一階級上の王者・寺山との再戦に臨む紅絹
2019年11月8日(金)東京・新宿FACEにてRISE初となる女子だけの大会『RISE GIRLS POWER』が開催される。同大会のメインイベントで、RISE QUEENミニフライ級王者・寺山日葵(TEAM TEPPEN)と対戦する同アトム級王者・紅絹(NEXT LEVEL渋谷)のインタビューが、主催者を通じて届いた。
紅絹は2006年10月デビューのベテラン選手で、パンチを主体としたトリッキーなファイトスタイルで各団体にて活躍。2012年11月、J-GIRLSミニフライ級王者になったのを皮切りにタイトルマッチを多数経験。7月に那須川梨々との王座決定戦を制し、RISE QUEENアトム級(-46kg)王座に就いてベテラン健在を示した。
寺山とは2018年2月にJ-NETWORKで対戦し、寺山が蹴り技で紅絹のパンチを封じて判定勝ちを収めている。
■『あっ、紅絹は違うな』というのは見せたいです
──10月18日の記者会見でプロデビュー戦は女子だけの大会だったと言っていましたね。
「そうなんですよ(2006年10月29日、J-NETWORK&日本女子ボクシング協会合同興行『女祭り』で関友紀子と対戦。3-0の判定勝ち)場所は今回と同じ新宿FACEでした。私は女子だけの大会に出場することが普通だったので(J-NETの女子興行J-GIRLの主力だった)、今回のような大会の方がしっくり来ますね」
──裏を返せば、女子キックの栄枯盛衰を肌で感じているともいえますよね。
「客観的には見ていないけど、私はずっとそこを背負ってきました。やっぱり問題は(男子との)レベルの差かな?私がデビューした時には(寺山のように)上手くなかったし、パンチとローしかできないのに10戦くらい負けなかったんです。あの頃はそれで通用していました。中には強い選手もいたけど、2分3Rの中で魅せられる試合をしていた選手は少なかったと思います」
──魅せられる選手だけが生き残った?
「かもしれないですね。あとは選手のモチベーションだったり。いまの選手の方がモチベーションは高い。正直今回の会見に出席しているメンバーを見て、『来年もいるな』と思いました」
──言わんとしていることはよくわかります。過去を振り返ってみると、モチベーションや恋愛が原因で、突如消えてしまう女子選手も結構いましたからね。
「そうなんですよ。パッと来て、パッと来なくなる選手が多い。そういうのがすごく多かったんです。『フィットネスの延長?』と聞きたくなりましたよ。『本気じゃないけど、スポットライトを浴びたかったから来た』という感じだったんですかね。私はキックボクシングが大好きなので、軽く見られることは悲しい。でも、いまの女子選手たちにはいい意味で自分たちの主張がある。だからこそ見ていて面白いですよね」
──RISE GIRLS POWERには十代の選手が多数参戦します。頼もしく映った?
「選手としての私は終わりの方に近いので、若い子がいるのは嬉しいです。私は本当に終盤にかかっています。マラソンに例えると折り返し地点なんかとっくの間に過ぎて、もうゴールの方が近い。今回の会見にはあれだけ十代の子が集まって、実力も華もあるとなると安心します」
──安心して、そのまま世代交代という意味でのバトンを渡す勢いですね。
「いや、現役の時には絶対バトンを渡さない。引退したら、好き勝手にどうぞと言いたいですけどね。負けてもいいやと思ったら、すぐ辞めた方がいいですよ」
──今回も王座決定戦で那須川梨々選手を倒したように、寺山日葵選手との王者対決も制して「女王は私」という部分を見せつけたい?
「そうですね。ただ、私が勝つというと、若干の差になってしまう。そんなに大差をつけられるような相手ではないと思っています」
──自分を知っているからこその発言だと思います。逆に強さを感じてしまう。
「倒し切るというイメージはいまだにないんです。後輩に『ダウンをとるって何だろう?』と聴いているくらいで」
──それでも生き残って王者にもなっている。それは自分の形を持っているからでしょう。
「自分の試合を見せて、お客さんを満足させているかどうかはちょっと微妙ですね。やっぱりダウンをとったり、見せ場がある方が見ていて楽しいじゃないですか。その部分では、まだまだだと思っています」
──前戦の那須川梨々戦といい、現在の紅絹選手は飛ぶ鳥を落とす勢いのTEAM TEPPENの壁になっている感があります。
「そうですね。潰しに来ていますね。でも、潰されたらいけないと思っています」
──TEPPENという大波もへっちゃらの防波堤になる?
「いまにも崩れそうな防波堤なんですけどね(苦笑)。でも、絶対食い止めます。ちょっと水漏れは起こしているけど、食い止めることはできたみたいな感じでいいんです。私は大きく勝つことが目標ではない。そこはやっぱり自惚れることはできないです」
──キッチリ寺山対策を立てている?
「う~ん、対策はもちろん立てているけど、具体的に立てるかといえば立てない。私、練習は理論的にやりたいけど、闘っている時には理論的ではなく感覚になっているんです。瞬時の判断を下したり、いまどう動くかという部分では感覚の方が合っています。だからザックリは決めるけど、細かくは決めないですね」
──いつも直面する体格差の問題は?
「そうですね。他団体でメロニーとやって倒れなかったから大丈夫です(身長163㎝のメロニー・ヘウヘスに挑戦する形で行なわれたKrush-50㎏級タイトルマッチ)。体格差はもちろん気にしないし、もともと47.5㎏という体重でやってきたので、そこも関係ない(今回の契約体重はお互いのリミットの間をとって47.5㎏)。白築杏奈選手のような大きな選手ともやって問題なく闘えたので、『体重が一緒だったら平等でしょ! 』という気持ちはありますね」
──最後にメッセージを。
「どんな感じ方でもいいけど、『あっ、紅絹は違うな』というのは見せたいです」
──尻尾がついている以外のところで?
「そこだけなら完全に見た目だけになってしまう(苦笑)。試合を見て『やっぱりチャンピオンは違うんだな』というのを見てもらえたらいいですね」
(文・布施鋼治)