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2025年5月10日(日本時間11日)朝7時30分から、カナダ・ケベック州モントリオールのベル・センターにて『UFC 315: Muhammad vs. Della Maddalena』(U-NEXT配信)が開催される。
コメインでは、「UFC世界女子フライ級タイトルマッチ」(5分5R)として、王者ヴァレンティーナ・シェフチェンコ(キルギス)に、UFC7連勝中のマノン・フィオロ(フランス)が挑戦する。
▼UFC世界女子フライ級選手権試合 5分5R
ワレンチナ・シェフチェンコ(キルギス)24勝4敗(UFC13勝3敗)※UFC9連勝中、UFC女子王座防衛記録7(歴代1位)124lbs/56.25kg
マノン・フィオロ(フランス)12勝1敗(UFC7勝0敗)※UFC7連勝中 125lbs/56.70kg
王者シェフチェンコは、2022年6月の『UFC 275』でタイラ・サントスに5Rスプリット判定勝ちで、女子UFC史上最多連続防衛記録となる7度目の王座防衛に成功。しかし、2023年3月『UFC 285』の王座戦でアレクサ・グラッソと対戦し、スピニングバックキックを外した際にバックを奪われ、そのままネッククランクで一本負け。王座から陥落し、約5年半ぶりの敗戦となった。37歳。
2023年9月にグラッソと再戦し、フルラウンドにわたり接戦を繰り広げ、1-1の5R判定ドロー。王座再獲得ならず。2024年9月『UFC 306』のUFC世界女子フライ級タイトルマッチで王者アレクサ・グラッソとラバーマッチを行い、グラウンドで攻勢となり5R判定勝ち。王座奪還に成功し、グラッソとの戦績を1勝1敗1分とした。
UFCデビューから7連勝中のフィオロは、シェフチェンコとグラッソの3戦の間、王座挑戦を待った。2022年10月に当時1位のケイトリン・チューケイギアンに勝利してから、2年半が経ち、ようやく王座挑戦に。
2023年9月に元UFC世界女子ストロー級王者ローズ・ナマユナスと対戦し、3-0の判定勝ち。2024年3月の前戦で女子フライ級ランキング2位のエリン・ブランチフィールドと対戦し、3-0の5R判定勝ち。35歳。
ともにバックボーンは空手。テイクダウンも強いシェフチェンコに、フィオロも柔術黒帯でテイクダウンディフェンス率は90%以上。スタンドで優位に立つのは? 会見でのコメントは以下の通り。
ワレンチナ・シェフチェンコ(女子フライ級王者)
──あなたにとってはもう慣れたファイトウィークですが、今回のキャンプ、そして全体としてのファイトウィークはどうでしたか?
「素晴らしいトレーニングキャンプだったし、ファイトウィークもとてもエネルギーに満ちてるわ。自分の中で強さ、スピード、パワー、すべてが整っていて、自信に満ちてる」
──今回もエルパソでキャンプしたのですか?
「今回のキャンプは何カ所かに分けて行ったの。まずはワシントン州のピュージェット湾沿いで始めて、それからラスベガス、エルパソ、そして最後の仕上げはここモントリオールよ」
──今回の試合が正式に発表される前に、マノン・フィオロ(女子フライ級2位)はSNSでかなり積極的に試合を呼びかけていました。引退を賭けるというような発言もありましたが、この試合は、もっと早く決まって欲しかったですか?それともモントリオールでのこのタイミングが完璧?
「彼女がそこまで積極的だったとは思わないわ。ツイート1、2回くらいよ。むしろちょっと急ぎすぎた感じ。私が前の試合を終えて、たった1ヶ月しか経っていないタイミングで動いていたから。でも、彼女も必死だったんでしょうね。でも結果的には、私にとって完璧なタイミングになった。しっかり休めたし、ポリネシア、タヒチ、フィジーなど太平洋の島々を旅して新しいエネルギーを得て、それから新しいキャンプに入れたから」
──マノン・フィオロのファイターとしての印象は? 彼女も幼い頃から空手やレスリング、テコンドーといろいろ経験していて、あなたと同じように“生涯格闘家”のように見えます。
「私と彼女を比較するのは適切じゃないと思う。私はこれまで対戦相手に対して、彼女みたいに失礼な態度を取ったことなんて一度もない」
──その「失礼な発言」についても聞こうと思っていました。彼女の言動は気になりますか?
