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【ONE】キャッチウェイトを戦った平田樹「もっと追い込んで、命がけで強くなっていきたい」×リン・ホーチン「戦わないという選択肢もあったけど…」、北米進出で新たなアンチドーピングパートナーとの提携もスタート

2022/09/01 22:09
 2022年8月27日(土)シンガポール・インドアスタジアムにて、ONE Championship『ONE Fight Night 1』が開催され、119ポンド契約のキャッチウェイト戦で、平田樹(日本)とリン・ホーチン(中国)が対戦。  試合は平田が最終回にダウンを奪う逆転劇で判定3-0で勝利。3月のジヒン・ラズワン戦のスプリット判定負けからの再起を果たした。  激闘の試合後、両者がそれぞれの思いを綴っている。  当初、ONE女子アトム級(115ポンド/52.2kg)で対戦予定だった両者だが、平田が計量をパス出来ず。119ポンド契約のキャッチウェイト戦に変更されて試合は行われた。  安全面を重視し、水抜き減量が禁止のONEの場合、計量時に体重のみならずハイドレーションテスト(水分の尿比重値)もクリアしなければならない。  試合前日である26日の0時から3時までの「初回計量」で3度、尿を提出した平田は、1.0250以下であればパス、1.0251以上だと不合格のハイドレーションテストで、1.0345→1.0338→1.0320と数値を下げながらも基準値をパスできず。水を含んで体重も微調整しながら、初回計量を115.75ポンド(52.5kg・1.0320)の約300gオーバーで再計量に持ちこした。  ホーチンは初回計量で体重はパスも、ハイドレーションテストで1.0270とわずかにクリアできず。この日は、深夜計量のためか、平田とホーチンのみならず、王座戦のアドリアーノ・モラエス、ゼバスチャン・カデスタム、パンパヤック・ジットムアンノン、ボルター・ゴンサルベスもハイドレーションテストをクリアできず再計量に臨んでいる。  26日の午後1時から午後5時までの間の再計量で、ホーチンは水を飲んだ上で、水を抜き過ぎず体重も落とし、114.75ポンド(52.049kg)でパスし、尿比重値も1.016と基準値内に収めたが、平田は1.0250以下の尿比重値を1.0124とパスも、水を含んだ体重で119.25ポンド(54.09kg)と1.89kgオーバーに。2020年2月のナイレン・クローリー戦のときと同様に、尿比重値をクリアするために水分補給を選択し、キャッチウェイト戦での試合を望んだことになる。  平田とカデスタム以外は、再計量をクリアしており、最後の調整で水を飲みながら体重を増やさないためにはコツが必要そうだが、通常体重をいかに作るか、そして水分を摂取しながら体重を落とすことがマストのONE独特の計量といえる。  平田とホーチンの試合は、最終的に両者の合意により、119ポンド契約のキャッチウェイト戦で行われ、平田の報酬の50%がホーチンに渡されることになった。  試合は、1、2Rで平田を中に入れないホーチンがジャブ&ローの打撃。平田も首投げ、足技で投げるも立ち上がるホーチン。平田はキムラロックで後方に回して上を取っている。  打撃でリードを許した平田は、最終回の勝負で、残り1分を切ったところでホーチンの右にカウンターの右をヒット。ダウンしたホーチンに、一瞬両手を広げてアピールするが、すぐにパウンド連打し、試合終了。判定は3-0で、ニアフィニッシュを奪った平田が勝利し、再起を飾った。 [nextpage] 体重を揃えられないファイターは良いファイターではない  ファイトマネーの半分を相手選手に渡すという罰則を平田が受け、互いに合意した上での試合成立だが、それでもファイターにとってわだかまりは残る。  試合後、ホーチンはSNSで「負けを認めますが、負けずに頑張ります!  試合を組んでください!!!!」と、すぐに次戦をアピール。  さらに平田の体重超過について、「試合には負けたけれど、試合前のあなたのチームとあなたの行動には腹が立ったし、酷い気持ちになりました。25日の午前12時(シンガポール時間)に行われた最初の体重測定では、2人とも尿検査には合格しませんでしたが、少なくとも私の体重は必要条件を満たしていました。  その夜、私は午前3時まで走り続け、あなたのチーム(※撮影スタッフ)が私を撮影し続けたので、止めるために叫ばなければなりませんでした。