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インタビュー

【RIZIN】弥益ドミネーター聡志、平本蓮戦と自身を語る。「弥益楽勝だろと思っている人たちからしたら驚くような展開になるのかもしれない」

2022/11/04 19:11
 2022年11月6日(日)愛知・ドルフィンズアリーナにてケージで開催される『RIZIN LANDMARK 4 in NAGOYA』の出場選手個別インタビューが4日(金)名古屋市内で行われた。  第11試合の70kg契約5分3Rで平本蓮(ルーファスポーツ)と対戦する、弥益ドミネーター聡志(team SOS)がインタビューに答えた。今回の試合は発表当初からファンの間で議論を呼び、1日には平本が練習中に足を怪我をしたことを明かし、当初の66kg契約から70kg契約に変更して弥益との試合に臨むとの発表がされた。  この一連の出来事を弥益はどう思っているのか。記者たちからの質問が殺到し、個別インタビューでは異例の30分を越える事態となったが、弥益は軽妙な語り口でひとつひとつ丁寧に答えていった。 70kgはどっちが不利有利という話も簡単にできない ──大会まであと2日。現在の心境は? 「うーんと(笑)結構バタバタしてたなと思ったので、ちょっとうーん、なんですかね、試合自体に集中する時間がちょっと短かったというか他のことで頭が埋まってしまってたという印象がちょっと強かったですね」 ──対戦相手の印象は? 「うーんと(笑)人間の部分と選手の部分の評価は彼の場合は別で話さなくちゃいけないかなと思っていて。人間としては、本当に波風立てる人だというか。人の心に影響を及ぼす力を持っている、いい意味でも悪い意味でもなんですけど、力を持っている子だと思いますし、その根底にはこの競技に対してや他のことに対してもすごく日頃から考えをめぐらせている人間なんだろうなという印象です。で、選手としては、やはり『元が強いな』というか単純に平本蓮という人間がすごく強くて、それを最初に表現したのがK-1という舞台だった、という印象ですので、あくまで入口がK-1だったからK-1で実績を残して、MMAでは今のところ100%は出せていない、少なくとも今までの試合は、という評価があると思いますが、そこは入口が違ったからなんじゃないかと考えています」 ──試合のテーマは? 「なんだろうな。メジャーイベントって感じですね。いろんなことがあるよねっていう。関わる人も多いですし、見ている人も多いですし、いろんな方のいろんな事情が混ざっていますし、だからこそ経験できることがすごくあると思いますし、自分は大変だなと思いながらやっぱりあの頃見ていたメジャーイベントのなかに飛び込んでいるなというのが今回の件でより実感できたというか。だからその意味では、あの頃の自分からすれば楽しみな立場になっているなという印象です」 ──試合展開のイメージは? 「多分、見ている人は弥益楽勝だろと思っている人も多いと思うのですけどそういう人たちからしたら驚くような展開になるのかもしれないですし自分自身は苦戦するつもりで全てを考えていますので、そうなってもまず自分が崩れないという気持ちをもって臨みたいと思います」 ──70kgに契約体重が変更された。いつ頃打診が? 「言っていいんですかね? 割と最近です」 ──即答でOKか、一回保留したのか? 「そこについては、もう実現のために譲歩できるところだとは思っていたので、そこで持ち帰るとかはしなかったです」 ──66kgに落とすプランでの8分目とか、9分目まできたところ? 「というよりは、もう登りきった状態でしたね」 ──それで今食べて増やしている? 「食べて増やすというよりは、体を元気にしているという感じですね、ちょっと食べすぎて胃もたれとかもしたんですけど(笑)。食べ過ぎは良くないと思って、体を元気にさせるという意味で食べています」 ──最初の色々あって試合に集中できないというのはそれも含めて? 「まあまあゴタゴタしていて、試合あるのないのというところもありましたし。減量のスケジュールも変えましたし、いろいろと集中できない情報が多かった印象です」 ──70kgは率直に言って自分にとって不利ですか? 「どうなんですかね? それは相手のコンディション次第だと思っています。