MMA
インタビュー

【RTU】硬式空手世界王者からMMAへ。初黒星を経てRTUに参戦する吉田開威「技の出し方やタイミングをすごく考えているので、ずっと遠い間合いをキープできる」=5月22日(木)

2025/05/21 22:05
 2025年5月22日(木)&23日(金)の2日間に渡り20時から、4階級32名の選手が出場するトーナメント、『ROAD TO UFC シーズン4』オープニングラウンド(U-NEXT配信)が開催される。  日本からは8選手がトーナメントに出場。また、非トーナメント戦のワンマッチで2選手が参戦する。その中から、22日のフライ級トーナメントに参戦する硬式空手世界王者・吉田開威(空手道剛柔流朋武館)のインタビューがU-NEXTから届いた。 ▼第4試合 フライ級(56.7kg以下)5分3Rイン・シュアイ(17勝5敗、中国)125lbs/56.70kg吉田開威(6勝1敗、日本)125.5lbs/56.93kg  MMAストライカーの吉田は、6勝1敗の25歳。空手道剛柔流朋武館所属。サウスポー構えも空手に左右無しで硬式空手世界王者からMMAに転向。GLADIATORを主戦場とし、中国WKG&M-1 Globalにも参戦。2024年10月の上田祐起戦でスピニングバックエルボーによる2R TKOでMMA6連勝をマークした。  しかし、2025年1月にシンバートル・バットエルデネとのGLADIATORバンタム級暫定王座決定戦で、シンバートルが体重超過するなか、1Rセンタク挟みで敗れ、MMA初黒星を喫した。今回のROAD TO UFCには階級を下げてフライ級で出場する。計量は56.93kgで無事、クリア。  対するシュアイはオーソドックス構えのスイッチヒッターでMMA17勝4敗。2024年5月のROAD TO UFCでは、1回戦でキル・サホタにスプリット判定負け。その後、2024年7月にWLM Wulin Leagueで当時まだプロ1勝の中国選手にリアネイキドチョークで一本勝ちで再起を遂げている。  UFC PI上海開催、ホームで期待がかけられるシュアイを相手に、日本の吉田はMMAのなかで自身の空手を貫けるか。 子供の頃、ストラッサー起一選手の試合を見て「あれやりたい」 ──RTUにはフライ級での参戦となります。吉田選手はこれまで海外での試合も含めてバンタム級で活躍してきましたが、落とそうと思ったのは? 「世界に出て試合をしていくというタイミングが来たらフライ級に落とすということは前々から決めたうえで、日本ではバンタム級でやることも決めていました。それで今回RTUの出場が決まったので、元々の予定通りです。メリットとして、たぶんUFCのフライ級ファイターの平均身長って160cm後半あたりなので、自分の身長はフライ級としては大きい方だから(175cm)、基本的に自分がリーチを取れることからです。ファイトスタイル的にも自分はストライカーで長い距離で戦うのが得意ですし、そのほうがうまく戦えることを考えると、その長い距離のアドバンテージを取りやすいということですね」 ──想定していたとはいえ国内外を問わずどこかのタイミングで試しておかずに1階級下げることで、体重が落とせるかどうかもさることながら、いざ試合になったときに想定した力が出るかどうかなど不安な点はありませんか? 「初めて落とす体重ですが、自信はあります。自分で管理栄養士の資格も持っていて自分で管理できるようにしていますし(※56.93kgでパス)」 ──海外勢のリカバリであったり、フィジカル差なども考えると、やはり落とせるならば、自分がより大きさや長さで上回れるほうが、となりますよね。 「そうですね。MMA4戦目の時に中国(WKG & M-1 Global)で試合をして、結果は10秒で終わりはしましたけど(※吉田が中国のウー・シャオロンに1R KO勝利)、相手選手のことをかなり大きいなと感じて、組みたくないなとは思いました。だからちょっと遠くから一撃、強いのを入れてみたんですけど。世界で戦ってみて、身長が大きくて体格差のある選手がここまで落としてくるんだなっていうのをバンタム級で目の当たりにしたのでやっぱりフライ級だなと感じましたね」 ──RTU参戦にあたって、空手出身の吉田選手がいつ頃からUFCを意識していたのかを教えてください。 「最初にMMAを始めたい、やってみたいと思ったのが、小学6年ぐらいの時にストラッサー起一選手の試合を見て、馬乗りになって殴っている姿を見て、子どもながらに“あれ、やりたい”と思ったところだったんです。