2025年6月22日(日)東京・国立代々木競技場第二体育館『THE KNOCK OUT 2025』(U-NEXT配信)にて、KNOCK OUT-REDライト級タイトルマッチ3分3R延長1Rでゴンナパー・ウィラサクレック(ウィラサクレック・フェアテックスジム)の挑戦を受ける王者・重森陽太(クロスポイント吉祥寺)のインタビューが主催者を通じて届いた。
2021年のタイトル獲得から4年を経ての初防衛戦で、ゴンナパーという強豪を迎えた王者・重森は、この大一番で何を見せようとしているのか?
自分がなりたい格闘家の姿に
──今回、強豪ゴンナパー・ウィラサクレック選手を迎えての初防衛戦となったわけですが、失礼ながらここに至るまでは決していい流れではないように思えるんですが…。
「確かに今は連敗中で、試合内容もあまり納得いく感じではないんですけど、自分では、そこは五分五分かなと思ってますね。正直、そこに関してはどっちでもよくて。もちろん乗りに乗ってる時にやれたら、そのままストンと勝てるという時もありますけど、前の試合から2カ月ぐらい空いて、その間にいろいろ反省して練習に生かすことがわりとできているんですね。ここで勝つか負けるかによってかなり変わってくるとは思うんですけど、この連敗がいい試合につながる予感がしているので、この流れに関しては自分ではそこまで気にしてないです」
──4月のカンボジアでの試合までは日程的にもかなり詰まった連戦でしたよね。それをやって良かった部分というのは?
「一番は、やっぱり挑戦できたということじゃないですかね。直近も3月のONEと4月のカンボジアは3週間切るぐらいの連戦でしたけど、どちらもすごく大きな舞台でしたし、本当に貴重な経験をさせていただいたので、やってよかったなと思っています。結果は連敗ですけど、自分の中では全然プラスだと思っています」
──その中で今回はゴンナパー戦ですが、改めてどういう試合にしたいと思っていますか?
「今回は自分のやりたいことをやろうかなと思ってますね。私は勝ちにいこうとすると頭の中がポイントゲームばっかりになっちゃうので、そこは一回置いといて…そろそろ自分の集大成かなというところもあるので、自分がなりたい格闘家の姿になれるような試合にしたいなと思っています。自分が今まで出せなかった技だったり、引き出しとして持っているんだけど今までできなかったこととか、どんどん挑戦していきたいという思いがあるので、今回はそういうところにフォーカスしていきたいですね」
──なるほど。
「特に今回は相手がゴンナパー選手なので、そういう強豪に対していい動きをするというのはすごく大事なんじゃないかと思っているので、そのステップアップにちょうどいいというか、ゴンナパー戦で自分が進化させてもらえるんじゃないかと思って、ちょっと期待しています」
──ゴンナパー対策も進んでいると思いますが、改めて、重森選手が思うゴンナパー選手の一番の強みとは?
「やっぱり、当て勘じゃないですか? パンチの強さとかはどうでもいいんですけど、当て勘がいいというのは怖いですね。『当て勘』というのは一つの表現だと思うんですけど、大事なところでしっかりと当てる能力だったり、普通はパンチを当てる展開じゃないのに急に当てにいったりとか、それこそ気持ちの強さで当てにいったりとかあると思うんですが、それこそゴンナパーはいつでも当てて倒せる能力を持っていると思っているので、そこは最初から最後まで気を抜かずにいきたいです。正直、そういう部分は対策できないところもありますけどね」
──理屈を超えているというか。
「そういう部分が『当て勘』と呼ばれるのかなと思うんですけど、ゴンナパーはやっぱりそこが優れていると思うので」
──先ほどの「やりたいことをやる」という発言からすると、かなり蹴りが多めになる?
「いや、もう何でもやりますよ。それこそいろんなことにチャレンジしていくというのがテーマなので、蹴りも蹴るし、パンチが打てそうだったら打つしという感じで、何でもやりたいと思っています。本当に勝つために選択肢を広く持って、出し惜しみせずに全部出していきたいです」
──何でも使ってとにかく勝つと?
「でも、フィニッシュのイメージは何となくできてるんですよ。そのフィニッシュまでの組み立てとか試合内容で、何でも出していきたいという感じですね」
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MMAってロジックがしっかりしているなと
──今回はREDライト級の初防衛戦になります。タイトルを獲得してから約4年になりますが、その点ではどうですか?
「『そろそろでしょ』とはずっと思いながら、いつでもできる心構えでやってきたので、『タイトルマッチか~!』みたいな思いもそんなにないですね。それにこの間、ありがたいことに古村匡平君がずっと煽ってくれているので(笑)、いつも『やることになるかな』という感じではいましたし。もちろん、その相手がゴンナパーというところで、特別感はありますけど」
──その「特別感」について、例えば去年のレンタ・ウォーワンチャイ戦の時は「ムエタイ・ライト級の日本一を決める試合」として意気込んでいましたよね。その点ゴンナパーはもっと知名度も高い強豪で、実はそういう相手との対戦は珍しいと思うんですが。
「ああ、確かに! 言われてみたら、僕自身そこはあんまり気にしていなかったかもしれないです。私は小学生の頃からずーっと伊原道場に通っていて、新日本キックでのキャリアが長かったのもあって、“本物志向”が強かったんですよね。だから相手の知名度とかはあまり気にしてなかったというか。でもK-1の選手って一般層にも知られているので、そういう層に対しても『本物がいる』ということを証明できるいいチャンスかなとは思います」
──ただゴンナパー選手に関して言えば、中身も“本物”ですし。
「その通りですね。だからこそ、ここで勝てば『分かりやすさ』と『強さ』を一気に証明できるなというのはあると思います。KNOCK OUTとか私のことを知らない人たちに届けるいいチャンスなので、そこで一つの“作品”を作り上げたいなというのはあります」
──もう一つ、12月大会でUNLIMITEDルールの戦いを経験したことで、何かその後に影響する部分はありましたか?
