2022年7月22日(金)シンガポール・インドアスタジアムにて『ONE 159: De Ridder vs. Bigdash』が開催された。
▼コ―メインイベント アトム級ムエタイ暫定世界王座決定戦〇ジャネット・トッド(アメリカ)[判定3-0]×ララ・フェルナンデス(スペイン)
正規王者アリシア・; ヘレン・ロドリゲスが出産のため長期欠場。暫定王座をトッドとフェルナンデスが争うこととなった。
“JT”の愛称で呼ばれるトッドは母親が日本人。流ちょうな日本語も話し、日本でも出稽古で江幡兄弟との練習経験を持つ。宇宙工学のエンジニアの仕事もこなす才女でもある。2017年IFMA世界選手権で銅メダルを獲得したのを筆頭に、アマチュアムエタイで数多くのメダルを獲得。2019年2月からONEに初参戦すると、いきなりスタンプ・フェアテックスのアトム級ムエタイ世界タイトルに挑戦したが判定負け。
その後は3勝(2KO)の戦績をあげ、2020年2月にスタンプと今度はキックボクシングルールで再戦。判定2-1でスタンプを破り、ONEアトム級キックボクシング世界王座を奪取した。今回が50戦目となるベテランの36歳。
フェルナンデスはプロのダンサーを夢見ていたが、15歳でムエタイに出会い16歳で真剣に取り組み始め、2019年にはISKAキックボクシング世界タイトルを、2020年にはWBCムエタイ世界タイトルを獲得した。今回がONEデビュー戦。
1R、両者とも前手を出して相手との距離を計り、トッドは蹴り、フェルナンデスは長いリーチでのストレートを繰り出す。右カーフを蹴るトッドにフェルナンデスは右ハイを2発。長いワンツーと右ローを多用するフェルナンデス。トッドもワンツーを返す。前に出たのはフェルナンデス。
2Rになるとトッドは狙いすましたワンツーをヒットさせていく。フェルナンデスのハイキックはステップでかわしていく。両者の右が交錯する場面が目立つ。右ローの蹴り合いとなるが、トッドの右カーフが強烈。
3R、フェルナンデスはジャブから右ローにつなぎ、左ミドルも蹴る。再び前に出るフェルナンデスがパンチから蹴りのコンビネーション、左ボディも打つ。下がるトッドだがワンツーと右ローを返していく。トッドのミドルを腕で受けてすかさず左右のフックを打ち込むフェルナンデス。攻撃が単発に終わらず、コンビネーションをつないで攻勢に出た。
4Rはトッドも左右フックから右ローにつなぐ。フェルナンデスは右ストレートを顔面とボディに打ち分ける。前に出るフェルナンデスがワンツーから左ミドル、右のオーバーハンドも狙う。トッドは右ローで応戦するが、フェルナンデスの手数の多さが目立つ。トッドはワンツーから右ヒザを突き出した。
5R、トッドがワンツーで前へ出るとフェルナンデスは右フック、右ヒジで迎え撃つ。前に出るトッドをかわすようにサークリングするフェルナンデスだが、トッドの右ストレートが炸裂。さらに右ストレートで追い込んでいくトッド。フェルナンデスはバックステップでトッドの距離から離れながらの左右ミドル。トッドはフェルナンデスの蹴り足をキャッチすると右フック。トッドのワンツーに下がり続けるフェルナンデス。トッドが攻めに攻めた最終ラウンドとなった。
判定は3-0でトッドが勝利。厳しい試合内容だったが、キックボクシング王座に続いてムエタイ王座との二冠王となった。
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▼第8試合 バンタム級 ムエタイ 3分3R〇ムアンタイ・PKセンチャイジム(タイ)[判定2-1]×ウラジミール・クズミン(ロシア)
ムアンタイは元ルンピニースタジアム認定ライトフライ級王者、元プロムエタイ協会ライト級王者で、2016年と2018年にはルンピニースタジアムのファイト・オブ・ザ・イヤーを獲得した激闘派ファイター。2015年5月に来日して、梅野源治に敗れている。2018年11月からONEに参戦し、パニコス・ユスフ、健太、ブライスデルバルに勝利したが前戦はダウン応酬の末にリアム・ハリソンにTKO負けを喫した。