弥益はどうしようもない状況ですので、相手のコンディションがどういう状況、どんなかたちで70kgに作ってくるのか、それ次第になると思いますね」 ──階級スポーツなので4kg違うとほぼ1階級違う状況。お互い条件は同じだが、弥益選手にとって歓迎すべきか明らかにマイナスと思ったか? 「もちろん歓迎はしてないですけど(笑)。66kgに向けて体重を作っていたので、嬉しいとはなっていないですが、彼の状況が自分には100%理解できていないので、どっちが不利有利という話も簡単にできないですし、彼の70kgがどういう形で作られた70kgかは正直わからないところなので、より不利という話も一概にはできないかなと思います」 ──ベイノア戦の73kgより萩原戦の66kgのときのほうがベストパフォーマンスだった? 「そうですね(笑)。73kgについては無理やり食って。73kgで決まったときに自分の体重が71kgとかで。だからもうとにかく食べて。正直あれも急に決まったので、試合に向けての練習もそこまでできていなかったというのもあって、単純比較はできないですけど、萩原戦のときの66kgは試合がしっかり決まって、それに向けて練習も減量もしてという状態だったので、コンディションはよかったと思いますね」 ──ということは今回はマイナスでしかない? 「どうですかね。全く向こうが同じ条件だったらマイナスではないですけど。それは相対的な話だと思います」 [nextpage] 自分は平本選手と対戦したいと思っていました ──今までのリスクのある試合にさらにリスクが乗ったような見方も出来るが、本人としては? 「自分がRIZINに出させていただいてやっている試合って、なんかこうすんなりいかないといういか、急だったり体重が違ったり、余白がある。それはいいことでもあると思いますし悪いことでもある、ただそういう余白があるということは人が語れる余地があると考えたら、いろんな人がいろいろ議論できるというか、語りあえるスペースが増えているんじゃないかなと思いますので。もちろん競技者としては『なんだろこれ』という気持ちもあるんですけど、ただ、人に見てもらうことをしている、ということを考えたら、その余白は決して悪いだけとは言えないかなと」 ──平本選手の70kgにしてほしいという要望は、直前でやらないというよりはましと言っていたが、それは沖縄大会のメインが飛んだことが彼の頭にあってこういうことになったのかなと思う? 「彼がどういう気持ちでこういう流れになったのかはやっぱり聞いてみないとわからないですし(苦笑)、それはちょっと聞いてみたいなという気持ちはあるのですけど(苦笑)。ただ自分としては平本選手と試合がしたかったんです。最初は正直なんで試合するんだと思いましたけど、ただこの試合が決まって、それに向けてリング上でも挨拶とか、会見とか各種インタビュー受けさせていただいて自分自身も気持ちを高めてこられましたし、それなりにストーリーというか、彼と戦う意味みたいなものは作ってきたし発信してきたつもりなので、自分は平本選手と対戦したいと思っていましたし、彼が出場してくれるっていうことに感謝したい気持ちでもあります」 ──平本選手のディスノートの感想は? 「はははは(笑)。ごめんなさい、しっかりは見ていないんですよ、端折りつつは見て、気持ちが強いなというか(笑)。あの空気感のなかで、あの会見って人もそんなに周りにいなかったと思うんですよ。だからリアクションもそんなにないですし、どういう反応がされているか分からないっていう状況のなかで、あれを続けられるメンタルはもうすごいなと思いましたし、それに対して鈴木千裕選手がつっこんだじゃないですか。鈴木千裕選手って、方向性的にアツイ少年漫画の主人公みたいなキャラクターじゃないですか。だから平本蓮がいないと映えないなというか。そのふたりがいるからこそお互いを立てている感じがして、『いいコンビだな』と思いながら見ていました。間の榊原さんがいい味を出していましたよね」 ──平本戦で得られるメリットは? 「なんですかね、ツイッターのフォロワーとYouTubeの回転数じゃないですかね。冗談ですけど。平本選手はこれから本当に伸びていく選手だと思いまし、彼がこのまま真摯に格闘技に向き合い続けたら一定の成果の出る選手だと思っていますので、その選手と交わることができるのは幸せだと思っています」 ──自身が逆の立場だったらどうしてた? 