2024年12月25日(水)『Breakthrough Combat02』(ザ・ワンTV YouTubeチャンネル)が開催された(※詳報・写真追加あり)。
◆Progressルールとは?
テイクダウン=2P(相手に背中を着かせた体勢、または尻からマットに倒して、トップポジションを維持した時)
※グラウンドでのボディロックが禁止。グラウンドで両手でのサブミッションを仕掛ける際の腕のクラッチは禁止→MMAで押さえて殴る部分の強化のため
リバーサル=2P(ボトムポジション『仰向け、うつ伏せ、四つん這いで背後から制されている状態等』から上下を入れ替えた時。ただし、上下が入れ替わっていてもバックグラブをされている時は除く)
スクランブル=1P(テイクダウンされた、または引き込みなどでボトムポジションになった選手が立ち上がり、相手と正対して離れた時)
バックグラブ=2P(相手の背中を制し、胴体または腿を両脚で制した時。両足フック、四の字フック)
相手が引き込んだ場合=2P
◆レフェリー判定同点の場合は以下の基準に基づき、レフェリー判定によって勝敗を決する。
1)インパクト(試合への影響・影響力)2)優越性3)支配継続時間
▼Progress暫定ウェルター級選手権試合 5分3R ※選手名からインタビュー〇森戸新士(Leos &藤田柔術/日本)王者 75.5kg[1R 4分59秒 腕十字] ※後ろ三角絞め×北岡 悟(パンクラスイズム横浜/日本)挑戦者 76.95kg
前大会で泉武志を三角絞めで破り、Progress暫定ウェルター級王座防衛に成功した森戸新士が、北岡悟の挑戦を受け、2度目の防衛戦に臨む。
日本のブラジリアン柔術界をリードする実力者で、道衣のみならずノーギでもサブオンリー、そしてProgressのようなトップ&スクランブル重視のルールでも結果を残し続ける森戸。
対する北岡のグラップリングマッチは、2013年のADCC-77kgでのゲイリー・トノン戦以降、遠ざかっていたが、2024年9月のQUINTETでTEAM RIZINの次鋒として出花崇太郎と引き分けに等しい「両者失格脱落」。作戦通り、分け役としてチームの勝利に貢献した。
そして今回の「打撃の無いMMA」とも言われるProgress参戦。日本MMA界屈指の組み技の実力者でProgressルールにおいてもケージ際の攻防とサブミッションに対する防御力の高さは絶対。ベテランが「MMAで勝つためのグラップリング」=Progressでベルト奪取に挑む。
最初は中央で組手争いの両者。距離を詰める森戸にケージを背負った北岡は、来いと誘い、森戸も中央に手招きする。
ケージを背に身体を立てる北岡に、森戸は手首を掴んで引き込み足首を掴むが、足を抜いて距離を取る北岡。シングルレッグ、アームドラッグも切られた森戸はシッティングガードで追って北岡の右足を掴むと、ベリンボロから後転して足首を掴んでのスイープへ。
スクランブルで立ち上がる北岡の右足に外掛け、外ヒールで崩すと、内側に左足を差し込み三角を組ませない北岡にヒールを解除しトップへ。
右足を掴んだままシングルレッグからバック狙いの森戸に北岡も金網に背を着けながら森戸がかけた右足を外して立とうとするが、足を手繰る北岡に正対させずにバックへ。
リバーサルとバックグラブで4Pの森戸は、バックから脇を抱えて腕十字も狙いつつ、ボクダノフの「裏十字でいい」の作戦通り、右肩に足をかけて後ろ三角絞めへ。
北岡は森戸を背負って立とうとするが、グラウンドに引き込んだ森戸が後ろ三角を絞めると、北岡の息遣いが荒くなり、最後は左腕を伸ばして絞めてタップを奪った。
Progress暫定ウェルター級王座防衛に成功した森戸は、「世界的にネームバリューのある北岡選手、試合を受けていただきありがとうございます。分かってはいたんですけど、メチャクチャ強くて、体も分厚くて極めるの時間もギリギリでも大丈夫かなと思いましたけど、なんとか極められて良かったです。
(北岡はケージを背にして戦ったが)ああいうことはやってくるだろうなと思っていたので、向こうのペースに乗らないように自分も挑発し返して、自分のペースを作れて良かったです。後ろ三角で(組んだ)足がひっかかっていて回したかったんですけど、最後逃げるために相手が回ってきたときに抜けて強い形でクラッチ組めたので、腕十字より三角でタップしたのかなと思います。
