MMA
インタビュー

【UFC】平良と対戦するアレックス・ペレス「朝倉海やヒロヤたちとの経験は素晴らしいものだった」「皆が思っている以上にタフな試合になる。全局面での準備と、死線に臨む覚悟はできている」

2024/06/15 21:06
 2024年6月15日(日本時間16日朝8時~)米国ネバダ州ラスベガスのUFC APEXにて『UFC Fight Night: Perez vs. Taira』(U-NEXT配信)が開催される。  メインイベントの5分5Rで、UFC5連勝中で13位の平良達郎(THE BLACKBELT JAPAN)と対戦する、フライ級5位のアレックス・ペレス(米国)がインタビューに応じた。  24歳の平良と対戦するアレックス・ペレスは、前戦で欠場したマネル・ケイプの代役として、強豪のマテウス・ニコラウとの試合に緊急出場。ニコラウを2R、右フックでKOに下し、トップ5ランク入りを果たした。32歳。  ペレスは、2020年11月に当時の王者デイブソン・フィゲイレードに挑戦も、1R振り向きざまのギロチンチョークで一本負け。2022年7月の再起戦も現王者のアレクサンドル・パントーハに1R、リアネイキドチョークを極められ連敗。1年8カ月ぶりの試合となった2024年3月に無敗のムハンマド・モカエフと対戦し、モカエフのテイクダウンをがぶるも、その先に繋げず判定負けとなっている。  米国ラスベガスでの練習では、JTTのビリー・ビゲロウコーチの繋がりで朝倉海、ヒロヤとも練習を重ねており、2020年以来の連戦で調子を上げて、強豪のニコラウを撃破。連敗を3で止めている。  その黒星も元王者と現王者と期待のプロスペクトだったこともあり、特に“英国の平良達郎”とも呼ばれるモカエフの強いレスリングを、ニンジャチョークやがぶりで断ち切り、打撃で攻勢になったことで、判定3-0とはいえかなりの接戦の内容だった。  そして前戦のニコラウ戦も、強いレスリングを活かした、勝負どころの速い踏み込みからの打撃でKOしており、厄介なカーフキック、大きなパンチと的確な上下の打撃がMMAの組みのなかで放たれ、6つ目のKOをマークしている。  さらに平良が得意とするサブミッションでも7つの一本勝ちを記録。ジョーダン・エスピノーサを極めた肩固め、3つのアナコンダチョーク、スタンディングギロチンチョークも含め、トップやがぶりからの極めに長けている。  一方で、寝技師でもあるフィゲイレードをテイクダウンするもギロチンチョークにタップし、パントーハにはリアネイキドチョークを極められてもいる。しかし、両者ともにベルトを巻いた王者。フィゲイレードのフィニュシュはテイクダウンされた後に亀からの正対際のハメ技で、パントーハはペレスの組みをがぶっての首相撲からボディロックテイクダウンで背中に飛び乗っている。  レスリング強者のモカエフをもってしてもテイクダウン・バックを奪うのに苦しんだペレスに、平良はいかに自身の強みで戦うことができるか。  メインイベントは5分5R。平良は、2021年7月のプロ修斗での福田龍彌戦で、5Rのチャンピオンシップの準備を経験済みだが、試合は1Rでの一本勝ち。これまで4R以降の試合は未経験だが、それはペレスも同様だ。両者にとって5R戦はどう影響するか。  平良インタビューに続いて、ファイトウィーク前半のペレスにU-NEXTが話を聞いた。 [nextpage] レスリングができることで、すごく試合をコントロールできるようになる ──いよいよ試合を控えた心境を教えてください。 「今の気分としては、最高です。いいキャンプが出来たんだ。上手く二つに分けてキャンプを張れたと思っていて、カリフォルニアでのチームオーヤマでの練習と柔術もやってきて、ラスベガスでは、マテウス・ニコラウ戦の時から(現在JTTの)ビリー(ビゲロウ)がベガスにまだいたのと、チェイス・パミとか、ジェイソン・マンリー、コーチのケイシーといった人たちと練習をしていた。時間をうまく分けてふたつのチームで、UFC PIもうまく活用していた。  コーディー・ガーブラントとか、リッキー・シモンといったような選手たちと練習しててハイレベルな選手たちと一緒にやることで、自分のトレーニングのサイクルをしっかりと保つことができる。