6月30日(日)、東京・新木場スタジオコーストにて開催される「PANCRASE 306」のメインで、暫定ウェルター級キング・オブ・パンクラシスト・タイトルマッチを戦う手塚裕之(ハイブリッドレスリング山田道場)と高木健太(リバーサルジム川口REDIPS)の調印式が24日、PANCRASE事務所にて行われた。
現王者ウェルター級グライコ・フランサが米国PFL参戦中のため年内の防衛戦が不可能となり、元同級王者の三浦広光と手塚が当初、対戦予定だったが、三浦が靭帯損傷のため欠場。急きょランキング1位の手塚とランキング4位の高木健太が暫定王座を争うことになった。
両者は、2016年7月24日「PANCRASE279」ディファ有明大会で対戦しており、初戦は高木が2R0分25秒、顔面カットによるドクターストップでTKO勝ちを収めている。
その後、手塚は4勝1敗で王座に手をかけ、高木は手塚戦後3連敗を喫しながらも、奈良貴明、丸山数馬に勝利し再びトップ戦線に舞い戻ってきた。そこには、かつて敗れた阿部大治らとの打撃中心の練習が奏功しているという。
対する手塚も地元の自然のなかで軽トラックを押す、田んぼを走る、川の流れと逆に泳ぐなどの特訓を積んで「生物レベルで強くなる」ことを目標に掲げてきた。
6勝のうち5つのKO勝ちを記録する手塚、17勝のうち15のKO勝ちを誇る高木。互いに破壊力ある打撃が持ち味なだけに、KO決着は必至か。
会見では、「やるならお互い真っ向勝負で」と剛速球勝負を望む高木に、隠れた強豪グラップラーでもある手塚は、「お互いのストロングポイントは打撃なのでそこで勝負が決するかなとは思います。ただ、変化球も持っているぞ」と、剛腕同士の戦いが必ずしもスタンドで決するとは限らないことを匂わせた。
手塚はリベンジを果たして初戴冠なるか。それともデビュー11年目・パンクラス参戦から8年目の高木が悲願の王座獲得なるか。以下は、会見での一問一答。
高木健太「お互い豪速球ピッチャー」
──まずは、両選手ともに、この試合への意気込みを。
高木 前回の試合が終わって、6月の試合がウェルター級タイトルマッチがあると聞いて、いつでも行けるように、1週間前でも行けるようにいけるようにずっと練習してきたので、驚きもなくオファーをすんなり受けました。時間は僕の方がないですけど、2人には5R入らないと思うので、必ず僕が倒して、ベルトを奪って……ちょっと休みます。
手塚 高木選手には3年前にドクターストップでやられているので、借りを返してチャンピオンになるという、いいストーリーになったんじゃないかなと思います。チャンピオンになります!
──前回、お二人が戦った時(2016年7月24日ディファ有明で高木が2R0分25秒、顔面カットによるストップのTKO勝ち)から、それぞれどのように成長したのかをお願いします。
高木 歳を取って精神的に落ち着いてきたと思います。まあ、パンチ力とかも上がっているのですが、その辺ですかね。
手塚 僕も1戦目の時は10秒で倒すつもりで突っ込んだら、高木さんのダイナマイトパンチを食らってしまったので、そこら辺で落ち着いた試合運びができるようになったのかなと思います。
──高木選手、一時期は海外も含め黒星が続きましたが、ここ3戦は2勝1敗と星を戻してきました。連敗から脱出できたのはどのような部分で進化したのでしょうか。
高木 練習環境が変わり、ウェルター級の元キング・オブ・パンクラシストの阿部大治君、GRABKAのKAZU選手といった打撃中心の選手と練習をするようになりました。TRIBEとかでもいい合同練習もあるようですが、僕らはやっぱりグラップリングの選手ではないので、打撃を中心にやって。互いに同じ階級なので、走ったり、基礎体力系のメニューでも同じ階級のヤツに負けちゃダメだろうって妥協せずにできています。仲間だけどライバルという練習ができていることが、前回の試合は良い結果に結びつけたのかなって思っています。
