MMA
インタビュー

【RIZIN】ボンサイ柔術で過ごしたかけがえのない日々──ケース「サトシが寝技に持ち込めれば、高い確率で一本を取れる」「クレベルのお母さんが毎日3食作ってくれているおかげで減量は順調だ」

2022/12/29 08:12
 大晦日『RIZIN.40』(さいたまスーパーアリーナ)のライト級(71kg)で大尊伸光(野田ボディビル同好会)と対戦するジョニー・ケース(米国/MMA LAB)に本誌でインタビューを試みた。  当初の相手ルイス・グスタボの負傷により、対戦相手が大尊に変更されるも「大晦日にトフィック・ムサエフと試合をしたとき、自分もRIZINデビュー戦で試合をしたから、彼のファイトスタイルも見ている。タイソンも同じように非常に危険度の高いいい選手で、厳しい戦いになることは間違いないし、自分と戦うのにふさわしい選手」と評価。  ボンサイ柔術でホベルト・サトシ・ソウザやクレベル・コイケらと過ごしたファイトキャンプを「かけがえのない日々」と言い、「今回ボンサイに呼んでもらって、兄弟として、家族として迎え入れてもらって、自分の中で消えかかっていた情熱の炎が再び大きく燃え始めた。自分がいかにこの仕事を、この競技を愛しているのか、再び気づかさせてくれたんだ。僕はサトシのサポートのためにもボンサイに来た。でも、僕がボンサイから大きなものを受け取ったんだ」と語った。 正直に言うと何度もタップしたけど、成長してタップも減ってきた ──ボンサイ柔術での練習はいかがですか。 「今回のファイトキャンプは非常に実りがあり素晴らしいものです。僕にとってかけがえのない日々でした。ボンサイの彼らはアスリートとしてだけでなく、人としても優秀です。今回来てみて、ほんとうに素晴らしい経験をしています。彼らは素晴らしい人柄で自分をチームのメンバー、ファミリーとして大晦日の前に迎え入れてくれて、試合に向けた環境も整えてもらって、いまの自分に必要な経験をやらせてもらっています。サトシと話しているだけでポジティブな気分になりますし、自分がまた白星先行になるために必要なことがすべてここに揃っていると思っています。この機会を与えてくれてすごく光栄に思っていますし、ほんとうにいい準備ができているので、あとは結果を出すだけです」 ──いまはクレベル選手もタイから戻ってきてともに練習をしていて、サトシのほかにもボンサイ柔術の先生やファターたちとも練習をしているわけですね。 「ほんとうにこの環境というのは、ボンサイ柔術では、ひとつの家族として練習して、迎え入れてもらっていることが、すごくあって、その環境があると、上達が早くなる。練習相手への信頼感があることによって、練習中に“この人は俺に怪我させるつもりもあるんじゃないか”とか、悪いポジションになったら、ちょっとキツめのことをやってくるんじゃないか、という懸念点が全くなくここでは練習ができているので、お互いに怪我をさせることなく、お互いの技術を高めることができる環境が作られていて、昔のウェリアーたち、戦士が作り出す環境なのかなと強く感じます。たとえるなら、相手に真剣を預けても信頼できるような環境です。  正直に言って、嘘はつけないので、今回ここに来てから何度も自分はタップしています。普段、気持ちのいい環境の外に出ること、自分が安心する環境から外に出ることによって、人は成長すると思っているので、ここに来てから散々、タツプしていますが、最近はタップも減ってきているのも分かっているので、上達も感じます。こういう環境を作ったということ自体が、サトシやクレベルが、どういう人物なのかも説明している。彼らを練習していると、ほんとうに強い練習をしていても、お互いに怪我をさせることのないやり方もある。そういうことに関してすごく勉強になります」 ──打撃パートでは、鈴木博昭選手との練習で得たものは? 「“リトルモンスター”は最高だよ。本当に自分の打撃を助けてくれてる。初めてミット打ちをしたその時から自分の技術が上がってる実感がある。本当に細かい部分や微調整を指摘してくれて、自分の持っているスタイルを変える事なく打撃の技術を上げてくれる。自分は日本語を話せないし、彼も英語が話せないけど、練習を通してしコミュニケーションで十分に伝わるくらい、技術的には高いレベルで意思疎通、交流ができていると思う。彼はすごいストライカーで素晴らしいコーチだ」 ──ボンサイ柔術で学んだことで、ケース選手にファイトスタイルの変化もあるのでしょうか。 「スタイル自体は特に変わっていないと思う。ここにいるサトシ、クレベル、マルキーニョスなどは寝技のスペシャリストだ。自分は様々な選手と、高いレベルで寝技の練習をしてきたけど、彼らは特別で、より高いレベルにいる。このレベルに身を置くとたくさんタップをするけど、当然新しい事を覚える。この経験は大きい。