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【THE MATCH】那須川天心vs.武尊、今だから明かされる秘話「目が慣れる前に決着をつけるのは作戦のひとつだった」「天心って実は手が長いんです」(伊藤隆RISE代表)

2022/06/28 12:06
 2022年6月19日(日)東京ドーム『THE MATCH 2022』のメインイベントで行われた、那須川天心(TARGET/Cygames/RISE世界フェザー級王者)vs.武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST/K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級王者)の“世紀の一戦”は、那須川が判定5-0で勝利した。  那須川を近くで見守った伊藤隆RISE代表は「天心と武尊選手が作り上げた7年のドラマが終結しましたけれど、格闘技って残酷だなって改めて感じました。ただこれは、両者が勝者だと僕は思います。2人だけではなくあそこに集まった人たち、関係者、出てきた選手、全員が勝者だと思っています」と、『THE MATCH』を終えた感想を述べる。  試合前の那須川の様子はどうだったのかを聞くと「試合当日に会ったんですけれど、いつも通りリラックスしていて…いや、いつも以上にリラックスしていましたね。肌のつやもよかったし、リカバリーもしっかり出来たと思ったし、いつも以上にリラックスしていて自信が相当あるんだなと感じました」という。 (C)ABEMA リラックス出来ていた理由は「今回はしっかり対策が練られていました。そしてチーム天心の全面的なサポート、父親との結束、後、THE MATCH前の合宿の時もそうですし、みんなでこう来たらこうするって意見を出し合ったことで彼の中でピースがハマったと思うんですよ。合宿でずっとやっていましたし、そこの部分で彼の中で明確なものになったと思うんですね」と、5月15日から19日にかけて実施したRISE選手強化合宿がひとつのきっかけだったとする。  合宿では参加した選手たちがそれぞれの対戦相手について意見を出し合ったという。「例えば、きみが武尊選手とやるならどうする、と。それを箇条書きにして提出してもらったものの中から抜粋して、それを合宿で答え合わせしていきました。実際に動いてみると違ったりするので、その中で2~3個ハマったというのがありましたね」と、K-1チームに対しての対策をRISEチーム全体で練っていた。 「普段は戦っていますが、今回ばかりはチームで勝つ、団結力・士気を挙げることが大事だと思いました。各々のジムでやっているとどうしても考え方が小さくなってしまうので。YA-MANのようにそういうことはやりたくないって選手もいてもいいんですよ。でもこんな時だから出し合ったことによって、みんな心構えは同じ方向に向いているじゃないですか。そこで励まし合ったり、一緒にやろうぜっていうのはもっと凄いパワーが出ると思うんですよね。そういう意味で合宿はやってよかったと思います」  合宿では那須川とベイノアがリーダーとなってみんなを引っ張っていたという。「天心はもうこれが最後のキックボクシングというのがあったし、今まで培ってきた技術をみんなに教えていて。そういう意味でも参加した選手たちは目から鱗と言うか。試合に対する心構えとか不安な部分を話すじゃないですか。選手同士でしか話せないこととかあるんですよ。それをお互いに聞いて情報交換することによって心が強くなったというか」  試合で解説を務めた伊藤代表は、1Rに「天心は蹴りが走っている時は調子がいい」と話した。 「天心の調子がいい時は蹴りを出している時とジャブが伸びている時ですね。蹴りとジャブで相手を誘って、来たところでカウンターが彼のパターンなんですよ。多分、武尊選手はジャブにフックを合わせようと思っていたと思うんですよ。ただ天心は途中でジャブを右ストレートに変えました。いつもだとポンっと入れて次の攻撃なんですけれど、ガツンっと打っていたじゃないですか。あれで多分、武尊選手は戸惑っていたと思います。ジャブが凄く強いなって。あれはジャブではなくてストレートでしたよね」  そして伊藤代表はこんな“秘話”も明かしてくれた。 「1Rを見て今回凄く動きがいいなと思いました。スピードに目が慣れる前に早めに決着をつけようと。天心はスピードで優っているけれど、武尊選手にはパワーがある。いつも尻上がりに良くなるじゃないですか。