──直近の試合を見て、お互いの印象を教えてください。
高木 以前は昔の僕のように1分、1秒でも早く倒してやろうと前に出ていたのですが、前回の村山暁洋選手との試合を見て、クレバーに戦っていたので、今回はどう来るのか分からないですけど、僕は大人気なくガツガツ行こうと思っていますので、MXの放送時間枠に収まる試合にしたいと思っています(笑)。
手塚 前回も一発で相手を倒しているので、(相手は)担架で運ばれていたかな……相変わらずパンチ力はあるし、KO率を見ても、世界でもトップレベルの攻撃力を持っていると思うので、そこには注意して、逆に自分の攻撃を当てて高木選手の攻撃をもらわずに、倒したいと思います。
──紆余曲折があり、対戦相手も代わりました。(ウェルター級王者のグライコ・フランサがPFL参戦中のため年内の防衛戦が不可能に。当初、元同級王者の三浦広光と手塚が対戦予定だったが、三浦が靭帯損傷のため欠場。高木との対戦に)。
手塚 リベンジを果たせるので、逆に嬉しいです。スリルがあって強いファイターだと思うので、高木選手。戦えて嬉しいです(高木と視線をかわす)。
手塚裕之「俺は変化球も持っている」
──高木選手は2011年からPANCRASEに参戦されていて、今回初めてタイトルを賭けて戦うことにどのような気持ちでいますか。
高木 PANCRASEに参戦した時はデビューから2、3年目だったのですが、他団体ではメインとかで戦っていて、すぐにPANCRASEのチャンピオンになってやるぜといって参戦したのにいきなりコケて負けて……そこから勝ち上がって、ぎりぎりタイトルマッチに行けるところで何回も躓いてきて。ようやく、いきなりのビッグチャンスが訪れて。もう8年も経ったなぁという感じで。10年は経っていないのですが、長かったなぁというイメージですね。
──ご自身としてはもっと早くタイトルに挑戦して、ベルトを巻いてというイメージだった?
高木 参戦当初もそう思っていましたし、2015年に佐藤天選手を倒した時も、もう僕しかいないと思っていたなかで、試合がなかなか決まらずモチベーションが保てなかったです。僕が試合に勝つときはメンタルの部分が一番大きいので……やる気がないわけじゃないですけど、ハートが燃えないと試合に影響が出ていました。今回、手塚選手との試合のオファーを受けた時は、嬉しすぎて夜も眠れないくらい。今は寝ていますけど(笑)。その時はトレーニングがしたくてしょうがなくて、眠ることができなかったです。お互い豪速球ピッチャーのようなものなので。正面衝突のようにどっちかが絶対に倒れる試合になると思っているので、凄く興奮しています。
──互いに「豪速球ピッチャー」だという認識があっても、もし相手が変化球を投げてきたら、どう対応しようと思っていますか。
高木 うーん……嫌だな(笑)。まあ、泥臭いぐでんぐでんの試合はしたくはないので、やるならお互い真っ向勝負で。手塚君もたぶん、栃木の山奥でやっていて野生児みたいなところを感じるのので、お互いにその野生の部分が出たら、タイトルマッチ云々よりも、2人のバチバチのすごいものが出せれたらいいかなと思います。
──「栃木の山奥」という言葉、使用しても大丈夫でしょうか(苦笑)。
高木 ハハハハ。勝手なイメージです。
──その言葉で何十万という敵を作るかと思いますが(苦笑)。
手塚 いっぱい応援に来ますからね、山奥から(笑)。結構、今回、来てくれるんで……。変化球の話ですが、高木さんは直球で来ると思いますけど、俺は変化球も持っているぞと。試合は総合なんですね。打ち合うだけじゃないですけど、ただ、お互いのストロングポイントは打撃なんで、そこで勝負が決するかなとは思います。ただ、(変化球も)持っているぞと。何もそれは言い訳はさせないように。約束はしないです。寝技の練習もやっているんで。