2023年12月2日(日本時間3日)米国テキサス州オースティンのムーディーセンターにて『UFC Fight Night: Dariush vs.Tsarukyan』(U-NEXT配信)が開催され、プレリミナリーファイトでUFC初の「2試合連続スラムKO」決着が記録された。
一つ目は、第4試合のライト級戦。
▼ライト級 5分3R〇ドラッカー・クロース(米国)14勝2敗(UFC8勝2敗)[1R 1分41秒 KO] ※スラム×ジョー・ソレッキ(米国)13勝4敗(UFC5勝2敗)
ヒザ前十字靭帯の損傷から1年4カ月ぶりの試合となる、UFC7勝2敗のドラッカー・クロースが、柔術黒帯でUFC5勝1敗の好戦績のジョー・ソレッキと対戦。
先にニータップからシングル、ダブルレッグに移行してテイクダウンを奪ったソレッキだが、バックを取りにいくところで落とされて下に。ガードポジションから腰を切って腕十字を仕掛けるが、クロースはそれを持ち上げて、腕を離さないソレッキを側頭部からマットに叩きつけると、ソレッキは失神! パウンドに行こうとするクロースの間にレフェリーが入って、試合は決した。
場内がザワつくなか、続けて第5試合のミドル級戦がスタート。
▼ミドル級 5分3R〇コーディ・ブランデージ(米国)10勝5敗(UFC4勝4敗)[1R 1分49秒 KO] ※スラム→パウンド×ザッカリー・リース(米国)6勝1敗(UFC0勝1敗)
UFCデビュー戦のザッカリー・リースはこの試合まで6勝無敗。UFC登竜門のコンテンダーシリーズではガードからの腕十字で一本勝ちして契約を決めた。
対するコーディ・ブランデージはUFC3勝4敗。LFAから2021年9月に緊急UFCデビューで判定負けした後、2試合連続フィニッシュ勝利。その後3連敗を喫したが、2023年9月の前戦でジェイコブ・マルクーンの反則のヒジを受けて白星を拾っている。バックボーンはレスリング。元UFCのアマンダ・クーパーが妻でありコーチを務めている。
試合は、ブランデージがシングルレッグでテイクダウン。下のリースが三角絞めを狙うと、ブランデージがとらえられた右手と左手をクラッチしてリースを持ち上げる。すぐに左手で足をすくってリフトを阻止しようとしたリースだが時遅し。1試合前と同様に上に持ち上げたブランデージは、これも前の試合と同じように、相手の側頭部をマットに叩きつけて、足を外すと、すぐさまパウンド! 失神したリースにレフェリーが間に入った。
持ち上げられながらも腕十字を極めに行ったソレッキ、三角絞めにこだわって放さなかったリース。両者ともに頭を横からマットに叩きつけられており、UFC現地解説のダニエル・コーミエーも「こんなのは見たことがない!」と連続スラムKOに驚きの声を上げた。
頭を垂直にマットに串刺しにする「スパイキング」などが禁止されているユニファイドルール。今回の2試合連続のスラム決着の場合はどうなのか。
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関節技を仕掛けた側は相手のスラムに対し「防御をするか・しないか」選択肢がある
MMAレフェリーのパイオニア、ビッグ・ジョン・マッカーシーは、「『防御をするか・しないか』の選択肢があること」が重要だという。
来日時のルールセミナーでマッカーシーは、「“動けない状況を故意に作って落とす投げ技は禁止”となりましたが、どのように落ちようが“弧を描いた投げ”はすべて有効となりました。払い腰、スープレックスも弧を描きます。その投げ技が瞬時に反則かどうか判断できるようにこの解釈にしました。ただ、ある選手が片手で相手の腕をロックして垂直に落としたときは反則を取りました。相手の身体をコントロールした状態での垂直での投げは“スパイキング”にあたります」と説明。
続けて、スラムについて「バックからチョークを狙っている選手を前に落とした場合や、三角絞めを仕掛けられた選手が持ち上げてスラムする投げ技の場合はどうでしょうか? これは技を仕掛けている側が、その投げに対して『防御をするか・しないか』の選択肢があります。キャンバスに叩きつけられる前に腕や足を解いてポジションを変えることができるわけです。2004年6月のPRIDE GPでクイントン・“ランペイジ”・ジャクソンと対戦して三角絞めを狙ってスラムされたヒカルド・アローナには足を解く選択肢があったはずです」と、スラムされる側に、防御する選択肢があった場合は、落とし方によっては有効だと語っている。
マットが固いMMAでの衝撃のスラム連続KO。30周年を迎えたUFCにおいて、これまでスラムKO勝ちは12試合のみ。それが今大会では、初の2試合連続でのフィニッシュとなった。
UFCオースティン大会では、クロースとブランデージを含む10選手が特別に50,000ドルのボーナスを受け取っている。