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インタビュー

【UFC】プロハースカ負傷で返上のベルトを巡る王座戦「ブラホヴィッチは近距離で打撃を入れたいけれど、タックルを取られたくない。アンカラエフは離れて戦いたいけれど、近くになってもタックルがある」=12.10『UFC282』

2022/12/08 12:12
 2022年12月10日(日本時間11日)、米国ネバダ州ラスベガスのT―モバイル・アリーナにて『UFC 282: Blachowicz vs. Ankalaev』が行われる。  同大会は当初、メインイベントでライトヘビー級王者イリー・プロハースカが前王者グローヴァー・テイシェイラをダイレクトリマッチで迎え撃つ初防衛戦が行われるはずだったが、プロハースカが肩の負傷により欠場。  復帰まで時間がかかることから王座は返上され、代わって同級ランキング2位のヤン・ブラホヴィッチ(ポーランド)と3位のマゴメド・アンカラエフ(ロシア)の間で新ライトヘビー級王者決定戦が行われることとなった。この一戦の見どころをWOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”髙阪剛に語ってもらった。 新王者には「プロハースカやテイシェイラが相手でも勝つんじゃないか」と思わせる勝ち方が求められる ──『UFC282』メインイベントのライトヘビー級タイトルマッチは、王者イリー・プロハースカの肩の負傷により中止になってしまいましたね。 「残念なのと同時に、イリーのケガの状況が心配ですね。肩って脱臼ぐらいならいいんですけど、周りの靭帯などの組織までちぎれてしまうと、治るまで相当時間がかかるんですよ。今はただ、イリーがしっかり回復して万全な形で復帰してくれるのを願うだけですね」 ――そしてプロハースカは王座返上となり、新たにヤン・ブラホヴィッチvs.マゴメド・アンカラエフが新王者決定戦として行われることになりました。 「このカードは、もともと次期挑戦者決定戦のような位置付けで、コ・メインイベントとして組まれていたんですよね。それが急きょタイトルマッチになったことで、両者ともにモチベーションはすごく上がってると思うんですよ。  ただ、ここでベルトを獲ったとしても、その上にはイリーとテイシェイラの2人がいるという状況は変わらないので、この試合の勝者、つまり新王者には、“プロハースカやテイシェイラが相手でも勝つんじゃないか”と思わせる勝ち方が求められますよね」 ――曲がりなりにも「暫定」ではなく「正規王者」なわけですからね。ブラホヴィッチは元ライトヘビー級王者で、アンカラエフは現在8連勝中と両者ともに実績十分ですが、髙阪さんはこの一戦をどう見ていますか? 「ブラホヴィッチはブラジリアン柔術黒帯で、アンカラエフはグレコローマンレスリングがベースでコンバットサンボのスポーツマスターの称号がありますけど、大前提として2人ともフィジカルが強くて、倒せるパンチをしっかりと持っていますよね。ただ、スタンドでの戦いかたは対照的なんです。  アンカラエフの方はロングリーチなんですよ。手の長さ自体はブラホヴィッチの方が長いんですけど、アンカラエフはジャブをしっかり伸ばしてくるし構えがサウスポーなので、相手からするとすごく伸びてくるパンチに見えるんです。そして、しっかりジャブを当ててからの左ストレートもけっこう前傾姿勢になりながら伸ばしてくるので、どちらかというと距離の支配ができるのはアンカラエフの方かな、と」 ――相手のパンチがなかなか届かない遠い間合いでしっかりと勝負ができるわけですね。 「そうなんです。対するブラホヴィッチのほうは、ショートに強いじゃないですか。相手が組みに来る時とか、かなり近い距離でもしっかりと腕を畳んでフックなりアッパーなり強い打撃を入れて相手を倒すのを得意にしているので」 ――ルーク・ロックホールドやドミニク・レイエスに失神KO勝ちしたようなパンチですよね。 「とくにレイエスを倒したフックは、ものすごい一撃でしたよね。アンカラエフもあれだけはもらいたくないはずなんですよ。だからリーチの短いアンカラエフの方が距離を取って、リーチの長いブラホヴィッチの方がなんとか距離を詰めたい。そんな立場が逆転した攻防になるんじゃないかと思いますね」 [nextpage] 急遽、メインの5分5R制に変更が影響するもの ――アンカラエフはスタンドで遠い間合いを好みますけど、一方でベースがレスリングですから、距離が近くになったら組みにいくという選択肢もありますよね。 「タックルがありますよね。そこがもうひとつのポイントで、ブラホヴィッチはフィジカルは強いんですけど、テイクダウンを取られることが比較的多いんですよ。王座転落したテイシェイラ戦では何度かテイクダウンを奪われて、最後は裸絞めで敗れているし、前回のアレクサンダル・ラキッチ戦は勝ちましたけど、やはり片足タックルから足をすくわれてテイクダウンを奪われている。  