2022年10月17日(月)、ONE Championshipが『ONE 163: AKIMOTO VS PETCHTANONG』(11月19日・シンガポール・インドアスタジアム)の記者会見を東京で行い、約3年ぶりにチャトリ・シットヨートンCEO兼会長が来日。
日本大会を含む今後の展望や、日本人選手への評価、さらに北米メディアでも触れた「RIZIN」との違い、UFCへの対抗意識などについて、会見および会見後の囲み取材で大いに語った。実際にチャトリ代表は何を語ったのか。一問一答全文を下記に紹介したい。
日本人選手の現状は正直言って、非常に苦しい時期にある
──ABEMAのPPV大会のフォーマットは今後どうなっていきますか。
「現在、ONEは20人の日本人選手と契約しています。ABEMAとは毎年PPV中継を行い、日本向けには日本のゴールデンタイムで流したい。ABEMAとONEが協力して、それを通じて日本人の世界チャンピオン誕生に繋がっていけばと思います」
──不可解な判定や判定基準の揺れが見られることについてどう考えていますか。
「ONEグローバルルールセットは、ダメージ、ニアKO、ニアサブミッションに重点を置いています。ほかの団体の10ポイントマストシステムではなく(全ラウンドを通した)トータルマスト。たとえばラウンドの最後にテイクダウンを取ってポイントを稼ぐといったことではなく、我々はリアルファイティング、リアルフィニッシュを目指している。もし判定を狙うのなら、その選手はONEという団体には合わない。フィニッシュの確率は70%という高いレートが出ている。これは一番、大切で、ほんとうの武士道の試合、ほんとうの格闘技です」
──北米進出の手応えは?
「先日、スポーツビジネスのワールドカンファレンスで、アマゾンスポーツのトップの女性と話すことが出来ました。彼女は『信じられないくらい、このパートナーシップは発展している』と語り、今後ともさらに発展していくと考えています」
──そのなかで、日本人選手の重要性をどう考えていますか。
「現状としては、日本人選手に私自身は満足していません。苦しんでいる状況だと思っています。日本人のハーフとして、当然、日本人には頑張ってもらいたいですし、大きな期待もしています。ただ、現状は正直言って、20年前のレベルと考えると、いまは非常に苦しい時期にあると思います」
──今後のABEMA PPV大会の放送スケジュールはどうなりますか。
「日本向けには日本のゴールデンタイムで流したい。ABEMAとONEが協力して、それを通じて日本人の世界チャンピオン誕生に繋がっていけばと思います」
──日本大会の開催の可能性は?
「2023年に東京で大会の開催を考えています。この2年ほどはコロナウィルスで開催が出来ませんでしたが、日本の規制緩和もされてきたので、その点も期待してもらっていいと思います。1.3億人の人口があって、剣道、柔道、空手、合気道……武道のカルチャーに精通しています。ただ、世界レベルのONEのなかで、正直、日本人選手はそこのレベルに達していないという部分はあるので、もっと奮起してもらいたいという気持ちはあります。ONE Championshipが世界最高レベルにあると思っているので、そこに到達するように期待しています」
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11.19は日本にフォーカスしたPPVカードでABEMAからのアイデア
──シンガポール大会を、日本でわざわざ会見を行った。今回はとくに日本の格闘技ファンに見てほしい大会ということでしょうか。
「もちろんそうです。これは日本にフォーカスしたPPVカードで、ABEMAからのアイデアです。我々としては、日本のまさしく最高のアスリートたちをラインナップし、と同時にグローバルスターをお見せしたいと思います。つまり、これからのカードで皆さんは世界のスーパースターと日本のアスリートの混ざったカードを楽しんでいただけることになります」
──平田樹選手とハム・ソヒ選手のマッチアップをどう予想しますか。
「間違いなく、今までの平田樹選手のどの試合より厳しい試合になると思う。ハム選手は穴が無い選手なので、(平田が)準備万端で臨まないと負ける。平田はパワーもサブミッションもある。この試合はサブミッションで極まると予想する。レジェンドのハムvs.ライジングスターの平田で、アトム級最高のマッチアップ。もし平田が勝てば、次はアンジェラ・リーとのタイトルマッチを考えている」
──サプライズと言っていい平田樹選手のカードです。あくまでチャレンジとしてのものか、乗り越えられる実力があると思ってのマッチアップでしょうか?
