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インタビュー

【RIZIN】榊原CEO「朝倉未来にはいろんなことを背負わせ過ぎた」「鈴木千裕は“賭け”に勝った。Bellatorで再戦? こんな“ゴッドアングル”を使わない手はない」、クレベルとピットブル兄弟は「ちょっとイザコザがあった」「クレベルは(王座挑戦の前に)1試合挟む」「木村ミノルの検査結果は──」

2023/08/01 17:08
 2023年7月30日、さいたまスーパーアリーナで開催された『超RIZIN.2』後、榊原信行CEOが大会を総括した。  榊原CEOは、会見でメインで勝利したヴガール・ケラモフが、11月4日の母国アゼルバイジャン大会でフェザー級王座防衛戦を行う可能性があることを示唆、また敗れた朝倉未来には「この試合をタイトルマッチにしたことも含めて、いろんなことを背負わせ過ぎた。このまま終わる選手じゃ絶対にない」とエールを送った。  同じフェザー選手で、今回はライト級契約で緊急参戦の鈴木千裕が、同じく緊急参戦のパトリシオ・ピットブルに1R KO勝ちのアップセットを起こしたことについては、「鈴木千裕は完全に“賭け”に勝った」と賞賛。鈴木のBellator参戦の可能性についても「僕がスコットの立場だったらすぐにアメリカに連れて行く。“マックの店員”が現役王者に勝つわけだから、プロモーターとしてこんな“ゴッドアングル”を使わない手はない。Bellatorからオファーが届いたら、スコットと話して気持ちよく送り出したい」とした。  パトリシオは自身のSNSで鈴木に「あなたは昨日の一夜でタイトルマッチの権利を得ました。今度はベラトールで会いましょう」とベルトをかけての再戦を提案。さらに英語で「私のタイトルをかけて戦うのに、これ以上、相応しい人はほかにいません」とリヴェンジに燃えており、コーカー代表はどう出るか。  また、その鈴木vs.パトリシオ戦のときに、鈴木の衝撃KOに思わず興奮して立ち上がったクレベル・コイケに、リングサイドで詰め寄ったパトリッキーがクレベルの胸を小突いたことにより、控え室でも乱闘騒ぎがあったとピットブル陣営が公開したことについては、「控え室で大喧嘩・乱闘にはなっていないかな。いろんな興奮をして、今日の試合だったり、負けたりがあってちょっとイザコザがありました」と説明。「そこで傷害事件が起きたとかではなく、言い合いになってものに当たって。それもうまく本当に、何か次のプラスに変えるように。みんなとりあえず落ち着いてクールダウンしているのが現状です」と語った。  そのクレベルが、新フェザー級王者への挑戦者の最右翼だとしていた件については、「勝者とクレベルが対戦するとは明言していない。最右翼とは言いましたが、クレベルは1試合その前に挟もうと思っています」と、王者ケラモフとの対戦の前に、計量ミスでノーコンテンストとなった鈴木千裕戦(※クレベルが1R、鈴木を腕十字で極めた)のみそぎの試合を行う意向を示した。  一方、同日の会見でケラモフは、「組織委員会で何人か候補者をあげてもらい、選べと言われれば選ぶし、言われた人と誰とでも戦う。クレベルでも斎藤(裕)でも、鈴木(千裕)であろうと、言われた人といつでも戦う用意がある」と語っており、母国で誰と対戦するか。  9月24日のさいたまスーパーアリーナ大会(萩原京平vs.牛久絢太郎)、10月1日のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)大会、そして11月4日のアゼルバイジャン大会と怒涛の大会ラッシュを仕掛けるRIZINの榊原CEOとの一問一答全文は以下の通りだ。 [nextpage] 榊原CEO「堀口恭司vs神龍誠は、日本人同士の試合をアメリカに持ち帰ってどこまで届くか?」 ──メインイベントでは、ヴガール・ケラモフ選手が朝倉未来選手に一本勝ちしました。 「総括として何を喋ったらいいかと考えましたけど……メインに関しては、圧倒的な現実を目の前に突き詰められること、予定調和で終わらないこと──そのリアリティにたぶん、多くの朝倉未来のTシャツを着て勝つものだと思って見ていたファンは呆然自失だろうと思います。それが次を求めるエネルギーに変わるといいかと。未来は多くを語らなかったと聞いていますが、“求められる者”の宿命は切なくて、勝利をする姿を見ることでしか埋まらないのだろうと。  この先、朝倉未来の次なる一手がどうなるのか楽しみですが、今日多くの未来を応援しに来てくれたファンには、このまま未来が絶対に終わる選手じゃないと思っていますし、一番悔しいのは朝倉未来だと思う。代弁しても仕方ないですが、この試合をタイトルマッチにしたことも含めて、いろんなことを背負わせ過ぎた。そんなことも本人は言い訳したくないタイプでしょうけど、僕は素晴らしいメインだったと思っています。ほか個々には、ヒロヤは頑張った、すごい人気があるなと感じました」 ━━試合後、朝倉兄弟と話は? 