(1R残りギリギリだったが)形は結構極められる分かったように作れたけど、時間までタップしなかったら、ゴングが鳴って仕切り直しになっていたかもしれなくて、その意味では最後、腕伸ばしに行って獲りに行った感じですね。セコンドの城戸くんやグラントと作戦立てて、ポイントでも優位に、チャンスがあれば極めるときは極めようというなかで、相手が背中見せたり、中途半端な位置になったのでトップ取り返したり、バック獲ったりしました。(王者として今後は?)今年しっかり勝って終わることができたので、来年も継続的に呼んでもらえたらどんどん強い選手に挑戦していきたいと思います」と語り、最後にMVPボーナス50万円を獲得した。
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▼バンタム級 5分3R〇吉野 光(日本)61.5kg[判定3-0] ※30-27, 29-28×2×川北晏生(日本)61.55kg
吉野は、ONE Warrior Series、RIZIN Trigger、UAE Warriorsなど世界で白星を挙げている強豪。MMA12勝5敗で、UAEで2連敗を喫した後、10月30日のBTC旗揚げ大会のメインで、シンバートル・バットエルデネと対戦も、驚異的なフィジカルと粘り強い組みに予想外の判定負けを喫した。
主催者は、吉野に早々のカムバックの舞台を用意したいと考え、一度はProgressルールへの出場を打診したが、吉野はMMA出場に強い拘りを持っており、2カ月のインターバルでのMMAでの再起戦となった。
吉野は主催者を通じて、「前回、1年ぶりの試合で負けてしまい、3連敗となってしまいました。この流れを変えるためには試合をするしかないと思い、期間は短いですがすぐにMMAの試合を組んでもらえないかとお願いしました。この試合を実現してくれたBreakthrough Combat関係者の方に感謝しています。ありがとうございます」と再起の決意を語っている。
国内を代表する実力者の対戦相手を探すことは困難が伴われると予想されたが、TRIBE TOKYO MMAの川北が対戦を快諾。修斗で環太平洋バンタム級王座決定トーナメント出場が決まっていながら皮膚疾患で欠場を余儀なくされた川北にとっても、ある意味カムバックの場となる。
川北は、MMA11勝4敗3分。6つの一本勝ちを誇るグラップラーで、2023年7月のPANCRASEで髙城光弘にスプリット判定負け後、同年9月にGLADIATOR初参戦。藤原克也を1R リアネイキドチョークで極めると、同年11月に修斗でライダーHIROにアナコンダチョークで一本勝ち。2024年3月に平川智也をダースチョークで極めると、5月の前戦ではドウガーシュエにスプリット判定で勝利。現在3連勝中だ。
川北は、「今回すごく強いと評判の吉野選手が対戦相手だったので、試合を受けました。その強さを直に感じた上で、自分が勝たせてもらいます」と復帰向けて自信を見せている。
連勝から7カ月ぶりの復帰戦という大切なファイトで格上とされる吉野に挑む決断をした川北、そして再び世界を狙うためにも負けは許されない吉野。MMA人生を賭けた熱い戦いに注目だ。
1R、詰めて引手掴み崩して大内刈テイクダウンからキムラを狙う吉野。川北は正対して立ち上がりヒジで出血を誘うと、右前蹴り。
2R、詰める吉野は大外刈も残す川北をケージに詰めてシングルレッグで崩してキムラ狙いも立つ川北はヒジ。しかし左右で詰める吉野はヒザ、テイクダウントライを続ける。
3R、前に出る吉野は大内、大外刈を仕掛けて崩すが、残す川北は離れ際にヒジ、三日月蹴りも。吉野はシングルレッグ、投げのアタックを続け、スクランブルする川北に際でパウンド。川北のギロチン狙いも仰向けになって外してすぐに立ち上がり、吉野返しも使って前に。
判定3-0(30-27, 29-28×2)で勝利した吉野は「初めてカットして想像以上に滑ってプランが崩れました。なぜか入れなくて四つに拘ってしまい、最後はタックルでちょっと安全に走っちゃったかなと。素直な気持ちを言うとまず勝てて良かったです。まだまだUFCも諦めていないし、海外の大きな大会も」と語った。
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▼Progress 68kg契約 5分2R ※当日計量〇須藤拓真(X-TREME EBINA)[1R 3分24秒 ブルドッグニーバー]×中島太一(ロータス世田谷)
須藤はMMAでも7勝3敗のレコードを持つが、Level-Gでライト級王者となり、今成正和をトーホールドで破るなど国内最強の組み技師でもあり、今回はグラップラー陣営からの参戦となった。
