前田大尊インタビュー「ハートの部分だけは俺も負けません」
――昨年から行われてきたINNOVATIONフェザー級王座決定トーナメント、決勝に勝ち残った前田選手と元山選手がタイトルマッチで決勝戦との構図です。
「準決勝戦からすぐに決勝戦ができなかったのは『マジかよ!?』とは思いましたが、結果的には、その間、有意義な経験が積めて成長できたので良かったなと」
――とにかく、7月23日、NJKFの代表選手格、一航選手にダウンを奪っての判定勝ちの大金星を上げられたことには驚きました。
「狙った左ハイキックが直撃してダウンを取れたので勝ちはしましたが、試合内容は負けたと同然と思う反省があるので『試合に勝って勝負に負けた』感がありながら、本当に良い経験でした」
――元山選手との決勝戦を前に格的には遥かに上の相手と地元でメインイベント。そのプレッシャーたるや相当のものだったのでは?
「お話をいただいた時には『おいしい!』しかなったです。けど、試合1週間前に40度を超える高熱が出てピンチで、あれには参りました」
――1週間前に40度オーバー? よくリングに上がって、しかも勝つことができましたね。
「体調は最悪で、不安しかなったですけど、沢山の方にチケットを買っていただいて、これだけのチャンスだし、欠場って選択はなかったです」
――ジムの会長やトレーナーは反対されたのでは?
「ジムに行くこともできない状態でしたから『熱が出て』とだけ報告して何とか治さねばって。言うと欠場となることは間違いないですから、そこは誤魔化しました。今だから言えますが、すみませんでした」
――そんな中で掴んだ金星、その次は、2月11日、本来ならイノベーション王者になってから挑戦権が得られるはずのWBCムエタイ日本スーパーバンタム級王座決定戦でJyosei選手とベルトを争い、結果、残念ながら判定負けとはなりましたが、驚くべきジャンプアップです。
「悔しかったです。力が出せずに1ラウンドからカーフキックをもらって攻めあぐねてしまいました。初の5回戦でしたが、練習をやりこんで自信はあったのですが」
――それにしても17歳で一航選手を撃破して、18歳でWBCムエタイ日本王座へ挑戦とは、凄まじい進撃具合です。
「今回の試合(タイトルマッチなので5回戦)の為には、良い経験だったなと前向きに捉えています」
――階級もスーパーバンタム級(55.34kg)に下がってからフェザー級(57.15kg)に戻ってきた形です。
「もう身体が大きくなってスーパーバンタム級は無理ですね。今はフェザー級こそがベストです」
――そんな紆余曲折を経て迎える元山戦、相手の印象は?
「“歴戦のつわもの”って感じですよね。まだ新人の域を出ない自分にはないものを持っていると思います。それは色々な経験だったり、気持ちの強さだったりするんでしょうけど、ハートの部分だけは、俺も負けません」
――どんな試合展開になりそうですか?
「自分はオールラウンダーを自認していますけど、この1年でレパートリーも増えたし、骨太く成長できました。例えば、Jyosei戦では、カーフをやられましたが、もう効かないし、逆に身に着けることもできたかもしれません」
――また新たな前田選手が見られそうです。
「常に『自分に何ができるのか?』『足りないのか?』など意識して、目的を明確にして練習していますから、日々進化しています。その意味でタイトルマッチが1年延びたのは、良かったと思っています」
――このベルトを奪取したその後の展望は?
「RISEチャンピオンになりたいです」
――RISEフェザー級は、イノベーション出身の安本晴翔選手をはじめ層の厚さが凄まじくハイレベルとなっています。
「ヤバいですよね。面白い。楽しみです! ここから勝ち抜いて、ONEとか海外にも乗り込むことを考えると、今からワクワクします」
――その為にもこの試合は必勝を期す?
「今、平本蓮選手がRIZINで朝倉未来選手をSNSで煽りまくったり、ブレイキングダウンでやたら乱闘したり、目立つ為ならなんでもありみたいな格闘技界になっていますけど、俺は、那須川天心選手や武尊選手のような正統派でやり抜いて、純粋な強さと試合内容で皆を惹きつけて遥かてっぺんまで駆け上がりますので、応援、よろしくお願いします」