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【DEEP×BLACK COMBAT】大将戦で赤沢幸典がまさかの逆転TKO負け──「日本で叩き潰す」という佐伯代表に、ブラック代表は「弟が殴られて兄のRIZINは出て来ないのか?」

2023/02/15 14:02
 2023年2月4日(土)、韓国スウォンのスウォン・コンベンションセンターにて『Black Combat 5: Song of the Sword』として「BLACK COMBAT」と「DEEP」の5対5の対抗戦が開催された。  BLACK COMBATは、ドラマチックな映像を駆使し、選手のバックボーンとキャラクターを際立たせ、YouTubeでそのストーリーを拡散させることで新たなファンの獲得に成功している韓国の新興MMAプロモーションだ。  日本の「DEEP」は現王者2名と元王者、王座挑戦者を含む5選手を選抜。韓国「BLACK COMBAT」側は、今回の対抗戦に向けて各階級で4選手による選抜戦を行い、代表を決定して対抗戦に臨んだ。 【写真】朝倉兄弟に宣戦布告したキム・ミンウとキム・ジョンフンのキム兄弟。(C)BLACK COMBAT  先鋒戦の女子アトム級では、現DEEPミクロ級&DEEP JEWELSアトム級王者の大島沙緒里が、ホン・イェリンに3R、腕十字による一本勝ち。 ▼先鋒戦 女子アトム級 5分3R〇大島沙緒里(AACC)11勝3敗[3R 0分59秒 腕十字]×ホン・イェリン(DK Gym)4勝3敗  続く次鋒戦でも、現DEEPライト級王者の大原樹里が、フェザー級から挑戦したユン・ダウォンに1R KO勝ち。DEEPが2勝を挙げた。 ▼次鋒戦 ライト級 5分3R〇大原樹里(KIBA マーシャルアーツクラブ)32勝18敗3分[1R 4分39秒 KO]×ユン・ダウォン(MMA Story)5勝5敗1分  しかし、中堅戦で、キム・ミンウの兄でMMAに復帰したキム・ジョンフンが、山本聖悟を2R TKOに下し、1勝を獲得。 ▼中堅戦 バンタム級 5分3R〇キム・ジョンフン(MOAI GYM)5勝0敗[2R 0分30秒 TKO]×山本聖悟(Team Cloud)4勝11敗1分  そして、副将戦では、ジョンフンの弟で“コリアンモアイ”の異名を持つMMA10勝2敗のキム・ミンウが、元DEEPライト級王者で現正規DEEPフェザー級王者の牛久絢太郎と1勝1敗の戦績を持つ中村大介と対戦。3R リアネイキドチョークで失神一本勝ちを収めている。 ▼フェザー級 5分3R〇キム・ミンウ(MOAI GYM)11勝2敗[3R 4分39秒 リアネイキドチョーク]×中村大介(夕月堂本舗)34勝23敗1分  ミンウの勝利で5対5の対抗戦を2勝2敗のタイに戻したBLACK COMBAT勢。残すは大将戦。今回の試合順を決めたブラック代表が韓国側の大将を託したのは、チェ・ウォンジュン(MMA Story)。 “ホワイトベア”ウォンジュンは、MMA5勝5敗の33歳で、2014年から「Road FC Central League」等のアマチュア大会で6連勝。2021年までROAD FCを主戦場に、2019年のミドル級でエンリケ・スギモトに1R TKO負け。コロナ禍、2021年7月に復帰したイム・ドンフアン戦では、後ろ重心の打撃を当てて、最後はマウントから重量級らしいスマザーチョークでタップを奪っている。  2022年10月の前戦で「Black Combat」に初参戦すると、空位のヘビー級王座決定戦に出場。『RISE 98』で上原誠とも判定まで持ち込んでいるレスラーのヤン・ヘジュンの首投げからのVクロスに一本負けで、対韓国人初の黒星を喫している。  