ロッタンとチャナティップがオンラインで初の対談。最後にはグローブとユニフォームを交換した (C)ONE Championship
ONEフライ級ムエタイ世界王者のロッタン・ジットムアンノン(タイ)とJリーグ・北海道コンサドーレ札幌のチャナティップ・ソングラシン(タイ)のオンライン対談動画が、6月25日(金)にONE Championship公式YouTubeで公開された。
アグレッシブなファイトスタイルで日本にも多くのファンを持つロッタンと、“タイのメッシ”の愛称で呼ばれ東南アジア出身初のJリーグベストイレブンにも選出されたチャナティップ。お互いに「緊張している」との言葉から始まったこの対談、チャナティップは「スアキムとの試合を観たことがあるんだよね」と語り掛ける。
(写真)2人の爆笑シーンも
試合前のトラッシュトークがあったとの話から、ロッタンが「でも試合が終わればみんなブラザーだね」と言えば、チャナティップも「それはフィールドと似ているね。試合中は敵同士だけどフィールドを出れば友だちだし、それがプロ意識でもあるよね」と同意。ロッタンは「そうだよね、それがスポーツの素晴らしいところだよ」とする。
対談序盤は、チャナティップからのムエタイに関する質問を饒舌に答えるロッタンが意外におしゃべりなところが見られ、中盤にはチャナティップが自分のストーリーをロッタンに語り始める。
「僕の父もサッカー選手だったんだ。スピードはあるけれどテクニックは普通のレベルだった。僕が教わったのはサッカーの基本だけだった。4歳の時、新聞紙を丸めたボールで父が一緒に練習してくれて、そこから全てが始まったんだ。父はサッカーの基礎と基本を教えてくれた。それに僕は体格が小さいから両足を使うように教えられた。ちゃんとできない時は叱られたよ。13歳になるまでだったかな? 基本ができるようになったら叱られなくなったよ。
今、僕に強い決意があるのは練習中に父に厳しくしてもらったからだと思う。時々、朝練をして夕方にも練習をしたね。昔の田舎には何もなかった。友だちもいなくて道端で練習していた。雨が降った時は練習しなくてよいと思って喜んでいた。でも父は壁で練習できる場所を見つけていた。コンクリートの壁で100回パス練したり、階段を20~40回駆け上がったり。父が満足するまで練習していたよ。プロになる前はいろいろあった。チャナティップは凄い! では終わらない。自分が何を経験してきたかは自分が知っているからね。これが僕のストーリー」と話すと、「君のストーリーも教えてよ」という。
(写真)ロッタンがゴールした時にやって欲しいとロッタンポーズを伝授すると…
するとロッタンは「僕のストーリーは少し衝撃的かもしれない。多分、泣くと思うよ」と笑って語り始めた。
「両親は僕にムエタイをやって欲しくなかった。10人兄弟で親はそれどころじゃなかった。朝から仕事に行き、夜遅く帰って来ていた。母は葬儀場で皿洗いの仕事をしていた。僕は母と金属の切れ端を集めて、それで毎日家族を養っていた。ムエタイを始める前は僕もサッカーをやっていたんだ。7歳か8歳の頃にサッカーを始めて、小学5~6年生でムエタイに変えたんだ。サッカーでは稼げないって思ったから。母は子供たちに怪我をさせたくないから、心配をかけないように親に内緒で練習に行っていた。
練習場に子供はいたけれど友だちはいなかった。雨の日は1人で遊んでいたよ。コーチに練習させてもらえるようお願いする1週間くらい前に、僕は外からこっそり練習場を眺めていた。そこにはいろいろなレベルのファイターがいて、新入りの僕には構ってくれなかった。努力し続けてサンドバッグを蹴りまわしていたよ。トレーナーと練習したかったけれど無理だった。サンドバッグとしか練習できなかった。気付かれるまでに1年かかったよ。やっと努力に気付いてもらえた。それでやっと父から練習する許可をもらえた。初の試合は友だちが風邪をひいて代わりに出た時だった。初めての試合で300バーツ(約1,045円)もらった。1日のお小遣いは学校の給食用に5バーツ(約10円)だったから本当に誇りに思ったよ」と、貧しかった少年時代のことを打ち明けた。
(写真)チャナティップは3150ポーズを伝授。ロッタンは「可愛すぎない?」
また、ムエタイを始める前はサッカーをやっていたことについて「サッカーも部活でやっていて地区大会とかにも出ていたよ。でもムエタイのコーチが父にサッカーとムエタイのどちらかに集中させたいと言ったんだ。どっちも両立させるのは難しかったから。それでサッカーは大好きだったけれど辞めたんだ。でもこうして格闘技を続けてきてチャナティップと話す日が来るなんて思ってもみなかったよ」と話した。
終盤には、ロッタンが「僕は殴られたらアツくなる。君の場合はゴールキーパーを怖がらせないと。僕が相手に恐れられるようにゴールを決めたら叫ぶんだ」と、自分が試合で見せるポーズを叫びながら伝授。これに大ウケしたチャナティップはお返しとして、亀田史郎氏の3150ポーズを伝授すると、ロッタンは「今度試合に勝った時にやるよ」と約束する。
すっかり意気投合し、盛り上がった2人だが、最後は貧しさから間違った道へ進んでしまう子供たちを減らす方法はないかと話し合う。それにはスポーツが有効だとの意見が一致した。
お互いの試合映像を見て盛り上がったところで、ロッタンはONEの王座防衛戦で使ったグローブをチャナティップにプレゼント。チャナティップも自分のユニフォームにサインをして贈るとし、ロッタンは「ずっとファンだったんだ。直接会える機会があったら一緒にサッカーをしよう」と、サッカーをする約束をして対談を終えた。