2024年3月30日(土)東京・後楽園ホール『Krush.159』より「初代Krushミドル級王座決定トーナメント」が開幕。準決勝で対戦する谷川聖哉(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)vs.ブハリ亜輝留(WSRフェアテックス幕張)のインタビューが主催者を通じて届いた。
谷川は空手で第1回&第3回真正会全日本選手権大会重量級優勝など数多くの実績を残し、2017年5月にキックボクシングでプロデビュー。2020年3月よりK-1 GROUPに参戦すると2021年7月の「第2代Krushクルーザー級王座決定トーナメント」では決勝へ進出するもサッタリにKO負けで王座戴冠ならず。2022年4月の「K-1無差別級トーナメント」でも決勝進出を果たしたがサッタリにKOで敗れた。8月にはK-Jeeとのクルーザー級日本最強決定戦で勝利。前戦は2023年12月にリュウ・ツァーにKO負け。戦績は11勝(4KO)8敗1分。
ブハリは中学でボクシング、高校でキックボクシングを始め、グローブ空手の試合でキャリアを積む。大学卒業後に渡米し、現地ではガソリンスタンドの経営者としても活躍。帰国後にプロデビューし、K-1 GROUPには2021年2月から参戦。2023年6月の「K-1 WORLD GP初代ミドル級王座決定トーナメント」のリザーブファイトでは吉野友規をKOし、9月には大石昌輝に初黒星を付けた。戦績は7勝(5KO)2敗1分。
階級を変えて正解だったな』と思われるような試合をしたい
──クルーザー級から落としてのトーナメント参戦が発表された時は多くの人が驚いていましたが、その後、減量はいかがですか?
「もう順調に、いい感じでできてます。今はもう、直前で落とす最後のひと絞りの分だけ残してる感じですね。絶好調です」
──そんなに調子いいんですね。では、その減量の中でも練習はしっかりやれてると。
「そうですね。今までで一番いいんじゃないかってぐらいに動けてますし、ケガもなくてメチャクチャ調子がいいです。体も軽くて楽ですし」
──動けるようになると戦い方も変わってきそうですが、それもできてきている?
「はい。今までの自分は重量級の中では体格が小さかったので、一発もらったらヤバいという意識があって、どうしてもディフェンスに気持ちが行ってしまってたんですよ。K-1、Krushは倒す競技なのに、頭がディフェンス中心になってしまって。でも今は攻撃に特化した動きができるようになってきたので、やっとK-1、Krushらしい試合ができるような戦い方になった感じですね」
──そうなってくると、攻撃のバリエーションが問われることになると思うんですが、そこはいかがでしょう?
「今までは相手が自分より10センチ以上大きいのは当たり前という想定でやってきてたんですけど、ミドル級だとそこまではないから打ち合いもできますし、本当に攻撃に意識を持っていけるようになったのは大きいですね。それに、体が軽くなったので攻撃にもキレが出てきて、『90kgの時より攻撃の威力は上がってるよ』ってトレーナーとかにも言われるんですよ。そういう意味では、倒したいという気持ちが今までにも増して強くなってます」
──積極的に打ち合いに持ち込みたいぐらい?
「そうできたらいいですね。バチバチに打ち合いたいです」
──では本当に、試合の組み立て自体も今までとは変わってきそうですね。
「もともと僕はパンチより蹴りが得意なんですけど、パンチから蹴りへのつなぎとか、空手で培っていた技術も使えるようになりますし、今まで規格外のパワーの持ち主とやってきた経験も生きると思いますし、それほどのパワーの持ち主はミドル級には見当たらないので、全局面でいい形に持っていけるんじゃないかと思います」
──今言われた「経験が生きる」という話ですが、一番生きるのはどういう点ですか?
「今回特に、相手のブハリ亜輝留選手が自分のパワーをアピールしているので、そのイメージをするという点で、経験が生きてくるかなと思います」
──ブハリ選手はこの階級ではパワーがウリですが、「俺が戦ってきた相手はそんなもんじゃないぞ」と。
「そうですね。昔から『デカいヤツに打ち勝っていく』というのを身上にしていたので、ミドル級の中での少しの違いは全く問題にならないですからね。だからブハリ選手がそこをアピールするのは、ちょっと違うんじゃないかなと思いますね」
──今の練習の中で、「こう倒したい」という具体的なイメージはありますか?
