卜部功也の弟子・橋本が初MMAで所英男の弟子・長野将大と対戦
2025年9月7日（日）東京・国立代々木競技場第二体育館『K-1 WORLD MAX～70kg世界最強決定トーナメント開幕戦～』の記者会見が、8月20日（水）都内にて行われた。
『HERO'S』の名称が18年ぶりに復活。HERO'Sルール -60kg契約5分3Rで橋本雷汰（ALONZA ABLAZE）vs.長野将大（リバーサルジム武蔵小杉 所プラス）が発表された。
橋本はK-1甲子園2022 -60kg優勝。2022年12月からKrushに参戦し、2024年9月の「第9代Krushフェザー級王座決定トーナメント決勝戦」で石田龍大に延長戦で惜敗するまで6連勝。2025年6月、Krushで初のオープンフィンガーグローブマッチに臨み水本悠我を3RでKOしたサウスポー。戦績は9勝（4KO）1敗2分。
長野は所英男の弟子で、MMA戦績は10勝（1KO/5SUB）6敗。2018年8月に『ZST』でデビューし、2021年12月からは『GRACHAN』を主戦場としているグラップラー。2025年3月、水谷健人にキムラロックで勝利している。
会見には橋本の師匠であるK-1 二階級制覇の卜部功也、長野の師匠でありHERO'Sが生んだスターである所も出席した。
宮田充K-1プロデューサーは「HERO'Sは中量級に特化していたので、スピードのある試合を組めないかとK-1の中で協議して、HERO'SということになるとK-1のメンバーで思い浮かんだのが所英男さんでした。HERO'Sを代表する活躍されたファイターが指導者としてファイターを育てていて。そういったお弟子さんでスタンバイしてくれる選手がいないかと打診したところ長野選手の名前が挙がりました。本来ならもっと軽い階級でやっているんですけれども、今回は60kgでスタンバイしてもらいました。K-1の中での候補は何人かいたんですが、卜部代表に相談したところ橋本選手の名前があがりました」と、このカードが組まれた経緯を説明。
長野は「K-1、HERO’Sという凄い舞台で試合が出来ることに感謝しています。所さんや桜庭さんのような人たちに何か届けるような試合をしたいと思います」、橋本は「今回K-1の舞台でMMAをやるということで、自分でもビックリしています。全然自信あるので受けさせてもらいました。今回全部が初めてで緊張するかなと思っていましたが、前回もオープンフィンガーで初めてのことばかりだったので経験を活かして今回も勝ちたいと思います」と挨拶。
続いて所は「卜部代表、相手がなかなかいなかったと思うんですけれど、ありがとうございます。長野君は、見とれちゃうような寝技をします。本当に練習も頑張って、バイトやって、生活も頑張っている子なのでこんなチャンスをいただけて嬉しいです。自分もHERO'Sで人生が変わったので、長野君もそうなればいいなと心から思っています」と、自分がHERO'Sで全国的なスターになったように、長野もHERO'Sで人生を変えて欲しいとコメント。
長野は、所がHERO'Sに出始めた頃と同じ清掃業のアルバイトをしており、当時の所と同じ“戦うフリーター”なのだという。まさに“NEXT所英男”になるかもしれない存在。所も「彼は生活の全部を格闘技に費やしてまして。この前、怪我をして家に送っていった時に部屋に入って見て…本当に頑張って欲しいと思いました。こういうチャンスがあって、凄く嬉しいです。彼は格闘技に全てを捧げています」と、昔の自分を見ているかのようだ。
卜部代表は「HERO'Sの話を聞いて、橋本に投げてどうするかということから始まりました。雷汰がやるという覚悟を決めたので、自分も一緒に戦う覚悟を決めました。あとは若い選手がリスクをとらなくなってきて、計算するようになってきました。でも、格闘技の本質は違うだろうと。無謀だろうと言われても、立ち向かうことが心に響くと思うので、一緒に戦って勝ちに行きたい」との意気込み。
互いの印象を聞かれると、長野は「サウスポーで打撃が凄く強い。組みと打撃の対決になると思っています」、橋本は「ストライカーの相手になるのかなと思ったら、めっちゃグラップラーでした。印象はめちゃ寝かせてくる人という感じです」とそれぞれ評する。