「シンプルに、自分のキャパが増えた感じがします。あの時は準備期間が2~3週間しかなかったんですよ。そこでMMAの練習も詰め込んだので、シンプルに練習量が倍になったんです。クロスポイントって練習量が多いので、普通でもまあまあキツいんですけど、それが倍になったので12月はけっこうガッツリやって、その経験からキャパがけっこう増えたなと。『意外と練習できるな』と思いましたし」
──普段相当やっていても、なお。
「確かに私は練習量、多いんですよ。朝も走るし、プロ練が終わった後も隣に『KNOCK OUT TRAINING CAMP』があるので、そこで補強として毎日フィジカルをやったりとかもしてるんですけど、そこでまた自分の中の『当たり前』のレベルを上げられたなとは思います。それと、MMAのよさを知りました」
──というと?
「MMAってロジックがしっかりしているなと思っていて。ムエタイはまだまだタイ人がトップで、タイ人から教わらないとなかなか技術を引き出すことができないんですけど、MMAの世界にはレスリングのプロフェッショナルとか、いろんなプロフェッショナルがいるので、言語化されている情報が多いんですよ。私は初心者なので、そういうところを一から教えてもらうことで、『ここはムエタイにも当てはめていかなきゃいけないんだな』というところも多くて。そういった面ではかなり勉強になりました。今までは何となくコカしてたり、何となく組んでいたというところをもっとロジカルに『ここがこうだとこう』みたいな感じで、頭の中で理解しながら、微妙に認識できてなかったところは質問して落とし込んだりすることができたので、MMAを学ぶことでムエタイをより深く知ることができたなというのはありますね。それが一番大きいかもしれないです」
──ちなみに、この先またUNLIMITEDには挑戦してみたいですか?
「やりたいです。ただ、相手は選びます。いきなり倉本一真選手みたいな相手とは無理ですから(笑)。やってみて分かりました。例えばヒジなしでやっているキックボクサーと『間を取ってUNLIMITEDで』とかはすごく面白いと思うんですよ。そういうところでは、UNLIMITEDに参加していきたいですね」
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この試合が一番面白いと思う
──そして今回も代々木大会というビッグマッチで、タイトルマッチだけでも4つ並んでいます。その中でもインパクトを残したいという思いは?
「もちろんですよ! 今回、MVPを獲りたいですから。というか、たぶんこの試合が一番面白いと思うんですよ。あとは私次第だと思っています。全部揃えてもらったので。メインが久井大夢君と龍聖君の試合というのは分かってるんですけど、そこを食えるカードだと思ってるので。絶対面白いんですよ、私が頑張ればなんですけど」
──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「私は6月11日生まれなので、試合当日はもう30歳なんですよ。格闘技を始めて25年になるんです。そこで集大成というか…まあ『集大成』というと終活してるみたいでイヤなんですけど…ここで一発、いい“作品”を作って、次のステップに進めればなと思うので、今回の試合で『覚醒』したところを見せたいですし、『あ、こんな選手だったんだ!』と思わせたいです。
──そういう試合をしたいと。
「はい。私、本当はもっとメチャクチャ強いはずなんですよ」
──それって、「人間は脳のポテンシャルの半分も使えていない」みたいなことですか?
「いや、それで言ったら重森陽太のテクニックはまだ20%ぐらいしか発揮できてないです。実際、もっとメチャクチャあるんですよ。だから今まで蓄積してきたものを、存分に発揮していきたいと思ってるんです。今まではそこまで使わなくても、正直、置きにいったら勝てちゃってたんですよ。だからつまんない試合になってたんですけど」
──すごい自覚ですね(笑)。
「ただそこは一回捨てて、『これが俺だ!』というのを出し惜しみせずに見せたいです」
──それは、「ゴンナパーに勝つにはそこまでやらないと」というのもありますか?
「いや……たぶん、置きにいっても全然いい勝負はできるんですよ。自分自身、まだまだ上のステップに行きたいなというのがあって。最近、「ここでなあなあでやってたら、新日本キックを脱けてまでやってる意味がないな」と思うことがあって。こんなことのために新日本キックをやめて、伊原代表に応援してもらって次のステップに進んだわけじゃないし、その示しもつかないなと。それでクロスポイントにも拾ってもらったわけなので、そこへの恩返しもしたいなと、強く思っています」
──しかし今大会は特に、選手みんなが気合いが入っているように感じます。
「最近、KNOCK OUTの選手たちはみんな気合いが入りすぎてて。いいですよね。みんなの言葉から戦う意味とか生き様とかを感じます。そういう部分で私も一つ、ドラマのようなものを試合を通じて示したいと思います。KNOCK OUTって、新しい格闘技の楽しみ方を作れるような気がしてるんですよ。選手たちもすごくいいじゃないですか。だからみんなでさらに頑張りたいですね」