後半になればなるほど武尊選手はフィジカルが強いので、プレスで潰してくるのは分かっていたので時間が経てば経つほどあっちの方が有利になりますよね。身体もデカいし、当たりの強さもあるので。だから目が慣れる前に決着をつけるのは作戦のひとつでした。必ず倒すってわけではなかったですけれど、あの動きならいけるなと、僕自身もこれは1Rで倒すなって思ったので1Rの途中でマイクのスイッチを切りました。“おっ”とか言ってはまずいから。1Rが終わってからマイクを入れました。動きが本当に良かったので。一番いい時の天心の動きでしたね。やっぱり白黒つけないといけないと思ったし、それが相手に対しての礼儀だと思うし。あと1分あったら決着は付けられたと思います」  しかし、ダウンを奪ったのは1Rが終わる直前だった。「その後の2、3Rの巻き返しは武尊選手も一流ですよね。ハートが強いし、プレスは国内ナンバーワンじゃないですか。ただ、焦っていたと思います。武尊選手は右か左かどちらかのボディが当たりだすといいんですけれど、ボディが当たりだすと彼は凄く強いですよ」と、ボディが当たると武尊が自分のペースをつかむため、当てさせないことも作戦の一つだった。 [nextpage] 戦った人間にしか分からない那須川天心の異常に長いリーチ  さらに「天心って実は手が長いんですよ。ヘビー級の選手より長いんです。なおかつ身体が柔らかいので普通の人よりも30~50cmくらいさらに距離があると思います。だから当てて、ちょっとステップバックしたら相手の返しの攻撃は当たらないじゃないですか。志朗が以前に『彼は猿みたいだ』と言っていたじゃないですか、そのことだと思います。一緒に練習したり、やった人間にしか分からないですよ。めちゃめちゃリーチが長いんです。なおかつ伸びるので、普通なら来ないところで当たっちゃうんです。そこで打ち返してももうその場にはいないんです。リーチとスピードとピンポイントで当てる、それが那須川天心の強さですね」と、異常に長いリーチの長さを武尊が把握できていなかったことも勝利のポイントとしてあげた。 「2、3Rの採点はイーブンだったんですけれど、我々の中ではワンサイドゲームでした。天心が一方的に当てているだけで、相手の攻撃はブロックしていました」と、完璧な試合だったとまとめる。  試合後はどんな会話を交わしたのかを聞くと「解説席に来て『会長、俺やったよ』って言ってきたので僕は『よくやった、おめでとう』と言って。その後リングで抱き合った時に『今まで本当にありがとう、お疲れさま』と言いました。終わった後は普通の天心に戻ったので日常会話ですね」とのこと。伊藤代表は「試合も感動したけれど、一番感動したのは両選手が泣きながら話している姿に物凄く感動しました。二人が背負ってきた事の重さが見えてあそこは僕も泣きました。格闘技って素晴らしいなって本当に痛感させられました」と『THE MATCH』一番の名場面だったという。 『THE MATCH』ではRISEとK-1の対抗戦も行われ、RISEが5勝4敗で勝ち越した。これについて伊藤代表は「THE MATCHに出る選手とか関係者の共通LINEがあるんですよ。そこで試合前に言わせてもらったのは、とにかく自分のために勝てと。自分が最も輝くために戦いなさいと。それをすることによって応援してくれる方々に恩返しが出来るし、最終的にはRISEのためになるから自分のために輝いて勝てと。全選手に激励のLINEを入れました」との裏話も。  那須川天心のRISEでのプロキャリアが終わったことについては「しっかり送り出せてよかったなと。でも寂しいですよね。僕の中でもぽっかり穴が開きましたね。ただ天心はこれから未来に向けて走るので、そこはサポートしたいと思っています。寂しいですね。子供が就職して家から巣立つみたいな。そんなイメージです」とした。  そして「天心には今以上に輝いて欲しいし、天心・武尊選手みたいな選手って出てこないと思うんですよ。ただ、ああいう志を持った選手がRISEにもK-1にもいることが確認できたので、彼らが次を盛り上げていく。しのぎを削って5~6人で競い合ってNEXT天心、NEXT武尊みたいなのが出てきたら面白いですよね。すぐには出てこないと思います。ただ、いい選手はいっぱいいるので。あの大会を見てもそうですし、どこを見てもいい選手はいっぱいいるので、そういう選手を引っ張り上げて磨いていくのは必要ですよね」と、NEXT天心を育て上げていくことが自分たちの使命だと語った。
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