「僕は『これで倒す』と決めちゃうと、そればっかりになってしまうんですよ。もともとパンチでも蹴りでも、どんな技でも倒せるという自信があるので、気付いたら相手が勝手に倒れてるという感じにしたいですね」
──さて、いよいよあと2つ勝てばチャンピオンという状況ですが。
「今までたくさんチャンスをいただいてきて生かせていないですし、階級を変えて、ここで獲れないと本当に意味がないんですよね。本当に正念場なので、頑張ります」
──ただ、今までで一番ベルトに近づいていることになるわけですよね。
「それはありますね。KRESTに移籍してきてから、食事とかも先輩たちに教わって気をつけているつもりだったんですけど、今回減量して、今までのは本当に『つもり』だけだったんだなと思うぐらい、体の調子が本当にいいんですよ。自分もやっとアスリートになった気がして、寝る時間とかも全部意識を変えていて、それが一番体に出ているので、あとは本当にベルトを獲るだけなんですよ。そのために階級を落としたわけですし。だからその覚悟を見てほしいですね」
──では、ここでタイトルを獲った先のイメージも広がっているのでは?
「K-1が『開国』を宣言して、世界と戦っていけるようになったので、もう日本人同士でどうのこうのじゃないと思うんですよ。やっぱりミドル級も強い外国人がたくさんいますし、その中でも強い日本人がいなければ『K-1』じゃないと思うので、まず自分がその第一人者としてKrushのタイトルを獲って、K-1で強い外国人と当ててもらえばまた先も見えてくると思ってます。そのためにも、この準決勝と6月の決勝は圧倒的な差を見せつけて勝ちたいですね。そのためにも今回、『ああ、谷川はやっぱり階級を変えて正解だったな』と思われるような試合をしたいと思います」
──「開国」という意味では、K-1のリングや他のリングで他団体との対抗戦も活発化しています。そこには興味は?
「ミドル級に転向しましたけど、この体で90キロとかヘビー級の選手ともやれると思ってるんですよ。だから重量級でK-1側の選手がいないとなったら僕が出てもいいと思ってます。ただ、もう日本国内には敵はいないと思っていて、他団体には意識はないので、正直、あまり考えてはいないですね。今はこの階級で世界一になるというのが一番です」
──では最後に、今回の試合に向けての“決意”を改めて教えていただけますか?
「階級を変えて一発目で、もちろんこのトーナメントにはKrushのベルトが懸かってるんですけど、この先、誰が日本人代表として世界と戦っていけるかというのを見せる戦いだとも思っているので、より『キックボクサー』として進化した谷川聖哉を見せたいと思います」
[nextpage]
減量で弱った谷川選手と戦っても意味はない
──今回、王座決定トーナメントにエントリーされて、準決勝の相手が谷川聖哉選手と最初に聞いた時にはどう思いましたか?
「谷川選手に関しては「ああ、階級落としてくるんだな」と思ったんですけど、それよりも『あ、トーナメントなのか』というのが一番だったんですよ。自分はミドル級で日本人をけっこう倒してきたし、もう相手も残っていないので、神保克哉選手との王座決定戦を希望していたんですね。だからトーナメントと聞いて『そうかー…』と思って。でも相手が谷川選手と聞いて、クルーザー級や無差別級で試合しているのはずっと見ていたので、『そんな選手が75キロに落として試合できるんだ』と思って、モチベーションが上がりました」
──もちろん今まで、谷川選手のことを対戦相手として認識したことはなかったですよね?
「そうですね。全然違う階級の選手と思っていたので、『外国人の大きい選手たちの中で頑張ってほしいな』ぐらいにしか考えてなかったです」
──カード発表会見では4人が揃って、減量途中の谷川選手とも顔を合わせましたよね。そこで思ったことは?
「最初見た時に、すごくヒョロッとなったなと思って、『ずいぶん小さくなったな』というのが正直な感想でした。写真撮影で実際に並んだ時に見てみたら、僕よりかなり小さくて、『もうこんなに減量してるんだな』と思いましたね」
──その時点では、「対戦相手」として見たと思うんですが。
「はい。谷川選手はこれまで体の大きい外国人選手を相手に戦ってきて、ちょっと体格的に厳しいと感じて階級を落としてきたと思うんですけど、あの時に自分の体と見比べて、結局このミドル級でも同じことになるんじゃないかなと思いました。特に僕相手だったら、同じことになるんじゃないかなと」
──ではそこで対戦について自信が増した?
「そうですね、もともと自信はあったんですけど、体を見比べて自分の自信も増しましたし、会見を見てくれたトレーナーとかも『客観的に見ても、体格差はかなりあるね』と言ってくれたので。もちろん谷川選手はあれだけ大きくて強い選手たちと戦ってきて、それこそ先日のK-1でもすごく強かったリュウ・ツァー選手とも戦ってたわけじゃないですか。その経験と実力にはすごくリスペクトしてますし、今まで自分が戦ってきた中では一番の実力者だと思ってるんですけど、今話したように自信はすごくありますし、いつも通りの自分の戦い方で、正面から小細工なく戦って、倒すことができると思ってます」
──警戒しないといけない点は?