いわゆる“足が軽い”タイプで、上半身のフィジカルが強いから四つ組みの攻防とかは強いんですけど、足への意識が留守になる瞬間が試合の中であるんじゃないかという気がするんですよ。タックルがあるアンカラエフとの試合では、その辺がちょっと不安材料ですよね」 ――ましてやアンカラエフはテイクダウンを奪ったあと、強烈すぎるパウンドの持ち主ですからね。 「あのダゲスタン系の選手に共通する上から打ち下ろすパウンドの強さは恐ろしいものがありますからね。“ダゲスタンパンチ”として、通常のパウンドとは区別したくなるほどで(笑)。だからブラホヴィッチ的には、近い距離で打撃を入れたいけれど、タックルを取られたくない。アンカラエフの方は、離れて戦いたいけれど、近くになってもタックルという選択肢がある。ここら辺の交錯した試合作りを両者が求められるところが、この一戦の面白さだと思いますね」 ――また、この試合は当初は5分3Rの予定でしたが、タイトルマッチになったことで、急遽5分5R制になりました。この変更も試合に影響しそうですか? 「これはとくにブラホヴィッチのほうに影響が出ると思いますね。アンカラエフの方は、距離を支配してポイントを取って判定勝ちを狙える戦い方ができるので、5R制になってもそこまで戦い方や戦略を変えずにすむと思うんですよ。でも、ブラホヴィッチのほうは早いラウンドからフィジカルを使って、3R以内に勝ち切る戦いをすることが多いので、戦略の練り直しを迫られる可能性が高いと思います」 ――逆に言うと、早期決着を狙ってくる可能性もありますか? 「あるでしょうね。それがブラホヴィッチの戦い方であり、強みですから。だから変に直前になって戦略を変えるより、テイクダウンのリスクはしょうがないっていうくらいに、早めの段階から距離をどんどん潰していって、強い打撃を出していってほしいですね。後半スタミナがキツくなるかもしれないけれど、“関係ねえよ、倒すしかねえんだ”ってやってほしい。それでこれまで結果も出してきたんで、そういう試合を期待したいですね」(取材・文/堀江ガンツ) [nextpage] UFC 282: Blachowicz vs. Ankalaev 全カード 【収録日・収録場所】2022年12月10日<現地>米国ネバダ州ラスベガス T-モバイル・アリーナ 12月11日(日)午後0:00[WOWOWライブ]※メインカード生中継(WOWOWオンデマンドで同時配信) 12月13日(火)午前1:00[WOWOWライブ]※リピート(WOWOWオンデマンドで同時配信) 【メインカード】(※WOWOW) ▼UFC世界ライトヘビー級王者決定戦 5分5Rヤン・ブラホビッチ(ポーランド)29勝9敗(UFC12勝6敗)マゴメド・アンカラエフ(ロシア)17勝1敗(UFC9勝1敗)※UFC9連勝中※イリー・プロハースカが肩の怪我で王座返上。グローバー・テイシェイラ戦は中止に ▼ライト級 5分3Rパディ・ピンブレット(英国)19勝3敗(UFC3勝0敗)※UFC3連勝中ジャレッド・ゴードン(米国)19勝5敗(UFC7勝4敗) ▼ウェルター級 5分3Rアレックス・モロノ(米国)22勝7敗(UFC11勝4敗)※UFC4連勝中サンチアゴ・ポンジニッビオ(アルゼンチン)28勝6敗(UFC10勝5敗) ▼ミドル級 5分3Rダレン・ティル(英国)18勝4敗(UFC6勝4敗)ドリカス・デュ・プレシ(南アフリカ)17勝2敗(UFC3勝0敗)※UFC3連勝中 ▼フェザー級 5分3Rブライス・ミッチェル(米国)15勝0敗(UFC6勝0敗)※UFC6連勝中イリア・トプリア(ジョージア)12勝0敗(UFC4勝0敗)※UFC4連勝中 【プレリム】(※UFC Fight Pass) ▼バンタム級 5分3Rジェイ・ペリン(米国)10勝6敗(UFC0勝2敗)ラウル・ロサス・ジュニア(米国)6勝0敗(UFC0勝0敗)※UFC史上最年少契約 ▼ヘビー級 5分3Rジャルジーニョ・ホーゼンストライク(スリナム)12勝4敗(UFC6勝4敗)クリス・ドーカス(米国)12勝5敗(UFC4勝2敗) ▼ミドル級 5分3Rエドメン・シャバージアン(米国)11勝3敗(UFC4勝3敗)ダルチャ・ランギアムブーラ(コンゴ)11勝5敗(UFC2勝4敗) ▼ミドル級 5分3Rクリス・カーティス(米国)29勝9敗(UFC3勝1敗)ホアキン・バックリー(米国)15勝5敗(UFC5勝3敗) 【アーリープレリム】 ▼フェザー級 5分3Rビリー・クアランティーロ(米国)16勝4敗(UFC4勝2敗)アレクサンダー・ヘルナンデス(米国)13勝5敗(UFC5勝4敗) ▼フェザー級 5分3Rエリック・シウバ(ベネズエラ)9勝1敗(UFC0勝0敗)TJ・ブラウン(米国)16勝9敗(UFC2勝3敗) ▼フライ級 5分3Rダニエル・ダ・シウバ(ブラジル)11勝4敗(UFC0勝3敗)ヴィニシウス・サルヴァドール(ブラジル)14勝4敗(UFC0勝0敗) ▼バンタム級 5分3Rキャメロン・サイマン(南アフリカ)6勝0敗(UFC0勝0敗)スティーブン・コスロー(米国)6勝0敗(UFC0勝0敗)
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