2022年7月22日(金)シンガポール・インドアスタジアムで開催される「ONE 159: De Ridder vs. Bigdash」ストロー級で、日本の箕輪ひろばが、南アフリカのボカン・マスンヤネと対戦する。
箕輪は、2018年9月の修斗から4連勝+ONE2連勝で、2022年1月のONEで元UFCのジャレッド・ブルックスと対戦。判定負けで連勝が「6」でストップした。その後、ブルックスは元南アフリカ王者のボカン・マスンヤに1R 一本勝ちし、実力を示している。そのブルックスに後半にカウンターを合わせるなど箕輪の粘り強い戦いには光明もある。
対するマスンヤネは、フリースタイルレスリングで南アフリカ王者、アフリカ大陸王者、さらにコモンウェルズ王者となっているレスラー。ケージを使わずともマット中央で相手を崩してバックに回ることも可能なマスンヤネは、そのフィジカルを活かして箕輪をドミネートするか。
両者ともに前戦でブルックスに敗れており、マスンヤネは一本負け(マスンヤネが体重超過でキャッチウェイト戦)。レスラーでもあるブルックスはマスンヤネにパンチから先に組んで投げで崩してバックテイク。リアネイキドチョークを極めている。一方の箕輪はブルックス相手に判定まで持ち込んでいる。
ランキング2位のマスンヤネとの戦いに向け、3位の箕輪はONEのインタビューに、「彼の強みである身体能力は大きな武器ではあるけど、それが故に彼はそれに頼りすぎている部分がある。打撃の一発の重さがあるかもしれないけど、パンチを当てる技術は僕の方が優れている。グラウンドの展開になるのであればグラウンドで付き合うし、相手がどれだけスタミナあるのか興味があるので、3ラウンド戦う準備もしている。ただ、早い段階でフィニッシュができるのであれば、狙いたい」と自信のコメント。
その上で「僕は1年以内にONEでチャンピオンになりたい。この試合で勝った後はパシオと」と王座挑戦に名乗りを挙げるつもりだ。どちらが王座戦線に生き残るか。注目のストロー級戦だ。
避けては通れない相手、常に今の自分が一番強いというのは自負している
──前回のジャレッド・ブルックス戦は残念ながら判定で敗れましたが、ストロー級3位にランクインしています。今回のボカン・マスンヤネ戦で確実に勝利を掴むためにどのように準備してきましたか。
「ファイターなら誰しも、一本なりKOなりフィニッシュを狙っていくっていうのが性分だと思うんですけど、僕は何としても勝たなければいけない、連敗するわけにはいかないので、判定でもしっかり勝つっていう自分のスタイルをさらにレベルアップするために全体的にスキルを磨いてきました」
──ブルックスとの試合は、タイトル挑戦権がかかっているような重みのある試合で、敗戦は精神的にハードルが高いものだったと思いますが、どのように乗り越えましたか。
「別にタイトルがかかる、かからないとか、挑戦権があるとかに関わらず、ブルックスといずれやるって思っていたので、それが前回だっただけ。ブルックスっていうのがストロー級で世界最強だと思うので、直接そういう選手と手を合わせることができたので、むしろプラス面の方が多いですね。
前回の敗戦で自分がどこの立ち位置にいて、チャンピオンになるまでどのくらいなのかというのが分かったので、とても有益な試合だったと思っています。それを踏まえて、それが分かったというだけでも、今年は収穫の大きな年だなと思っています。
ブルックス戦で怪我があって、格闘技が出来ない時間に格闘技をよく見る機会が多くなりました。ブルックスと戦ったとき、“越えられない壁じゃないな”と感じていました。ローブローを蹴られても気持ちが切れそうなところで切れずに出来た。“あと2年あれば追いつける”──そう感じました」
──いま22歳。若くしてトップ戦線で戦っていて、すでにプロ16試合の経験があります。ご自身のポテンシャルの最頂点というのはどこに見据えていますか。
「常に今が一番強いというのは自負している。今が一番強いというのが自分の中にある。この先何年続けていようが常に自分が新しく最強になっていると思っています」
──最新の箕輪が最強の箕輪、ということですね。日本のMMAは長く歴史があると思いますが、それは箕輪選手にとってどんな意味がありますか。そして日本を代表して戦うということについてはどう感じていますか。
「MMAが日本で長い歴史があったりする中で、その競技に携われているということは深く感謝していますし、運が良かったというふうに思います。そこで日本を背負ってプレーできているというのも、かなり僕にとっては良い経験になると思います。そういうのも感じながら戦っていきたいですね」
──相手のマスンヤネは無敗ではないですが、ランキング上位にいますね。どんな印象がありますか。
「前回のブルックスと一緒で、僕がチャンピオンになる過程で必ず戦わなければならない相手だと思っています。脅威があるとかないとか、というのではなくて避けては通れない道という感じですね」
──マスンヤネの弱点は何だと思いますか。
「彼の強みである身体能力は大きな武器ではあると思うんですけど、それが故に彼はそれに頼りすぎている部分があると思う。もう少し細かい技術、動きを練習したら良いのになと思っています」
