2024年3月23日(日本時間24日)、米国ネバダ州ラスベガスのUFC APEXにて『UFC Fight Night: Ribas vs. Namajunas』が開催される。
メインイベントは、女子フライ級(5分5R)で、アマンダ・ヒバス(ブラジル・125.5lbs/56.93kg) とローズ・ナマユナス(米国・125.5lbs/56.93kg)が対戦する。前日計量は両者ともにパス。
ヒバスはランキング8位。ストロー級とフライ級の両階級で戦い、前戦はストロー級でルアナ・ピニェーロを後ろ廻し蹴りからのラッシュでTKO勝ち。柔術・柔道がバックボーンで首投げを得意とする。
対するナマユナスは元ストロー級王者。今回がフライ級2戦目。UFC14戦中7戦をタイトルマッチで戦っている強豪で、2023年9月にフライ級に上げ、2位のマノン・フィオロと対戦も初回に人差し指を骨折、判定負けを喫している。
ともにストロー級でも戦う両者によるフライ級戦で、初のメインに臨むアマンダ・ヒバスに聞いた。
なお試合の模様は、日本時間24日(日)朝8時にスタート予定。11時に始まるメインカード5試合を含む全試合が『U-NEXT』でライブ配信される。
ミノタウロから『なぜ戦わないのか?』って問われて──
──お元気ですか?
「元気、元気よ! トレーニングしてたから髪の毛がこんなんで(笑)」
──全然問題ないですよ(笑)。今回のラスベガス大会に向け、フロリダのATTではなく、地元ブラジル・ミナスジェライス州のバルジニャで練習したようですね。
「質問の前に伝えたいのだけど、皆さんのインタビューを受けられることが本当に嬉しいの!! 私の夢は日本に行くことだし、私は柔道から始めたから……だから日本の人と会話できていると思うと本当に嬉しくて!!!落ち着かないと。
えーと、質問の答えね。今回は私から地元で練習がしたいとお願いしたの。やっぱり私が生まれた場所だし、地元の人々にもし世界で戦いたいのであれば、どこに住んでいようと、どんなトレーニングをしていようとできることを証明したかったの。ハードワークをこなして、全身全霊を注げばできるってね」
──バルジニャのアカデミア・ヒバスファミリーですね。ところで、バルジニャといえば、格闘家のあなたとコーヒーと、そしてエイリアンが有名です。宇宙人を見たことも?
「バルジニャのコーヒーとフードは本当に最高! そしてエイリアンは私は見たことないけど、私の祖母はエイリアンのタトゥーを足に入れているのよ。彼女が言うには、クッキーを食べていた時に小さい生き物が木の上にいて、クッキーでおびき寄せたらしいんだけど、それは本当に奇妙な生き物だったと。それからタトゥーを入れたみたい。町にはエイリアンのバスがあるし、町全体を見学できるエイリアンツアーもあって素敵だよ」
──さきほど仰った通り、あなたのバックボーンは柔道で、ブラジル選手権でも優勝しています。講道館がある日本にも来たことがあるのですか。
「無いの。日本に行くことが私の夢で、ずっと前から日本に行きたいと父に話しているけど、大会の機会がなかった。『ドラゴンボール』の悟空のいる日本に行くことはみんなとてもクールだと言っていたから本当に行きたくて。そう、作者の鳥山明先生が亡くなられたことも聞いてとても悲しいよ。ブラジルでは、子供の頃、学校に行くとお昼の時間に『ドラゴンボール』がテレビで流されていた。だから私と同世代の皆にとって、『ドラゴンボール』を見ることは習慣だったんだ。そんな日本にいつか行けることを願ってる。私には2人のセンセイがいるんだけど、1人は日本で生まれて家族とブラジルにやってきて、もう1人のルーカス先生は何度も日本を訪れているよ」
──あなたの得意技のヘッドロックスロー、“腰車”と言った方がいいですかね。投げてもバックを取られる可能性があるなか、投げて袈裟固めにならず上になる場面も見られました。MMAのなかで柔道の投げ技はどこまで有効でしょうか。
「もちろん有効だよ。腰車のように相手を背中に背負うことは簡単ではないけど、柔道は足も使うから、テイクダウンを狙ってくる相手に対して有利だと思う。柔道では足をとったり、腰に乗せたり、首を取る方法を学んだ。私にとって柔道からMMAに行くのはベストだと感じている。レスリングでは足にいくテイクダウンが主になるし、柔道の足技、担ぎ技も使い方次第でテイクダウンから押さえ込みに繋がる。柔道家がMMAに行ったとき、よいベースになるし、何より他とは違う精神があると思う」
──今回の相手ナマユナスは、アウトボクシングや蹴り技も得意とし、その打ち返しにニータップなどのテイクダウンも混ぜてきます。彼女に対していかに近づいて、あなたの武器であるプレッシャーをかけられるでしょうか。
「自信に満ちている。私の父は常に『もし伝説になりたいなら、レジェンドをまず倒さないといけない』と言っていて。私にとって今がその時だと思うし、沢山トレーニングもした。試合では自分の距離で、自分の武器で戦わないといけない。彼女に距離を取らせて彼女のタイミングで戦うような事をしないように集中している。
実はね、UFCのポスターに最初にサインをした時から、いつもポスターの中央に自分が写っている事を想像してきたの。だから今日はポスターにサインする日だったんだけど、自分の顔が大きく写ってるから、とても特別な日になったよ。こんな特別な機会に恵まれたことを嬉しく思う」
