2023年12月9日(日本時間10日午前9時30分~)に米国ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXにて開催される『UFC Fight Night: Song vs. Gutierrez』(U-NEXT配信)のプレリミナリー・カードに、現在UFC4戦全勝の平良達郎(THEパラエストラ沖縄)が出場する。
対戦相手はデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ出身のストライカー、カルロス・ヘルナンデス(米国)。
この試合に勝てば、日本出身のUFCファイターとしては、2014年5月に水垣偉弥がマークしたUFC5連勝に並ぶ平良は、自身の無敗記録(現在14戦無敗)の更新、さらには、今後のUFCフライ級ランカーとの試合に向けて、再び負けられない一戦に臨む。
ラスベガス入りした平良に、米国エレベーションファイトチームでの練習、6日の福田龍彌の試合、盟友・鈴木千裕の活躍、そしてUFC5戦目について、聞いた(U-NEXT提供)。
相手に山場を作らせずにコントロールするなかでフィニッシュを
@ryota_matsune
──試合まであと3日となりました、現在の心境は?
「体重調整も上手くいっていますし、いつもより自分自身がリラックスできているな、と感じていて。……うん、本当にリラックスしています!」
──リラックスできているのは、これまでの試合や出稽古ですっかりラスベガスが「ホーム」になっているというところでしょうか?
「そうですね(笑)。練習環境もすごくいいですし、スタッフの皆さんも優しいので、そう感じられる部分もあります。でもやはり“やるべきことをやってきた”というのが一番大きいですね。あとはもう試合をやるだけだ」と、気持ちの整理がついている感じです。
──同門の旭那拳選手(10勝4敗)との練習風景もソーシャルメディアに上がっていましたが、今回同行されたのはTHEパラエストラ沖縄の松根良太代表の意向なのですか? それとも平良選手の希望で?
「松根さんと話し合って『誰か一人、ジムから連れて行きたいね』と話していました。それで、僕は旭那選手のことを “拳さん” と呼んでいるのですけれど、『拳さんがいいです!』とお願いして、一緒に来てもらっています。松根さんからも『UFCに一緒に行くのはいい経験になるから』ということで。拳さんは本当に僕が初心者の頃、ジムに行き始めた初日からずっと、毎日練習に行ったら道場にいるという先輩でしたので、道場のなかでも一番古い兄貴分というか、お兄ちゃん的存在です。拳さんがいることで心強いですし、安心感もあります」
──そしてこれからもう一人の兄貴分、岡田遼選手も合流してセコンドに付かれるのですよね。
「はい!」
(C)Zuffa LLC/UFC
──今回対戦するカルロス・ヘルナンデス選手の印象を教えてください。
「第一印象は『足を使って、ボクシングする選手』。ストライキングを好む選手なのだなというイメージを持っています」
──ストライカーですが、1発で倒すという結果よりも判定、しかもスプリットで競り合った試合を制している印象です。打ち合いのなかでポイントを稼いでいくような戦い方については、どのように感じていますか?
「そうですね。過去の試合を見ても爆発力があるタイプではなくて。相手からすると無理に行きすぎちゃって、それを耐えられてしまって判定まで行った結果、スプリットでヘルナンデス選手に取られてしまうという。そういうパターンが想定しうるので、自分としては試合をフィニッシュし、判定まで行かせないということはもちろんですし、ラウンドを支配するということも考えています。僕の前戦(エドガー・チャイレス戦)が結構相手にもチャンスを与えた試合だったので、そういう、相手に山場を作らせずに自分がコントロールする……なかで、フィニッシュします!(笑)」
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エレベーションファイトチームでの練習以降、「試合と練習を近づけること」を意識してきた
【写真】コーリー・サンドヘーゲンと練習する平良達郎 @tatsurotaira
──しっかりコントロールするなかで、堂々のフィニッシュ宣言ですね。出稽古先のコロラドのエレベーションファイトチームでヘルナンデス選手を知る選手(チェペ・マリスカル)にアドバイスももらってきたそうですが、そうやって外から得てきたものを帰国後はどのように沖縄での練習に組み込んだり、松根さんたちと共有して組み立ててきましたか?