「わからないです。怪我がどこかというのがわからないのでそれ次第もあります。自分はずっと茨城で格闘技をしていて、多少の怪我なら出ろという環境で育てられていますので(笑)。もちろん場所によります。致命的な場所だったら無理と言いますけど、場所によるとしか言えないです。極力出るようにはしますし、体重もつくるようにはするつもりです、ただそれを彼にそのまま適用できるかは彼の状況が自分にはわからないので簡単には言えないですね」 ──自分が体重変更を申し出る可能性も? 「体重変更は…そこまでの強気にはなれない(笑)。そこは小心者なので」 [nextpage] 平本選手が俺に勝った時に評価されてほしいなという気持ちがすごくある ──サラリーマンをやりながらファイターもやっている。サラリーマンをやりながら戦う姿を見せたいというビジョンや思いは大きい? 「えっと、申し訳ないですけど全くないです」 ──あくまで自分が好きなことを突き詰めてやっている? 「はい、自分が楽しんでいるだけですし、自分がやりたいからわがままを通してやらせてもらっている、ただの趣味なので。それを見て勇気をもらったとか元気をもらったと言ってくださる方がいるのはもちろん嬉しいですけど、ただその人たちのために何かする気も正直ないですし、自分は自分が楽しむために格闘技をできていたらそれで満足な人間です」 ──知名度があがるとSNSで相談とかは増えない? 「DMとか正直見切れない部分があるのですけど、「働きながらですけどRIZINに出るにはどうすればいいですか?」みたいなDMも頂いたりするのですが、わかりません!(笑)。RIZIN出るために格闘技をするというのは、俺はおすすめしないです。なぜならそれは目標が先すぎるからです。楽しいからやってください、みなさん。楽しいと思ったことをやってほしいと思っています」 ──仕事とつらいトレーニングの両立ができている秘訣やポイントは? 「こういう質問に対して一番に言わなくちゃいけないのは、奥さんの忍耐ということだと思いますね。奥さんや職場の皆さんの忍耐というのが一番に上がってきまして、その次に辛いトレーニングとおっしゃっていましたが、自分は先ほど申し上げたとおり、遊びなんで。遊びに出かけているだけなんですよ。だから続けられるんです」 ──そのためには家庭や職場の寛大な理解が必要、と? 「寛大な理解、物理的な負担、その他諸々あるかと思います。そこからいかに目をそらさず向き合っていくかだと思います(笑)」 ──平本選手はSNSで過激な挑発をすることで渦をつくり試合を盛り上げる選手。今回の怪我もあり弥益選手へのリスペクトもあったと思うが、弥益選手に言及したものはなかった。その辺は肩すかしも? 「彼がどういう考えで今回の方向性を変えてきたのかは、やっぱり彼に聞いてみないとわからないところではあるのですけど。とはいえ自分は、日中は一切SNSを見られないので(笑)。そこで時差が生まれちゃうので、いざ突っかかられても時期を逸してしまうという懸念はこの試合が決まったときからあったので、そこは変な空気にならなくてよかったと思います」 ──圧倒的優位という声が多い中で、例えば負けてしまったらどうしようとかそういう不安や恐怖はない? 「昔の偉い人が言っていた『出る前に負けること考えるバカがいるかよ』っていうのがありましたけど、自分はそのバカなタイプで(笑)。試合が決まるたびに負けた後のこともいろいろ考えていますし、負けたらどうしようと思っていますし、それに怯えながら日々暮らしていますけど。ただ今回の試合って、みなさんのおっしゃるとおり格差マッチというか自分のほうが格上で、平本選手がMMAの世界では駆け出し、かつそんなに今のところ戦績もよくない状況。萩原選手もそういう立ち位置ではあったんですが、さらに平本選手のほうが駆け出しに近いような立ち位置だと思うのですよね。そこまでの選手とやってもし負けたときに、世間的には何やってるんだみたいなことを言われてしまうかもしれないけれど、そこは気にならないです。あとは、ちゃんと平本選手が俺に勝った時に評価されてほしいなという気持ちがすごくあります。そんなところですかね」 [nextpage] 普段出会えない自分に会える。それがMMAの魅力じゃないかな ──MMAは仮面がはがれるというコメントがあったが、実際に仮面がはがれたときの弥益選手はどんな要素が強い? 