2023年11月25日(土)東京・後楽園ホール『Krush.155』にて、第4代Krush女子アトム級王座決定戦3分3R延長1Rを争う松谷綺(ALONZA ABLAZE)と奥脇奈々(エイワスポーツジム)のインタビューが主催者を通じて届いた。
松谷は兄・桐と共に2021年7月から卜部功也が代表を務めるALONZAに所属。2021年8月にKrush初参戦を果たし、森川侑凜からダウンを奪って判定勝ち。2022年6月の「K-1初代女子アトム級王座決定トーナメント」1回戦で菅原美優に判定2-0で敗れ、プロ8戦目にして初黒星もその後は再び連勝し、前戦では7月に初代K-1女子アトム級王者のパヤーフォンを延長戦の末に降した。戦績は8勝1敗2分。
奥脇はムエタイルールを中心に活躍し、『BOM』を主戦場に様々な団体に出場。2021年12月に初のタイトルとなるBOM女子ピン級王座を獲得。2022年4月、K-1に初参戦して森川侑凜に判定勝ち。2023年4月には山田と対戦して判定3-0で山田に敗れたが、10月のBOMではミネルヴァ・ピン級王者でK-1でも活躍したMARIに勝利している。蹴りを主体にする突貫ファイト。戦績は7勝13敗1分。
松谷「誰にも文句言われないぐらいに強くなりたい」
──対戦相手が山田真子選手から奥脇奈々選手に変更になりましたが、影響はどうですか?
「11月の頭ぐらいに変更の連絡をいただいたんですけど、山田選手との対戦を想定して対策をやっていたので、驚きました。ただ、山田選手の試合映像で奥脇選手との対戦のものも何回か見ていたので、そこまでガラッと変わるわけではないなと思って」
──ただ、山田選手と奥脇選手ではけっこうスタイルが違いますよね。
「そうですね。山田選手はパンチ中心、奥脇選手はムエタイベースなので。だから多少違うんですけど、奥脇選手は自分のやりやすいタイプだなと思います」
──それも含めて、奥脇選手の印象は?
「パンチも蹴りもパワーがありそうだなという感じですね。自分が蹴ったタイミングとか、バランスが崩れやすいところでパンチをもらったりするのは怖いところではあるかなと思います」
──ただ、やりやすいタイプだと。では変更になって大きな影響はないということですか?
「そうですね。自分のやることは変わらないですし、対策はしてはいるんですけど、『相手がこう来るからこうしよう』というよりは、『自分がこうする』ということしか頭にないので。自分の思い通りにするというだけです」
──「こうする」というのは、具体的には?
「私は蹴りが得意なので、相手選手も蹴りが得意だとは思うんですけど、それを上回って圧倒するというのが今回のテーマですね」
──山田選手とのカード発表会見の時に、宮田充プロデューサーが「倒す試合を期待したい」と発言していました。そこは意識していますか?
「意識してますね。毎試合そうなんですけど、『女子の試合はつまんない』と言われるのは、やっぱり倒す試合が少ないからだと思うんですよね。実際、K-1女子でも倒せる選手ってあんまりいないので。自分は最近、パンチも蹴りもパワーがついてきたので、どっちでも倒せるように練習しています。それに今回はタイトルマッチということで判定ではつまらないと思うので、せめてダウンでも獲って勝ちたいですね。理想はKOで勝つことを目標にしています」
──倒す練習の手応えはどうですか?
「だいぶあります。パンチも、ただ強く打つというだけじゃなくて、タイミングも教えてもらっているので、練習通りにやれれば倒せるんじゃないかとは思います。今はだいぶ自信がついてきたので」
──タイミングで倒すという点では、ジム代表の卜部功也選手がまさにその名手ですよね。
「そうなんです。そこはだいぶ教わっていますし、功也さんのKO集の動画もよく見ていて、あんな風に倒したいなと思っています。無理に打ち合って、たまたま当たったので倒すというのも、倒せるなら全然いいんですけど、自分の理想は、打ち合いとかじゃなくてもらわずに自分だけ当てて勝つというものなので、功也さんの戦い方を真似したいなと思っています」
──一番理想のお手本がすぐ近くにいるというのは、いいことですね。
「そう思います。最近はマススパーも一緒にやらせてもらったりしていて、本当にうまいので、こう戦いたいなといつも思ってますね」
──この試合に勝てばチャンピオンですが、それは日々意識していますか?
