2025年8月2日(日本時間3日)、米国ネバダ州ラスベガスのUFC APEXで開催される『UFC Fight Night: Taira vs. Park』(UFC Fight Pass/U-NEXT配信)に、日本から平良達郎(THE BLACK BELT JAPAN)と中村倫也(American Top Team)が出場する。
メインイベントのフライ級(5分5R)に出場する、同級6位の平良は当初、4位のアミル・アルバジ(イラク)と対戦予定だったが、アルバジが「医学的な許可が下りていない」として欠場。代わって1週間後にスティーブ・エルセグと対戦予定だったパク・ヒャンソン(韓国)が緊急参戦し、平良と対戦することになった。
MMA10勝無敗・UFC3連勝中のヒャンソンと、メインイベントで戦うことを決めた平良が30日(日本時間31日)会見。また同大会を配信するU-NEXTのインタビューに応じた。
アルバジ欠場で「誰が来てもいい」というメンタルをずっと保っていた
米国デンバーで岡田遼と合宿する平良達郎。(C)@The_rychiba
平良は、24年10月に、当時世界フライ級1位のブランドン・ロイヴァルと5Rの激闘を繰り広げたもののスプリット判定で惜敗。MMAキャリアで初黒星を喫した。それから10カ月。デンバーでのファイトキャンプを経て、沖縄に戻り、和田竜光、藤田大和、風間敏臣ら出稽古組とも練習。今回の試合に向けて、4週間前に再びデンバー入りして、最終合宿を行って来た。
「沖縄のメンバーと本当にいい練習ができて、そこからデンバーに移りました。現地のチームのコーチにも教えてもらいましたし、チームメイトでフライ級、バンタム級の選手を中心に、試合に向けたトレーニングを積むことができました」と、沖縄BBJとデンバーHAMMAでの練習の手応えを語った平良。
デンバーには、松根良太代表、岡田遼コーチが代わる代わる帯同し、MMAファイターでもある兄・平良龍一と、母親も前回に続きサポートした。
「今回もコロラドにお兄ちゃんとお母さんが来ていて、僕が100%トレーニングできるようにサポートしてもらっています。コロラドでのトレーニングキャンプを家族やチームメイトに支えてもらって、すごく力になっていますし、そのサポートのおかげでここまで来れました。アメリカに来て、美味しい味噌汁が飲めるっていうのも幸せに感じてるし。試合が近づくと母の方が緊張するので、緊張するのは母に任せて、僕は思いっきりこの時間を楽しみたいなっていう風に思ってます」と、計量前で頬はこけてはいるものの、リラックスした表情も見せている。
前戦で得た課題として、5Rを戦い抜くコンディショニング、そして打撃の進化の必要性を挙げていたが、再起戦に向けて、その課題と向き合ってきたという。
「前回のロイバル戦で、5分5Rの厳しさだったり、ストライキングの部分で負けてしまったので、コンディショニングやストライキングの強化をして、MMファイターとして成長して帰ってこれたかなって思ってます」と、トレナーをつけてのストレングス&コンディショニングトレーニングの強化、打撃面でもたしかな進化を感じている。
UFC PIの練習では、一回り大きくなった身体を見せるなど万全な様子だが、試合直前に対戦相手がアルバジから、韓国無敗のプロスペクト、パク・ヒャンソンに変更された。
「アルバジ選手がアウトになって、僕自身いくつかのプランをUFCから頂きました。もしかしたら試合が飛んでしまうんじゃないか、といった場面もあったのですが、“誰が来てもいい”というメンタルをずっと保っていました。1日、2日ほどUFCからの連絡を待ちながらトレーニングを続けて、とにかく誰が相手でもやるという気持ちで待っていましたね」と、平良はメインの責任もあり、試合をすることにも強い思いがあったという。
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この試合までに色々なタイプの選手と練習、それが「急遽相手が変わっても自分なら大丈夫だ」と思える、大きな理由の一つになっている
