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【RIZIN】鹿志村仁之介「あの腕十字で1Rはほぼ使い切ってしまった」×安井飛馬「柔術の魅力はすごく感じている」

2025/11/07 19:11
【RIZIN】鹿志村仁之介「あの腕十字で1Rはほぼ使い切ってしまった」×安井飛馬「柔術の魅力はすごく感じている」

(C)GONG KAKUTOGI/RIZIN FF

 2025年11月3日(月・祝)兵庫・GLION ARENA KOBEにて『RIZIN LANDMARK 12 in KOBE』が開催され、バンタム級で鹿志村仁之介(BatlleBox)が、3戦無敗の安井飛馬(JAPAN TOP TEAM)に判定勝ち。6月の後藤丈治戦の判定負けから2連勝とした。

▼RIZINバンタム級(61.0kg)5分3R
〇鹿志村仁之介(BatlleBox)10勝5敗
[判定3-0]
×安井飛馬(JAPAN TOP TEAM)3勝1敗

 試合は、柔道から柔術家として活躍、柔術を軸にMMAでいかに組むかで戦う鹿志村に、柔道ベースの安井がいかに投げて、鹿志村にバックを獲られずに上から攻めるかがキーのなか、初回に組んで背中に乗った鹿志村が前に落とされるもオモプラッタから腕十字で安井の左腕を極めに。いったんはヒジがのびかけるも、またいで抜いた安井がトップに。

 この攻防で両者ともに力を使い、2Rは慎重なスタンドに終始。そして迎えた3Rに先にテイクダウンに行った鹿志村がバックに回るが、ここも足をかけさせなかった安井が振り落としてスタンドでともに決定打は無くゴング。判定は3-0で腕十字でニアフィニッシュの鹿志村が勝利し、無敗の安井に土をつけた。

 敗れた安井は、試合直後のバックステージ映像(【勝者と敗者】)では、判定負けに「マジか?」と涙が止まらず。セコンドの竹浦正起に「やっぱアレっスか。極められ……」と問い、竹浦は「ニアフィニッシュが結構相手のいいポイントになっちゃった。ダメージはあなたの方が与えていたけど。あとやっぱり最後攻めたかったな、2、3Rで攻めてたら」と返答。安井は「いや俺、勝ってると思ってたっス」と、判定で最終ラウンドまでに勝っていると考えていたことを吐露。

 勝者の鹿志村は、英国から試合直前に会場に到着してセコンドについたイゴール・タナベ、良太郎とともに安堵の表情。イゴールからは「寝技もいっぱい課題があったけど、でも勝って輝くのが一番いい」と言われ、良太郎からは「バッチリ怒られました」と苦笑した。

 試合後の会見では、鹿志村は安井について「分析した上でもっとイージーだと思っていたけど想像以上に強かった」と評価。敗れた安井は初のバンタム級で「リカバリーをミスした」と明かしながらも、鹿志村については「すごい寝技が上手かった。一つひとつのテクニックが隙がない感じ」と称え、試合前の柔術論争についても「僕の内心では柔術の深さとか魅力っていうのを自分自身すごく感じている」と、MMAに必須の柔術を軽視していることが無いことを語っている。

鹿志村「僕が両脇を差した状態でテイクダウンできないことって、練習でもあんまりない」

──試合後の率直な感想をお聞かせください。

「とりあえず勝って、ホッとしています。ただまあ試合内容とか、自分に残った課題とかもいっぱいあるんで。課題を残せても勝てたっていう面ではすごくいいんですけど、もっと次は成長した姿をみんなに見せられればなって思います」

──その課題を今ここで教えていただくことは可能ですか?

「もちろん、自分の強みである四つ組みの部分とか、壁際の攻防であったりとか。やっぱり相手の柔道ベースにちょっと呑み込まれてしまったなという部分があると思ってて。いつもだったら簡単にテイクダウンできるところが、相手のフィジカルと技術によって、それができなかったってことは、それ以上のことをしないといけないということだと思うので。それを追求して、もっともっとグラップリングに特化したMMAをこれからも作っていこうと思います」

──安井選手と実際に戦った印象を教えてください。

「想像以上に強かったです。率直にもっとイージーだと思ってました。それは自分が油断してたわけじゃないし、ちゃんと分析した上で“このぐらいのレベルでしょ”って思ったんですけど、全然それよりも強かったし、やりにくかったですね」

──具体的にはどんなところなのでしょうか。

「やっぱり単純に、たぶん壁の攻防とかで、僕が両脇を差した状態でテイクダウンできないことって、練習でもあんまりないんですけど。やっぱ彼すごい、たぶん柔道強いんですよね。僕はあんまり柔道強かったタイプじゃないんで、それが出ちゃったなっていう感じですね」

──試合を終えたばかりですが今後の展望・目標を教えてください。

「今後は、もっと極めにこだわるところが僕のいいところだと思ってて、自分で。もっと相手を極める力を高めていって、俺の試合は面白いって言われる試合を、これからも作っていければなと思います」

──試合前にフィニッシュ宣言していたバックチョークの体勢に入る機会があったと思いますが、極められなかったのは相手が上手かったのか、極めが不完全だったのか、いかがですか?