「このカードがマッチメイカーから上がってきたとき、自分は平田樹は辞退するんじゃないかと思った。平田樹は言うまでもなくアンダードッグで、自分が思うに間違いなくハム・ソヒが勝利すると思う。ハム・ソヒがフェイバリットの試合だ」
朝倉の実力は世界最高峰にいる選手たちには到底及ばない
──日本ではRIZINが一番大きな大会です。メイウェザーを呼んで朝倉未来選手とエキシビションマッチを行いました。どう見ましたか。
「思うにRIZINは日本では良いレベルだが、世界最高峰とは言えない。それがONEとローカル団体との大きな違いだ。RIZINファイターは2、3選手は世界レベルだと思うが、RIZIN自体がやろうとしていることは世界最高を目指すということよりも、もっとエンターテインメントにフォーカスすることであり、一方で我々ONEは世界最高になることに注力している」
──メイウェザーvs.朝倉の試合はどうでしたか。
「メイウェザーは引退した選手だし、個人的に朝倉の実力というのは世界最高峰にいる選手たちには到底及ばないと思っている。朝倉は二流選手だというのが僕の考えだ」
──「ONEの日本人選手に物足りなさがある」ということですが、どんな選手に出てきてほしいですか。
「これはすごく重要なことで、ONEはグローバルな団体として、日本に来て、日本のアスリートたちに希望を与えられるようでありたいと思う。我々の報酬は世界でも最高で、日本の選手が、青木真也のように大金を稼ぎたいと思ったときに──青木真也はとても裕福な男だ(笑)──ONEがこのように投資をしようとしているから、フルタイムの仕事としてしっかりトレーニングに励むことができる。
喫緊の問題としては多くの日本の競技者たちが、しっかりといい将来設計できるような良い収入を得られないという根底の問題を日本のプロモーションが抱えている。そうなると必要なのは、グローバルな大きな団体、つまり我々ONEのような存在であり、自分達は大金を稼げるのだという意識を持って、しっかりと生計を立てられるキャリアというものを形成させてあげることが使命だと思っている」
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2023年の日本大会開催は、100%だ
──北米進出に合わせて、WADAレベルのドーピングチェック始まったそうですが、すでに行っているのでしょうか。直前での欠場選手が相次いでいることが、このことに関係しているでしょうか。
「これまでもランダムなドラッグ検査はやってきていますが、現在結果についてオープンにする決断をしました。仰っしゃる通り、これは米国標準にマッチさせるためで、世界標準にしていくことはとても重要だから、ONEとしては全てにおいて、メディカル・プロセスやドーピング・プロセスなどを所属選手に対して行っている。でも、WADAじゃない。WADAの会社じゃない。『Drug Testing International』という会社がやっている。NBAやNFLなど大きなスポーツ企業とドラッグ検査をしている会社です」
──欠場が相次ぐこととは関係ない?
「いや、いや。時として不運なことに選手が病気になることもあれば、減量に失敗することもあり、減量に関して言えば、選手によって、(若松)ユウヤの前回の試合がそうであったように、相手選手が計量ミスをすることによって試合が不成立になるということもある。キャッチウェイトでの試合が提案されたとしても。これは当たり前のことだ。運がいい時もあれば悪い時もある」
──日本大会について、話せる範囲でどんなイメージでしょうか。
「2023年のスケジュールについてまだ何も確かなことは言えない、世界中での多くのイベントをブッキング中なんだ。近日中にスケジュールを固めて発表する。ただ、100%、日本大会はあるとだけは言っておく。100%だ」
──PPV販売のために選手同士がSNSで文字のバトルをすることが格闘技界のトレンドになっているのを選手が意識しています。ONEではそれをどう考えていますか。
「ONEがするべきことというのは何をとっても、オーセンティック(正真正銘)じゃなきゃいけないと思っているんだ。我々はアスリートに無理やり、捏造したトラッシュトークを強いるようなことはしない。もちろんそれが、選手たちから自然に生じるのであれば、それは構わない、OK。時として団体がフェイクのストーリーをでっちあげて、盛り上げようとするが、我々はオーセンティック性を信じているよ」
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UFCとONEの対抗戦でチャンピオンvs.チャンピオンを実現したい
(C)ONE Champinship
──アメリカ進出もそうですが、世界戦略を考えて、ONEを引っ張っていくような期待を持てる選手は?
「2つの世界最高の選手層というのが、UFCとONEであり、チャンピオンvs.チャンピオンがやれたらいいと思っている。抱えているアスリートの背景に目を向けてみると明白だが、170以上の選手たちというのが、さまざまな最高峰の舞台でのタイトルを獲得した全盛期でONEに来ている。最も世界タイトル獲得者が集まっている団体がONEなんだ。世界最高のストライカー、世界最高のグラップラー、世界最高のファイターたちが自分のもとにいると信じている。これほど、バックボーンに世界タイトルのある選手層の団体は他にはない。
(誰が最高かと聞かれると)挙げたい名前が多すぎるけど、打撃部門で言えば、スーパーボン、ペトロシアン、チンギス・アラゾフ……それからまだまだいる、ロッタンもいる。めちゃくちゃたくさんいるな。グラップリングの方でいえば、ルオトロ兄弟がいるし、ブシャシャにゲイリー・トノン。地上最高のグラップラーたちが揃ってる。
MMAで言えば、DJ(デメトリアス・ジョンソン)はいまだに全盛期にいるし、とにかくONEにはすごくたくさんいすぎて伝えきれないんだが、無敗のチャンピオンのライニアー・デ・リダー(ONE世界ライトヘビー級&ミドル級世界王者)は、イスラエル・アデサニヤ(UFC世界ミドル級王者)をいとも容易く倒すだろうし、ヘビー級で無敗のアナトリー・マリキンもフランシス・ガヌー(UFC世界ヘビー級王者)を倒せるだろう。ONEの選手を見たら、世界最高だとわかるだろう。だからこそUFCとONEの対抗戦を行い、チャンピオンvs.チャンピオンを実現したい。(日本語で)ONEの選手は世界のベスト・オブ・ザ・ベスト!」