アルバジと同じなのはオーソドックス構えであることだが、背格好、試合スタイルはまったく異なる相手となった。
平良は「パク選手は勢いのある選手です。その選手に勝つことは、僕がさらに上に行くためにすごく重要です。そこはランキングがどうこうと考えるのではなく、勢いのある強い選手をここで僕が叩く、という意味でモチベーションを上げています。直前での対戦相手の変更ですが、本当に僕自身の力とチームを信じて試合に挑むだけかなって思ってます。対戦相手が誰でも、本当いろんな選手とトレーニングしてきたので、誰がきても大丈夫っていう自信があります」と、気持ちの切り替えはできている。
「チャンピオンになるためには誰が相手でも勝たないといけないですし、自分の力を試す上でも今回の試合は間違いなく必要でした。パク選手には、オファーを受けてくれて“ありがとう”という気持ちです。当日は感謝の気持ちも込めて、思いっきりぶつかりたいなと思っています」
アルバジ戦用に対策をしてきたことは、対アルバジだけに通用するものではなく、MMAファイター平良の強さを高めることにもなった。柏でフライ級GP前に扇久保博正、沖縄で和田竜光、藤田大和、風間敏臣、米国でコーリー・サンドヘーゲンのチームと練習してきたことで、自身の課題を多種多様なスタイルの相手にぶつけて、進化を果たしてきた。
「直前で対戦相手の変更がありましたけど、本当に僕自身の力とチームを信じて試合に挑むだけかなって思ってます。対戦相手が誰でも、本当いろんな選手とトレーニングしてきたので、誰がきても大丈夫っていう自信があります。
沖縄にいる時は、チームメイト以外の選手も含め、本当に日本のトップ選手たちとスパーリングができました。この試合までに色々なタイプの選手と手合わせをしてくることができましたし、それが“急遽相手が変わっても自分なら大丈夫だ”と思える、大きな理由の一つになっています」
今回対する無敗のパク・ヒャンソンは、打撃では近い距離を得意とし、特に左ボディはフィニュシュブローの強打を持つ。一方、組みのバック奪取からのボディトライアングルは、平良に似通う部部もある。得意技を持つということは、その防御方法も熟知していることになる。そこに戦いやすさ・戦いにくさはあるか。
「パク選手もストライキングが上手いですし、バックを取ってからのチョークやキープ力など、本当に自分と近いものがあるなと感じています。それがやりやすいか・やり辛いかは分かりません。
UFCで戦ってきた試合数は、本当に僕の力にそのままなってるっていうのを僕自身感じていて、前戦で負けてから本当にいいトレーニング、いい時間で作って来ることができました。その経験が今回の試合でも現れるんじゃないかなって思っています。
パク選手はまだ底が知れていない部分があると思いますが、どんな選手であっても、僕が必ず勝ちます。前回の試合から成長した姿を見せるのはもちろんですが、UFCのフライ級で自分がトップ戦線にいるんだぞ、というのをこの試合で見せたいなと思います」
APEXのケージでの5分5Rでの戦いは3度目になるが、「5分5Rですが、仕留める嗅覚を常に探して戦えば問題ないかなと思います」と、5Rを通して「仕留める」意識のなかで、相手を制したいとした。
対戦相手のパク・ヒャンソンが会見で「2Rか3RにKO」と語ったことについて聞かれた平良は、「パク選手は僕みたいなレベルの選手と戦うのは初めてだと思うし、オクタゴンの中でその考えが間違いだったと気づくのは、1Rかなって思ってます」と、気後れすることなく、強い気持ちも見せている。
自分を信じて戦うこと、そう戦えるようにこの10カ月を過ごしてきた。
「本当に自分に自信を持って戦えば、100%勝てると思っています。当日はしっかりパク選手を倒します」
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ブランドン・ロイバルvsジョシュア・ヴァンは「他人の試合でこんなに熱くなるんだ」と
UFCフライ級戦線では、かつて平良と試合が組まれかけたジョシュア・ヴァンが、ロイバルに判定勝ちで、次期コンテンダーに浮上している。