そのストラッサーさんが出ているところはどこなのかを聞いたらそれがUFCで、『あれが一番すごいんだよ』と教えられて、『あ、じゃあ、そこでやりたい』と思いました。  やるからにはただ有名になりたいだとか、そういうことだけではなく、一番強い人を目指したいのできっかけとしては、そこですね。MMAって特に明確にわかりやすいですよね、一番強いのはどこかと言えば、UFC。それも面白いなと思ってMMAをやりたいと思いました。たとえばキックボクシングなどになると、どこのチャンピオンが一番強いのかがそこまで明確ではない現状だと思いますが、MMAにおいてはUFCチャンピオンだったら間違いなく一番強い人なので」 ──空手をやるなかで、あるいはやりきってMMAに転向してきたというよりは幼少期からそこを目標に置いていたのですね。実際いつ頃からMMAを始めたのですか? 「中2くらいの時からMMAをやり始めてみた……といっても、その頃はMMAを一切やらずに空手の技術、打撃だけで。それで勝てはしなかったんですけど、ひたすら経験を積んでいた感じでした。そういうなかで、2、 3年くらい前にMMAの練習を初めて開始してみた、と。足りないものはそこにずっとあったので。まあただ、空手だけでやってきた経験は全然無駄ではなく、打撃の感覚としてはすごくためになっていたアマチュア時代でした」 ──感覚的には、あくまでも空手家として、異種格闘技戦的に様々なバックボーンの選手がいるMMAで、どこまで自身の空手が通用するかを試しているような感じだったのですか? 「うーん。空手家として、というような、その競技を代表して戦っていたという感覚というよりも、僕としては硬式空手というのがすごく強いルールだと思っているから、です。まあどんなルールでも強い奴はどこでも勝てるんですけど、特に硬式空手に関しては、打撃を当てるルールにプラスして、間合いを取れる。『間合いを取る』っていうことに関しては、その概念があるとないとではMMAにおいてもすごく有利に働くので、そこの間合い感覚が特に良い部分で働いていると思っています。  MMAって、遠いところで当てるっていうことが……、つまり間合いの技術がなかったとしても、最初は結構タックルとか気にしながらですし、近い間合いでいきなり打ち合うってことがまずないので、立ち上がりは遠い間合いから始まっていくのが特徴ではあると思うんですけど、これがキックボクシングとかになってくると、それが活かせず、いきなり近くで殴り合ったりという話にもなってきて。MMAにおいてはそれが少ないので、限りなく。そこが僕としてはすごくやりやすいんです」 ──そもそも空手は何歳から始めて、現在ではどれくらい練習をしているのでしょうか。 「2歳から、父が教えている道場で知らず知らずのうちに始めてたっていう感じです。空手というのは流派と組手のルールが別なのですが、うちの流派は剛柔流で、ルールは硬式空手のルールを採用して戦ってきています。空手を1週間のあいだに1回もやらないっていうのは違うなと思っていて、基本的に月曜日オフにしているのですが、そのオフの日の週1回、自分が作って指導している教室(※吉田選手は空手道剛柔流朋武館高岳支部代表)で教えるとともに、自分も空手をやる時間としています。 ──確実に築いてきた空手のバックボーンをMMAのなかで活かすことと、MMAにアジャストしていくことのバランスはどのように取っているのですか? 「MMAの3、4戦目ぐらいまではバランスが取れていなかったです。まずそもそも寝技の技術として、エスケープに関してはまだ大丈夫でも、グラップリングの技術に関してはプロのレベルとしては追いついてない状態だったので。そうさせない戦い方はしていたのですけど。だいぶアジャストさせられるようになってきたことで自分の打撃が通用するっていうのを感じ取れていますが、それでも足りない部分があります。というなかで最近はレスリングとか、グラップリング、柔術など色々な練習をやってはいるのですが、僕はどちらかというと打撃に振り切っているので、そこから極めにいくようなところには意識を持って行かず、極めるフリをしてエスケープする、というような方向に意識を持って取り組んでいます。  やっぱり、それができてやっと自分の打撃が活きるので。ゆっくりと今、本当に時間をかけて、プロの試合を戦っていく中でやっとアジャスト出来ているイメージですね。練習でいろんな方に極めてもらう……というか、まあ極められちゃうんですけど(笑)、1回極められるとエスケープ方法が分かってくるので、とにかく何回も。