「まったく気にならない。私は5歳から武道を始めて、UFCに来る前からムエタイ、MMA、キックボクシングで17回も世界王者になってるの。これまでにいろんな性格の相手と戦って、いろんな言葉も聞いてきた。それをいちいち気にしてたら、今の自分にはなれなかった。大事なのは、周囲のノイズを遮断して、自分の目標に集中すること。それができるのが一流の証よ」
──つまり、彼女があえてあなたを挑発してPPVを売ろうとしてるとしたら、そういう行動自体が面倒だったりしますか?
「私にとっては問題じゃない。大事なのは何が重要で、何が重要じゃないかを見極めること。前回、スフィアでの試合でも、“グラフィックがすごい”、“この会場で集中できるの?”って言われたけど、私は自分のやるべきことにだけ集中してた。結局、それがファイターにとって最も重要なことなのよ」
──あなたがアマンダ・ヌネスやジャン・ウェイリー(女子ストロー級王者)の話題ばかり振られることについても聞きたいのですが、なぜファンやメディアは、今目の前の試合よりも“次”の話をしたがると思いますか?
「その質問はあなたたちメディア側が答えるべきだと思うわ(笑)。そういう前提があるのは私には分からないし、私は答えられない」
──あなたが王者だった初期の頃は、常にオッズで有利でした。でも今回はアンダードッグ扱いです。その点についてどう思いますか?
「正直、なぜそうなったかは分からない。時々、意味不明なことが起こるのよ、彼らって(笑)。でも、そんな数字に囚われていたら、頭がおかしくなっちゃうわ。だから私は、自分の内なる力と強さに集中してる。それが唯一、試合で重要なこと。過去の自分と比べても、今の私はもっと速く、強く、自信に満ちている。キャリアで一番の状態よ」
──UFCでも同じ相手と3度戦う経験は滅多にないですが、アレクサ・グラッソ(女子フライ級1位)との連戦から別の相手とやる今回、ペース感や感覚の違いに戸惑いはありますか?
「2年近く同じ相手と向き合ってきたけど、私は今ここに集中しているわ。新しい相手、新しい試合。そのリズムにももう順応できてる」
──UFCの中でも、同じ相手と3度も戦う経験は非常に珍しいです。あなたはアレクサ・グラッソ(女子フライ級1位)と2年にわたって3度戦いましたが、今回のように新しい相手と対峙するにあたって、リズムや感覚の調整は必要になりますか?
「私にとっては関係ないわ。まず、アレクサと3回戦ったのは、第2戦でジャッジのミスがあったから。あの判定が引き分けになったことで第3戦に繋がったの。もし皆が仕事をきちんとしていたら、第2戦で終わっていたはずよ。新たな相手との適応も問題ないわ。私はこれまで本当に多くのスタイルのファイターと戦ってきた。たとえアレクサとの3試合でも、それぞれ全然違う展開、戦略、テクニックだった。だから今回も相手に合わせて戦術は微調整しているけど、基本的にはすべてに備えるだけ。MMAというのは何か一つに頼る競技じゃない。打撃、グラップリング、レスリング、すべてを備えなければならない。万能なファイターであること、それが本当の強さよ」
──以前、チャンピオンベルトのルビーを埋めることを目標にしていたと思いますが、すでにそれを達成した今、次の目標は?
「次は反対側のプレートを埋めることね(笑)」
※2019年、UFCは新しい「UFCレガシー・チャンピオンシップ・ベルト」を発表。このベルトにはそれぞれ8つの石が配置されており、チャンピオンがタイトルマッチで勝利するたびに、これらの石の1つが赤いルビーに置き換わる。シェフチェンコは8つのルビーをすべて埋めた最初の王者。
──今回、特別デザインのファイトキットが用意されていて、ファンの間でも「過去最高のデザインだ」と話題です。あのデザインについて、自分ではどう思っていますか? “ブレット”はあなたのニックネームとして自然ですが、“ドラゴン”にはどんな意味がありますか?