それによって、自分のスタイルが変わるということはないけど、柔術というジャンルへの新しい発見があったり見方が変わったのは間違いないね」 [nextpage] 自分はサトシとクレベルの試合が、みんなが言うようなミスマッチだとは思わない ──対戦相手がルイス・グスタボ選手から大尊伸光選手に変わったことでどんな変化が? 「とにかくこの試合、グスタボと試合をするつもりで、ほんとうにタフで、強いプレッシャーといつでもフィニッシュできる、殺傷能力を持つ選手だと思っていて、その対戦相手との厳しい戦いを想定してきました。対戦相手が変わったところで、タイソンも同じように非常に危険度の高いいい選手で、厳しい戦いになることは間違いないし、タイソンの試合も生で観たことがある。2018年の大晦日にトフィック・ムサエフと試合をしたとき、自分もRIZINデビュー戦で試合をしたから、彼のファイトスタイルも見ている。自分と戦うのにふさわしい選手だと思っているし、対戦相手が変わってもやることに変わりはありません」 ──ファイターとして大尊選手の印象は? 「いい選手だと思う。RIZINに呼ばれる実力を持っている。ただ、対戦相手のことを心配しても、あまり自分には影響がない。対戦相手が何をやるのかは、自分にはコントロールできないこと。それよりも自分が何をするのか、自分がコントロールできるところをしっかり高めて、試合で出す。テレビゲームのコンピューターと対戦するやるような感じで、コンピューターの動きは手に負えない。自分ができることを精一杯高めて、自分のやりたいことをぶつけるだけです」 ──今回の試合で勝負を決めるキーをどうとらえていますか。 「圧力、ペース、精神力、情熱……。今回ボンサイ柔術でファイトキャンプを組んだ事によって、自分の格闘家としてのキャリアが一周したという風に感じるんだ。サトシとタイトルマッチをやった時は、自分の勝利を疑わなかった。自信満々でリングに上がり、ああいう形で負けてしまった事でかなり落ち込んだよ。自分の中の格闘技への情熱の炎が一気に小さくなったのが分かったんだ……だから、その後のタケダ(武田光司)との試合も、情熱が足りなかった。何が何でも勝つといいう気持ちが無かった。  今回ボンサイに呼んでもらって、兄弟として、家族として迎え入れてもらって、自分の中で消えかかっていた情熱の炎が再び大きく燃え始めた。自分がいかにこの仕事を、この競技を愛しているのか、再び気づかさせてくれたんだ。僕はサトシのサポートのためにもボンサイに来た。でも、僕がボンサイから大きなものを受け取ったんだ。そういう意味でもボンサイにいる家族のみんなに、心から感謝している」 ──言える範囲で構いません。サトシ選手、クレベル選手の試合をどう予想しますか。 「みんなが考えている通り、勝つのは間違いなくサブミッションだ。試合がグラウンドに行けば、サトシにもクレベルにもチャンスがある。AJは、アウトボックスをしてポイント勝ちを狙ってくることもあると思うので、そこをいかに攻略するかだ。サトシが寝技に持ち込めれば、高い確率で一本を取れると思う。  クレベルに関しては、ピットブルがおそらくフィニッシュを狙ってくるので、前面でのプレッシャーが厳しくなるだろう。もしそうなっても、クレベルは逆にアウトボクシングがみんなが思うより巧みだ。組みの展開で一本を取りに行くだろうね。  自分はこの2つのマッチメイクが、みんなが言うようなミスマッチだとは思わないんだ。逆に寝技だけを見たら、RIZIN側の方がレベルが高い」 ──ところで、地元のアイオワと似ているというカントリーサイドの磐田で、どんなご飯を食べてコンディションを作りましたか。 「それが、実は今すごい食事プランが立てられていて、食事面ではとても充実しているんだ。クレベルの母親が原料のバランスなども考慮した食事を3食作ってくれている。自分が来日して2週目からここまで毎日、彼女が全部の食事を面倒みてくれているんだ。すごく健康的な食べ物だったんだけど、しかもとても美味しかった。結構たくさん食べて、それでも体重がどんどん減っていくっていう。おかげで今回の減量は通常より順調だ。健康的で味は美味しいし、何よりも愛情が詰まってる。最高の食事を摂ってる。クレベルのお母さんは本当に素敵な人で、すっかり借りができちゃった。たくさん食べてもどんどん体重をカットしていけるなんてことこれまで経験したことなかった。今週はずっと苦しむ必要がなかった。非常に優秀な栄養士だと思う。このキャンプには本当に満足している。東京に行く前にお母さんに『ハグして』っていったんだ」 ──それはなんとも素晴らしいファミリーですね。この試合後の展望をどう考えていますか。 「とにかく米国に戻ったら息子たちとたくさん過ごしたいです。クリスマスシーズンやホリデー、感謝祭もそうですが、米国の祝日をまったく過ごせなかったので、家族とすごして休暇をしたら、また自分が愛する、練習して試合をする、このスタイルを続けていけたらと思います」
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