「はい。K-1 GROUPに来た時から、K-1のベルトがカッコいいな、ほしいなとすごく思っていて、一度トーナメントで負けてしまったんですけど、ベルトに近づけるチャンスももらっているし、今回もKrushのベルトを獲れるチャンスをもらったので、これは何が何でも獲らなきゃと思います。それに、K-1のベルトを獲るためにもここを獲っとかないとダメなので、絶対逃せないなと思っています」
──自分がベルトを巻いてる姿を想像したりしますか?
「最近はよくしますね。ジムに通う電車の中なんかでも、ほぼ毎日、勝ってベルトを巻いているところと、会場を出てみんなと話すところまで想像して、『こうしたいな』と考えてます(笑)」
──電車の中でもですか!
「知らないうちにニヤニヤしてしまっているかもしれないです(笑)」
──現実にすれば問題ないと思います(笑)。チャンピオンになるという点では、今年6月にパヤーフォン・SWタワン選手に勝ったというのはかなり自信になっているのでは?
「そうですね。あれでかなり自信がつきました。それまでも自信がないわけではなかったんですけど、あの試合の前は日によってすごく不安になって『自分なんかが……』と思っちゃう時があったんですね。でもあの試合に勝ってからは不安に思う部分がなくなったというか。自分にパワーがついてきたのが分かったというのもあるし、延長戦の4Rも初めて経験して、体力にも自信がついて、『あ、自分はここまでできるんだ』と思えたので、だいぶ変わったと思います」
(C)アンディ・チャオ/講談社──そして、雑誌のグラビアに登場したことも大きな話題になりました。反響はどうでしたか?
「周りの人はみんな『買うね!』って言って見てくれました。SNSのフォロワーも増えて、反響はけっこう大きかったですね」
──その方向でも頑張ろうかなと思えたり?
「いや…グラビアはもういいかなと思ってます(笑)。もともとお話をいただいた時も、ありがたいことだとは思ったんですけど、自分のキャラ的にも水着とかはちょっと抵抗があって『どうなんだろう?』と思ってたんですよ。『カッコいい』という方向がいいです、というお話もさせていただいて。K-1や自分自身を広められるチャンスだと思うので、メディアには出ていきたいとは思うんですけど、自分的にはファッション系とかだったらいいかなと思ってます」
──なるほど。ただ認知度は確実に上がっているので、ここでチャンピオンになればかなりいいタイミングですよね。
「メディアにだけ出て結果を残せていないと、『こんなもんか』と思われちゃうので、逆に格闘技の実力でも誰にも文句言われないぐらいに強くなりたいなと思ってます」
──では最後に、この試合に向けての“決意”を教えていただけますか?
「今回はタイトルマッチで、奥脇選手も何が何でも獲るという気持ちで来ると思うので、自分を信じて戦いたいなと思ってます。見てる人たちにも『女子の試合、面白いな』と思ってもらえるように、KOで勝つのが理想です」
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奥脇「ドロドロになっても勝ちを取りにいきたい」
──対戦カードの変更で、急きょ王座決定戦に出場となりました。最初に聞いた時はどう思いましたか?
「最初はホントにビックリ!っていう気持ちが大きくて。私自身、4月に山田真子選手に負けてしまっていて、このタイトルマッチには注目していただけに、自分にオファーが来た時はホントにビックリしました」
──今年は4月に山田戦で敗れ、10月にBOMでMARI選手に勝ってるんですよね。ここで王座決定戦というのは、ご自身のタイミング的にはどうですか?