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父は『柔術がしたいなら最初に柔道をしなくてはだめだ』と
──メインイベンターならではのことですね。ところで、今回の試合はあなたの組み技もさることながら、そこに至るスタンドが大きなキーになると思います。前戦のピニェーロ戦でのスピニングヒールキックでのKOは、伏線があったように感じます。最後のアゴに決めた後ろ廻し蹴りでピニェーロはガードを下げに行ってました。
「その通りで、あの少し前に私がボディにスピニングヒールキックを入れて、ピニェーロは腹を効かされた。だから、もう一度スピニングしたときに彼女はボディをガードして、軌道が違うハイキックをもらったとわけ」
──空手かムエタイの経験もあるのですか。
「ほとんど無いの! ただ父はもともとムエタイをやっていてそこから柔道や柔術を始めた。私は柔術で格闘技の人生をスタートさせたんだけど、小さい頃からムエタイも少し触れたけど、あまり好きではなかったの。父がムエタイの対戦相手に男の子を用意したんだけど、相手が私を攻撃してきたときに痛いからすごく腹が立って、ヘリコプターみたいに手を広げてパンチを出すみたいな技をした(笑)皆、『何をやってるの!』ってなって、それで柔術だけになったんだけど、柔術もやっぱりハードだったから一回、辞めてしまったの。普通の女の子に一度なりたいからってダンスを始めた。
でも、友達が格闘技であちこち行って試合をしているのを見て、何か物足りない感じがしていた。だからやっぱり父に柔術に戻りたいと言ったの。でも彼は、『柔術がしたいなら最初に柔道をしなくてはだめだ』と言った。『柔術が上達するから』って。そのときは柔道は好きじゃなくて、“柔道は投げるだけじゃん!”って思っていたの。それで柔道を始めたんだけど、立ちから試合をすることは私にとって大きな意味があった。それから14年間別の都市に住んでいてたくさんの試合をしたし、お金も稼ぐようになった。
19歳位の頃かな、柔道はとても上手くなったと思うんだけど、怪我が多くて。それで母や父にもう怪我は嫌だし家に帰りたいと言って実家に戻ったの。もう何のスポーツもやりたくなかった。両親もそれを許してくれた。でもある時、また友達から影響を受けるんだけど。MMAのアマチュア選手の友人が、『MMAの試合を見に来れば?』って誘って、そこから心に火が付いたね。そこにはミノタウロ(アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ)も来てくれて、彼らも『なぜ戦わないのか?』って私に聞いた。だからすぐに了承したよ。父は驚いていたけどね(笑)。それからラスベガスで開催されるMMAのアマチュア大会に出場して勝ったりして、そこからは“MMAにプロポーズ”して一緒に過ごしている感じ」
──いまはMMAと相思相愛のように感じます。あなたは、MMAで基本オーソドックス構えですが、スイッチしても戦います。柔道のときは利き手を前に出していたのでしょうか。
「柔道ではオーソドックス構えで戦っていたの。でもヒザを負傷してから変えた。先生からは打ち込みはベースでするべきだって言われながらも、試合では逆で構えてやって見せつけたりしてたから皆に『クレイジーだ』と言われたよ。MMAではオーソドックススタンスだけど、ケイトリン・チュケイギアンとの試合で上腕二頭筋を痛めてしまって。でも試合を諦めることをしたくなかったから、戦いに適応しなくてはいけなかった。だって想像してみて、ランキングに入っていない私がフライ級の1位の相手と戦う機会をもらえたんだから。父に、『腕1本だろうが足1本だろうが戦うべきだ』って話して、そこから今のスイッチスタンスの戦い方が生まれたの」
──あなたのチュケイギアン戦、そしてメイシー・バーバー戦も、そういった覚悟が感じられる試合でした。今回のローズ・ナマユナスはどんな試合になるでしょうか。
「ただの心ではなく、よい心の部分も見せたいし賢い選手であることも見せたい。私はローズ・ナマユナスのファンだし、彼女は賢いファイターだと思う。そして私はもうちょっとコーチの言っていることを聞く必要があるわね(笑)。私の場合、時々自分の心に従って動いてしまうときがあるから。彼らの言うことに耳を傾けて、この試合が私のものだって証明したい」
──日本からも試合を楽しみにしています。そしていつか待望の来日を。
「フゥ~。本当に行きたい! ミノタウロとも話していたんだけど、2年前くらいに彼がUFCのドキュメンタリーのために日本を訪れていたんだけど、『連れてって!』って何度も言っていたの。それでxxxxxxxxxxxx!(興奮しすぎて何を言っているか不明に)」
──後半はよく聞き取れませんでしたが、来日への熱い思いだけは伝わってきました(笑)。最後に日本のファンにメッセージを。
「日本の皆さん、いつも応援のメッセージをありがとう。私は皆さんの文化を本当にリスペクトしています。先生から日本のあらゆることを学んだからこそ、自分もそれを身に着けたいと思ったんだ。あなたたちがあなたたちらしくいてくれてありがとう。良い模範を示してくれたから今私はそれらを心に持つことができています。週末の私の試合も、日本からぜひU-NEXTで見てください!」