あんまりクロストレーニングをやりすぎるのは好きじゃないから、うまくいい仲間たちでまとまって一緒にいつも練習するのはすごく上手くいくんだ」 ──実力があり気心が知れたメンバーでの練習がいいと。“仮想・平良達郎”のような選手もいたのでしょうか。 「みんながトレーニングパートナーで、つまりリッキーとかはあんまり背も高くないし、でも巧みにラウンドを進められるし、コーチやチームメイトたちが、平良のスタイルをシミュレーションしてくれた。スタンドが上手い選手たちもいれば、自分がロールできるような小柄なグラップラーたちもいたりと、平良達郎と戦うにあたって、最高のチームで取り組んでこれた。時として背がすごい高い選手もいれば、自分みたいな小柄な選手もいたりするから、ずっと全部のことに取り組んできたよ。  やっぱりグラップリングにはすごくフォーカスしているんだけれど、それはやっぱり自分がレスラーだから。割と組む方なんだけれど、キックボクシングだったりボクシングだったり、自分のMMAのために必要なことに取り組んでいて、グラップリングにばかりこだわってきたということではないのだけれど、グラップリングに対しては、単なるワークアウトとして捉えることができないというか──僕はレスリングをやって育ってきたから。ものすごくグラップラーとしてやりこんできたけれど、試合になってしまえば、何が起きるかの状況次第。だからこそ、レスリングを日常的にやることを、実際のところそれがどういうスタイルかにかかわらず、すごく大事に思っているんだ。  つまり、レスリングができることで、すごく試合をコントロールできるようになるから。ただただレスリングをやりたいがために、高校とか大学に行ったりしているんだ。大好きだからね。すごく楽しいからやっているっていう部分がある。だから、自分の人生にとってすごく大事であると同時に、それが試合においても重要になってくる、そういう感じなんだ」 (C)Billy Bigelow ──ご自身の軸であるレスリングの練習が、MMAの練習のコンディションもスキルも上げることになるということですね。 「そう。レスリング技術をどう試合のなかで生かすかというとやっぱり全ラウンドを通して、どういう展開になっていくかが当然重要で。自分はUFCでもそれ以外でも、試合のなかで一本も取ってきて、基本的には立ててきた作戦があるから、それによって、グラウンドゲームに持ち込んで相手を倒せそうだと判断していれば、何度もそれを遂行するし、テイクダウンしてパウンドアウトするというようなこともある。  すべて試合によることだから、あらゆる局面に対応できるようにしているし、それ以上に、自分がどうやると上手く試合を運べるかっていうのが一番大事なところだから。レスリングを使って最終的に打撃で仕留める場合はちょっとまた違うのだけれど、レスリングは基本的に相手をテイクダウンしてしっかり押さえ込むところにある。テイクダウンしてすぐに立たせるような場面というのもあるだろうけどね」 ──そのレスリング技術をどう使うかは相手との試合のゲームプランによると。あなたのカレッジレスリングベースの組み技の技術は、JTTの朝倉海選手やヒロヤ選手が感銘を受けていました。ニコラウ戦の試合前には、あなたもジャージの胸に日の丸をつけて臨んだそうですね。 「ああ、あの試合前にいろいろと助けてくれたからね。朝倉海たちと知り合う前にも、チームオーヤマで日本の選手に出会う機会はたくさんあって、とくに堀内佑馬は、彼が18歳の頃から知ってるから“マイ・サン”(息子)って呼んでたりする。あとはヨシ(堀江圭功)とか、本当に素晴らしいと思ったよ、やるべくしてやっているような選手だよね、UFCに彼が出ていた時に話したりもした。 (C)Billy Bigelow  それから、ビリーが日本の朝倉海とかヒロヤたちとの繋がりを作ってくれたんだけれど、『ゴング格闘技』でビリーが話してくれてるらしいけれど、その経験は本当に素晴らしいものだった。スタイルを見せてもらって、すごく勉強になったよ。やっぱり特にこの競技は、世界中のいろんな人と出会えることが素晴らしいと思っていて、“やあちょっと練習してみないか”という感じで交流できるのはいいよね。MMAのなかでみんないろんなスタイルを持ってやっているから、異なるスタイルというのをただ見られることで、異なるカルチャーだったりトレーニングの方法の違いやその背景にあるものだったり、そういうものが見えてくる。  