クズミンはアマチュアムエタイで豊富な経験を積んでプロデビュー。ONE初登場となった2月大会ではクリス・ショーから判定勝ちしている。ナチュラルにスイッチするのが特徴的なファイター。
1R、前後にステップを踏むクズミンにサウスポーのムアンタイはじりじりと迫る。ムアンタイはまずは左ロー、クズミンは前蹴りでムアンタイを突き放す。クズミンは右アッパー、左フック。序盤は左ロー狙いだったムアンタイは左ミドルを蹴り始める。
2R、左ミドルをどんどん蹴っていくムアンタイ。クズミンは構えを左右にスイッチしながら前蹴りでムアンタイを止め、バックステップで距離をとる。前蹴り、左右ストレートの長い距離で戦うクズミンはムアンタイが入ってくるところに左ヒジ。それでもムアンタイは前へ出る攻めの姿勢。クズミンがパンチを出しながら前へ出るとムアンタイが左フックをテンプルに直撃させる。
3Rも左ミドルを蹴っていくムアンタイ。左ストレートも入れる。クズミンはムアンタイの左ミドルに左フック、右アッパーを合わせに行く。左ミドルを受け続けたクズミンは右のパンチが出せず、最後にはムアンタイの左ハイをもらう。
判定は2-1と割れ、ベテランのムアンタイが接戦を制した。
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ストロー級キックボクシングでは、“中国の天心”ジャン・ペイメンが、アスランベック・ジクレープ(ロシア)と対戦した。
ペイメンは、中国「EMLegend」等で活躍し、23勝18KOをマークするなど“最強中学生”として話題となり、2022年3月にONEデビュー。サムエーが持つONEストロー級(56.7kg)ムエタイ世界タイトルマッチにも挑戦経験があるトナーと対戦し、2R KO。いきなり5万ドルボーナスを獲得していた。
しかし、今回の対戦相手のジクレープは、アマチュアのIFMA世界選手権で優勝後、2021年7月には、メディアによる世界スーパーフライ級8位にランクされるほどの活躍。2020年11月にONEデビューし、かつてK-1で武尊とも激闘を繰り広げたワン・ジュングァンをスプリット判定で撃破している。
ペイメンは7月にタイガームエタイで合宿を敢行。その際に憧れの武尊と対面し、ペイメンの試合を見たという武尊と交流している。
▼ストロー級 キックボクシング 3分3R〇ジャン・ペイメン(中国)[判定3-0]×アスランベック・ジクレーブ
1R、ジクレーブの左インローに、左フックを合わせるペイメン。しかしローブローに。再開。ジクレーブの前進に右ストレートを当てるペイメン。さらに左ボディの連打。跳びヒザも見せる。
バックフィストも振るが、ジクレーブも右ストレートで前に! さらに左フックの相打ちはジクレーブ。下がらずワンツー、バックフィストも打ち込む。
2R、前に出るジクレーブ。互いに左ローも蹴り返すジクレーブ。ペイメンは左ジャブ、右ストレートを当てるが、下がらないジクレーブ。打ち下ろしの右はペイメン。しかしジクレーブの左ローがまたもローブローに。再開、右ハイ、左フックを当てるペイメン! しかしペイメンは効いたそぶりを見せない。
3R、ワンツーから左フックを当てるペイメンだが、前に出るのはペイメン。左ハイを返す。左前蹴りも。ワンツーの打ち合いで前に出るのはジクレーブ、ペイメンのバックフィストをかわすと、ペイメンが軸が崩れて手をマットに着く。最後に左ストレートを当てたのはジクレーブ。
有効打は間違いなくペイメン。しかし被弾しながらも驚くべきタフネスさを見せたジクレーブ。コールを待つペイメンは不安気は表情。判定は3-0でペイメンが勝利。雄たけびを上げたペイメンは、「私はチャンピオンになりたいです。次でタイトルマッチをしたいです」と、王座戦をアピールした。