「ジョシュア・ヴァン選手がどんどん上がっていく姿、僕が試合をしていない間に登っていく姿を見て、やはり悔しいなという気持ちはありました。この前のロイバル選手との試合も、自分の試合じゃないのに“他人の試合でこんなに熱くなるんだ”と思いながら沖縄でテレビを見ていました。フライ級がこうやって盛り上がってきているのを感じているので、その波に置いていかれないように、自ら乗りに行きたいなと思っています」と、自身より2歳年下の23歳のヴァンの活躍に刺激も受けている。
王者アレッシャンドリ・パントージャと、ジョシュア・ヴァンが戦えば、「僕はパントージャ選手が有利で、勝つんじゃないかなと思っています。ヴァン選手に勢いはありますが、チャンピオンは今までも多くの勢いのある選手を相手にしてきているので。そして最終的には、僕がパントージャ選手からベルトを獲りたいなと思っています」と、目指すのはあくまで世界最高峰の頂だ。
現在、フライ級には堀口恭司や朝倉海、鶴屋怜といった日本人トップファイターが参戦し、「誰が最初にUFCのベルトを巻くのか」と期待が高まっている。
平良は、「一番最初に獲りたいという気持ちもあります。日本人かどうかを抜きにしても、やはり世界一を決める団体がUFCなので。できるだけ早く、そこにたどり着きたいです」と、自身がトップに上がることに集中している。
メディアからは、「今後、日本人選手と戦いたいという気持ちはありますか?」と問われ、「時が来れば、という感じですかね。自ら求めたりはしないですが、もし日本大会が開催された時、一番盛り上がるカードはやはり、対堀口選手や朝倉選手だと思います。人気のある選手がフライ級に集まっているので、そこも実現できたらな、という気持ちはあります」とも答えた。
APEXのメインを3回連続で務めているが、やはり大観客の前で、自身の力を示したいと願っている。
「Tモバイルアリーナで戦うっていうのは、僕自身、すごく興奮する要素ですし、APEXのメインが3回連続ということで、ここでしっかり勝って、Tモバイルアリーナとかでっかいアリーナで戦いたいなという気持ちもあります」と言い、「そのアリーナが日本でも?」と問われ、「そうですね。日本で戦うというのは僕の夢でもあるんで、できることなら来年、日本で戦いたいです」とした。
同日同大会に、中村倫也も出場する。これは、2日の中村倫也、平良達郎。翌週9日(日本時間10日)の風間敏臣vs.エライジャ・スミス、16日(日本時間17日)の朝倉海vs.ティム・エリオット、22日の鶴屋怜vs.ニャムジャルガル・トゥメンデムベレルに続く、UFC日本人ファイター5連戦の最初の試合となる。
平良は「同じ日に倫也さんが試合ということで、本当に楽しみです。昨日もホテルで会って、『絶対お互いに勝とうね』と話したので、必ず日本人2連勝を飾りたいと思います」と笑顔を見せた。
「前戦まで、そのまま届くと思っていたベルトがすごく遠くに感じたし、“またさらに負けると……”とかそういう気持ちも出てきて、負けるとちょっと後ろ向きな気持ちにもなるんだなっていうことが分かりました。だからこそ“前の負けを見返したい”という気持ちでこの10カ月、本当にずっとモチベーション高くいられました。それだけ前回の試合の負けは自分の中で大きかったんだと思います。いまはトレーニングでも“俺、強くなってるな”っていう実感があります。調子が上がってきているのも感じますし、あとは試合に臨むだけです」と、再起戦に向け、心技体が臨戦態勢にある。
最後に日本のU-NEXTで視聴するファンにメッセージとして、「8月3日にパク選手と戦います。本当に強くなった姿を見せます。応援のほど、よろしくお願いします」と語った平良。会見では「今回パク選手を倒して、もう一人トップランカーを相手に勝利して、チャンピオンを指名したいと思っています」と、頂点を見据えていることを示した。
10カ月ぶり再起戦、ランカー以上に強豪のパク・ヒャンソンを相手に、新たな平良達郎が見られるか。