橋本は、組み技格闘技やMMAを練習した経験はあるのかと聞かれると「全然やったことがないです。打撃だけでやってきたので。でも身体の強さは自信があって。自信あるってだけで受けました」という。
試合までどこでMMAの練習をするのかと聞かれると「これです（と、岡田遼の著書『動画でよくわかる格闘技 総合格闘技MMA』の技術本を取り出す）。僕の全てがここにあります。でも、見たら『3カ月で強くなる』と書いてあって、試合まで3カ月もないです（苦笑）。でもこの3カ月を僕は2～3週間で詰め込んで強くなります。僕、そういうところ要領はいいと勝手に思っているので」と、これから本で勉強すると言って笑いをとる。
所の技術本は見つけられなかったのか、と聞かれると橋本は所に「これはどうですかね？」と聞き、所は「いいと思います」と苦笑した。
なぜ経験もないのにMMAの試合を受けたのかと聞かれると「リスクはあると思いますが、それ以上にチャンスがあると思って受けました」と勇ましい。
相手がデビュー戦で練習の経験も浅いことをどう思うかと聞かれた、16戦の経験がある長野は「でも、何をやってくるのだろうというのはあります。普通の選手はこうやってくるというのは大体決まってますけど、この選手は何をしてくるのだろうかというのがあって楽しみです」と、逆にセオリーにない動きをしてきそうで楽しみとする。
橋本の打撃については「目が良くて（相手の打撃を）もらわない選手だなと思いました」との印象。HERO'Sという舞台でどんな勝ち方をしたいかとの質問には「お客さんが“わっ！”と盛り上がるような試合がしたいです」と、所の弟子らしい答え。
所がHERO'Sデビュー戦で、圧倒的不利と見られていたアレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラをKOした奇跡のバックハンドブローでなくていいのか、とのツッコミを受けると「あ、バックハンドブローでお願いします」と笑った。
橋本はMMAの経験がないが、それでも気を付けなければいけないことは経験上どういうものがあるか、と聞かれた所は「迷いがないというか、あれもこれもではなく、今までやってきたことを信じてやってくるので、そういう選手の攻撃は怖いです。会見で初めて会って、凄くいいなと思います。絶対に凄い選手になるんだろうなっていう空気を感じています。頑張ってください（笑）」と、迷いなく攻めてくることをあげ、エールを送った。
また、橋本が生まれたのは2005年7月5日で、所がHERO'Sに初参戦してノゲイラをKOしたのが2005年7月6日だったという話でしばしの盛り上がりも。
卜部代表は、どう作戦を練るのかとの質問に「（橋本が）喋るなという感じなんで（笑）。でも、一緒に練習で作りこんでいる感じです。頭のいい選手なので、しっかりコミュニケーションをとって。僕が合わせるという感じです」とし、橋本を推薦した理由は「何かを起こしてくれるのではないかと。それだけです」と橋本の意外性に懸けたとする。
橋本は今後もMMAをやるつもりかと問われると「自分は立ち技ですけど、チャンスがあるならばやっていきたい。まだ練習しないと分からないけど、奥が深そうで楽しそうです。本を見ながら動いていこうと思っています」と二刀流に興味があるとし、向いているテクニックはありそうかと聞かれると「まだやってないので分からないです(笑)。この本も、昨日功也会長にもらいました」とした。
岡田遼の技術本を橋本に渡したのは、実は卜部代表で「岡田さんに減量セミナーをやってもらって、それでウチの選手が伸びたので信頼が出来ると思って」というのがその理由。
MMAの練習はALONZAでやると言い、「みんなと組んでやろうと思います。本能的に強い選手ばかりなので、そこで練習できると思っています」という。
どんな試合をしたいか、と聞かれると「山本KIDさんばりに飛びヒザ蹴りでKOします。たしか4秒ですよね？ 僕は3秒でKOします。ナメているわけではなく、これが理想です」と、2006年5月3日のHERO'Sで山本“KID”徳郁が宮田和幸を開始直後の飛びヒザ蹴りでKOしたシーンを再現すると大胆に言い放った。
最後に長野は「K-1という凄い舞台で試合をさせていただくので、ファンのみなさんの記憶に残る試合をしたいと思っています」、橋本は「[HERO’S一発目、僕がぶちかまします。会場で応援をお願い致します」と、それぞれメッセージを送った。