「バックチョークを極められなかったのはバックポジションをちゃんと取れなかったってところがやっぱり一番の原因だと思ってて。バックポジションは、両足を相手に入れてシートベルト巻いて“さあ、こっからだ”ってところでバックチョーク行くんですけど、その形を上手に作れなかったっていうのは、僕のミスでもあり相手のディフェンスの上手さも出てたんじゃないのかなと思います」

──1Rではバックチョークのあとから左腕を極めかけてましたけど、そこも同じような状況でしたか。

「はい、同じような感じだと思います。あの腕十字はもう“行ける”って思っちゃったんで。やっぱり“行ける”って思っちゃっていけないと、その後の削れ方が半端じゃなくて。正直、あの試合は1Rでもうほぼ使い切ってしまったみたいなものだったんで。で、2Rでちょっと回復して、3R目でテイクダウンっていう流れになったんですけど。まあそこも僕の詰めの甘さだし、もっと成長できる部分かなと思います」

──2Rにスタンドで慎重になったのは作戦でしたか。

「いや、もう作戦通りじゃないです。あれは、あの場でああするしかなかったっていうだけですね。やっぱ組みに行きたいけど、こっちも消耗してるし、四つ組んでも顔にもバーってパンチもらったりしてて、この辺(顔まわり)のダメージとかもあったんで。ちょっと回復する意味でも少しつまんない試合になっちゃったんですけど、2R目は。でも3R目はもう行こう、って決めてたんで。3R目が始まってすぐはバーッとテイクダウン行けたんですけど。まあテイクダウン行けるっていう、あの空間をたくさん作れるような練習をこれから、もっといっぱいしていこうかなと思います」

──キャリアで、白星が判定決着になったというのは初めて?

「初めてです。はい」

──判定を待つ間、勝利への確信はありましたか。

「ぶっちゃけ1R目のニアフィニッシュと、打撃もそんなにいいのを別にバーンてもらったわけじゃないし、3つのラウンドをトータルで見たら勝ってるんじゃないのかなとは思ったんですけど、判定になってしまった以上はもう人に勝負を決めてもらうってことなんで、もう負ける覚悟もしてましたし、あの時は“もう委ねよう。どっちかな”って、あんまりいい気分じゃなかったですね。本当はバーッと極めて、ケージの上に登ってワーッ! ってやりたかったんですけど、それができなかったんで、次はそれを目指して頑張ります」

──1Rの腕十字は自分では完全に極まったという感触でしたか。

「はい、ありました。もうこれ極まったなと思ったんですけど、タップしてくれなかったですね」

──そこを極めきれなかった時はどういう思いでしたか、試合中。

「やっぱ、グラップラーがあのポイントまで行って極めきれないって、結構絶望だと思うんですよね。結構絶望感じました。“マジか”みたいな。次にトライしないといけないっていう。やっぱり消耗もしていたので。そんな感じです」

──セコンドのイゴール・タナベ選手は病気のためにMMAができず柔術の方へ行かれていますが、彼に対する思いはありますか?

「もちろんあります。それは。彼の分もこのMMAで輝くっていう目標があるんで、これからも頑張ります。一緒に」

──試合後イゴール選手からは何かありましたか。

「“とりあえず勝ったからいい”って彼はそう言ってくれるんですよね。でも反対に良太郎さん、良太郎先生の方にはバッチリ怒られました」

──何を怒られたのですか。

「『なんでお前は下がるんだ、なんで行かないんだ、できるのに行かない』。できるのに行かないというところに一番怒っていました、先生は。2点って言われました、今日は」

──100点中で?

「2点!(苦笑)……頑張ります」

──松嶋こよみ選手がセコンドにいました。前日に試合中止になった悔しさがあったと思います。ご自身にとってもモチベーションになりましたか?

「いや、とてもなりました。あれにはちょっと裏話があって、実はイゴールが今日来たんですよ。で、今日のバックステージ立って、たぶん試合始まる3、5分前ぐらいに来たんですよ、あの人。最初はもう間に合わないってなってて。だから間に合わないからもう一枠は昨日試合飛んじゃったしってことで、いつも練習してくれてる松嶋こよみ選手に入ってもらったんですけど。そしたら急に5分前ぐらいになってダッシュで来たんで。で、もう一人、石井(基善)さんにお願いして『イゴール入れていいですか?』と『もちろん入れ『』ってことで、イゴールとこよみさんと良太郎さんというちょっと珍しい3人になったんですけど。まあ全部イゴールが悪いです」

──もともと松嶋選手の試合が予定通りあったら?

「それは普通に石井さんと良太郎さん2人だけになってました、その時は。こよみさんは空いていなかったから。でも今回は空いたからお願いして入ってもらったんですけど、そしたら急にアイツ現れたんです。イゴールはイギリスに行っていたんですよ。昨日イギリスで試合してて、終わってすぐ飛んできてくれたんですけど、『間に合うか、間に合わないか』ってずっと言ってて、もう間に合わないってなって覚悟決めてたんですけど、最後現れてくれてよかったです」

──ご自身は1Rでほぼ極まったと思っていた腕十字を凌いだ安井選手について、寝技のスキルがそれだけあると感じましたか。

「あるんじゃないですか、多分。ちょっと分かんないっスね。……でも、極めきれなかった俺が悪い。自分の実力をもっと上げるべきだなって思います」

──試合後マイクもなかったと思いますが、言い残したことは?

「いや、もうあの試合で言いたいことはないですよ。やっぱりバーって勝って言わないと。あれじゃ満足いってないんで。次に期待してほしいです」

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