8月31日(土)、中国・広東省深セン市のユニバーシアード・スポーツ・センターにて開催される「UFCファイトナイト深セン」でUFCデビューする魅津希(日本/SERRA LONGO FIGHT TEAM)の対戦相手ウー・ヤナン(中国)が、前日計量で3ポンドオーバー。試合はヤナンがファイトマネーの30パーセントを魅津希に支払うことで実施が決定した。
緊急オファーを受けて、これまでの女子ストロー級(-52.2kg)ではなく1階級上のフライ級(-56.7kg)でのUFCデビューを決めていた魅津希。前日計量では、125ポンド(56.69キロ)でリミットをパスしていたが、対するヤナンは、王座戦以外の1ポンド・オーバー規約から3ポンド(1.36kg)も重い129ポンド(58.51kg)で計量失敗。しかし、観衆の前で終始笑顔で両手を広げてみせた。
現地でいったい何が起きていたのか。On The Road Managementで魅津希のマネージャーを務めるシュウ・ヒラタ氏に聞いた。なお、同大会は日本時間の31日16時からプレリム開始で、魅津希が登場するメインカードは19時開始予定となっている。また、日本ではUFC公式サイト日本語版にて元UFCファイターの菊野克紀をゲスト解説に迎え、全試合がライブ配信される。
計量終了時間まで落とす努力をしてほしかった
──公開計量で対戦相手ウー・ヤナンが3ポンドオーバーとアナウンスされました。魅津希選手サイドにはどのように連絡があったのでしょうか。
「10時15分の時点で、UFCから連絡があり、『計量会場に戻ってきてくれ』と言われていったら、『相手が3、4ポンドオーバーになると思う』と言われたので、『まだ45分あるからサウナに行けばいいじゃないですか』と言ったら、相手のマネージャーは『朝6時から3時間サウナに入ってたけど、200グラムしか落ちなかった』などと言ってきたんです。だから『もう汗は出ないから無理だ』と。信じ難かったです。1.36kg以上超過でそれ以上落ちないなんてありえない。それに、まだ時間があるので、計量終了時間まで落とす努力をしてほしかった。あと3ポンドで心が折れた、ということだと思います」
──残り時間があったのにギブアップした。それでいてあの公開計量での悪びれた様子もない態度だったのですか。
「我々は2日ぐらい前から、相手が計量オーバーするのでは? と思っていたんです。中国メディアとかに持ち上げられて取材を受けていた様子では、体重調整をしっかりしているように感じられなかった。最後の減量で顔つきを見ればだいたい分かるじゃないですか。それに、前戦を見ても、ケージ掴みを普通に5、6回やっている。性格的にそういったことに何の悪気も感じない選手なんだなと思ってたんです。ですから、ケージに押し混んでも、相手がケージを掴むぞ、ということを想定して試合のゲームプランも立ててきたんです」──試合をしないという選択もあったかと思います。
「魅津希選手は24歳で、実はこの6年間でUFCから5回オファーがありました。当時の陣営の時期早尚という判断で受けなかったり、怪我で受けられなかったということも続きました。今回急なオファーを受けたのは、いまのUFCでこのチャンスを逃したら、またいつになるかわからない、という理由もありました。そこで満を持して調整を行い、中国まで乗り込んできて試合をしないというのは、今後のモチベーションを考えても厳しいものがあります。
それに、試合をしないと魅津希選手はウィンボーナスをもらえる可能性も無くなるから試合をしたいという意向もありました。すぐにニューヨークにいるヘッドコーチのレイ・ロンゴと相談して、1ポンド=10%で3ポンドオーバーなら30%のペナルティを要求するということで試合には合意しました。初めは20%で、と言われたのですが、相手は2カ月以上も前から試合があることが分かっていたわけですし、逆に魅津希選手は、30日ほどの緊急オファーを受けて、しかもひとつ上の階級で試合をするわけなので、30%は譲ることができませんでした」
──地元で万全の準備をしてきているかと思えば、3ポンドオーバー。さらに、公開計量では、終始笑みを浮かべて、フェイスオフでは162cmの魅津希選手を見下ろした173cmのヤナンの大きさが目立ちました。
「全く反省している様子はなかったですね。選手にとって最後の数グラムを落とすことがどれほど大変か。魅津希選手もこれまで減量途中で体調不良に陥り、ドクターストップがかかったことがありましたが、最後まで落とす努力を続けていました。
相手選手は大きいですが、UFCでの試合を熱望してきた魅津希選手のスピードとフェイントと打撃スキルにはついていけないと陣営は判断しています。相手が勝つ展開としては、上を取って抑え込んだり、ケージに押し付つけたまま時間を割くことだと思うので、それを避けるための練習もしてきました。魅津希選手の得意のアームバーだけにこだわらず、そこからの展開も用意しています。チームとしていけると信じて、オクタゴンに送り出します」
【写真】UFCマッチメーカーのミック・メイナードと。様々な要素を考え、魅津希と陣営は試合を決断した。