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【Krush】谷川聖哉と山口翔大は何をしようとしていたのか――空手出身同士ならではの“ゼロ距離”での攻防を読み解く

2025/05/26 15:05
 2025年5月25日(日)東京・後楽園ホールで開催された『Krush.176』のメインイベントで、第3代Krushクルーザー級王座決定戦3分3R延長1Rで対戦した谷川聖哉(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)と山口翔大(GENESIS/TEAM3K)。  谷川は2016年正道会館第14回ウェイト制全日本空手道選手権大会重量級準優勝、第1回・第3回真正会全日本空手道選手権大会重量級優勝の実績を持ち、極真会館にも挑戦して2016年第33回全日本ウェイト制空手道選手権大会重量級4位、2016年第48回全日本空手道選手権大会7位入賞の成績を収めた。その実績が評価され、他流派ながら第11回全世界空手道選手権大会の日本代表にも選ばれている。  山口はフルコンタクト空手の統一大会であるJFKO全日本フルコンタクト空手道選手権で2018・2019年重量級優勝の実績を持ち、W.K.O世界大会優勝、KWF世界大会優勝、白蓮会館全日本大会5度優勝、正道会館全日本大会優勝と数多くの実績を持つ。  2人ともフルコンタクト空手で実績を残した選手であり、今回の試合は“空手家対決”とも称された。  試合は、1Rに顔面ブロックを固めて前へ出る山口に、谷川は前へ出て右ボディ。山口の右ローにも右ボディをリターンして谷川が優勢。  これは「(山口は)多分ボディは効かないって腹をくくってたと思うので、そこはしっかり(卜部)功也さんと作戦を立てていました。今回ディフェンスの距離感というのを凄く意識してやったので、この距離だったら(山口の攻撃は)避けられるなっていう距離で落ち着いて見えていて、(山口の)ボディが空くわって思ったので。ただ普通の選手だったらもうちょっと嫌な顔すると思ったんですけれど、そこは耐え切ってたのでさすがだなって思いました」と、「空手家はボディとローに強い」という自信の裏をかいた作戦だったと谷川は試合後に明かした。  2Rからは両者とも胸を合わせて膠着する場面が多く、ホールディングの注意・警告を受けた。なぜ、あのような展開になってしまったのか。  谷川は「多分、あそこで本当だったらプッシュして蹴ったりとかしたかったんですけれど、山口君も下に潜ってきて。変にあそこで動くとこういうの(胸を合わせた状態で上下に打つパンチ)はやっぱり空手で慣れてて上手かったので、そこは自分も打ち合いに行けなかったなっていう感じですかね。本当は僕も(接近戦での)与座キックとか練習してたんですけれど、結構(上体を)上げられてたので(※下から潜り込まれて上体が上がると力が入らなくなる)、(相手の空手を)意識してやったので(膠着状態が)続いちゃったかなって思います」と説明した。  つまり、フルコンタクト空手の試合でよく見られる超接近戦、もしくは胸と胸が合わさるほどの距離でも空手家はパンチを打つことが出来るので、下手に動くとそれをもらってしまうと思ったため自分から攻められなかったという。  山口も試合後コメントでこのことについて「K-1ルールの距離よりも一歩入った距離が僕の好きな距離ではあるんですけれども、その距離に入ろうとしたら谷川選手がもう一歩詰めてくるというのでお互いぶつかっちゃったって感じを何回も繰り返した。噛み合わせてくれなかったのがあっぱれだと思いました」と、山口が得意の距離になると谷川がそこからさらに詰めて距離を潰しに来ていたと話している。  空手ではその状態になると、副審が笛を鳴らして旗を振り、主審が「やめ」と声をかけて両者を離す。谷川は「ピピピってめっちゃ聞こえたんですけれど(笑)」と空手時代を思い出したと言うが、「そこでやっぱり(山口は手を隙間から)抜いて打つのが上手いので、今回特に意識して(クリンチ)際の練習はやりました。結果的に面白くはない試合になっちゃったんですけれど」と、谷川が最も警戒していた状態であったとする。 【写真】両ヒジを張って山口にゼロ距離でのパンチを打たせなかった谷川 胸を合わせて膠着状態になった時に、谷川が両ヒジを張って山口の腕を抑えるようにしていたのも、山口のショートパンチを防ぐためだった。「あれは完全に対策でやったんですけれど、そこの粘り強さはあったかなと。2Rにちょっともらったので」と、それでも山口が打ってきたのはさすがだとした。  そこでもっと早くレフェリーにブレイクして欲しかったとの気持ちはあったか、と問われると「あったんですけれど、自分で展開を作らなきゃいけないっていうのもあったので。そこで置きに行きすぎたというか、僕も“やめ”待ちになっていたというか。空手だと『離れて』ってなるんですけれど、それを待っちゃったっていうのは向こうも空手の選手で僕も空手の歴が長かったので、興行としてはどうなのかなと思いました」と、そこからの展開を作るよりもレフェリーのブレイク待ちになってしまっていたと振り返る。 【写真】空手の試合でもよく見られる、密着した状態から相手の太ももへのヒザ蹴り「空手家じゃない人って、K-1ルールに慣れている人ってあそこで気を抜くというか。待ってすぐ離れてとかプッシュしてとかも出来るんですけれど、あそこって結構空手だとマストの距離というか。なのでお互いに真剣で斬るとまでは言わないですけれど、それが出来る距離だったので止めるなら止めて欲しいですし、やらせるならプッシュして蹴るとかを許して欲しかったかもしれないです」と、ゼロ距離に慣れている空手家ならではの攻防がある距離であり、ただクリンチしていただけではなかったのでレフェリーに早くブレイクして欲しかったと話した。  山口が「僕の距離に付き合わないのが作戦だったと思います。谷川選手が試合前に言っていた『何も出来なかったわと言わせたい』という通りになったと思います」と、してやられたと振り返ったように、谷川は「今回は付き合わずに、とにかくベルトを獲るってことを意識したので内容は悪かったんですけれど、最低限日本人最強は証明できたかなと思います」と山口の距離での攻防には一切付き合わない作戦だったことも明かしている。  日本人最強の座を守るため、ベルトを獲るための他にも谷川には負けられない理由があった。それは、試合前に結婚を発表した元K-1ラウンドガールの堀尾実咲の存在だ。 「やっぱり結婚して負けたらさげまんだとか言われるし、僕が負けて言われるのはいいんですけれど、そこはやっぱり許せないので何としても勝ちたかったんで良かったです」と、負けて妻が叩かれるのだけは許せなかったとした。  そして「ずっと言ってるんですけれど、この階級は外国人が強いですし、外国人に勝ってないっていうのは変わりないので。来週K-1もあると思うので、そういうところへやっぱり行かないと。日本人として皆さんに応援してもらえるような、次は試合内容にもこだわらなきゃなと思っています」と、日本人重量級として外国人と戦っていくことを目標に掲げた。
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