「やっぱり、今言ったように重量級の強豪選手たちと戦ってきた経験じゃないですかね。その点でも今まで戦ってきた相手の中で一番だろうと思うし、そこは警戒というよりも敬意を払っていますね。技もバランスよくできるタイプだと思いますけど、自分は前回の大石昌輝戦で見せたように空手の蹴り技への対応はかなり得意なので効かされることはないですし、パンチでも負けるイメージは全く湧かないですね。谷川選手はいい選手ですけど、どこかを警戒するというよりは、いつもの自分の動きをやればという感じですかね」
──体重を落としてくることで、動きが変わってきそうな点についてはどうですか?
「そこに関してはむしろ心配なんですよね」
──心配?
「はい。身近な選手を見ても世界の選手を見ても、階級を大幅に落として成功した選手って、見たことないんですよ。ボクシングでもMMAでもキックでも。それこそ、僕の先輩の植村真弥選手も90キロから75キロに落として、パワーとか、もともとのいいところが全部なくなったように見えたんで。むしろ僕は強い選手と戦いたいので、ベストな状態の谷川選手と戦いたいと思いますね。減量で弱った谷川選手と戦っても、意味はないので」
──ここで勝つと決勝の王座決定戦ですが、会見でも一度負けている神保克哉選手との対戦を望んでいましたね。
「そうですね。僕はプロで2回負けていて、もう1人のジュリオ・セザール・モリ選手にはリベンジしたんですけど、神保選手にはまだできていないので。僕にとって、神保選手にリベンジすることは、Krushのベルトを獲ることと同じかそれ以上に大事なことなので、神保選手には絶対ここで上がってきてもらって、リベンジした上でベルトを獲りたいですね」
──決勝で再戦が実現するとしたら、以前に神保選手に負けた時の自分とは違う?
「自分でも思うし、これまでの自分の試合を見てくれれば分かると思うんですけど、前回の対戦の時はまだプロ4戦目とかだったし、あの時は必死にやってるつもりだったんですけど、今思えば練習の方法とかも全然甘かったし、今は練習も試合も何から何まで別人というぐらいですね。だから神保選手に勝つ自信は大いにあります」
──あと2つ勝てばチャンピオンです。改めて、タイトルについては?
「そうですね、ついに。キックボクシングって団体がたくさんあるので、ベルトもたくさんありますけど、Krushのチャンピオンベルトは日本で一番のベルトだと思っていて、ボクシングで言う日本チャンピオンみたいなものだと思っているので、絶対に獲ります。僕は世界一のファイターになることを目指しているんですけど、今年31歳になるので、今年中には絶対にチャンピオンになって世界に行きたいと思っています。だからこのベルトは至上命題だと思っています。しかも記念すべき初代王座なので」
──その意味では、今回トーナメントに参戦する4人の中で、自分が突出しているという自信がある?
「あります。今までの試合でも練習でもスパーリングでも、それだけの実力があるということを感じています」
──今はどんな相手とスパーリングしているんですか?
「先ほど話したように、2021年に神保選手とジュリオ・セザール選手に連敗した時に練習法から変えることにしたんです。それまではマススパーぐらいしかやってなくて、ちゃんとしたガチスパーってやってなかったんですよ。ちゃんとやらなきゃいけないなということで、いろんな選手を探して、来てもらったりしたんですね。最初は、当時パンクラス・ウェルター級のチャンピオンで、今はベラトールと契約している菊入正行選手とやっていました。彼はキックボクシングの元学生王者で、打撃もすごく強いので。最近は同じジムのリカルド・ブラボ選手とか、今回は昨年6月に対戦させてもらった吉野友規選手にも来てもらっています。あと、ひと階級下でK-1 GROUPに参戦している森田奈男樹選手とか。そんな感じでMMA、キック、空手といろんなタイプの選手とやらせてもらってますね。今4連勝中で2年ぐらい負けてないんですけど、それはそのガチスパーで急成長したおかげという感触がありますね」
──強い選手ばかりですもんね。
「正直、試合より練習の方がキツいんですよ(笑)。だから自信はすごくあります」
──では最後に、今回の試合への“決意”を改めて教えていただけますか?
「今回は僕がKrushミドル級の初代王者になると同時に、まだ唯一負けを取り返せていない神保克哉選手にリベンジを果たす大事なトーナメントです。しかも準決勝の相手は上の階級から下げてきた実力者の谷川選手なので、この壁を超えられたら自分がもっと強くなれるんだろうなと思ってすごく楽しみなので、リベンジとベルトが最終目標ではあるんですけど、今は谷川選手を倒すことが何より楽しみで、そこに全力を捧げているので、必ずKOで勝てると思います」