2021年7月18日(日)東京・後楽園ホール『KNOCK OUT 2021 vol.3』にて、鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)と初代KNOCK OUT-BLACK スーパーライト級王座決定トーナメント決勝3分3R延長1Rを争う、WBCムエタイ・インターナショナル・ライト級王者の宮越慶二郎(拳粋会宮越道場)のインタビューが主催者を通じて届いた。
宮越は2008年にデビューしたベテランで、“ニンジャステップ”と呼ばれる独特のフットワークを駆使し、これまでNJKF日本ライト級王座、WBCムエタイ日本同級王座、WBCムエタイ・インターナショナル同級王座と3つのタイトルを獲得。チャンヒョン・リー、スアレック、勝次といった強豪を破っている。戦績は28勝(8KO)13敗2分。今年3月、2020年2月にシュートボクシングで町田光に敗れて以来の試合となったトーナメント1回戦で与座優貴を延長R判定2-1で降した。
今回はより頭を使って戦いたい
──試合まで約半月と近づいてきました。対策は進んでいますか?
「分析も順調に進んでいて、試合までいい状態で準備できるんじゃないかと思っています」
──相手の分析・対策はいつも綿密にする方ですか?
「いやあ、そんなに…。前回の準決勝なんかは本当にアバウトな感じだったんですけど(笑)。まあ相手によって、本当に分析しないといけないなっていう選手と、もっと大まかな作戦でもいけるかなっていう時がありますね」
──今回の鈴木千裕選手は、分析が必要だと。
「そうですね。あと、今回はより頭を使って戦いたいなというのがあったので」
──傍目には、相手の出方が想像しやすい対戦に見えるんですが?
「開始と同時に出てくるということですよね。そのパターンと、出てこないパターンもあるなあと思って、両方の対策をしています。何があってもいいように、当日、試合の中で驚かないように、逆のパターンもしっかり想定して対策しています」
──では、どう来られても対応できる自信がある?
「まあそうですね、自分が出した答えが合っているのかどうかというのが、楽しみでもあります」
──ただ基本的には、出てくることをベースに考えている感じですか?
「はい。もちろん、3Rの最後まで出てこないということはないですし、キレイに戦ったら僕の方が強いというのは相手も分かっているはずなので、ポイントを見てガーッと来ると思うんですよね。そこが彼のいいところでもあるし、持ち味でもあるので」
──改めて思うんですが、鈴木選手とは対照的というか、お互いがお互いの持っていない部分を持ち合っているという感じがします。
「確かに対照的ですよね。それでやりやすいかどうかは、実際にやってみないと分からない感じもありますけど。でも分析すればするほど、一見大雑把に見える選手ですけど、それをポテンシャルで補っている感じはあるので、穴がないと言えば穴がないのかもしれないですね」
──自分の動きや試合運びについて、気をつけようと思っていることは?
「僕はけっこうスロースターターなので、1Rにバーッと来られた時にヘマしてしまうと、そこで持っていかれちゃうんで。3Rしかないですからね。だから1Rからしっかりとエンジンをかけようと。前回の試合で実戦練習というか、やることはできたので、今回もしっかり1Rの最初から対応できるように、意識してやってます」
──スロースターターというのは、普段5Rの試合が多いということも関係ありますか?
「いや、3Rの試合も同じぐらいたくさんやってきてますからね。体質なんだと思います(笑)」
──勝てばKNOCK OUT-BLACKスーパーライト級王者ということになります。宮越選手はこれまでにも多くのベルトを獲得していますが、今回はまた違うものですか?
「僕ももう31歳になったんですけど、最後にベルトを獲ったのが26歳とかの頃なんですよね。30代でもベルトを巻くというのが目標でもありますし、この先も長いわけではないので、しっかりとベルトを獲って、ここ数年ずっと言っている目標も実現したいと思っています」
“表”と“裏”、どっちでいっても俺が勝つよ
──しかし、ここで『KNOCK OUT』のタイトルを獲るチャンスが巡ってくるというのも、キャリアを振り返って考えると、少し意外な感じではないですか?
「最初に『KNOCK OUT』に出たのが初代ライト級王座決定トーナメントだったんですよ。そこでベルトを獲るはずが、1回戦の森井洋介戦でまさかの派手な負けで。そこから体制が変わって、また『KNOCK OUT』のベルトを獲るチャンスが巡ってきたというのは、ある意味、運命だったのかなと感じますね」
──その分、『KNOCK OUT』への思い入れは他の選手よりも強い?
「僕の中では苦しい思い出が多いんですけどね(笑)。でも、成長させてくれた団体でもあるし、ここでしっかり自分と向き合って、自分に勝つという意味でも、このベルトを獲りたいという思いは強いですね。苦しい思いをしてきたのも、ここでチャンピオンになれば報われると思うので」
──チャンピオンということになれば、『KNOCK OUT』を背負う選手の一人ということにもなります。
「必然的にそういうことになるので、もしチャンピオンになれば『KNOCK OUT』代表として、もっと大きい戦いにも打って出られたらとは思います」
──20代から何本ものベルトを巻いてきた中で、宮越選手にとってのベルトとは?
「僕にとっては名刺みたいなもので、他の団体のチャンピオンとか、もっと強い相手と戦える証明みたいなものですよね。だから、チャンピオンだからこうしなくてはいけないみたいなことは、そんなに考えたことはないです。次のステージに行ける切符みたいなイメージで」
──今までのベルトでもそういう経験がありましたか。
「それしかないかもしれないですね。ベルトを獲って、やっと次のステップに上がれるという」
──獲れば久しぶりという話がありましたが、その意味でも「再びあの思いを」という気持ちが強い?
「強いですね。負けが続いた時もあったし、苦しい思いもしてきたので、ここでまたベルトを獲ったら、『やっぱり宮越はすごいな』と言ってもらえるでしょうし、僕自身もここで終わるような男だとは思ってないので。ここは一発、若いファイターに勝って、30代もまだまだ熱いぜというところを見せたいですね」
──しかし、傍目からも衰えを感じないですし、なおかつ経験も積んで新たな持ち味も見せてますよね。
「いろいろ経験してきて、徐々に大人の戦い方にもなってこれたし、なおかつ原点回帰というか、若い頃の試合映像も見たりしてるんですよ。『あ、これぐらいがむしゃらにやった方がいいな』と思う部分もあるので、そういうのも咀嚼して今の完全体、自分の理想形に近いものを作り上げているところです。終わりはないと思うんですけど、今は自分の理想形に一番近づいている感じはしています」
──そういうタイミングでこの『KNOCK OUT』の王座を獲る意味は大きいと。今の時点で、相手の鈴木選手に言葉を送るとしたら?
「鈴木選手もトレーナーと話して、僕がこう来る、ああ来るというのをいろいろ対策していると思うので、“表”と“裏”、どっちで来るかと迷ってると思うんですよ。だから『“表”と“裏”、どっちでいっても俺が勝つよ』というのは言いたいですね」
──では最後に、今回の試合で注目してほしい部分は?
「僕はトーナメントが決まった時点から、決勝は鈴木選手とやると思っていたので、ずっとシミュレーションはしてきているんですよ。この半年以上の期間をかけて出した僕の答え合わせを、楽しみにしていてほしいですね。まあ、何よりも僕が一番楽しみなんですけど(笑)」