「山田戦の時にもずっと言ってたんですけど、山田選手を超えられなければ先はないと思っていたので、まさかタイトルマッチがこんなに早く来るとは思っていませんでした。ただ、今まで1敗1分けで、先にK-1 GROUPでも活躍していたMARI選手に勝つことができたので、その勢いのままタイトルマッチに来れたのはよかったと思います」
──そのMARI戦を振り返ると?
「ヒジで額をカットして勝ったんですよ。だからK-1ルールの勝ち方ではないんですけど、強化していたパンチとかも当たって、パンチの強いMARI選手に上回れたのはよかったです」
──奥脇選手自身はK-1 GROUPで2戦経験していて、10月はBOMでヒジあり。両方のルールを並行してやっていくのは大変では?
「練習内容が全然違うので、確かにちょっと大変ではあるんですけど、もともとの自分のファイトスタイルは、K-1ルールにも向いているものなので、その点ではそんなに難しくはないです。今回は、奇跡的にヒジが当たったという感じで(笑)」
──今回、松谷綺選手との対戦となりましたが、印象は?
「K-1でもトップどころだし、スピードもパワーもあって、何でもできる選手だなと思ってます。おまけにかわいいしという感じで(笑)。全てヨシって感じですね」
──その中でも特に警戒するところは?
「やっぱりスピードが速いので、あのコンビネーションと出入りはすごく警戒しています」
──逆に自分が勝ちたい点は?
「45kgではパワーがある方だって先生にも言われるし、スピードもそこまで劣ってないかなと思うので、パワーと気持ちの強さで勝ちたいと思ってます」
──松谷選手になくて奥脇選手にあるのが、タイトル経験です。すでに奥脇選手はチャンピオンの経験もあるわけですが、その分、タイトルマッチへの臨み方が分かっているのは有利なのでは?
「うーん…私が獲ったのは違うルールの王座ですし、今回、私はチャレンジャーだと思っているので、有利とまではいかないですかね。タイトルマッチでも、いつもベルトよりは相手に勝つことを意識していて、それにベルトが後からついてくるものだと思っているので、タイトルマッチだからといって特に意識するわけではないですから。今回も急きょ決まったことだし、ベルトよりも『松谷選手に勝つ』ということが一番の目標ですね」
──松谷選手とは、いずれは戦いたいという感じでしたか。
「そうですね。もっと勝っていって、いずれ挑めたらいいなと思ってました。実は一度、他団体で対戦が決まりかけてたことがあったんですよ」
──あ、そうなんですか!
「その時は実現しなかったんですけど、本当にずっと注目していた選手なので、いずれかは絶対対戦の機会があると思ってました」
──ただ、今は向こうのほうが上という意識がある?
「そうですね。やっぱり勝ってるし、戦績的にも松谷選手の方が上かなと思います。でもここで勝てばひっくり返せるので、『食ってやる』という気持ちの方が強くて、すごく燃えてます」
──ベルトを巻いている姿を想像したりはしますか?
「します! 夜寝る時に目をつぶると、パッとその光景が浮かびます(笑)。いい場面も悪い場面もいろいろ想像しちゃうんですけど、自分がベルトを巻いてる姿もよく出てくるし、ベルトは自分にメチャクチャに合ってます(笑)」
──今回、最終的にはどう勝ちたいですか?
「自分は技術がどうこうという選手じゃないし、泥臭くてもただただ最後まで攻め続けて、ドロドロになっても勝ちを取りにいきたいと思います」
──その中でお客さんに見てもらいたいところは?
「今回、短期間で試合が決まったということもあって、松谷選手の方が準備もできてるし、向こうの方が有利だと思われてるじゃないですか。でも逆に『奥脇、3週間でここまでの試合ができるんだぞ』というところを見せたいですね。自分的には最高の仕上がりになっているので」
──では最後に、この試合に向けての“決意”を教えていただけますか?
「松谷選手みたいに若い選手がどんどん出てきて、自分ももう年齢的に上の選手だし、チャンスはそう何回も巡ってくるわけではないので、ここは自分の全てを懸けて松谷選手に挑みます。自分の勝つところを、しっかり見届けてほしいなと思います」