選抜戦では1回戦でソル・ヨンホを肩固め、決勝でチェ・ジュンソを組みも混ぜた懐の深いパワフルな打撃で判定で下し、BLACK COMBAT代表を決めた。  対する赤沢は、フィラス・ザハビ、GSP率いるカナダTristar Gymでトレーニングし、2021年12月に3年9カ月ぶりにMMA復帰すると大成に判定勝ち。2022年7月にアンディコングを1R TKOに下し、2連勝で2022年11月にDEEPメガトン級暫定王者決定戦へ。酒井リョウに1R TKO負けで戴冠を逃している。 [nextpage] 組んで投げて削る赤沢だがフィニッシュできず ▼無差別級赤沢幸典(Tristar Gym 日本館/Team Cloud)3勝5敗チェ・ウォンジュン(MMA Story)5勝5敗  DEEPの2勝2敗で迎えた大将戦。赤沢、ウォンジュンともに王座挑戦経験のあるコンテンダー。チームを勝利に導くのは、どちらか。  先に入場の赤沢には“キングベアー”のコール。佐伯代表の前で一礼し、ブラック代表の前で中指を立てて見せる。  ケージの上に乗り、腕組みをして待ち構える赤沢の前に、大歓声のなかウォンジュンが登場。最後の「無差別級戦」が始まった。向かい合うと体格差が際立つ両者。  1R、ともにオーソドックス構え。赤沢は早々にダブルレッグテイクダウン。ウォンジュンの立ち際をボディロックし、持ち上げて後方に投げ。体格差を感じさせる動きを見せる。ウォンジュンの立ち際に左をこつこつ突くと、さらにボディロックしたままサイドに投げるが、力を使う展開。  ウォンジュンは倒されてもすぐに金網に這い、上体を立てる。なおもボディロックで引き付けて、中央側へテイクダウンする赤沢は背中を着かせる。ハーフガードで半身になるウォンジュンに、左ヒジを落とす赤沢はマウント奪おうとするが、金網まで這うウォンジュンは立ち上がり。  そこに右ヒザを突く赤沢は後方に崩してから頭をアゴ下に着けて固定し右ヒザ。しかし身体を立てて正対したウォンジュンは金網背にクリンチアッパーで反撃。打ち合いのなか右を空振りしながらも前進した赤沢は、ウォンジュンの右をもらいながらも胸を突いて押し倒し。  後方に倒れたウォンジュンのニアマウントを奪いパウンドも、ウォンジュンもすぐに上体を立てるが、赤沢のリアネイキドチョーク狙いに、正対することで下に。  赤沢はニアマウントからパウンド、ヒジ。フィニッシュのチャンスを迎える。しかし、ここも金網使い立つウォンジュンは左右を振って打撃戦を望む。そこに右ストレートを当てた赤沢が右で差して組んでゴング。  赤沢はケージに両手をかけてスタミナが厳しいことを露呈する。コーナーに戻り、セコンドの白川裕規から「自信持とう。相手も疲れている。打ち合わずにタックル行こう。行けるから」と声をかけられ、大きく呼吸する。一方、ピンチを脱したウォンジュンもセコンドから「子供のことを考えて」と鼓舞される。 [nextpage] ガス欠した赤沢に、ウォンジュン怒涛の反撃  2R、グローブタッチ。先に左ローは赤沢。ウォンジュンの右はかわすが、続くジャブからの右ローを受ける。さらに右ローの引き際に、赤沢は頭を下げてダブルレッグも、切るウォンジュンは右ロー。赤沢の左右の前進に下がりながら右のショートを合わせる。  テイクダウンを警戒しながらジャブ&ローのウォンジュン。その左ジャブに赤沢の頭が上がるが、圧力をかける赤沢は金網に詰めてダブルレッグへ。これを差し上げたウォンジュンは、赤沢を突き放し、ケージ中央へ。  ホームの手拍子と大歓声のなか、ウォンジュンはジャブを突き、左の相打ち。ガードを固めた赤沢に細かく左右を突き、右から左の逆ワンツー。