「していないです」 ──同じフェザー級選手では、今回はライト級契約で緊急参戦の鈴木千裕選手とパトリシオ・ピットブル選手が対戦し、鈴木選手が1R KO勝ちのアップセットを起こしました。 「鈴木千裕は完全に“賭け”に勝ちましたね。パトリシオvs.鈴木、このカードを発表したとき、一部ファンから『ふざけんな』と色々言われましたが、こうなる可能性も十分あるなと期待して組んだカード。この『超RIZIN.2』のなかで最大のハイライトになったビッグサプライズ、ジャイアントキリングを目の当たりにして、興奮冷めやらぬ状況でした。そこで『ウォー』となった後で、朝倉未来にドーンと落とされましたが、格闘技はやめられないだろうなと」 ━━パトリシオ選手をKOした鈴木千裕選手が、Bellatorに呼ばれる可能性は? 「僕がスコットの立場だったらすぐそうしてアメリカに連れて行きますね。“マックの店員”(※カード発表時の米国の反応)が現役王者に勝つわけだから、70kgのキャッチウェイトでショートノーティス(短期間のオファー)もあるので、パトリシオにも感謝したいです。ただ、プロモーターとしてこんな“ゴッドアングル”使わない手はない。千裕は、このひとつの勝利が彼の格闘家としての人生を大きく“飛び級“”して、一気にRIZINフェザー級の若い世代の争いから飛び抜けることになる。世界中の人が、彼のこの試合を見る機会も多いと思う。Bellatorからオファーが届く可能性もあるし、その時はスコットと話して気持ちよく送り出したいと思います」 ──さまざまなアクシデントがあるなか、鈴木vs.パトリシオ同様に、ホベルト・サトシ・ソウザ選手、扇久保博正選手もスクランブル参戦でした。 「同じくスクランブル参戦した扇久保とサトシの二人には黒星はつきましたが、『超RIZIN.2』を救ってくれた。準備が整わないなか、漢気を見せてくれた二人には感謝を伝えたいです。  今回のBellatorパートでのチャレンジで、サトシは怪我もしたそうで(※1Rに右第五中手骨を骨折)ちょっと胸が痛いです。でもRIZINのライト級チャンピオンであることは、何も変わらない。ピンチだけじゃなくて、サトシもBellatorライト級で、世界の猛者がひしめくGPに挑戦したいと思い、一人の競技者として、それを提案されれば『NO』とは言えなかったのだと思いますが、それでもチャレンジは思うようにいかなかったけど、怪我を治した後、RIZINライト級王者としての試合を組んでいければいいと思っています。  フライ級で戦う決意をした扇久保は、バンタム級タイトルマッチが飛んだ我々のピンチに、厳しい状況で指名するなか、また階級を上げてタイトルマッチに挑んでくれて、素晴らしい試合で、僅差だったと思いますが結果かなわず。これも現実ですが、チャンピオンベルトが海外勢に2本、持って行かれました」 ━━ノーコンテストとなった堀口恭司選手と神龍選手の試合は、コーカー代表も再戦を示唆していましたが? 「スコットとはそこもしっかり話したいですが、拘束されるということでもないかもしれない。Bellatorが2019年以来の日本大会を開催し、そのハイライトというか、日本のマーケットにも届くカードとして組まれたのが『Bellator初代フライ級王座決定戦』で、日本人同士の試合をアメリカに持ち帰ってカード編成してどこまで届くか? 神龍がキャリア積んで名前と顔の一致する選手ならあるかもしれないけど、なかなか一足飛びに再戦というのも厳しいのかなと思ったりもします。そういうなかでスコットとも相談し、神龍のしっかりしたドクターの診断を──まずは実際『目が見えなくなっちゃった』と言っていたので、どういうシリアスな状況にあるかもしっかり診断して、その先を考えたいと思います」 ──女子スーパアトム級は、RENA選手に一本勝ちのクレア・ロペス選手に、伊澤星花選手が圧勝でした。 「伊澤選手は、本当に圧倒的に強いので、スーパーアトム級のなかかで、彼女の本当にライバルとなる選手を世界中のなかから見つけ出してくるのはなかなか至難の業。ひき続き、伊澤選手がしばらくチャンピオンとして防衛していくイメージを持ちつつも、世界に目を向けて彼女を脅かすようなチャレンジャーをピックアップしていきたいと思います」 ━━初参戦組では、イゴール・タナベ選手が一本勝ちで鮮烈な印象を残しました。 「すごかったですね。打撃はまだまだアラがあるので、打撃の部分は経験を積んで練習していけば埋まると思う。KOとか打撃が目につきやすいですけど、あの瞬間に、ヒール(フック)を取るというのは、一撃KOのパンチを持っているのと同じこと。世界に通用する一本・極めを持った、とてつもない選手と証明された。コンプリートファイターになるにはレベルアップしなくてはいけないけれど、将来に期待ができると思います」 [nextpage] 「アゼルバイジャン vs RIZIN世界選抜」は日本、韓国、アメリカ、ブラジル──RIZINを代表する選手と一緒に行く ──アゼルバイジャンを訪問した際に、「国としてRIZINを招聘したい」と言われたそうですが、11月4日の首都バクーでのナショナルジムナスティックアリーナ大会はどうなりますか。 