2019年10月20日(日)、東京・新木場スタジオコーストで開催される「PANCRASE 309」セミファイナルにて、バンタム級で春日井たけし(志村道場/4位)が、アラン・ヒロ・ヤマニハ(ブルテリア・ボンサイ/2位)と対戦する。
ONE Championship両国大会で王者ハファエル・シウバが修斗王者の佐藤将光に敗れるなか、この試合の勝者は王座挑戦権を得ることになる。
清水俊一、福島秀和、赤尾セイジ相手に3連勝中の春日井は「PANCRASEのベルト、すごく欲しいです」と言いながらも、先の見えない時間を長く過ごした経験からか、悲壮な決意を胸に秘めていた。
僕がハファエルとやりたかった戦い方を、佐藤選手に先にやられてしまった
──前日計量は61.6kgと50gアンダーでした。減量は順調でしたか。
「試合の前々日から(東京に)入ったんですけど、予定通り順調でした」
──名古屋から計量当日に入ったのではなくて、計量の前日に東京入りしていたのですか。
「はい、昨日から。前回は計量当日に入ったのですが、今回は以前と同じように計量日の前日に入るようにしました。その方がしっかり落とせるので」
──対戦相手のヒロ・ヤマニハ選手とは計量後にハグをかわしました。
「そうですね。昔から知っていますし、ウチ(志村道場)で教えていたこともあったので、いっときは志村道場所属で、2年前くらいまでは練習もしていましたから」
──お互いに把握していますね。
「そうですね、練習では。それは互いに知っているので五分です。寝技も打撃もできるオールラウンダーですね。動きも柔らかいです」
──春日井選手は、清水俊一選手、福島秀和選手、赤尾セイジ選手を相手に3連勝中。そのうち清水選手にはギロチンチョーク、赤尾選手にはリアネキドチョークを極めて一本勝ちし、組みの強い選手にも競り勝っています。試合ごとに新たな動きも取り入れていますか。
「スタイルチェンジはしていますね。毎回、進化しています。打撃がどんどん出来るようになって、寝技も打撃も出来て穴が無くなっている。打撃の圧力には組むこともできますし、打撃でも。寝技には打撃でもいけますし、寝技でもいける」
──HEATでの試合も多いですが、このPANCRASEでバンタム級2位のヤマニハ選手を下せばタイトル戦線も見えてくると思います。
「やっぱりPANCRASEは歴史がある団体ですし、日本では修斗・DEEPと並んでデカいので、その3つのうちのひとつであるPANCRASEのベルト、すごく欲しいですね」
──そのPANCRASEのバンタム級チャンピオンのハファエル・シウバが、修斗との対抗戦で佐藤将光選手に2R TKO負けしました。ONE Championshipのルールでしたが、あの試合をどうご覧になられましたか。
「もちろん見ました。やっぱりもし僕がハファエルとやるならああいう戦い方をしたな、と感じました。ああ、先にやられちゃったな、と。細かくは言えませんが、絶対にハファエルはタックルにくるので、それをスタミナが切れるまで凌いで凌いで……あの感じは金太郎戦でも見えていたので、突破口は見えていた。佐藤さん、上手に戦ったなと思いました。あっぱれですね、素晴らしく強いです」
──春日井選手も対ハファエルはシミュレーションしていた。
「もう、こういう風になったらいいな、という試合を佐藤さんがやられたので、もうジェラシーですね(笑)。カッコいいなって。いつだったかPANCRASEの会場で会ってお話したときも強さのオーラを感じました」
──そして、あの大会では第2部の第1試合が練習仲間の久米鷹介選手でした。松本光史選手を相手に出血もしましたが、判定勝ちでした。
「勝って嬉しかったですけど、メチャメチャハラハラしました。僕が言うのも何ですけど、ちょっと固いかなと思って」
──互いにバックを奪い合ったなかで出血もあり、3Rに一気にダブルレッグでテイクダウンし、がぶり、ヒザ、バックテイクは凄まじいものを感じました。
「いや、あんなもんじゃないですよ、久米さんは。はっきり言って練習ではもっと強いですから。久米さん、まだまだ隠してますよ」
──試合でそれを出せるのが強い選手ということでしょうか。
「ちょっとあの大舞台で緊張したかもしれませんけど、やっぱり最後に競り勝つ、ほんとうに強い人だと思います」
──春日井選手も、ここ数戦がキングオブパンクラスに近づく大事な試合になります。
「そうですね。僕のいまの選手としての価値は、それほどチケットが売れているわけでもなくて、それが現状の自分の価値で、少なくとも来てくれる人には、観に来てよかったなと思ってもらえるような試合をしたい。そして価値を上げるには勝つしかないんです。……僕いま3連勝ですけど、過去には一度、10連勝して(2011年2月から2013年12月に10連勝。2014年2月の扇久保博正戦で判定0-2負け)、注目されるのかなと思ったら、そこまでじゃなかった。
だから、もう1回、10連勝しようって心に決めています。あと7試合して7勝したときに、10連勝になる、そしたら見える景色があるんじゃないのかなって。もし、それでも自分が思っている景色じゃなければ、辞めればいい。だからあと7試合頑張る、あとたった7試合なんでもう……やるしかないですよ」
──そんな決意を……でも7試合は“たった”かもしれないし、“7試合も”、かもしれない。ONE WSでは春日井選手と対戦したソン・ミンジョンが連勝しています。そういった試合も刺激になりますか。
「もちろん気になりますよ。自分のなかのモチベーションになりますし、ライバルたちが頑張っているのはすごく刺激にありますし、それでジェラシーもたなかったら選手を辞めた方がいいんで。やっぱり俺だって、という気持ちを持っていつもやっていますよ」
──そのためにも連勝を重ねると。赤尾戦は先輩後輩対決で、今回は元同門が相手でも勝ち続けるしかない。
「いま自分が出させてもらっているPANCRASEで頂点を取って、ちゃんと切符を取って……ONEじゃなくてもBellatorやUFCだってある。僕はどこまでいってもUFCが一番だと思っているので、ずっと言ってきたし、30は過ぎたけど、その一番の目標がいまだにあります。そのためにもあと7試合、勝ち続ける。僕とヒロで観ている人を巻き込むようないい試合ができたら、と思っています」