さらにジャブを3発被弾すると、赤沢の打ち返しの無いなか、ウォンジュンはワンツースリーフォーと4連打、被弾し、下がる赤沢にさらに左を当てて左右。打ち返そうとする赤沢の手は回転が鈍り、ガードが上がらず、口を開けて息をする。  下がりながら右の大振りも腰は入らず。ウォンジュンは右から左を当てると赤沢は鼻血。さらにワンツーから6発を打ちこむウォンジュンは、赤沢の左右も軸がブレる打撃をかわす。赤沢は左を打とうとするが手が上がらない状態で完全にガス欠。ウォンジュンは右のダブルから左アッパー! アゴが上がった赤沢が組もうとすると、左右のクリンチアッパーを内側から突き、ワンツーを当てるも、ここで赤沢も最後の力を振り絞って打ち返し。  いったん離れたウォンジュンに、赤技は試合中に両手をヒザに着いてしまう。詰めるウォンジュンだが、ゴングに救われた赤沢は今度はマットに跪いてから自陣に戻った。  セコンドから「気持ちだ、気持ち」「思い出せ、お前、大将だぞ」と鼓舞される赤沢。 [nextpage] 勝ち越しを決めた逆転TKO「子供を思い出せ」  3R、グローブタッチ。左ボディ打ちから入る赤沢。若干の回復が見られるが、動きは緩慢でどこで残る力を出し切るか。ウォンジュンはジャブから左ボディの打ち返し。右から左を突くウォンジュンに、顔を腫らした赤沢はジャブの刺し合い。そこにワンツーで飛び込むウォンジュンはさらにワンツースリーの連打から、右ヒジの飛び込み!  後退する赤沢に右ロー。赤沢はバックフィストを見せるが動きは鈍い。ワンツーを被弾した赤沢は金網に詰まり肩で息をする。ここでウォンジュンは左ボディを当ててから左を差し上げて得意の右の足払い! 倒れた赤沢は足も効かず。それをまたいだウォンジュンはマウントからのパウンド連打でレフェリーが間に入った。  場内は割れんばかりの大歓声。0-2からの逆転の3連勝での勝ち越しを決めるTKO勝ちに、ブラック代表は立ち上がり、拳を突き上げる。カメラは憮然とした表情を佐伯繁DEEP代表をとらえる。会場とは別の劇場のスクリーンで観戦したファンも歓喜。  ウォンジュンは赤沢にハグして挨拶してから、ガッツポーズで咆哮した。  体重差を跳ねのけて勝利したウォンジュンは、試合後インタビューで、「ありがとうございます。皆さんが気に入ってくれて嬉しいです。階級差が大きすぎて1Rに苦戦して、本当に大変だったんですが、苦しむたびにコーチに『息子や娘の名前を話してほしい』と伝えていました。それがすごく力になりました」と言って、感極まり涙。  続けて「子供たちはいま家族と見ています。父は今でも私が格闘技をすることに反対しています。どこにいるか分からないけど、お父さん、これくらいならもう認めてくれてもいいでしょう? 1Rを凌げば、2、3Rに勝機が来ると思って(MMAストーリー)会長と作戦を練っていました。練習のおかげでいい結果が出ました。自分は自分の勝利を疑わなかったです。子供たちへ、お父さんは君たちのおかげで耐えて勝ったよ。愛してるよ」とカメラに向かって語りかけた。  続けて王座戦で敗れた“ビッグガイ”ことヤン・ヘジュンへのリヴェンジを誓うと「一言だけ、私は雑魚じゃないです」と笑顔で語った。  配信コンテンツでもある厳しさは、TKO負けした敗者が、ドクターチェックを控え室で行うべき時間に、敗者インタビューでその場に待たされることだ。  ケージに座り込んでもたれかかって待っていた赤沢は、マイクを向けられ、「すごいハードな戦いでした。1R目にテイクダウンして極められると思ったけど、そこでフルパワーを使って、2、3Rとガス欠をしてしまいました」と敗因を語ると、ウォンジュンについて「すごくハートがあって、何回も僕がフィニッシュできる場面で諦めなかった。