一方、中島はケージを使ったテイクダウン&スクランブルの強さに定評があり、所属するロータス世田谷の八隅孝平代表より、Progressルール出場への働きがけを受けて両者の対戦が決まった。MMAでの前戦は2024年4月の『RIZIN.46』でキム・スーチョルに2R TKO負け。
主催者を通じて、須藤は「前回のProgressでは引き込みで、ポイントを献上しての敗北。悔しい思いをしました。立ち技が出来ないやつと思われるのも癪なので、レスリングの練習を強化しました。今回はテイクダウンしまくって塩漬けにして逆にポイント勝ちを狙おうと思います! 進化した自分を見せます!レッグハンター改め、ソルト須藤です」と、中島を相手にまさかの塩漬け宣言。
対する中島は、「足関節技のスペシャリストと戦える事にドキドキワクワクしています。足ぶっ壊されないように頑張ります!」とのコメントを寄せた。
1R、立ちレスリング勝負の中島は、須藤のシングルレッグからのバックテイクに前転、さらに反転してトップを奪うが、下から須藤は上半身を固定して両足でヒザ十字=ブルドッグニーバーを極めてタップを奪った。
試合後、須藤は「あの技で見せてスイープも使える。ガードの不利な状態からでも、ぜひ使ってください。MMAでもグラップリングでも日本の団体さん、よろしくお願いします」と語った。
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▼ミドル級 5分3R×イ・イサク(韓国)84.1kg[2R 2分33秒 リアネイキドチョーク]〇アギラン・タニ(マレーシア)83.55kg
韓国とマレーシアのミドル級対決、イ・イサクとアギラン・タニが対戦。
イサクは、KTTの新鋭で2023年9月にGladiatorで当時のミドル級チャンピオン藤井章太にTKO勝ちを収め、内々に2024年2月にGladiator Challenger Series01で三上ヘンリー大智との試合が決定していたが、The Ultimate Fighter出演が内々で決まったため同大会の出場はならず。しかし、TUF出演が無くなりGladiator CS02で戦うことも内定していた。
ところが対戦相手の負傷、本人も練習中に負傷するなど来日が延期され、今回、ついに再来日が決定した。
対するタニは、ONE Championshipで3人の日本人選手と対戦。秋山成勲に判定勝ちし、岡見勇信にスプリット判定負け。手塚裕之に3R TKO負け。その後、ジン・テホにも敗れるも、イリヤ・ストヤノフ、マゴメドムラッド・ハサエフにいずれもリアネイキドチョークで一本勝ちで2連勝。ONEを離れた後は、2024年5月のUAEWでプロ5戦無敗のアリベク・スレイマノフにギロチンチョークで一本負け。6月のロシアのRCCでサムイル・シェレストにニンジャチョークで一本負けしている。
アギランもまた、以前から日本で戦いたいと声が届いていた選手の1人で今回が初来日となる。
主催者は「なぜミドル級の国際戦なのか? そのような疑問の声は当然のように聞かれるカードかと思います。ただし国内では層の薄いミドル級にも世界を目指す選手が存在し、彼らは強くなるために一致団結して練習を行うという関係になっています。そのなかで海外挑戦を考えても、なかなか実現しない。そんな選手に国内でミドル級の国際戦を提供したい。ぜひとも、今回出場するイ・イサク選手、そしてアギラン・タニ選手と戦いたいという日本人選手が名乗りを挙げて欲しい。そのために組んだカードです」と、日本の重量級選手に国際戦のチャンスを作るためのカードと、日本ミドル級ファイターに喚起をうながしている。
『Breakthrough Combat 02』参戦に向け、イ・イサクは「コリアントップ・チームのイ・イサクです。クリスマスに試合の機会を与えてくれたBreakthrough Combatに感謝しています。今回の相手、アギラン・タニは秋山成勲選手に勝利した強者です。レスラーなので、グラウンド中心で準備しています。一方で打撃だと1RでKOできるように練習を頑張っているので、試合を楽しみにしてください」と意気込み。
対するタニは、「Breakthrough Combat02でイ・イサクと戦うことに、本当にエキサイトしている。最高のパフォーマンスを見せて、これからもっと日本で戦っていきたい」と、継続参戦に意欲を示している。
1R、ともにオーソドックス構え。タニはボデイロックから再三崩し、立つイサク左で詰めるが、イサクも右を返して前に。1R終了間際にタニがテイクダウンからニアマウントでパウンドもゴング。
