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【UFC】難病の妻と3度のオリンピアン「病気によって人生の何かが決まることはないことを証明する戦い」に勝利し、UFC3連勝

2021/08/22 15:08
【UFC】難病の妻と3度のオリンピアン「病気によって人生の何かが決まることはないことを証明する戦い」に勝利し、UFC3連勝

(C)Zuffa LLC

 2021年8月21日(日本時間22日)、米国ネヴァダ州ラスベガスの「UFC APEX」にて、「UFC Fight Night: Cannonier vs. Gastelum」が開催された。

 コ・メインイベントのライト級戦では、デンマークグレコローマンレスリング代表として、2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオと3度の五輪に出場し、リオ五輪ではグレコローマン74kg級で銀メダルを獲得したマルク・マドセン(デンマーク)がオクタゴン3戦目を迎えた。

 36歳のマドセンは2013年にMMAに転向し、2019年10月にUFCデビュー。ダニーロ・ベルアルドに1R パウンドでTKO勝ち。2020年3月の「UFC 248では、オースティン・ハバードに3-0判定勝ちでMMA無敗記録を10に伸ばしている。

 約1年半ぶりの復帰戦となるマドセンは、妻が多発性硬化症(MS)と診断されたことが影響した。

「前戦の2R目の早い段階で顎を骨折して手術を行った。でもその手術で感染してしまい、2度目の手術が必要になった。その後、新型コロナの陽性反応が出てしまった。それを乗り越えたときに、妻がMS病と診断された」

 多発性硬化症は、中枢神経系(脳・脊髄、視神経)の病気で、視力障害、運動障害、感覚障害、認知症、排尿障害などさまざまな神経症状があらわれる。

 休暇を申請したマドセンに対し、UFCは療養により休暇と契約延長を承諾している。

「今回の診断で妻が恐れていたのは、私が試合に出られなくなることで、試合機会が失われることでした。この試合は、信じれば、夢を持てば、たとえ病気があっても、それを克服し、追いかけることができるということを証明するためのもの。妻のためにも、どんなことでも可能だということを証明したい」と語るマドセンは、試合に向け、同じ北京五輪に出場し、フリースタイル55kg級で金メダリストとなった元UFC世界バンタム級&フライ級王者のヘンリー・セフードともトレーニングを積んできた。

 対するベテランのクレイ・グイダ(米国)は39歳ながら、2021年2月のマイケル・ジョンソン戦では、持ち味を活かしたテイクダウンを奪い2年ぶりの判定勝利で再起を遂げている。

▼ライト級 5分3R
〇マルク・マドセン(デンマーク)11勝0敗(UFC3勝0敗)
[判定2-1] ※29-28, 30-27, 28-29
×クレイ・グイダ(米国)36勝21敗(UFC16勝15敗)

 1R、ともにオーソドックス構え。対峙すると大きなマドセン。広めのスタンスのマドセンに対し、右のカーフキックを2発突くグイダ。

 ステップを踏みワンツーのグイダに対し、首を掴みヒザを突くマドセン。離れるグイダは右ローから左フック! マドセンはクリンチ気味に組み付き。右で首を掴み、首相撲からヒザ蹴りを入れる。

 右回りのグイダを追うマドセンは右オーバーハンド! さらにお返しの右カーフキック。間合いを取るグイダはマドセンの入りに右ショートフックを当てる。左ボディ、右フックと上下に散らすグイダ。マドセンは追う。

 2R、ジャブを突き右ローはマドセン。初めて足を取りに行くが、ここはグイダが切ると、右カーフキック! 足が流れるマドセンだが、返しの右ロー。右ストレートはマドセン!

 しきりに上下のレベルチェンジをするグイダは、ワンツーのコンビネーション! 近づき首相撲からヒザを突くマドセン。しかし、突き放すグイダも右カーフを当てる。

 その入りに左ジャブを突くマドセン! 互いに慎重になるなか、右ロー、左ジャブの打ち合いから、右カーフを当てるグイダ。左インローもマドセンの前足に突く。

 3R、マドセンの右ローの打ち終わりに左を当てるグイダ。マドセンも前手の左フックを当てるが、連打には繋げられず。グイダに右ローを入れる。最終ラウンドも細かくステップを踏むグイダ。

 ジャブ連打のマドセンに右ロー返すグイダ。マドセンのヒザにグイダは出入りから右ロー。右のダブル、右前蹴りで詰めるマドセンに、ジャブ&ローはグイダ。

 互いに右の大振りは空振り。左から飛び込むグイダ。追うマドセンはついに金網に詰めて組むが、すぐにグイダはサークリングしてブザー。

 互いに星条旗、デンマーク国旗を背に判定コールを待つ両者。判定はスプリットでマドセンが勝利し、歓喜の雄叫び。得意のグレコの四つの攻防よりも首相撲&ヒザ蹴りで接戦を制したマドセンは、試合後、UFC7勝1敗で現ライト級10位のグレゴール・ギレスピーとの対戦をアピールした。

「勝利を持ち帰ることができて、とても誇りに思う。正直なところ、オリンピックに出ることよりも意味があった。これは自分のキャリアの中でも最大のカムバックだ。クレイ・グイダと闘えたことは大きな意味を持つだろう」と試合を振り返ったマドセン。

 また、妻が多発性硬化症の病と闘病中であることをコーミエーから聞かれ、「この勝利によって、病気が僕たちの生活の中で、家族全員にとって何事も阻まないと鼓舞することを本当に望んでいる」と語った。

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