「練習方法の話で言うと、向こうではコーチが仕切って、セミナーのような形で最初にテクニックのクラスがあり、それからスパーリングのクラスがあったりという感じなのですが、そういうメニューを自分で組み立てなくてはいけないので、“どういう練習が必要か”を考えて、向こうで学んできた使えそうなことをやっていました。向こうで習ってきたものを頭で整理することと、この試合について必要な武器について“自分には何が必要なのか”ということをすごく考える時間が多くなってきた気がします」
──具体的にどういう点を課題として取り組んできましたか?
「試合と練習を近づけるということと、あとはあまりしてこなかったパウンドのイメージなども、スパーリングでも、押さえて一本という展開のなかでもしっかりとパウンドを混ぜて相手にダメージを与えてポイントを取ることなども意識して練習していました」
──しっかりポイントを取るというお話で、先ほども前回のエドガー・チャイレス戦での反省点をご自身で挙げていたとおり、ユナニマス判定勝利ではありましたが、危ない場面があり、スコアを見ると3Rは相手に取られていました。今回のヘルナンデス戦に向けてという意味でも、ああいう「ヒヤッと」させられる場面が命取りになることがあると思います。前戦で平良選手のなかで思うようにいかなかった部分をきっちり修正してきた感じでしょうか。
「そうですね、そういうところには向き合ってきました。自分にはちょっと“譲る”というか、相手にやらせて最終的には自分の流れにするというヘンな癖があるので、しっかり手前で対処するとか、松根さんたちとも話し合って、“相手が落ち着く時間を減らす”ということを意識してやってきました」
(C)Zuffa LLC/UFC
──そういった成長を踏まえて、どんな試合を見せたいと思っていますか?
「……(真顔で)見ている人たちからは、この試合が終わったあと、『平良に早く上位ランカーとやらせろ!』という暴動が起きると思いますね」
──暴動というのは物騒ですが(笑)、それだけの試合を見せてやろうという意欲が伝わってきました。
「そうですね。今回ここで勝てなければブレーキがかかってしまいますし、ずっと上に行くためには落とせない試合というのが続いていくので、しっかり勝って、“平良とこの選手がやったらどうなるんだろう?”と、見ている人たちがわくわくするような、幻想を抱かせる試合をしたいです」
──ところで、今回で5戦目となります。改めてこのUFCという舞台で戦うということとは?
「僕が憧れていた場所で戦えている幸せというものを感じます。今日もUFC PI(パフォーマンス・インスティテュート)で練習してきて、何度訪れてもすごい施設だと思いますし、そこにある湯船に浸かりながら『UFC』というロゴを眺めて、“ああ、素晴らしい……!”と思っていました(笑)。UFCで戦えていることに感謝をしながら、日本を背負って戦おうと思っています。毎回毎回“ここがUFCだ!”って思いますよね」
──そうしてUFCで試合を重ねてきて、ご自身の無敗記録の更新はもちろん、日本人選手で「5連勝」というのは水垣偉弥さんの記録とも並びます。さらに現在はフライ級でのランク入りも見据えているというなかで、1試合ごとの重みが増していますか。
「水垣さんとは戦っている相手も違いますので数字だけをとってどうこうは言えないですが、自分自身はベルトを獲るために、ランク入りをして順位もどんどん早く上げていかなくてはいけないですし、本当に、タイトルに早く近づきたいという焦りを感じています。なので、できるだけ早くどんどんランカー達とやっていきたいという欲が高まっている感じです」
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福田選手の試合を見ながら、ああ、あのタイプか──って
(C)U-NEXT
──なかなか決まらないランカー戦は見ている側としても待ち遠しい状況ではありますが、先日、ESPNが発表している「世界のアンダー25のMMAファイター」のなかで4位にランクインしました。実力が認められて評価が伴ってきた実感はありますか?
「それがどこまですごいのかは正直よくわからなかったのですが(笑)、次回は1位になるように頑張ります(笑)!」
──ちなみに2位がライバルのムハンマド・モカエフ(UFCフライ級9位)選手です。やはりこういう企画でも早く追い抜きたいですか。
「(顔をしかめて)厳しい現実ですね……、はい」
──モカエフ選手のようなレスリングの強い相手とこれから戦っていくことと関連して。日本時間で6日の夜に、カザフスタンの『Naiza FC 55』で、かつて平良選手が対戦した福田龍彌選手が地元出身のディアス・エレンガイポフ選手の王座に挑戦し、完封負けを喫しました。あの試合はご覧になりましたか?