韓国の国民が持っている強い気持ちを見せつけられたという感じです。BLACK COMBATは人気いっぱいで温かいので、もう1回戻ってきて戦いたいです。彼の子供たちに言いたいのは、あなたたちのお父さんはすごく強かった。帰ったらお父さんにたくさんハグして“強かった”と言ってあげてください」とコメント。  さらに、「自分はまた戻ってきてマンモス選手と戦いたいです。DEEPにはもっと強い選手がいっぱいいるので、次に日本でやるときは、DEEPがボコボコにするので、それまでしっかり練習して頑張ってください」と語った。 [nextpage] 「この日韓戦で、多くの10代がMMAにハマるきっかけになったんじゃないか」(ブラック代表)  現王者、元王者、コンテンダークラスを集めて“勝ちに行った”佐伯代表は、2勝3敗で敗れた対抗戦を「悔しい……最初はトントンと勝って余裕だと思ったけど」と総括。  続けて「悔しいですけど、みんなの熱がほんとうに素晴らしいイベントだと思いました。ブラックさんの魅力が僕にも分かりました。最初に『魅力が無い』とかいろいろ言いましたけど、今回対抗戦が出来て光栄です……しかし、今度は日本で潰してやる、以上」とリヴェンジを予告した。  ブラック代表は「遠いところまで来てくださったDEEPの選手の皆さん、韓国の選手やファンの皆さんありがとうございます。いま佐伯代表が仰った通り、日韓交流において正直、悪感情は無かったですし、プロモーションのために日本との対抗戦マーケティングの役割を担いました」と挨拶。  しかし、「これが始まりなので、最後までやりましょう。言いたいことは言います(笑)。こうして私たちが勝利しましたが、現チャンピオンたちがまだここにいません。より強い選手たちで構成して、日本に侵攻したいと思います」と、第二弾は日本での対抗戦を示唆。さらに「日本のナンバーワンの団体、RIZINはDEEPと兄弟のような関係だと聞いています。弟がこうして殴られて、お兄さんが出て来ないといけないんじゃないですか? 兄が飛び掛かるか、弟と一緒に戦うか、いずれにしても日本で見事に沈没させます。選手たちと征伐に行きましょう」と、次回は日本侵攻を宣言。さらにRIZINにも宣戦布告した。  また、「ワールドカップが与えてくれたあの感動によりサッカーが好きになり、やるようになった。今度はBLACK COMBATとDEEPの日韓戦によって、多くの10代がMMAにハマるきっかけになるんじゃないかと思います。トレンドは変わる。スポーツでMMAのように最もドラマチックな結果で、映画一本を書き下ろしたような感じです。記者会見場で佐伯代表から挑発された時、嫌な気持ちもあったけど、いい気持ちもありました。なぜなら日本本土に攻め込むことができる理由になりましたから」と対抗戦の手応えと“続き”を語った。  代表選抜戦から個々の選手のストーリーを描き、対抗戦でキャラクターを際立たせ、個人競技をチーム戦としても見せた今回の「DEEP×BLACK COMBAT」。その人気は、KMMAのなかで存在感を増している。一方で、YouTubeで有名になっても実力が無ければ淘汰されるのは間違いない。  今回の対抗戦は、それぞれが階級差のあるマッチメークもあるなかで、結果としてDEEPは負け越した。日本と比較すると大会数は多くはないが増えてきた韓国のMMAで、なぜ強い選手が生まれるのか。そして、一部では反発もある、BLACK COMBATの見せ方から、今後、KMMAはどう変わっていくか。練習環境や内容、取り組みに、いま一度日本MMAが注目する必要がある「5対5 対抗戦」だった。
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