打撃のスパーリングでは強く当てられない分、逆に自分から寝に行ったりとか、自分から壁の展開にしたりして、そこからひたすら極められまくって。スパーリングで極められるとその状況を覚えていられてエスケープに繋がるので、いろんな状況での知らない技とかをどんどんもらってます」 ──組んでから、と言う部分は、春日井“寒天”たけしさんのところで研鑽を積んでいる、という感じでしょうか。練習パートナーとしては階級的にも日比野"エビ中"純也選手や、村元友太郎選手といった方々でしょうか……? 「そうですね。"寒天練" に来てる方々が多いのと、どちらかというと毎週ほぼ一緒にいるのは最初にMMAの練習をしに行ったガイオジムの和田(教良)選手です。試合直前の打ち込みや、追い込みにも付き合ってもらったり、練習パートナーとして一番一緒に練習する量が多いのは、和田選手です」 [nextpage] シンバートル戦はすごくいい負けだった。シュアイは僕にとっては、やりやすい ──前戦、シンバートル・バットエルデネ選手とのGLADIATORバンタム級暫定王者決定戦でMMAプロ初黒星を喫しました。先ほど組み技、寝技の練習の強化について話されていましたが、やはりこの試合での経験はターニングポイントになりましたか? 「シンバートル戦の時は、本当に絶対に1回は投げられるかなとは想定していたのですが、相手の体重超過があったとはいえ思ったよりフィジカルもめちゃくちゃ強かったですし、1回、投げられるなと思って、逆に1回自分が立ったことに関してはすごい自信になったんですけど、やっぱそれでも足りないなって、本当に特に身に染みて思ったので、試合直後からすぐもう週2、3回はレスリングみたいなイメージで、体を強くする、みたいな体の使い方であるとか、そっちに比重を置いて練習してきました。もちろん打撃の練習もやって技術的に高めはしますけど、特に追いついてない、足りない部分はレスリングや柔術、そこでのエスケープだと思ったので。シンバートル戦を終えてからは特にグラップリングであったり、スタンドでのレスリングの攻防などをメインにしています」 ──見ている側としては、あのシンバートル選手を相手にしても、吉田選手の打撃技術で1RでKOする姿を期待してしまいました。 「あそこでは、まあ単純に、明確なミスをしたので。やっちゃいけないタイミングで三日月蹴りを蹴って、そのタイミングで前に突っ込まれたり、そういうところも含めて、前回は本当にすごく”いい負け”だったんです。自分の打撃だけを当てるっていうタイミングとしては正解だったんですけど、相手がタックルに来るとか、無理やりでも入ってくるっていうタイミングを切りながら打撃を当てるってタイミングでは不正解だったなっていうタイミングで。まあ、一番最後の蹴りは単純に転んだので、本当にミスしたなって思ったんですけど」 ──あの突っ込んでくる感じや、フィジカルなど、体感していかがでしたか。トーナメント表を見ると、シンバートル選手と同じモンゴル出身の選手もいますし、先ほどおっしゃったように中国や、韓国の選手もフィジカルの強い選手が多いですよね。 「すごい強くて。まあもちろん計量で2キロオーバーしていたので実際に体重も多かったですけど、最初に脇差されて組まれた時、練習だったら全然差し返して逃げられたものを、全然外れなくて、めちゃくちゃ強いなと思って。その場でエスケープする練習はしてたんですけど、しきれずに寝かされちゃったというのはあったので。フィジカルも強いですし、突っ込んでくるにしても、打撃で来てくれたら逆に倒しやすいんですけど、打撃せずにこう、ただただ突っ込んで、ただタックルしに来てクラッチ組みに来るっていうのは、やっぱりその辺の対策はしないとな、と。やっておいてよかったなと思います」 ──トーナメント初戦の対戦相手、中国のイン・シュアイ選手について印象を教えてください。 「まず最初に試合見た時は“ヤンチャだな”とは思ったんですけど、とりあえず(笑)。イメージとしては、遠い間合いは得意じゃないなと感じました。前回のRTU1回戦の試合を見ても。まずそこを見て勝ち筋はもうあるなと感じたんですけど、やっぱりどちらかというとレスリングと近い間合いの打撃っていうイメージで、とにかくローで中に入ってきて。で、そこで中で打ち合いながら、胴タックルして、みたいな印象でした。相手もやりたいことが明確に決まっているというのはわかるんで。そこをどう対策するかを考えています」 ──ケージ際で強引に投げる場面もありましたよね。 「そうですね、ただその場での投げとか無理矢理にやるということがあっても、投げた後のことが、僕としてはすごい大事で。