2R、右を当てて前に出るタニにイサクも打ち合いから組んで首相撲ヒザ、ともに激しいスクラブル! 背中に乗り合い、前に落としてすぐにアタックへ。イサクを落としたタニは、最後の際を譲らずスタミナも切らさずバックを奪い、身体を伸ばしてリアネイキドチョークを極めた。
試合後、「序盤はテイクダウンしても立ち上がられたので、次は姿勢を崩してヒジやヒザを突いてテイクダウンし極めた」と語った。
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▼Progress71キロ契約 5分2R×城戸泰介(Leos &藤田柔術/日本)69.0kg[ポイント2-8]〇椿 飛鳥(トライデントジム/日本)70.65kg
加えて森戸の道場から城戸泰介がProgressルールで修斗世界フェザー級1位の椿飛鳥に挑戦する71kg契約マッチが対抗戦の先陣を切って組まれた。
MMA経験もある城戸は森戸の連戦を支える相棒で、全日本ノーギを茶帯で2連覇し、ASJJワールドではノーギで頂点に立っている強豪だ。
対する椿は2022年5月にHEATで実施されたProgressルールの一戦で竹浦正起と対戦しヒールフックで一本負けを喫したものの、その後も同ルールでの試合を希望していたという。MMAでも結果を残していた椿は第1回大会で一度は中川とのProgressルールでの対戦が決まったが、プロ修斗で世界王座挑戦が決まり、怪我のリスクを回避するため欠場に。
そのプロ修斗世界戦が王者SASUKEの負傷により流れ、あくまでも修斗の世界王座を目指すプロセスとして今大会の出場を望んだ。
城戸は「ずっと出たかったプProgressに参戦できてとても嬉しいです! 椿選手はMMAで実績を残している強豪なので、しっかり準備して極めることができるよう頑張ります。応援よろしくお願いします!」とコメント。
椿は「11月30日に予定されていた修斗フェザー級タイトルマッチが、相手のケガにより中止となってしまいました。Breakthrough Combat第1回大会に出場予定でしたが、その後に修斗のタイトルマッチのオファーが有り、ご相談させていただいた際に快く送り出していただいたこと改めて感謝申し上げます! 仕事が繁忙期で大変なのでサクッと終わらせて業務に戻れるよう頑張ります! 来年修斗のチャンピオンになるために弾みをつけられるような試合をできるよう頑張りますので、ご注目ください!」と意気込みを示した。
主催者は、これらの選手の起用について、「グラップリング技術の向上は打撃と同様にMMAファイターが世界で戦うために不可欠。しかし、道衣ルールやノーギでもサブオンリーでは勝敗という形で鎬を削ることは難しく、テイクダウン&スクランブル重視のProgressルールをケージのなかで戦うからこそMMAに直結する攻防を経験できる。同時に柔術家は下になることが不利となる一方で、極めへの感覚を養い、ADCCやCJIルールに活かすことが期待でき、レスリングベースのグラップラーも自身の得意分野を伸ばしつつ防御力の強化に役立つはず」と意図を説明する。
「打撃のないMMA、組み技の異種格闘技マッチ」のProgressでMMAファイターとグラップラーがどのような攻防を繰り広げるか。
1R、城戸は2度の引き込みから果敢に足関節、ストレートアームバー狙いも、椿は股を抜けさせヒザも抜き4P。城戸もスクランブルで立ち1P。
2R、引き込む城戸。椿に2P。そこからスクランブルで立ちシングルレッグの城戸に1P。しかし崩されない椿は下の城戸に潜らせず。8-2で勝利した。
試合後、椿は「今頃、コメント欄に『椿つまんねえ』と並んでいると思いますが、これでよかったです。ちょっとパウンドを打てる位置も意識していたので、次のMMAに向けていい練習ができたと思います。来年は修斗のタイトルマッチ、健闘します」と語った。
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▼フライ級 5分3R〇チェ・スングク(韓国)56.85kg[2R 0分39秒 TKO] ※右ストレート→パウンド×古賀優兵(TRIBE TOKYO MMA/日本)56.6kg
【写真】コリアン・ゾンビ所属のチェ・スングクのコーナーマンとしてUFCで引退したジョン・チャンソンが来日。ラスベガス、韓国でのZFN興行主催、そして日本と世界中を駆け回っている。
1R、ともにオーソドックス構え。ともにカーフから古賀の右にスングクは腰を落とすと古賀はさらに右。しかしスングクも右で古賀に腰を落とさせテイクダウン。古賀はバックから落としてゴング。
2R、古賀の左からの組みを右で剥がしてダウンを奪ったスングクはパウンド連打。0分39秒、TKO勝ちした。