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2023年5月23日、RIZIN公式YouTubeの『榊原社長に呼び出されました』に朝倉海(トライフォース赤坂)が出演。日本の格闘技大会で恒例となっている「オープニングセレモニー」の実施について、選手側から一石を投じた。
7月のRIZINさいたまスーパーアリーナ大会で、フアン・アーチュレッタ(米国)を相手に「バンタム級王者決定戦」に臨む朝倉は、RIZINのライブ番組で、榊原CEOに「オープニングセレモニー、あるじゃないですか。あれ無くせないですか?」と提言した。
PRIDE時代から続く、試合前の入場式。選手コールとともに、観客にその日のカードの期待感を高める演出だが、後半出場の選手にとって負担が大きいと、朝倉は吐露する。
「たしかにあれ、盛り上がっていいんですけど……僕、いつもメインなので結構キツいんですよね、ずっと控え室にいるのが。朝10時とかに入って、試合は夜の8時とかで、狭いところで、ほかの選手もいたりするのに地獄だからね。パフォーマンスが落ちます。大晦日は12時間……その間? 寝てるよ(苦笑)」と、最高のコンディションで試合に臨みたい選手にとって、ストレスのかかる環境だとした。
続けて、「俺の意見としては、(試合前に)どうせ入場するじゃないですか。そこで見れるんで、先にオープニングセレモニーで見ちゃうとなんかちょっと冷めちゃうかなって。入場で初めて会場で見れる方が盛り上がるかなって」と、選手の初登場は試合直前の方が盛り上がると持論を展開した。
J-MMA恒例のこの演出は、海外団体でも採用されているが、海外では前座の「プレリミナリー」と「メインカード」に分かれていることが多く、入場式はそのメインカード直前に行われることが多い。
朝倉は、「(コナー・)マクレガーが(自分が出場する大会のほかの試合を)テレビで見ていて、『パパ、ここに出るよ』と言って(部屋から)会場に行く、俺もそれくらいがいい。1回、家に帰らせてくれるならいいけど、さいたまとかだと面倒だし」と、試合前の様々なチェックやアップから逆算して、ホテルの部屋などから会場入りしたいとリクエストした。
その言葉を受けて、榊原CEOは、「Bellatorの去年の年末の対抗戦は、Bellator勢はリングチェックも何も無かった。『第二部のオープニングの前に入ればいいだろう』って言い出して。『それだとリングチェックできないよ』って言ったら、『練習とかでリングでやったこともあるし、大丈夫だ』と」、Bellatorファイターたちがオープニングから会場入りしなかったこと、さらに二部構成のため、それが可能だったことを明かした。
朝倉は「あとから入れるならそっちの方がいいですね。パフォーマンスが上がる」と呼応。
「7月に真夏の格闘技の祭典を考えている」と発言した榊原CEOは、「7月は……まだ言えないけど大丈夫そうだな。選手のパフォーマンスが重要で、同時にファンにもエキサイティングに見られるようにいろいろ考えます」と返答した。
「企画次第で」とだけ語った榊原CEOだが、『真夏の格闘技の祭典』はどうやら二部構成の大掛かりな大会になりそうだ。
「みんなオープニングセレモニー、欲しいですか」という朝倉の問いに、視聴者からは「オープニングは最高なのでやってほしいです」「いつも鳥肌もの」という賛成派と、「そんなに選手にとってストレスだったのか」と見直し派の意見もあり、海外ファイターや関係者からは「あれをやりたかった」「拘束時間が長すぎる」という両意見も出るなど、議論の的となっている。
興行としては、メインカードに出場する選手たちをカメラで追い、直前の姿もとらえ、万が一のために“演者”を早めに会場入りさせたいだろう。一方で、北米MMAのように会場近接のホテルに待機させて、試合2、3時間前に会場入り、試合後はドクターチェック、選手によっては会見が済めば、会場をすぐに後にできるシステムもある。
プロレス等でのリーグ戦出場選手の入場式、さらにUWFで毎大会恒例化した入場式は、PRIDEにも受け継がれ、日本の格闘技大会の伝統となり、それを楽しみにしているファンも多い。同時に観戦スタイルの多様化で、朝倉が指摘する通り、第1試合から着席するファンばかりでもなくなっているのもたしかだ。興行としての演出と、試合前のリングチェック、選手のコンディションのバランスをどこで取るか。今後の大会に注目だ。