからこそ、その恐怖を克服するために毎日練習を頑張れました。  だからこその当日の集中力だったのかなって思います。1Rから最後までずっと必死で、なんとか倒した瞬間も必死すぎて、それこそすぐに受け入れられないというか。“よっしゃー!”と思うんですけど、『これ終わった?』『勝ったってこと?』『え、チャンピオンってこと?』みたいな。自問自答じゃないですけど、プチパニックみたいになってましたね」 ――試合映像は見ましたか? 「見ました」 ――試合のポイントというか、どの辺が良かったと思いますか? 「凄い緊張感を持ってたっていうのが。前回の試合は、もちろんロッタン選手が強いのは分かってたんですけど、ここまでの恐怖を持ってリングに上がってなかったので。僕は後輩にも言うんですけど、緊張って悪いもんじゃなくて、緊張とか恐怖を感じるのは、それだけ自分を守ろうとしたり、自分のパフォーマンスを上げるための集中力に変わると思ってるんです。そういう意味で今回はその集中力と感じる恐怖っていうのが過去一だったんじゃないかなって。そこが良かったポイントっていうか、いいパフォーマンスに繋がったのかなと思ってます」 ――試合前はその緊張感であったりとか、身体の状態だったりとか、いろいろ不安な部分があったと思うんですけど、そこから今はまだ完全に解放された感じではない? 「まだ緊張感も残ってて。それこそ気を抜いたら試合前に戻っちゃうんじゃないかみたいな。前回の試合が終わった後にロッタン選手とやれるってなって。そこから毎日恐怖と戦ってたし、その期間が長すぎて、それが身体に染み付いちゃってて1日1、2時間くらいしか寝てないんです。ちょっとウトウトして起きたら、さっきまで試合に勝ったんだなと思ってたのが、さっきの夢でまだ試合前なんじゃないかって心臓バクバクしてきて。携帯とか見て、もう試合終わってるわみたいな。チャンピオンになったんだっていうのを何回もやってますね」 ――試合後に奥様と抱擁するシーンが感動的だったんですけど、会話はされました? 「その時は覚えてないですけど、毎回なんですが最初に奥さんが言ってくれるのは『生きて帰ってきてくれてありがとう』っていつも言ってくれますね」 [nextpage] ロッタンには感謝しかない、ありがとう ――引退試合でしたけど、あの日の自分は最強だったみたいな感じってありますか? 「現役で51戦プロでやって、一番恐怖心を持って試合に臨めました。身体のコンディションだったりはもっと良かった時があったと思うし、練習量ももっと出来てた時があったと思うんですけど、本当に過去最強で最高の自分を最後の試合で出せたかなと思ってます」 ――まだ落ち着いて振り返れないかと思いますけど、現役生活の中で一番大変だったこと、辛かった時って今思い返すとどんな時で、それはどうやって乗り越えられました? 「どれか一つっていうのが決められないぐらい辛いことばっかりって言ったらちょっとアレですけど、辛いことがたくさんあったなと思います。最後にこういう形で終われて、今まで辛かったことも全部チャラになったというか。このためにあったんだなっていう。幸せを感じる時って、ずっと幸せだと多分幸せって薄まっちゃうと思うんですけど、辛いことがあったからこそ最後の試合でこうやって勝てて、この喜びとか幸せがものすごいあるので。今日のために今まで苦しかった日々はあったんだなって思ったら、その日々すら愛おしいっていうか、その日々にも感謝したいなって。ちょっと泣きそうですね(と涙を拭う)」 ――報われました? 「もう報われすぎなんじゃないかっていうぐらい。今日までやってきてよかったなって思いました」 ――ロッタン選手が試合直前に契約問題があったっていうのは、武尊選手も把握はされていらっしゃいましたか? 「はい、聞きました」 ――それによって、もしかしたら試合がなくなるかもしれないみたいな不安を感じた瞬間はありました? 「それはありましたし、関係者からもそういう話が来て。でも僕は4月29日に引退するって決めてたし、そこに照準絞って身体の限界ギリギリまでを作る準備をしてたので、日程が変更になるのは自分の中では選択肢がなくて。なのでロッタン選手と最後やれたら最高ですけど、ロッタン選手がもし出来なかったら他の選手でもその日にやろうっていうのは話していました。スーパーレック選手が体重落ちなかったとしても、ロッタン選手が出来ないんだったら、階級を上げてでも最後スーパーレックとやろうみたいな話まではしてました」 ――ロッタン選手が武尊選手に敗れた後、リングを降りる時に泣いていた映像はご覧になりました? 「はい、見ましたね」 ――2回戦って、最後の試合の相手を務めてくれたロッタン選手に、今何かかける言葉がありましたら教えてください。 「最後の相手を務めてくれて感謝しかないし、契約のことでいろいろ大変なこともあったと思うし。あとはもう僕は前回KO負けしてて、1回KO勝ちしてる選手と戦うっていうのは、向こうにはメリットはないと思う。それでも最後の相手を引き受けてくれたっていうのは本当に感謝しかないです。ありがとうっていう言葉しかないですね」 ――試合が終わっていろんな人から祝福の言葉が寄せられたと思うんですけど、特に心にグッときた言葉は何かありましたか? 「みんなに言われることが嬉しすぎて。試合終わって会う人会う人に言われる度にもう泣いちゃうぐらい全部が嬉しいです」 ――最後の試合でボーナスが1500万円と発表されましたけど、その使い道はもう考えてらっしゃいますか? 