「今回のファイトキットは、デザイナーのエリンと一緒に作り上げたの。私のアイディアを伝えて、彼がいくつかの案を出してくれて、その中から選んだの。どれも素晴らしかったけど、最終的に“ドラゴンとタイガー”を組み合わせたのよ。ドラゴンとタイガーは対極にあるけれど、同時に調和する存在。まさに“バランス”の象徴で、それは私にとっての武道そのものなの。強さとしなやかさ、進むときと引くとき、そのバランスが大切。“ブレット”はもちろん私自身を象徴していて、背景にはタイスタイルのサクヤン模様を入れてるの。タイの伝統的な護符で、タイ人のタトゥーにもよく見られるデザインよ。私のハヌマーンのタトゥーも同じスタイルで、ムエタイ時代に多くの時間をタイで過ごしたから、そういう背景を込めたの。私は辰年生まれで、ドラゴンは自分にとって特別な存在。ブレットとドラゴン、それが“私らしさ”なのよ」
──実のお姉さんであるアントニナ・シェフチェンコ(女子フライ級)が最近引退を発表しました。寂しさはありますか?それとも、彼女が新しい情熱を持ってキャリアを歩んでいることを嬉しく感じていますか?
「両方の気持ちがあるわ。彼女が今やっていることに成功しているのはすごく嬉しい。彼女はパイロットとして、今はNetJetsで働いていて、ピラタスPC-12の機長も務めていたの。今はサイテーション・ラティチュードというジェット機を飛ばしているわ。格闘技で築いたキャリアと同じように、航空の世界でもしっかり自分の道を進んでいる。でもやっぱり、彼女が私のセコンドにいてくれないのは寂しい。あらゆる時間を共有してきた存在が隣にいないのは、大きな喪失感よ」
──GSPが数日前にマノン・フィオロにスーパーマンパンチを教えていたそうですが、あなたこそスーパーマンパンチの名手ですよね。2人の選手が同じ技を出したら、ワンダーウーマンでも現れるんじゃないか?なんて冗談もありますが……。
「スーパーマンパンチ、あるいは“スーパー・ウーマン・パンチ”、それは私の好きな技の一つよ。確かに彼女は真似してくるかもしれない。でも言いたいのは、“真似はできても、本物にはなれない”ってこと」
──ヨアンナ・イェンドジェイチェクと一緒にトレーニングしていたことが話題になっていましたが、彼女とのスパーリングは自信に繋がりましたか?
「ヨアンナとは素晴らしい関係を築いてきたわ。オクタゴンでも、リングでも、何度も時間を共有してきた仲間だからこそ、お互いの成長を感じ合えるの。お互いに尊敬の念がどんどん深まっていくのを感じてる。彼女は殿堂入りファイターであり、女子フライ級の創世記を共に歩んだ存在。UFCの女子フライ級は、私と彼女がスタート地点だった。そして今、こうして同じ舞台にいて、敵ではなく同じ方向を向いて歩んでいるのは、とても素晴らしいことよ」
──マノン・フィオロとの間に、スタイルの類似性が指摘されることもありますが、似たスタイルの相手にどう備えますか?
「みんなは似てるって言うけど、私はそう思わない。せいぜい同じ構えで立っていること、それと金髪ってことくらい。それ以外に共通点なんてほとんどないわ」
──マノンは「第3ラウンドでフィニッシュする」と予想していましたが、あなたの予想は?
「自信満々で“フィニッシュする”なんて言ってるのを見ると、私はむしろ楽しみになるの。なぜなら、そういう選手が実際にオクタゴンに入って、自分の作戦がまったく通用しないと気づいたときの“あの瞬間”、それが一番気持ちいいのよ。あの“心が折れる瞬間”を見るのがね」
──ここ数年、アレクサ・グラッソ(女子フライ級1位)と多くの時間を過ごしてきました。今回のキャンプでは、マノン・フィオロという新しい相手を迎えることになりましたが、新鮮な気持ちで取り組めましたか?
「“何年も”って言われるけど、実際にはそんなに長くないのよ。全部合わせて1年半くらい。たったそれだけ。人によっては1年に1回しか試合しない選手もいるし、そう考えれば1人の相手と3試合してるのは、まぁ自然な流れとも言えるわ。時には同じ相手と何度もやることもあるし、それがこの競技の流れ。でも今回は新しい相手。そこに集中してるわ」
──とはいえ、アレクサ・グラッソも今回の大会に出場しています。まだ彼女の存在を“過去のもの”とは言い切れないかと思いますが、ナタリア・シウバ(女子フライ級5位)との試合についてはどう見ていますか?
「正直、私は自分の試合に集中してる。自分の対戦相手に全力で向き合ってるから、他の選手の試合を研究してる時間はないの」