──つまり粗さがあると。ご自身と相手のマスンヤネを比較して、どちらの方がより良い打撃を持っていると思いますか。マスンヤネはカタラン戦で左ヘッドキックも決めている。
「ストライキングの強い部分が違うと思います。一撃を持っていて、一発の重さがあるのは彼かもしれませんが、パンチを当てる技術は僕の方が優れていると思う。打撃のディフェンス力というのもあると思うので、どっちつかず、お互い打撃でも違うストロングポイントがあると思っています」
──アフリカ選手権で3度優勝というマスンヤネの投げからグラウンドの展開になっても気にせず戦いますか。それとも今回は打撃で勝負したいですか
「全然気にしないです。グラウンドの展開になるのであればグラウンドで付き合います」
──今回はどんな形で勝利を狙っていますか。
「相手がどれだけスタミナあるのかというのが興味あるので、3ラウンド戦う準備もしています。ただ、早い段階でフィニッシュができるのであれば、狙いたいです。今回は過去の試合に比べてフィニッシュの可能性が高いと思います」
──この上位ランカー対決の後はどのように見据えていますか。
「過去にもインタビューで発言したのですが、僕は1年以内にONEでチャンピオンになりたいと思っています。なので、この試合で勝った後はパシオですね」
◆ストロー級C ジョシュア・パシオ(王者・フィリピン)1 ジャレッド・ブルックス(米国)2 ボカン・マスンヤネ(南アフリカ)3 箕輪ひろば(日本)4 グスタボ・バラート(キューバ)5 猿田洋祐(日本)
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マスンヤネが孤児院で出会ったレスリングが、MMAへと繋がった
ひとり親家庭の子どもを応援している箕輪だが、マスンヤネも恵まれない環境にいる子供たちを支援している。
マスンヤネ自身も孤児院出身。南アフリカ共和国に囲まれた内陸国のレソトで生まれたマスンヤネは。4人の兄弟と母親と暮らしていたが、2歳の時に母が逝去。マスンヤネはヨハネスブルグの叔母の元で暮らすことになったが、経済的に余裕はなく、マスンヤネは6歳のときに兄弟とともに孤児院に預けられている。
ONEの公式インタビューでは、「孤児院出身ということで、自分は取り残されたような気がした。人生のすべてから取り残されているような気がした。世の中はどんどん進化しているのに、自分は孤児院と学校を往復しているだけ。現実の世界では、取り残されたような、居心地の悪い状況に置かれていた。実は、自分も他の人間と同じという安心感を得るために、不安と戦わなければならなかった」と、当時を振り返る。
そこで出会ったのが、レスリングだった。
「いろいろなスポーツが得意だった。サッカーが好きだった。陸上競技も楽しかったし、体操もたまにやっていた。孤児院の中には、選べる競技がたくさんあって、自分はレスリングに情熱を見出した。続けるうちに、23の国内タイトルを獲得し、3度アフリカ選手権で優勝し、コモンウェルスゲームにも出場した。しかし、残念ながら、南アフリカのレスリングは、世界に比べて規模が小さいんだ。生計を立てることはできないし、最良の選択肢はMMAだった」
マスンヤネは自身がMMAで成功することで、同じような境遇の子供たちに道を示したいという。
「まず、孤児院の子供たちに、チャンスはある、人生で正しい選択をして、続けていけばいいってことを示したかった。でも、そうしているうち、自然と周りの人たちのやる気も上がっていくことに気付いた。孤児院の子供たちのことは大切に思っている。自分もそのような葛藤や世界から取り残されたような感覚、何かの一部になりたいと思う気持ちを経験してきたからだ。そして、ONE Championshipは世界の何か大きなことをの一部になる機会を与えてくれたと思っている」
『ONE 159: De Ridder vs. Bigdash』
2022年7月22日(金)シンガポール・インドアスタジアム
▼ONE世界ミドル級(※93.0kg)選手権試合 5分5Rライニア・デリダー(オランダ)王者ヴィタリー・ビクダシュ(ロシア)挑戦者
▼ONE Super Seriesムエタイ暫定世界女子アトム級王座決定戦 3分5Rジャネット・トッド(米国)ララ・フェルナンデス(スペイン)
▼ONEストロー級(※56.7kg)5分3Rボカン・マスンヤネ(南アフリカ)箕輪ひろば(日本)
▼ONEムエタイ バンタム級 3分3Rムアンタイ・PK・センチャイ(タイ)ウラジミール・クズミン(ロシア)
▼ONEストロー級(※56.7kg)5分3Rツオロンチャアシー(中国)ダニエル・ウィリアムス(豪州)
▼ONEムエタイ フェザー級 3分3Rジョー・ナタワット(タイ)ジャマル・ユスポフ(ロシア)
▼ONEムエタイ ライト級 3分3Rシムサット・クリンミー(タイ)リアム・ノーラン(中国)
▼ONEライト級(※77.1kg)5分3Rアリエル・セクストン(コスタリカ)マラット・ガフロフ(ロシア)
▼ONEウェルター級(※83.9kg)5分3Rヴァウミール・ダ・シウバ(ブラジル)ジン・テホ(韓国)
▼ONE女子アトム級(※52.2kg)5分3Rリー・ビヴィンス(米国)セバー・バノ(インド)