2023年11月19日(日)東京・後楽園ホールにて、『プロ修斗公式戦 2023 Vol.7』が開催された。
そのメインイベントで、「修斗世界フライ級チャンピオン決定戦」が行われ、修斗史上初となる同時二階級制覇に挑むストロー級世界王者&世界フライ級暫定1位の新井丈(和術慧舟會HEARTS)と、ここまで無敗で王座戦を掴み取った世界フライ級1位・山内渉(FIGHT FARM)が対戦した。
試合は、左の蹴りを軸に戦う山内は、圧力をかけての左右で前に。下げさせれた新井は苦戦もパンチで応戦。3Rに山内をとらえ、逆転のTKO勝ちでフライ級王座を戴冠、ストロー級と同時に二階級制覇を達成した。
2本のベルトを手にした新井はケージのなかで「ネバーギブアップ、この気持ちで格闘技を始めて、いまも一切ブレてないです。修斗の歴代初のチャンプ・チャンプです。当初、ルール上、認定されてなかったけど、掲げた目標を応援してくれたみんなありがとうございます。“お前なんかじゃ無理だよ”“修斗で認められない”と否定してくれたアンチの皆さんもありがとうございます。俺は全部ポジティブに変えられるといい結果に繋がると思います。ネバーギブアップ! 以上」と語った。
年間ベストバウト級、歴史に残る死闘を制した新井丈に、試合直後の控え室で聞いた。
信じていれば効かない、と思ってる
──試合内容、覚えていますか?
「ところどころ(苦笑)。安芸(柊斗)戦よりは覚えています」
──あの試合も猛攻を凌いでの逆転KO勝ちでしたが、今回はそれを越える内容だったかと思います。山内選手は蹴りを多用して長い距離で戦ってきました。この展開は予想はされていましたか。
「ある程度。前蹴りを蹴ってくるだろうなというのはあったんで、でも……思ったより自分から“圧”をかけられなかったというか。ちょっと我慢の時間が多かったけど、もっとキツい想定をしていたから──ほんとうにドロドロになる覚悟をしていたので──その最悪の想定よりは楽だったから、自分は“まだいける”“俺はまだ死んでない”って、言い聞かせて“いつか俺の時間が来る”って信じて戦っていました」
──1Rに右から返しの左でダウンを奪いました。あのことから、2Rに追い込まれても、5Rまでのどこかで逆襲できると考えていましたか。
「そうですね。たしかに。1回、効かせることができたから“しっかり通用するんだな”ということが分かったし、耐えて耐えて、“いつか俺のターンになるだろう”って思っていました」
──3Rのフィニュシュの場面。右を当ててダウンを奪いました。あの瞬間のことは……。
「ちょっとボンヤリですね(苦笑)。最後のパウンドをまとめた部分は覚えているのですが……(山内の蹴りに右を振っている画像を知り)蹴りにカウンターみたいに、狙っていたわけじゃないけど、最後までほんとうに諦めてなかったっていうだけですね」
──途中で“これはマズい”と感じたりもしましたか。それとも最後まである程度冷静でしたか。
「そうですね。“ヤバい”と思ったことはなかったです。想定内」
──山内選手の蹴りもさることながら、パンチの被弾もありました。ある程度、HEARTS仕込みの“見えていれば効かない”ところもあった?
「“見えていれば効かない”というのももちろんそうなんでけど、“信じていれば効かない”くらいに思ってるんですよ。見えてないパンチもいっぱいあるんですけど、“俺は倒れない”って心の底から思ってるんで、その自分を信じてましたね」
──チャンピオンシップの5R戦であることは、どのくらい考慮していましたか。
「長引けば長引くほど、歴史に残る戦いになると思っていたから……美味しいなと(笑)」
──それだけスタミナもあったんですね。「1R序盤でラッキーパンチで終わったとしても、俺が疑われたまま終わるだけだと思うので、相手の力を受け切った上で勝つのは理想ですよね。それ、出来てました?」
──そこまで受け切らなくても(笑)。
「そう思わせたら……俺の勝ちです」
──ストロー級(-52.2kg)とフライ級(-56.7kg)は4.5kg差。通常階級がフライ級の山内選手は序盤から、パワーで飲み込むような圧力を見せました。そのパワー差というのはどれほど感じましたか。
「そこは多少ですね。なんかまとめ方が巧いな、というか、相手も前に出るのが巧かったですね。自分の階級(ストロー級)だとあんな下がることはないので」
──とはいえ、相手のテイクダウンは何度も切っていました。
「そうですね。組んでのフィジカル差はあんまり感じなかったですね。自分から崩しにも行ったし、(インタビュー中にバンテージを切っていた)森安(一好トレーナー)さんのおかげじゃないですかね」
──後楽園が「丈」コールと「ヤマウチ」コールで揺れました。コロナの時期もありましたが、久しぶりにあんな大歓声を聞きました。
「……いいものを作れましたね。連続でMVPを目標にしていたので。ほかはSASUKEさん(vs.飯田健夫)くらいかな」
──これでストロー級とフライ級の同時二階級制覇です。このベルトはどうなるのか……。
北森広報 これからどちらかのベルトを選んでもらい、そのベルトを防衛していってもらいます。
──新井選手としては両階級のベルトを防衛していきたいと?
「そこはいまはまだあんまり考えていないですね」
──今後の目標は?
「この直近、3連戦くらいでやった相手(関口祐冬、安芸柊斗、山内渉)が、間違いなくコンテンダーなんで、今日で山内くんを倒したら、当分、相手はいないだろうと思っていたので、山内くんを倒せたら満足かな」
──フライ級に上げるとなると、国内外の層も厚くなります。
「まあ、“ヒーローになる“”のが、自分が戦う一番の理由だから。次のステップとしては、一番挑戦し甲斐のあるところでしたいと思っているので、団体も相手も“一番キツいだろ”というところで、“お前じゃ、それは無理だろ?”と言われれば言われるほど、勝ったときのリターンも大きいので、辛いこと、挑戦しがいのあることに挑んでいきたいです」
──あらためて、フライ級での動きの手ごたえはいかがですか。
「まあ、気持ちで勝てただけなんで(笑)。誰が見てもそうでしょう。でも気持ちがあれば階級の壁を越えられることが証明できたと思います」