日本の選手との出会いは、当然練習が米国とは全然違う部分もあったし、格闘技のカルチャーっていうもの自体に違いがあるなと実感した。だから、技術的なこと以上に、彼らの人となりに触れたことは自分に役に立ったと思っている」 (C)Team OYAMA ──チーム・オーヤマのジムに掲げられた各国の国旗はまさにそれを表していますね。 「まさしく。コリン・オーヤマのもとで試合をするのは、より本能的な感じで“こうしなきゃいけない”とか“ああしなきゃいけない”というものではないんだ。同じコーチのもとでみんな違うスタイルの選手たちが練習しているわけだし。自分が、いいなと思えるのは、エゴを出さずに話せる仲間たちに囲まれていること。コーチたちは、ある意味全然特別なわけではなくて、ファイトをすること、試合があるからそのためにやるべきことをやるんだというところ。グループのなかで“我々の試合”として取り組んでる。自分たちが取り組むプランは、試合をするのは自分だけれども、みんながやることで、パッドをやるんだ、ドリルをやるんだ、それらはみんなでやることだ。  グループでやりとりをして、キャンプのなかで同じところをちゃんと見ている。チームオーヤマでコリンコーチと“これはしっかりやるぞ”となったことに取り組むし、別のコーチが“これをやるぞ”と言ったことにも取り組むし、そうやって、自分のことを理解してくれているみんなとやっている。みんなが、自分の勝利のために助けてくれていて、だからキャンプを分割してもそれぞれでしっかりといい取り組みをしたうえで、それぞれをうまくまとめられているんだ」 [nextpage] 「門番」のように言われるつもりは全くない ──そして今回は、最終的に日本の平良達郎選手と戦うことになりました。 「平良は15戦無敗で、修斗王者で──覚えているんだ。彼がUFCで初めて試合をするときに、とても優れたグラップラーだとみんな認めている一方で、ストライキングはいまいちだから、組みたがるというふうに考えていたけれど、彼は実際のところ打撃の面でも非常にいいものを持っていると分かっていた。ウェルラウンダーだと思うし、ディフェンスも上手い。  みんなが思っている以上にタフな試合になると思っている。フライ級5位の自分が13位の彼と戦うというリスクについて言われるけれど、ランキング自体は彼が何位かは問題じゃないし、数字でしかないと思ってるし、将来有望な選手だという意味で彼に対してすごく大きく騒ぎ立てる部分があるとして、それに値するだけのウェルラウンダーだと思っている。だから自分としてはしっかり準備してきたんだ。勝利を手にするために。彼の柔術のスキルも認めているし、コントロール技術にしてもバックテイクの上手さにしても。  とにかく自分としては全局面に対して準備を整えてきているよ。5R戦であることも全然問題ない。5ラウンドに備えて準備をしてきたうえで、30秒で終わらせるかもしれないしフルラウンドになるかもしれない。そこは調整しようとすることはなくて、ただ試合が展開していく通りにやっていくだけだ」 ──ペレス選手は、若手の超有望株・プロスペクトの挑戦を受けることを厭わないですね。 「モカエフ戦やこの平良戦を受ける自分のことを“門番”のように言われるつもりは全くないんだよ。自分はとにかく死線に臨む、それだけなんだ。そういう立ち位置の選手たちとたまたまやることになったから周りがどう言うかは、自分には関係ない。自分は試合をしていきたいから、トップ5の選手たちの試合が詰まっている状態だったら、そういう選手たちとやってやるっていうだけだ。特にこの階級だと、トップ10にも入ればみんなタイトルからは漏れてないと思う。自分は、特に次がどうなるってことにも心配はしていない。息子や家族と少し楽しい時間を過ごしたらまた試合に身を投じるだけだ」 ──うかがった取り組みとその考えに、ペレス選手のMMAの自信を感じます。最後にこの試合を楽しみにしているファンにメッセージを。 「明日(日本時間16日)、素晴らしい日本の選手と試合ができることを光栄に思っています。この機会に自分はワクワクしてます。そしてできれば、近いうちに日本に行きたいと思っています。自分の試合を是非、U-NEXTで見てください! 応援してくれたら嬉しいです」
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