「すごく喧嘩腰ですし、攻撃的な部分もありますし、逆にすごく情けない、とにかく怯えてしまう相手が怖くてしかたがない面も試合のなかで自分は自分の中に感じたこともありますし、そんな自分が見られるっていうのはすごいことだなと。普通に暮らしていてこんな自分に出会うってないと思うのですよ。MMAは他の格闘技と違って選択肢がすごく多いので、だからこそ、その行動、とる選択肢に対して、その人の人間性がすごく反映されやすいと自分は思っているので。だからこそ、普段出会えない自分に会える。それがMMAの魅力じゃないかな。着地点が違いますが、そう思っています」 ──今回で20戦目。 「え? 俺ですか? あ、そうなんだ(笑)」 ──それでも毎回新しい自分と出会っている? 「そうですね、対戦相手が違うのでその数だけ自分は存在しています」 ──今回の平本戦ではどんな自分に出会えそう? 「過去に見てきた自分が少し成長した姿になれてたらうれしいなって。あの時の自分よりちょっとよくなったな、ちょっとお前強くなったなとか気持ちが強くなったなとか、逆にまだここ弱いなとか。多分いろんなところがあると思うのですけど、過去と比較して自分の外面、内面、成長が見られる試合にできればなと思っています」 ──今回もメインイベントに関しては? 「相変わらず『大丈夫か、RIZIN?』と思っていますね。『それでいいのか』って思っています」 ──前回はばっちりだった。 「今回も勝っても負けても、一本かKO、大丈夫じゃないですか」 ──本気で泣いたり本気で怒ることは普段ある? 「普段はないですね、やっぱり本気で泣くなんて格闘技の会場くらいなんで。だからこそすごく特別な場所ですし、自分が出ているときだけじゃなくて今までずっと、格闘技を見に行っていたときもやっぱり格闘技の会場って感情を出せる場所だったので。そういう意味でもかけがえのない場所ですね」 ──まだ白い仮面がついているように見える。本当に素の自分を出すのは戦う時だけ? 「そうですね。あまりいい大人が全力で自分を出しちゃいけないと思うのですよね(笑)。それができる数少ない場所なので」 ──キャッチウェイト戦は、ときにあることだが、「自分は足を骨折している」と事前に告げることは前代未聞かと思います。額面通りに受け止めるのか。そのことをどう考えて臨む? 「知らないテイでやるつもりです。何もその怪我の影響とかそういうものはないと考えて、試合に臨むつもりでおります」 ──試合前に神経戦を仕掛けられても動じない? 「負けた時に俺が叩かれる要素が増えるんだろうなという気持ちですが、でもそれはケージの中に入ったら関係ないので」 ──平本選手は、鈴木博昭戦を見る限り、テイクダウンディフェンスも強くなって持ち味の打撃の距離感も、空手稽古で変わって来る可能性もある。より戦略と仕掛けがでてくる神経戦になるなかで、MMAでのキャリアで勝る弥益選手としては、何が欠かせない、重要な試合になると考えている? 「心が削れないことですかね。本当に駆け引きが多くなる試合だと思うのですよ。だからこそ心のスタミナというか、そこの部分で削られない、逆に削ることができれば勝機はあるかなと思っています」 ──そういう練習をしてきた? 「はい、そのつもりです」 ──DEEPで芦田選手に2連勝し、DJ選手に勝って牛久選手に敗れた。本気で泣いた試合があったなかで、フェザー級でほとんど戦えていないRIZINでの平本戦はどんなモチベーションになる? 「ただ、平本選手と戦うっていうことは、この試合の意味ってやっぱり、駆け出しというか、まだ実績の少ない平本選手と、一応実績があるとされている弥益があるからこそ、議論が生まれていると思うのですよ。これが平本選手と同じくらいの戦績の選手の試合があっても、平本選手にフォーカスした試合にしかならない。自分のかけるものが大きいからこそ別の議論が生まれている。そう考えると、自分の今回の試合はDEEPでの試合があったからこそ、DEEPで自分が積み上げてきたものがあったからこそこの試合における意義が増えていると思っているので、DEEPがどうこうというのは正直あんまりないっちゃないですけど、その歴史の先にある試合だと思っています」
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