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7月6日(日本時間7日)、米国ネバダ州ラスベガスのT‐モバイルアリーナで開催された『UFC239』セミファイナル前の第10試合で生まれたUFC史上最短KO「5秒」ノックアウト。
ホルヘ・マスヴィダル(米国)による右跳びヒザ蹴りでのKOは、その直前に予行演習がされた必然のKOだった。
試合後、マスヴィダルのコーチであるマイク・ブラウンがインスタグラムで、「UFC239の48時間前」と記した動画を公開。そこには、試合同様に金網オクタゴンのなかで、マスヴィダルがトレーナーが持つミットに向けて、走り込んでの跳びヒザを決める姿が映し出されている。
それは金網際から、ほんの少し右にステップしてから助走をつけて走り込んだ、本番とまるで同じ動作。
今回の試合まで19戦無敗、元Bellator世界ウェルター級&元ONE世界同級王者のベン・アスクレンを相手にマスヴィダルと陣営は、レスラー殺しの飛び道具をあらかじめ用意していたといえる。
NCAAディビジョン1の王者でオールアメリカンに4度選出された超強豪レスラーのアスクレンは、その長い手足を活かして、「触れれば倒せる」というスタイルで対戦相手をテイクダウンしてきた。相手の前進を受け止めてもテイクダウンしてしまうレスリング力を武器に、前傾姿勢で長い手を伸ばしてくる。その動きに合わせた跳びヒザ蹴りだった。
5 seconds and a ? ? #UFC239 pic.twitter.com/KsPvp6OGCv
— UFC (@ufc) July 7, 2019
当然、カウンターのテイクダウンで倒されるリスクはあるが、マスヴィダルは左足で踏み切り、右ヒザをヒット。そのまま左に流れるように飛び込んでいる。
今回の動画を公開したマイク・ブラウンはアメリカントップチームのコーチ。過去には日本のDEEPにも参戦し、6月14日にはBellatorでの堀口恭司のコーナーマンとして、王座奪取の立役者の一人として活躍した名参謀だ。
その堀口の師匠である山本“KID”徳郁は、2006年5月のHERO'Sで同じくレスラーの宮田和幸を相手に、開始直後の左跳びヒザ蹴りで「4秒」KOを記録しているが、その左跳びヒザも垂直ではなく、右に流れて当てる形だった。
試合後、KIDは本誌の取材に「思いついたのは3日ぐらい前。タックル来るのは分かっているから“跳ぼう”って」と、偶然ではなく狙って当てたことを明かしている。
マスヴィダルとKID──ともに秒殺勝利を実現した、そのスペクタクルな跳びヒザは、“必然”のKO劇だった。