2024年12月26日(木)東京・TDCホールにて『SHOOT BOXING BATTLE SUMMIT-GROUND ZERO TOKYO 2024』(U-NEXT配信)が開催された。
第7試合の66.0kg契約試合では、SB日本ウェルター級王者の奥山貴大(NEX SPORTS グラップリングシュートボクサーズ名古屋/30歳)が、DEEPやRIZINで活躍する白川ダーク陸斗(JAPAN TOP TEAM/33歳)と、MMAで対戦。MMA23戦(12勝11敗1分)の白川が、MMAデビュー戦の奥山に1R 1分15秒、腕十字で一本負けする波乱が起きた。
白川はRIZINで朴光哲、青井人、山本琢也に3連勝後、中原由貴に判定負け。ライト級で矢地祐介に一本負けと2連敗も、2024年7月DEEPでの中村大介との接戦を制し、再起を遂げた。2024年11月の前戦『RIZIN LANDMARK 10 in NAGOYA』ではアゼルバイジャンの強豪マゲラム・ガサンザデに判定負け。
対する奥山は、長らくSB日本ウェルター級トップ戦線で活躍し、2022年6月のSB日本ウェルター級王座決定戦で村田義光と対決。柔道仕込みの大腰で2度のシュートポイントを奪うなどで差を付けて念願の王座を獲得した。その後はチェ・ヒョンソク、青谷秋未に勝利し、2024年6月にはイモト・ボルケーノを破り初防衛にも成功。5連勝をマークしていたが、9月のNJKFで亜維二に判定負けを喫した。戦績は17勝(6KO)7敗。
1R、先に中央を取る白川に、素足でキックパンツの奥山は左ジャブで押し戻すと、右フックをヒット。白川も右オーバーハンドを返すなどスタンドの展開から。
さらに右のフェイントからシングルレッグへ。それをロープにバウンドしながら切った奥山はがぶりから右ヒザ。右で差してロープまで押し込む白川は両差しで背中ごしにクラッチを組むと、差し上げるより両手で顔を剥がそうとする奥山は右ヒジ。
しかしボディロックで引き寄せた白川は右の小外がけでテイクダウンへ。しかし左ヒザを着いて着地した奥山は、右足で白川をまたいでバック狙いから腕十字へ。
差していた左腕を残したままで亀になる白川の顔に足もかけた奥山は左手一本で白川の左手首を掴むと、白川は身体をまたいで外そうとするが、その際で左に回した奥山は、白川を前転させて仰向けにさせて腕十字へ。
両足の間に白川のヒジは深く入っており、奥山は親指を上にして伸ばすと、白川がタップ。奥山が75秒、一本勝ちした。
試合後、リングで奥山は「白川選手、試合を受けてくれて本当にありがとうございました。MMAどうですか? いい試合できましたかね。MMAファイターとしてはまだまだなのでこれから上を目指していくので注目お願いします」とアピールした。
大番狂わせと報じられたJTT白川の一本負けだが、奥山はMMAファイターも多く練習するNEX SPORTS/グラップリングシュートボクサーズ名古屋所属。
6月のSB日本ウェルター級タイトルマッチではオープンフィンガーグローブ戦でイモト・ボルケーノに勝利し、初防衛後に「MMAをやらせてください」とアピール。
今回の白川戦前にも、「10歳から高校3年間の10年間、柔道をみっちりやっていて、その後も今のジムでは普段からMMAやグラップリングの練習には出ていました。立ち技と柔道を融合させたようなMMAができたらいいなと思っているんですけど、MMAでは道衣を着れず、違う競技になります。
最近だと、キックボクサーからMMAに転向してるケースが増えてますが、僕は上手いようにMMAにアジャストできればいいなと。僕のSBの打撃と柔道を組み合わせたMMAがどういうものになるのか注目していただけたらと思います。どんな展開になっても『こんなことができるんだ!?』と驚かせるものを見せたい。SBの時以上の危険な僕の姿をお見せします」と語っていた。
実際に、試合では白川のボディロック&小外がけテイクダウンに、柔道仕込みの強い腰を活かして背中を着くことなく残してヒザを着いて着地。この際ですかさず白川の腕を手繰りに行っている。
この際に、白川は足をかけられずにトップを奪いたかったが、またがれて腕を差したまま残して亀に。MMAデビュー戦を相手に対処が遅れたところを、奥山は逃さなかった。
試合後は、奥山は「パンチの、打撃の勝負になるかなと思っていて、組みに来るとは考えてなかったんで、ちょっと最初はびっくりしちゃいました。周りからも再三、『相手はストライカーだから』って、もう勝手にそのイメージしかついてなくて、正直試合も僕1個しか動画見てなくて、相手にもよると思うんですけどその時も全然、(白川は)組みに行ってなくて、むしろ避けていて、MMAという競技に関しては僕よりは絶対に上手いなとは思ってたんで、僕からタックルに行ったりとかっていうのは全然考えてはなかったです。
(フィニュシュは)得意のパターンっていうわけではないんですけど、最初スタンドで組みの展開の時に、向こうから投げに足かけて来てくれたんで、回るか回らないかっていうところで、一本腕が残ってたんで、うまいこと取れる形に動けたかなっていう感じですね」と、際で譲らず、白川のミスを逃さなかったことが勝因だとした。
試合前は、白川から「一方的になるんじゃないか」と煽られたが、「MMAのキャリアとしては自分よりも格上で、パンチのスピード、回転も速いストライカー。MMAデビュー戦の自分にとっては本当にもったいないくらい美味しい相手で、白川選手に対してはもう感謝の気持ちしかありません。僕と対戦することに何のメリットもなく、リスクしかない試合を受けてくれて、本当にありがとうございますという気持ちでいっぱいです」と、感謝の言葉を返す。
今後については、「MMAは考えてはいるんですけど、シュートボクシングの件もあるんで、この後どうなるんだろう、ちょっと今ここではっきり答えは出せないんですけど、MMAの練習は続けていきますね」と、継続してMMAを練習していくという。
『RIZIN.29』では、現DEEP王者の青井人にも判定勝ちしている白川を今回、1R 腕十字で下した奥山は、2018年8月に地元名古屋開催の『RIZIN.12』に出場し、70kg契約のキックルールで松倉信太郎に2R KO負けを喫している。
最後に、年末の勝者インタビューの風物詩にもなっている大晦日RIZINへの意欲について聞かれると、さすがに5日後の大会については「大晦日? 全然考えてないんですけど、もう(カードは)いっぱいじゃないですか。僕、全然そんな大きいこと言えるような立場じゃないんで、平和に年越ししようかなって(笑)」と笑顔を見せた。
「次の試合はちょっとまだ決まってないんで、次の試合が決まり次第、その時の試合に集中した練習をできたらなと思ってます」──立ち技ヴァーリトゥードとも呼ばれるシュートボクシングから、新たなMMAストライカーの誕生なるか。