3時間走っても尿検査には合格しなかった。26日の朝7時から午後1時まで走り続け、水を飲み続けましたが、あなたはまだのんびり道を歩き続け、私が走るのを見ていました。38時間頑張って、やっと体重と尿検査に合格しましたが、あなたの体重はまだ基準値より2kg(※1.89kg)も多かったのです。  このことを相談しに来たあなたのチームには、私には戦わないという選択肢もあったのですが、主催者が試合について考えさせてくれました。私はこの試合のために長い間準備をしてきたので、あなたが無責任だからといって試合を中止したくなかったので、この結果に諦めるようなことはしません。ノックアウト(※平田がダウンを奪い判定勝ち)で勝ったとはいえ、あなたは私の尊敬に値しない選手です。私はいつも、体重が規定値に達しないファイターは良いファイターではないと思うし、ましてやあなたは減量しようともしなかった。あなたには競争心がないのです!!! 私は戦い続け、次はこうならないようにします」と、憤りを示している。  通常のMMAルールであれば、最後の水抜きでクリアできていたであろう状態も、ONEの独特のシステムのなかでは難しく、その舞台で戦う以上、ルールに従うのが前提だ。  2年半ぶりながら再度の計量ミスを犯した平田は試合後、周囲への感謝の言葉を記すと、「ハイドレーションをクリアできず、キャッチウェイト戦になってしまい、申し訳ありませんでした。全てクリアできれば、もっと心から喜べたと思います。リンさん、本当にありがとうございました。もっともっと自分を追い込んで、命がけで強くなっていきたいと思います。こんな素敵なステージに立たせていただき、ありがとうございました。ありがとう、チャトリ(CEO兼会長)。リンさん、ありがとうございました。ありがとう、ONE Championship。ありがとう、シンガポール」と、計量をパスできなかったことを謝罪し、「戦いの後、アドレナリンを使い果たしたときが一番痛い」と、赤黒く腫れ上がった足を公開している。  一方、試合から3日後には、気を持ち直したホーチンは、インスタグラムに元気なシャドーの動画を披露。さらに9月1日には、「健康でハッピーでいたい!」と、眼鏡をかけてのダンス姿もアップしている。  そして、平田も「Be proud of your life.(自分の人生に誇りを持つこと)」と、米国合宿を経て、なりふり構わず勝利することに全力を注ぎ、最後の最後に、ネスタコーチらと反復練習で練り上げてきたカウンターを当てて勝利を掴んだことに誇りを取り戻し、「もっと自分を追い込んで、命がけで強くなっていきたい」と決意を新たにしている。  負けられない一戦を超えた両者の今後に注目だ。 [nextpage] 全イベントで薬物検査実施へ    そして、デメトリアス・ジョンソンがフライ級王座を獲得したアドリアーノ・モラエスとの死闘など、米国で配信された、今回の『ONE on Prime Video 1』と、その前日の『ONE 160』(クリスチャン・リーが王座奪取)が、ONEにとって新たなフェイズに入った大会でもあることが分かっている。  今大会前にONE Championshipのチャトリ・シットヨートンCEO兼会長は、『ONE on Prime Video 1』と『ONE 160』が、今後の新たなアンチ・ドーピングシステム採用の最初の大会であることを語っている。  これまでも2019年には、WADA基準の検査導入が検討されていることを語っていたチャトリ代表だが、そのテスト結果が公になることはなかった。今後、本格的な北米進出のために、さらに米国でのIPOも視野に入れるためには、ドーピングチェックとその結果公表は必要となってくる。  今回、ONEはインターナショナル・ドーピング・テスト&マネジメント(IDTM)を新たなパートナーとして、ドーピング検査を依頼していることを明かしている。もともとハイドレーションテストで尿チェックを行っているONEが、ドーピングテストも行うことで、今後、ファイターたちにどんな抑止力が働くか。  今大会では、必要な尿サンプルを提出しなかったり、早々に欠場が決まった選手も存在した。アスレチックコミッションが介在する地域では、出場停止処分などの罰則が設けられることで、その効果を発揮するが、ONEでは今後、どのような形で新たなパートナーとアンチドーピングを進めていいくのか、こちらも注目だ。
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