MMA
レポート

【UFC】戦火のウクライナの女子ファイター マリナ・モロズが一本勝ち「こうしている間にも家族は危険にさらされたままです」

2022/03/06 10:03
 2022年2月24日にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始し、ロシア軍とウクライナ軍の戦闘が続くなか、3月5日に米国ネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催された『UFC 272: Covington vs. Masvidal』にて、ウクライナの女子ファイター、マリナ・モロズが一本勝ちした。 ▼女子フライ級 5分3R〇マリナ・モロズ(ウクライナ)125.5lbs/56.93kg)[2R 3分27秒 肩固め]×マリヤ・アガポバ(カザフスタン)126lbs/57.15kg  試合前の各国メディアのインタビューで、「ウクライナに手を出さないで」と訴えていたモロズ。 “アイアン・レディ”の異名を持つモロズは、ウクライナでボクシングとキックボクシングの「マスター・オブ・スポーツ」の称号を得て、ウクライナ ボクシング代表チームメンバーから、MMA転向を果たした。現在は堀口恭司と同じ、フロリダのアメリカントップチーム(ATT)で練習を続けている。 「私は自分の国を愛しています。ウクライナに手を出さないで」と語るモロズは、母国について、「ウクライナにとって大変な時期です。私は自分の国、大統領、ウクライナの全軍を応援したいし、戦争はしたくないと言いたい。今は家族のことが心配です。故郷の状況があまりにひどく、父は家で手榴弾を作っています」と、不安を隠さなかった。  MMA10勝3敗(UFC5勝3敗)のモロズは5日、カザフスタンのマリヤ・アガポバ(10勝2敗・UFC2勝1敗)と女子フライ級で対戦。  2019年にサビナ・マゾ、2020年にマイラ・ブエノ・シルバに判定勝ちし、2連勝中のモロズは、同じくマゾに一本勝ちしている元チームメイトのアガポバとのフライ級サバイバルマッチに向け、「私はウクライナの人々が強いことを示し、オクタゴンの中で私の旗を掲げて戦います」と語っている。  アガポヴァに続き、場内の歓声に後押しされたモロズ。  1R、ともにオーソドックス構え。右で差して金網に押し込むモロズ、金網背に耐えるアガポヴァは上からヒジも、小外がけから崩してテイクダウン奪うモロズがバックテイク! シングルバックから左腕を喉元にかけてパームトゥパームで絞るが、正対したアガポヴァ。  下のモロズは腕十字へ。うつ伏せになりかけながらもヒジを抜いたアガポヴァが上に。モロズの立ち際の背中に乗り、4の字ロックも背負って立つモロズ。着地したアガポヴァをモロズがテイクダウン狙いでブザー。  2R、左右で前に出るモロズ。左で差してヒザ蹴り。さらに右で差して小外&ボディロックテイクダウン! 手を着くアガポヴァの右手を引き寄せ潰して、さらに左手をリストコントロール。肩固め狙い! バックマウントで脇下からパウンド。さらに脇をさした右腕を引き寄せて仰向けにさせるとハーフから肩固め! 最後は右足を抜いてパスして極めて、アガポヴァヵらタップを奪った。これでUFC3連勝。  2R 3分27秒、一本勝ちしたモロズは、ウクライナ国旗を手に、ジョー・ローガンから差し出されたマイクを思わず両手で引き寄せ、「すみません」とマイクを戻して、「どうぞ」と促されコメント。  モロズは「スポンサーやチームや家族、何より対戦相手にも感謝したい。みんな知っているかもしれないけど、いま母国は戦火にさらされています。こうしている間にも家族は危険にさらされたままです。  母国が辛い状況に心を痛めているし、心配だし、家族がこんなひどい状況にあるから、たくさんの応援のメッセージをくれてありがとう。私はいまにも泣きそうです。だって、私の国は戦争しているんです。みんなほんとうにありがとう」と涙声でマイクで観客に語りかけた。  ローガンから「こんな信じがたい状況で君がここに立って試合をしていることは称賛に値するし、君のMMAもそうだ。それはただ戦ったという以上のものでしょう」と勇気を讃えられると、「この2年間は怪我や、新型コロナウイルスもあって、辛い時期でした。そんななかアメリカントップチームがサポートしてくれたからここに戻ってきました。これからも試合をしていけます。ありがとうございます」と周囲に感謝の言葉で、オクタゴンを降りた。
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