「はい、5Rぜんぶ見ました。福田選手としては、しっかり立ったらすぐ圧をかけたりと、ご自分がやるべきことをやっていたと思うので、本当に相手選手が強かったというところに尽きると思います。僕はMMAでもレスリング出身の選手というのは線引きしているところがあるのですが、フィジカルなども変わってくる印象もあって。
エレベーション・ファイトチームにも、カザフスタンの選手がいてONEの元フライ級王者のカイラット・アクメトフ選手や、UFCファイターで17戦無敗のアザット・マクスム選手と一緒に練習していたので、どちらをとってもカザフスタンの選手はレスリングがすごく強くて、福田選手の試合を見ながら“ああ、あのタイプか……”って思ったのですけど。ずっとレスリングをし続ける持久力もありますし、福田選手の試合を通して、自分もそういう選手にも対応していかなくてはいけないと感じていました。もちろんいろんなバックボーンはありますので、あらゆるタイプを攻略していく姿を見せたいですね」
──同い年の鈴木千裕選手は、アゼルバイジャンの地でやはりMMAレスリングに長けたヴガール・ケラモフ選手にKO勝利でRIZIN王者となりました。刺激を受けていますか。
「千裕くんの活躍を見ていて、あのタイトルマッチは番狂わせというか、ひっくりかえす試合だったと思うのですけれど、同級生として、そして一緒に練習した身として、アツいものを、そして勇気をもらえる試合でした。“僕も頑張ろう!”っていう気持ちになりました!」
──これからは自分たちのような若い世代が盛り上げていくんだ、と。
「そうですね。とくにUFCフライ級は王者のアレクサンドル・パントーハ選手や1位のブランドン・モレノ選手をはじめとして、本当に昔から名前があるベテラン選手たちが多いので、新しい、若手の時代としてランキングを勝ち進みたいと思います」
──ベテラン対若手といえば、平良選手と同じ大会で同階級のティム・エリオットvs.ス・ムダルジ戦もあります。
「どちらもやりたい選手だったので、意識して見てしまいますね。どちらが勝つか……」
──ずばり予想は?
「ス・ムダルジ選手が勝っちゃうのかな? と。(※当初ス・ムダルジが対戦する予定だったのはアラン・ナシメントだったので)ナシメント選手が勝つと予想していましたが、エリオット戦であればス・ムダルジ選手が勝利するのではないかと思います」
──最後に、試合をでご覧になる皆さんにメッセージをお願いします!
「皆さん、僕は日本時間の日曜日の朝に試合をします。しっかり成長した姿を見せて、爆発的な勝利をあげて帰ってきますので、応援よろしくお願いします!」
◆平良達郎THEパラエストラ沖縄所属|第8代修斗フライ級王者14勝無敗(UFC4勝無敗、ファイトボーナス(技能賞)2回)出身地:日本/沖縄県スタンス:オーソドックス年齢:23歳身長:170.2cm体重:56.7kg(フライ級)リーチ:177.8cmプロデビュー:2018年
◆平良・UFC戦績
2023年7月9日『UFC 290』〇[判定3-0]×エドガー・チャイレス
2023年2月5日『UFCファイトナイト・ラスベガス68』〇[1R 4分20秒トライアングルアームバー]×ヘスス・アギラー
2022年10月16日『UFCファイトナイト・ラスベガス62』〇[2R 4分19秒 腕十字]×C.J.ベルガラ
2022年5月15日『UFCファイトナイト・ラスベガス54』〇[判定3-0]×カルロス・カンデラリオ
◆カルロス・ヘルナンデスVFSアカデミー所属|フージャー・ファイト・クラブ(HFC)フライ級王者9勝2敗(UFC本戦2勝1敗)出身地:アメリカ/シカゴスタンス:オーソドックス年齢:30歳身長:172.7cm体重:56.7kg(フライ級)リーチ:170.2cmプロデビュー:2017年
◆ヘルナンデス・UFC戦績
2023年6月18日『UFCファイトナイト・ラスベガス75』〇[テクニカル判定]×デニス・ボンダー
2023年1月15日『UFCファイトナイト・ラスベガス67』×[1R 3分16秒 リアネイキドチョーク]〇アラン・ナシメント
2022年2月27日『UFCファイトナイト・ラスベガス49』〇[判定2-1]×ビクトル・アルタミラノ
2021年10月6日『DWCS 5.6』〇[判定2-1]×ダニエル・バレス