「凄くありがたい金額なので、使い道としては僕はずっと毎回試合やるごとに学校を一個建てるっていうのを目標にONEに来てからずっとやってるので、最後そのお金ででっかい学校を作りたいなと思っています」 ――2Rにロッタン選手をダウンさせた右のストレートから返しの左フックのパターンは、武尊選手が何回も練習してきたパターンだと思うんですけど、あれでダウンさせたことについて何か思うことはありますか? 「身体に染みついてる攻撃なんだろうなって思うんですけど。最後の試合で自分がずっと培ってきたものだったり、それこそあの攻撃はデビューからずっと物凄い数使ってると思うので、そのずっと使ってきた攻撃で最後倒せたっていうのは嬉しかったですね。前回左フックで倒されてるので、それをやり返せたっていうのは次はないですけど、凄い自信になりましたね」 [nextpage] 僕の中でも特別な思い入れがある髪の色 ――まだ実感がないというお話ですけど、ONEの公式サイトにチャンピオンとして載ってるのはご覧になりましたか? 「まだ見てないですね」 ――それを見ればもうちょっと。 「はい、実感が湧くかもしれないですね」 ――あの日はベルトはどうされたんですか? 「ベルトはですね、会場では僕からの気持ちとして、応援してくれた人たちがいたからここまで現役やれたし、大会が締まるまではファンの人たちの前に置いておきたいなっていうのがあったので、リングの上に置かせてもらったんですけど、その後に届けてもらって。  僕、ONEと契約した後ぐらいにマイホームを建てたんですけど、その時にベルトを飾る棚を作ってて。ONEと契約するまでに6本獲ったんですけど、僕は7本欲しくて。最後のベルトはONEのベルトが欲しかったので、棚を7段にしてあって、7段目をずっと空けてたんですよ。だから2、3年その棚がずっと空いてたんですけど、やっとそこに入れられるので、家に帰ったらそこの棚に入れましたね。奥さんのインスタに載ってると思います(笑)」 ――現役時代はお酒を飲まないというお話だったと思うんですけど、この何日かで勝利の美酒は飲んだんでしょうか? 「いや、まだ頭のダメージがあるので、まだ飲めてないんです。ずっと応援してくれてる人で、引退した後の一杯目は飲んでくれって言ってくれてる人がいるので、その人と飲もうかなと思ってます(笑)」 ――赤いヘアになってネットでも話題になってたんですけど、それをすると決めたのはいつ頃だったのかと、その髪型にしようと思ったのはどういう意図だったのか教えていただけますか? 「引退をすると決めた時ですかね。僕、結構ファンの人のコメントだったりを見るし、ファンの人が喜んでくれるのが凄く嬉しくて。なのでファンの人がどういう僕を見たいのかなっていつも考えるんですけど、あの赤髪をいつか見たいですっていうのを、赤髪をやめた後からずっと言ってくれる人たちがいて。僕の中でもすごい特別な思い入れがある髪の色なんです。  Krushのベルトを初めて獲った時もそうだし、 K-1のベルトを初めて獲った時もそうだし、自分の大切なポイントでもあったので、現役最後の試合は今年35になるので恥ずかしいんですけど、最後は赤入れようっていうのは決めてました」 ――友人であるONE OK ROCKのTakaさんが、ライブ中に武尊さんの試合を見て心を奮い立たせたっていうMCをされてた映像が流れてきたんですけど、Takaさんから何かメッセージ頂きましたか? 「試合が終わってすぐ電話して、ちょうどライブしてたんで、その日。ライブで当日来れなくて、それは僕も悔しかったんですけど、Takaさんがずっとライブ中でも電話出るからって言ってくれていて(笑)。なので絶対勝って報告しますって言って。その後電話させてもらったら、僕の試合を見るために30分とかライブのスタートを遅らせたかなんかして、ギリギリまで僕の試合見てくれていたそうです。  僕が勝った瞬間にライブにみんなで走って行ったっていうのを聞いて。Takaさんは数日体調が良くなかったそうなんですが、僕の試合を見て元気もらってパワーもらってライブ頑張れたよって言ってくれました。その後、僕の試合をメンバーみんなでライブの控室で見てくれていた映像を、スタッフさんが撮っていてそれが送られてきたんです。携帯の画面か何かで見ていて、みんなでわーって喜んでくれて。試合勝った瞬間に“よっしゃー”ってそのまま走ってライブ会場に行ったので、本当にギリギリまで見てくれてたんだなって。僕はいつもパワーをもらってるんですけど、逆にTakaさんにパワーを送れたのかなって思って凄く嬉しいです」 ――そ奥様に現役生活を支えてもらった中で、今どんな言葉をかけたいですか? 「現役中は付き合ってた時からカップルらしいことも何もしてあげられなかったし、デートなんてほとんど行ったこともなかったし、結婚しても新婚旅行も何もしてないし、新婚らしいことも何もしてあげられてなかったので。僕の試合前になったら2~3月前から自分の仕事をセーブして、僕が練習終わって減量中は5時に夜ご飯を食べるんですけど、昼間から買い物に行って料理してっていうのを毎日やってくれていました。  彼女も今、多分一番仕事をやりたい時期だと思うし、それこそ子供ができたら仕事が出来ない時間もあると思うんですね。そんな時にその時間を僕に捧げてくれて支えてくれてたので、最後まで支えてくれて、引退まで最高のパフォーマンスを作るために支えてくれたので、これからはもう何でもわがままを言ってね、これからちゃんと幸せにするよって本人に直接言いました」
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