「アゼルバイジャン大会を発表したことで言うと、(ケラモフの試合は)タイトルマッチになるかもしれないし、チャンピオンとして自国で凱旋試合をするという形に。今回、わざわざこのためにアゼルバイジャンから、国会の副議長も来日し、『国に帰っていい報告ができることをとても誇りに思います』と大喜びしていました。11月4日にはいい材料が生まれたと思っています」 ━━「アゼルバイジャン vs RIZIN世界選抜」というのは? 「アゼルバイジャンの選抜選手だけで全10試合の左側がアゼルバイジャンの選手というわけではないです。アゼルバイジャン選手を中心にして、『アゼルバイジャン選抜 vs RIZIN世界選抜』で5vs.5とか7vs.7とか。ワンマッチも組もうと思っています。アゼルバイジャンは、中東にも近いし、ロシアにも近いし、アジアにも近い、ヘソのような場所ですし、世界選抜では日本、韓国、アメリカ、ブラジル、いろいろな階級ごとにRIZINを代表する選手と一緒に行こうと思っています。当然、ケラモフやムサエフと誰がやる? という話になると思います」 ━━9月24日のさいたまスーパーアリーナ大会と、10月1日のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)大会が発表されました。今日はすべてMMAでしたが、キックは? 「可能性あると思います。当然キックの試合も組みたいし構想もある。木村ミノルも、安保瑠輝也もブアカーオも、やっぱり、続けてやっていかないと熱も作れないと思うので、そこはまた考えていきたいです。それに、SNSで木村ミノルが陽性でフォローを外されたとかって出てましたが、万が一陽性だからといってフォローを外すなんてことはしないです。もともとフォローしてないんですよ。もうすこし普通に考えていただいたら、そんなセコいことはしない。なんか本当に勝手な情報が一人歩きしていて。今日否定できるといいですが、まだ検査結果は出ていないです」 ━━SNS騒ぎということでは、パトリシオとクレベルが会場で揉めていると。 「控え室で大喧嘩、乱闘にはなっていないかな。いろんな興奮をして、今日の試合だったり、負けたりがあってちょっとイザコザがありました」 ━━それを試合に活かす形に? 「そこで傷害事件が起きたとか怪我したとか殴り合いとかではなく、言い合いになってものに当たって。血の気の多い人たちなので、それもうまく本当に、何か次のプラスに変えるように。みんなとりあえず落ち着いてクールダウンしているのが現状です」 ━━朝倉未来選手の六本木の公開練習のときに、榊原CEOは「ベルトを巻いたチャンピオンにクレベルが挑戦する。空位のまま、中途半端に行くよりはドラマティックに」と説明していましたが、その方向でしょうか。 「勝者とクレベルが対戦するとは明言していないです。最右翼とは言いましたが、クレベルは1試合その前に挟もうと思っています。あと、今回の大会はU-NEXTさんに独占的に配信し、とてもたくさんのご視聴をいただけて嬉しく思いますが、9月はU-NEXT、ABEMA、BreakingDownなど、プラットフォームを解放した大会でやりたいと思っているのでこの場を借りてお伝えしておきたいと思います」 ──同日にケージをリングに作り替え、BellatorとRIZINを開催しました。2パートを終えての感想も。 「フライングケージも昨日、日本に来ましたし、二つの団体が同じ場所、同じ空間で大会を行い、こんなにケージとリングで見えるものが違う、こんなに大会の作り方も違うことを検証していただける機会にもなりました。どっちが好き、こっちが好き、いろいろあると思いますが、全体的なことを言うと、圧倒的にRIZINが面白かった。スコット(コーカーBellator代表)も、『RIZIN、面白いかったな』と悔しそうな顔をしていたので“ざまあみろ”と(笑)。  同じ日にやっちゃうと、僕らはホームなので、判官贔屓なファンの後押しがあったと思いますが、ライブを観に来ている人ファーストで作るのが僕らのやり方です。Bellatorもそうですが、視聴者向けに作ると、コマーシャルの間はライブの進行が変な間で待たされる。それが本当に嫌で。一番大切なハードコアなファンは、この炎天下、朝から並んで何万円の高いチケットを買って来てくれる人。その人を満足させて帰らせないと、本当の熱は作れない。それぞれのプロモーションのクライテリア(※行動や判断の根拠となる指標)が違うけれども、これからも僕たちは、圧倒的に“ライブに来てくれる人ファースト”で作っていきたいと、間違いではなくそう思っています」
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