投げた後にその場で殴って終わったり逆に離しちゃったりっていうのが結構多くて、柔術的な技術で漬け込むようなことはなかったので。そういうのを見る限りは僕にとっては、やりやすい印象です。寝技で仕留めた試合もあったんですけど、まあ結構実力差がないと極めてない印象というか。自分としてはそのレベルだったら極められることはないと分かる感じでした」 ──煽りスキルが高いようですが、その辺は問題ないですか?(笑)。 「ああ、なんか、僕との対戦が発表された時に、SNSで煽ったけど、すぐ消してしまったんですよね?それ、見てなくて! 見たかったです(笑)。全然大丈夫なので」 ──どのような試合展開になると思いますか。 「今回は、前回のあの負けを活かして、技の出し方やタイミングをすごく考えているので、ずっと遠い間合いをキープできるかなと思います。で、間合いキープしながら、まあどこかで穴作っていって、その間に打撃差し込んで効かせて。で、最終的に何か大きなもので倒すと思います」 ──応援しているファンの皆さんにメッセージをお願いします。 「全試合KOで勝ち切りますので、応援よろしくお願いします」 [nextpage] 5月22日(木)日本時間20時~エピソード1 ▼第5試合 フェザー級(65.8kg以下)5分3Rセバスチャン・サレイ(7勝1敗、豪州)146lbs/66.22kgバーエゴン・ジェライスー(19勝6敗、中国)146lbs/66.22kg アへジャン・アイリヌアー(15勝3敗、中国) ▼第4試合 フライ級(56.7kg以下)5分3Rイン・シュアイ(17勝5敗、中国)125lbs/56.70kg※JCKフライ級トーナメント優勝、2024年RTUでキル・サホタにスプリット判定負け吉田開威(6勝1敗、日本)125.5lbs/56.93kg ▼第3試合 フェザー級(65.8kg以下)5分3R中村京一郎(5勝1敗、日本)144.5lbs/65.54kgパク・オジン(8勝1敗1分、韓国)146lbs/66.22kg※2024年9月にBlack Combatでナム・ウィチョルに1R KO勝ち。GLADIATORで田中有に一本勝ちのジョン・ハングクに12月に判定勝ち。2年ぶりフェザー級戦 ▼第2試合 フライ級(56.7kg以下)5分3R山内 渉(7勝1敗、日本)124.5lbs/56.47kgナムスライ・バトバヤル(7勝1敗、モンゴル)126lbs/57.15kg※1敗は現UFCのニャムジャルガル・ドゥメンデムベレルにMGL-1FCフライ級王座決定戦で逆転負け ▼第1試合 女子ストロー級(52.2 kg以下)フォン・シャオツァン(10勝3敗、中国)116lbs/52.62kg※2024年RTUで本野美樹に判定勝ち。シー・ミンに3R KO負け。松田亜莉紗(6勝0敗、日本)115lbs/52.16kg 5月22日(木)日本時間22時~エピソード2 ▼第5試合 フェザー級(65.8kg以下)5分3Rリー・カイウェン(14勝6敗、中国)146lbs/66.22kg※2024年2月のRTUでイージャーに一本負けソ・ドンヒョン(7勝2敗1分、韓国)145.5lbs/66.00kg※2023年12月のDEEPで上迫博仁に判定勝ち ▼第4試合 フライ級(56.7kg以下)5分3Rアグラリ(11勝1敗、中国)125lbs/56.70kgムリドル・サイキア(8勝0敗、インド)125.5lbs/56.93kg ▼第3試合 フェザー級(65.8kg以下)5分3R青井 人(14勝5敗1分、日本)144.5lbs/65.54kgユン・チャンミン(7勝2敗1分、韓国)146lbs/66.22kg※ONEでキアヌ・スッバ、キリル・ゴロベッツに判定勝ち後、2024年12月のZFN2でDouble GFC二階級制覇のパク・チャンスとドロー ▼第2試合 フライ級(56.7kg以下)5分3Rリオ・ティルト(8勝0敗、インドネシア)125lbs/56.70kg アーロン・タウ(8勝1敗、ニュージーランド)126lbs/57.15kg※タウは、2024年9月のDWCSでエライジャ・スミスに判定負け。UFCと契約したスミスはヴィンス・モラレスに判定勝ち。 ▼第1試合 ライト級(65.8kg以下)5分3Rアジズ・ハイダロフ(21勝6敗、タジキスタン)155.5lbs/70.53kgマンシャー・ケラ(8勝0敗、インド)155.5lbs/70.53kg
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